星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
何か朝霧さんの胃が深刻なことになってそうな気がするけど、気にしないことにした。深く考えると私も胃が痛くなるし。
最初の予定では一週間地球へ行かないって事になってたけど、なんだかんだで二週間が経っちゃったなぁ。美咲ちゃんがリーフ人になっちゃったし。
バタバタしていたけど、お仕事は大事だから暇な時間を使って南極大陸での交流レポートを書き上げた。
アリアが撮影してくれた映像があるから、後は個人的な感想を差し込んで終わりだから簡単だけどね。
ペンギンと交流した時は隊員の皆さんを驚かせてしまったなぁ。ペンギンは臭いって聞いたことがあるし、あんまり触らない方がいいって注意されたっけ。
ただ、私達は環境適応魔法で身体を包み込んでいるから実際には素手で触っている訳じゃない。
まあ、当たり前か。私達からすれば地球の細菌とかは完全に未知の存在だし、逆もあり得る。
だからお互いのために直接接触しないように配慮されてる。それも環境適応魔法の一環なんだよね。
これは動画配信してる時にコメントでも指摘されたけど、その辺りを説明するのが大変だったからアリアに丸投げすることにした。
詳しい魔法理論なんて、ほとんど魔法を使えない私には無理な話だからなぁ。
適材適所って便利な言葉もあるし、出来る人に任せるのが一番だ。
「取り敢えず“医療シート”百枚と、“トランク”を三つかなぁ」
今回も交易品として大量の“医療シート”と“トランク”を持ち込んでいる。
ザッカル局長を送り届けた時に交易分は異星人対策室本部へ運び込んでいて、後は予備と交流のために使う分が残されてる。
『“マナ結晶”を持ち込みますか?』
「んー、使い途が限られてるからなぁ。取り敢えず現地についてから考えよう」
“マナ結晶”はたくさんあるし、いざとなればフェルが直ぐに魔法を充填してくれるけどね。
だから使う時やプレゼントする時は、その都度効果を付与すれば良い。
南極で渡した物は、暑い地域じゃ役に立たないからなぁ。
しばらく準備を進めていると、ジョンさんからメッセージが届いた。私を気遣ってくれて、暖かい言葉を掛けてくれた。
それと、ドイツ政府との話し合いは終わっていて、準備も整えてくれたみたいだ。
で、行き先としてはベルリンのある場所が指定された。それは、前世で映像としてみた歴史的な遺物。つまり、ベルリンの壁がある場所だった。
正確には壁の一部が記念碑として残されているんだっけ?まあ、詳しくは分からないけど歴史的にも重要な場所だ。
私は歴史学者さんじゃないから詳しい経緯は分からないし、実態も知らない。
でもあの壁によって、たくさんの人が親しい人と引き離されたって話は聞いたことがある。悲しい歴史の遺産になるのかな。
ドイツの人達にとっても大切な場所なのは間違いないし、やらかさないように気を付けないと。
『現地には既にメリルを向かわせているし、ミスター朝霧も仲介役として現地入りする予定だよ。
……済まないね、此方の意向に配慮してくれたんだろう?』
「気にしないでください、ジョンさん。私も個人的に興味はありましたから」
合衆国が次の行き先としてドイツを勧めてきたのは事実だけど、前世で好きだったドイツビールを産地で飲みたいって密かな願望もあるんだよねぇ。
お酒大好きなクレアは大喜びするだろうし、色んな食べ物もあるからフェルも楽しめる筈。お肉はあんまり好きじゃないみたいだけどね。
それに、メリルさんや朝霧さんが居るなら心強い。
『それなら良かった。現地ではある程度の自由を確保してあるが、ドイツが君達を招くのは始めてだ。色々不便なところがあると思うが、我慢してほしい。
私も現地へ向かえれば良かったんだが、生憎予定が詰まっていてね』
「残念です。もしお休みを貰えたら、一緒に観光しましょう!」
お仕事なんだろうけど、少しは時間に余裕がある筈。ジョンさんは働き詰めだし、ハリソンさんにお願いして休暇も取れるようにしてあげないと。
……ドイツを楽しんだ後は日本へ行って、ジョンさんと一緒にあちこちを見て回るのも良さそうだ。
『ああ、楽しみにしているよ。それじゃあまた地球で会おう』
「はい、ジョンさんも気をつけて」
ジョンさんと連絡を取り合った後、私も身体を清めて自分の部屋へ戻った。当たり前のようにフェルがベッドの近くにある椅子に座って、ぬいぐるみを抱きしめていた。
「お帰りなさい、ティナ」
「ただいま、フェル。ジョンさんと明日の打ち合わせをしてたんだ。
……それ、気に入ったんだね?」
「はい、可愛らしいです」
フェルが抱きしめているのは、私が生きている頃から国民的大人気を誇るゲームの電気ネズミ……じゃなくて、初代御三家の草タイプのぬいぐるみだ。美月さんからプレゼントされたんだけど、リーフ人は草タイプと相性が良いみたい。
フィオレとフィーレも、草タイプのぬいぐるみに飛び付いていたし。
……それなりに大きなぬいぐるみを抱きしめてるフェルの可愛らしさを説明するには、年単位の時間が必要になるな。
「明日向かう場所にも可愛らしいものがあるでしょうか?」
「文化は地域によって違うからね、何とも言えないよ。
でも、フェルが気に入るものもきっとあると思うよ」
「それは楽しみです」
ちょっとだけお喋りをして、明日に備えていつものように、一緒に眠った。
フェルはあんまりお酒が好きじゃないみたいだし、ビールはこっそりと飲まなきゃね。
翌朝、居留地にある広場に私とフェル、クレアとアリアの四人が集まった。
フィオレとフィーレ姉妹は一足先に異星人対策室本部へ向かったみたいだ。
取り敢えず何かを作ったって報告はないし、大丈夫だと信じたい。
「今から楽しみです!たくさんのお酒があるんですから!」
「ほどほどにね、クレア。アリア、現地の映像を」
「此方になります」
投影された映像には、ベルリンの壁の一部とたくさんの人が映った。警備も凄いなぁ。
「じゃあ、フェル。お願いね」
「任せてください」
目的地をじっと見ていたフェルが目を閉じて、私達も彼女としっかり手を繋いだ。さあ、いよいよドイツだ!
それは運命の悪戯であった。ティナ達を見送ろうと慌てて駆け付けたセシリアだったが、急ぎすぎて躓いてしまう。
直ぐに翼と羽を羽ばたかせて姿勢を制御したが、勢いを完全に無くすことは出来ずそのまま転移寸前のフェルの肩に触れてしまう。
「ご覧ください!遂にティナ大使ご一行が我が国へ……え!?これはまさか、新しいメンバーでしょうか!?」
「何だあの娘は!?」
「まさか、アードとリーフのハーフか!?」
待ち構えていた大勢の報道陣、ドイツ政府首脳陣の前にセシリアを大公開してしまい、中継を見ていた世界中の人々と驚かせて、為政者達は頭を抱え。
「これ、私が悪いの……?」
ティナの呟きは大歓声によって掻き消された。