星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

477 / 477
勇者の卵

 こんにちは、朝霧 誠です。父さんから詳しい話は聞けないけど、ニュースを見る限り世界は大きく動いているのを感じます。

 学校の同級生達の中には不安に思う子も居るから、アードと関わりがある僕に出来ることは少しでも不安を和らげることだと思って色々とお話をしてる。

 アードへ行ったことはまだ極秘扱いだから、喋ることが出来ないのはちょっと辛い。でも、いつか皆にアードでも体験を教えてあげたい。

 たまに見かける反アードの人達が言うような危険は、アード人には無いって胸を張って言える。

 

 

 

 そんな毎日を過ごしているんだけど、変化があるとするならティルちゃんと二時間過ごすことが追加されたくらいかな。

 基本的には僕の部屋でお喋りだ。出来れば日本の町を案内してあげたいけど、ティルちゃんが毎日遊びに来てるのは秘密だから仕方ない。

 ティルちゃんを退屈させないように、毎日地球の雑誌や色んなことを調べるのが日課になったなぁ。嫌じゃないから良いんだけど。

 

 

 

 この日もティルちゃんとお喋りをした。話題は、地球の海についてだったかな。特に深海生物のお話はウケた。アードで見た巨大生物は地球に居ない……と思うけど、深海は宇宙と同じくらいロマンが詰まってる。

 で、いつものようにお開きの時間になったんだけど……まあその、ティルちゃんにキスされちゃった。

 突然のことで頭が真っ白になった。ティルちゃんのことは好きだし、このままゆっくりと一緒に大きくなって、その時に出来たら良いなぁなんてぼんやり考えていたから。

 

 

 

「えへへ、ちゅーしちゃった!」

 

 

 

 笑顔を浮かべるティルちゃんは、いつも以上に可愛く見えた。

 何もかもを投げ出して、そのまま流れに身体を任せたい気持ちがスッゴく沸いてきたけど、必死に我慢した。

 僕たちはまだ子供だし、何より今僕に抱きついているティルちゃんは幻影だ。

 触れるし、暖かさもあるけど魔法で作られた幻なんだ。

 

 

 

「ティルちゃん」

 

 

 

「ん?」

 

 

 

「ありがとう、とっても嬉しかった」

 

 

 

「どーいたしまして!バイバイ、マコ!」

 

 

 

 言いたいことはたくさんあったけど、最初にお礼を伝えた。嬉しかった気持ちに嘘は吐きたくないし、勇気を出してくれたティルちゃんの気持ちを無下にはしたくなかった。

 ティルちゃんも嬉しそうにしてくれたけど、そこで時間が来ちゃった。

 光の粒になって消えちゃったのを確認して、僕は部屋にあるベッドへ飛び込んだ。

 心臓がうるさいくらいバクバクしてるし、顔が熱い。とっても熱い。身体も熱い。まるでサウナに入ってるみたいだ。

 

 

 

「はぁ……情けないなぁ」

 

 

 

 ティルちゃんも僕のことを好きになってくれているのは知ってた。父さんからは、こんな時は男の子がリードするものだって教えられていたのに。

 結局僕が勇気を出せなくてティルちゃんにやらせちゃった。情けない。

 自分の不甲斐なさに溜め息を吐いていると、ドアがノックされた。

 

 

 

「誠、今大丈夫か?」

 

 

 

「父さん!?

 う、うん。大丈夫だよ!」

 

 

 

 ビックリしたけど、慌てて部屋の中を見てティルちゃんが居た跡が残っていないと確認して返事をした。

 

 

 

「入るぞ……ん?どうしたんだ。顔が赤いが、熱でもあるのか?」

 

 

 

「ううん!大丈夫だよ!ちょっと暑かっただけだから!」

 

 

 

 日本外交官でありアード公認外交官であり異星人対策室の朝霧だ。今更ながら肩書きが増えてしまったな。数ヶ月前までは外務省の窓際族だったんだが、振り返ってみれば随分と出世したものだ。

 まあそれに合わせて心労も増え、ケラー室長から勧められた胃薬を愛飲する日々を送っている。

 

 

 

 さて、我が息子の顔を見るにティルさん……姫殿下は随分と息子を気に入ってくれたようだ。

 あちらの家族の身分を考えれば胃が悲鳴を挙げるが、同時に人柄も充分に承知しているので安心感もある。妻はかなり乗り気だ。

 更に言えば、ティアンナさん……王妹殿下は随分と妻を気に入っている様子で、「早く瑠美と姉妹になりたいわ」とまで漏らしていた。妻も満更ではない様子だ。一体二人の間で何があったのか。

 ……いや、女性同士の関係に男が口を挟んでもロクな結果にはならない。静観するとしよう。

 

 

 

 ん?ティルさんの件を知っている理由か?

 誠は秘密を守ろうと頑張っている。その姿は微笑ましいが、私達夫婦には事前にティアンナさんから詳細を知らされているのだ。

 アードの技術や魔法は理解不能だが、親しくしているジャッキーの言う通り有りの侭を受け入れるしかない。理解しようとするのがそもそも不可能だ。何より科学や魔法など完全に専門外だからな。

 

 

 

 

「それなら良いんだが……急で悪いが、荷物を纏めなさい。最小限で構わないから」

 

 

 

「何処かへいくの?」

 

 

 

「ああ、月へ行くぞ」

 

 

 

「え?月!?」

 

 

 

 内閣府及びアリアから緊急で知らされたのだが、どうやら追い詰められた過激派の一部が誠の身柄を狙っているらしい。ティルさんの一件で誠は有名になったし、私の息子であることも知られてしまった。

 私ではなく息子を狙う卑劣さに激しい憤りを感じるが、残念ながら四六時中誠の側に居ることは出来ない。それに私は強化された身体があると言えど、素人だ。

 息子を守るためには、安全な月へ逃がすのが最適だ。どのみち次のアードへの旅路にも連れていくことが決まっているからな。

 

 

 

「突然でビックリさせてしまうが、色々事情があるんだ。済まないが、もう少しだけ我慢して欲しい」

 

 

 

「わかった。直ぐに準備するね」

 

 

 

 聞き分けの良い息子で助かった。

 ……思えば、誠もいつの間にか成長したな。この数ヶ月の経験がこの子の成長を促したのだろう。

 父親として嬉しくもあり、寂しくもある。そしてちょっと不甲斐ない気持ちにもなるが、誠が元気ならばそれで良い。

 それと、妻の瑠美はこのまま旅館に残る。旅館やすらぎには、フィーレさんが用意してくれた警備ドローンが密かに配備されていて、万全の警備体制が整えられている。

 ついでに言えば、観光資源として例の人型ロボットのアースが一機正面玄関に鎮座している。

 表向きには動かないレプリカとして展示しているが、実際には本物でいつでも起動できるらしい。

 頼もしい限りだが、それでも誠を月へ連れていくのはアード側の要請、より具体的にはティリスさんからの要望だ。

 有り体に言えば、将来に備えて少しでもアード社会や文化に触れさせたいのだろうな。

 父として思うところはあるが……誠の恋路を応援するしかないな。

 

 

 

 準備を済ませた誠を連れてそのまま富士山麓にある地球外技術研究センターへ移動し、そこで待機していたメリルさんと一緒に転移装置で月へ向かった。

 今現在使えるのはケラー一家だけだからな、仕方ない。

 

 

 

 そして何度も訪れた居留地へ到着した瞬間。

 

 

 

「あっ!テレビで見たことがある!もしかして、朝霧くん?」

 

 

 

 何故かリーフ人に成っている総理の娘さんを見て、私は愛用している胃薬をラッパ呑みするのだった。

 ……総理は知ってるんだろうなぁ。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

【2巻発売中】TSしたから隠れてダンジョンに潜ってた僕がアイドルたちに身バレして有名配信者になる話。~ヘッドショットロリがダンジョンの秘密に迫る配信~(作者:あずももも)(オリジナル現代/冒険・バトル)

【TS成分少なめがお好みの方は8章を飛ばしてお楽しみください】▼【最初にTS場面ご希望の方は8章→1章~の流れでお楽しみください】▼【1巻からの方は3章より・2巻からの方は5章よりどうぞ】▼◆【地上に舞い降りた野良猫系女神】【僕っ子ショタ系口調呑兵衛ロリ】【たまにおっきくくく】【nai-nai】【人助けするくせ隠れるのが趣味なヘッドショット系ロリ天使】(視聴…


総合評価:18964/評価:7.39/連載:759話/更新日時:2026年06月12日(金) 18:03 小説情報

強化人間がTSしたら魔法少女が戦う世界でメカ美少女になってました(作者:Yura0628)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ミサイルの爆発に巻き込まれた強化人間イーグル1。目覚めた先は、魔法少女が戦う過去の地球だった…!▼自身の体が女性に成っている事に困惑しつつ、元の世界に戻るため、イーグル1は魔法少女として戦う事の対価に、この世界の組織に協力を取り付ける。だが、襲いくる強力な魔獣を相手していく上で、身体的損傷を許さざるを得ない状況に追い込まれ…彼女に救われた魔法少女達は、目から…


総合評価:1920/評価:8.5/連載:37話/更新日時:2026年05月09日(土) 11:11 小説情報

ハンマー少女はバズらない! 固有スキル【隠遁】で自由に探索してたら伝説になってました(作者:chikuwabu)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 魔物からも認識されないし、人間からも認識されない。そんな癖の強いスキルのおかげで人知れずソロ探索をしていたら、いつの間にかドワーフだとか座敷童子だとか、変な目撃証言が広まっちゃった、見た目子供な女の子(18)のお話。▼ そんな噂は気にもせず、妖精少女をパートナーに従えて、カレーを作ったり、ハンマーを振ったり、探索したり、人助けをしたり、たまに目撃されたり、…


総合評価:10028/評価:8.74/連載:639話/更新日時:2026年06月12日(金) 23:00 小説情報

コミュ障TS転生少女の千夜物語(作者:テチス)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

 何かよく分からないが自分の好きなキャラを作ったらその姿で異世界に居た。どうやら『夜の化身』として凄い力を手に入れてしまったらしい。夜になるたびポンポン生まれる眷属がなんか強い。▼ だけどクリエイト時につけてしまったもう一つの設定の弊害によりコミュ障で表情の変わらない女の子になっていた。その表情と能力が周囲の勘違いを産み、空回りを生んでいく。▼8/13 完結…


総合評価:25029/評価:8.94/完結:72話/更新日時:2021年08月13日(金) 21:00 小説情報

ディストピアゲーに転生したら行政側だった件について(作者:我等の優雅なりし様を見るや?)(オリジナル現代/冒険・バトル)

ディストピアゲーに転生したら圧政する側だった主人公の話。▼プロット、及び設定を修正する為に一時更新停止→更新再開▼小説家になろう、カクヨムでも連載中▼


総合評価:52221/評価:8.86/連載:45話/更新日時:2025年10月27日(月) 04:51 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>