星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
衝撃的なカミングアウトから一夜が明けた。考える時間が欲しかったから、クレアと別れた後居留地に用意されている自室に引き籠った。
一人にして欲しかった訳じゃないんだけど、皆遠慮して誰も来なかったんだよね。まあその分ぐっすりと休めたんだけどさ。
ん?ああ、考え事しても頭が痛くなるだけだし、ばっちゃんからも好きにして良いって許可もあるから今まで通りに好き勝手することにした。
地球側にも知らせようかなって思ったけど、何かハリソンさん達が胃潰瘍になりそうな気がしたから今は止めておくことにした。いつかは話さなきゃいけないけどさ。
……あと、朝霧さん家のマコ君が月で過ごすことになったね。朝霧さんがスッゴく胃が痛そうにしてたけど、気にしないことにした。
「ジョンさんには伝えた方が良いかな?」
「ジョンさんのストレスが大変なことになっちゃいますから、後にした方が良いですよ?」
「それもそうか、じゃあ黙っておくね」
翌朝、星降る丘でのんびり地球を眺めていたらフェルが当たり前のように隣へ腰かけた。
私の素性を知っても変わらないフェルに感謝しつつ、ちょっとした相談をしてみたら止めておくように言われた。
まあ確かに、私の前世云々なんて軽く消し飛ぶくらいの衝撃的な事実だからジョンさんの胃が大変なことになっちゃうね。
「ティナはこれからどうしますか?」
「やり方を変えるつもりはないよ、フェル。
今まで通り、地球とアードの掛け橋になれれば良いかなって」
私のやりたいことは変わらない。
「ティナ」
「フェル?」
そう考えていたら、フェルが私の両手を優しく握ってお互いに向かい合わせになる。
「もう掛け橋としての役目は充分に果たせたと思いますよ?
後はティナが頑張らなくても、大人達に任せていても交流は続いていきます」
「ん……フェルは、嫌かな?」
「本音を言えば、これ以上ティナに危険なことをして欲しくはありません。アードで皆とのんびり過ごしたいです」
「うん」
「でも、それはティナの望みじゃありません。
ティナは優しいから、私が本気でお願いすれば聞いてくれるのは分かっています。
ですが、ティナに我慢をして欲しくもない。
私、とっても我が儘です」
「フェル……」
私の責任だ。私が良く考えずに動いた結果、フェルにとって地球人は警戒すべき存在になっちゃった。特にパリの事件が起きてからは、常に警戒してる。いつも笑顔だけど、それは私にも分かる。
例外は異星人対策室の皆さんだけだ。
より正確に言うなら、異星人対策室の初期メンバーだけだね。それ以外は例外なく警戒してる。
もちろんカレンやマコくん達は別枠みたいだけどさ。
「だから、ティナはこれまで通りにしてください。私はずっと一緒に居られたらそれでいいです。今は我慢しますから」
「うん……うん?今は?」
「今は、です」
「あっ、はい」
圧が凄かった。笑顔だけど、返事をするしか無かった。
「久しぶりに配信してみてはどうですか?地球の皆さんも気になってると思いますよ」
空気を変えるように、フェルから明るい提案がされた。情けないなぁ、私から言わなきゃいけないのに。
……落ち込むのは後だ。少しでも交渉が上手くいくように頑張らないと。
「よし、アリア」
『ここに、ティナ。義体も向かわせますか?』
「大丈夫、メンテナンスの最中だよね?そっちを優先して」
アンドロイドボディはたくさんのスペアが用意されているけど、一番高性能な機体は今フィーレがメンテナンスしてくれてる。
『畏まりました。地球のネットワークに接続……配信サイトへログイン……全ての配信をティナのものにしますか?』
「しなくて良いから」
スナック感覚でハッキングしないように。いやまあ、今更手遅れだろうけどさ。
『では生配信を始めます』
アリアが宣言した瞬間、私達の目の前に非実体ディスプレイがたくさん表示された。よし。
「地球の皆さんこんにちは!ティナです!フェルも居ますよ!」
「こんにちは」
『ティナちゃんだぁああーっ!』
『久しぶりの配信だ!』
『全裸待機していた甲斐があったな』
『いきなりぶっこむな!』
『おっ、フェルちゃんも居る!』
『相変わらず仲が良いなぁ』
『しばらく月に居るんだよな?』
『最近なにかと物騒だからな、しばらくは地球に降りて来ない方が良いかもしれない』
『バカが暴発する危険もあるからなぁ』
何の告知もしていないのに、一気に視聴者が億単位になったんだけど。
コメントも凄い速さで流れていく。アリアがピックアップしてくれるから困らないけどね。
「あはは、皆さんお待たせしました。折角地球へ来たのに月にばっかり居てごめんなさい。まあその、色々あるみたいです」
『大人の事情って奴だな』
『まあ難しい話は気にしなくて良いよ。ティナちゃんは今までのままが良い』
『ぶっちゃけ政治とか外交苦手そうだし』
『今までの実績があるからなぁ』
「不名誉な実績は忘れてくださいっ!」
アポ無し訪問なんてしょっちゅうだし、多分これからもやるだろうから。
為政者の皆さんには悪いけど、そうすることで地球人の有りの侭の姿をアードの皆さんに伝えられるんだよね。
……まあ、ばっちゃんの言葉だけどさ。
「こほんっ!
ところで皆さん、ここがどこか分かりますか?月面にある私のお気に入りスポット、星降る丘から配信してるんです!」
私が紹介すると、カメラが自動的に周りにある居留地や月面基地、そして地球へ視点を切り替えた。
『おおぉ!地球だ!』
『月面!?』
『あの建物、資料で見たぞ!統合宇宙開発局の月面基地じゃないか!?』
『あの巨大なドーム群はなんだ!?』
『まさかあれがアードの居留地なのか!?』
『流石月面、クレーターだらけだなぁ』
「正解です。ここから見える建物は、居留地と地球側の月面基地です。そして月面基地と接続されている小さなドームが、一応大使館になりますね」
作ったは良いけど、今のところあんまり活用されていないんだよね。
『良く見たら、ティナちゃんもフェルちゃんもいつもの格好だぞ』
『宇宙服要らないの!?』
『なんで待機の無い月面で声が聞こえるんだよ』
「その辺りは、あれです。科学とか魔法の何かです」
『超アバウトな回答が来たぞ』
『これティナちゃん絶対分かってないだろ』
「それは言わないお約束です!」
「環境適応魔法の一種ですよ。とっても過酷な環境じゃ無い限りは、いつものように過ごせるんです」
『へー』
『へー』
「へー」
『おいまて、ティナちゃんも感心してるぞwww』
『やっぱり知らなかったんだな』
「うぐっ!魔法は専門外なんです!良いじゃないですか!皆さんだってネットワークとか機械の詳しい原理は知らないでしょう?」
『まあな』
『便利なツールを使えるなら、原理とか知らなくても問題ないし』
『すねたティナちゃん可愛い』
『ペロペロ』
『通報……おい、このキング=ニシムラって奴通報できないぞ』
『すまぬ、年甲斐もなく昂ってしまったわい。色んな意味で』
『コイツ通報してぇ』
まあ変なのが混じったけど、地球の皆さんと交流して少しは気分が良くなったよ!