星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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ベルリンに咲く大輪の花

 セシリアがフィオレを呼び寄せたため、会場は更なる熱気に包まれていた。

 政治的にもティナ達だけではなく、彼女と一緒にあちこちへ顔を出していた彼女の来訪は、それだけでドイツ政府を喜ばせる結果となったのだ。

 

 

 

「ちょっと、なによここ!?なんでこんなにたくさんの地球人が居るの!?」

 

 

 

 当の本人は困惑していた。何せ軽い気持ちで呼び出しに応えてやって来たら、数万の地球人が集まるスタジアムのど真ん中に辿り着いたのだ。困惑するのも無理はない。

 

 

 

「フィオレ!危ない!」

 

 

 

 だが、フィールドのど真ん中に出てしまった故のハプニングも発生した。

 フィールドではドリームチームによる親善試合が行われており、スター選手達が本戦に影響しない範囲の軽く流す程度でプレーしているのだ。

 当然ながら、突如として現れたフィオレの存在は完全にイレギュラーであり、鋭いロングパスの軌道上に彼女が居るのだ。

 その場に居る誰もがフィオレにボールが直撃する未来を予測した。

 故に近くに居た選手達はボールを止めるため、いち早く動いたのだが。

 

 

 

「ちょっ!?なんなのっ……よっ!」

 

 

 

 それは奇跡であった。迫り来るボールに驚いたフィオレは、反射的に羽を羽ばたかせて宙に浮き上がり、半回転した状態でボールを蹴り返したのだ。

 それはまさに空中オーバーヘッドキックと呼べる芸当であった。

 リーフ人の脚力で蹴り返されたボールは一直線にゴールへ向かい、轟音と共にゴールポストを突き破り、その後ろにある観客席とフィールドを仕切る壁にめり込んだのだ。

 この際、ゴールキーパーは一流選手らしく瞬時にボールを受け止めては危険と判断して、見事な回避を見せた。

 この一連のアクションは観客を大いに沸かせた。

 尚、ゴールネットを突き破った段階でアリアにサポートされたフェルが魔法で干渉し、観客席前の壁に障壁を展開したことでめり込むだけで済み、人的被害を及ぼさないように配慮なされた。

 

 

 

「何のつもりよ、地球人」

 

 

 

「フィオレ!フィオレ!落ち着いて!事情を説明するから、こっちに来て!」

 

 

 

 当然攻撃されたと勘違いしたフィオレは警戒心を剥き出しにしたが、直ぐにティナが間に入って説明したことで誤解を解くことに成功した。

 

 

 

「いやはや、合同でスポーツを行う際には色々と配慮する必要がありそうですな」

「根本的な違いを見せ付けられましたな」

 

 

 

 大歓声の最中、ドイツ首相は近くに居たドイツ代表監督と苦笑いを浮かべながら言葉を交わした。

 種族としての根本的なバイタリティの違いを見せ付けられた結果となった。

 だが怪我の功名とは良く言ったもので、この一件で地球スポーツ界は来るべきアード、リーフ、或いはノーム人とスポーツで交流する場合に配慮が必要となることを痛感したのだ。

 故に、公開されているデータを元に様々な特別ルールが策定されていくこととなるのである。

 

 

 

 ゴールが破損するトラブルは起きたものの、直ぐに予備が準備されて親善試合は続行。

 一部の選手はスターらしくフィオレのシュートに焚き付けられて士気を上げ、親善試合とは思えぬスーパープレイの数々を披露して場を大いに沸かせてサッカーの歴史に新たな一ページを刻むこととなる。

 

 

 

「へぇ、面白そうね。地球人と同じルールでやるのも良さそう」

 

 

 

「だろう?ただ我々では力が強すぎるみたいだ。地球人を傷つけるのは避けたいな」

 

 

 

「まあ、やり方次第じゃないかな?私達の力を地球人並みに落とす、つまりデバフみたいな感じの魔法があればだけど。どうかな?フェル、アリア」

 

 

 

「魔法はありますよ?」

 

 

 

「ただし、推奨しませんが」

 

 

 

「プレイ中だけだよ」

 

 

 

 スーパープレイの数々にティナ達も強い関心を示し、その様子を見てイベントの成功を確信したドイツ首相は満面の笑みを浮かべた。

 他国に遅れをとったが、スポーツを介した新しい交流を切り開いた実績は決して小さくない。

 いや、それどころか国力に劣る小国にもアピールする機会を与えたとも言える。

 ドイツの国際的な地位は向上し、その立役者である自分の名声もうなぎ登り。これを喜ばない人間は居ない。

 とは言え、優先すべきは自分の栄達よりも自国の利益である。欧州の雄を率いる彼もそこは履き違えなかった。

 故に、今度はティナ達から何らかのサプライズを引き出すことへ意識を切り替えたのだ。

 

 

 

 このドイツ側の意図を最初に察したのは、アリアである。正確には、高性能なアンドロイドボディによる盗聴の成果なのだが、この真意を聞かされたティナは困惑した。

 素晴らしい場所へ招待してくれて、素敵なサプライズも頂いたのだ。お返しをするのは当然なのだが、それは“医療シート”や“トランク”の追加を考えていたためである。

 

 

 

「それも効果的ではありますが、今回必要なお返しは大衆受けするものが推奨されます」

 

 

 

 まさに政治の話であった。サッカーW杯へお邪魔している以上、この場に居る観衆達を喜ばせるお返しが必要となるのだ。

 アリアから提案を受けたティナは最初、SF映画の金字塔である作品の剣技を再現しようかと考えた。アードの携帯ビームソードを使えば、ライ◯セーバーの剣技を容易く再現できる故だ。

 だが、直ぐ様彼女は思い直す。ここはサッカーW杯の会場だ。明らかにスポーツと解離していて、この場に相応しくないと考えたのだ。

 もちろんこれは地球人の感性を持つ彼女故の配慮だが、地球側からすれば盛り上がれば問題ないのでそれも正解だったりする。

 

 

 

「よし……決めた。フェル、ちょっと手伝って。拡声魔法を」

 

 

 

「分かりました」

 

 

 

「ドイツの皆さん!今日は大切なイベントの真っ最中なのにお邪魔してしまって、ごめんなさい!そして、こんなにも素敵なイベントで迎えてくれてありがとうございます!」

 

 

 

 フェルの魔法によってスタジアムの隅々まで声が届き、観客達も大歓声でティナに応えた。

 

 

 

「集まってくださった選手の皆さん!大事な試合を控えているのに素晴らしいプレーを見せていただき、本当にありがとうございます!

 アードには無いスポーツですけど、とっても感動しました!

 だから、お礼としてイベントの成功と皆さんの健康を祈って、ちょっとした魔法を披露します!

 楽しんでくれたら嬉しいです!」

 

 

 

「ティナ、サポートしますからおもいっきりやってみてください」

 

 

 

「うん!いくよ!フェスティバル!」

 

 

 

 ティナが両手を空へ向ける。丁度陽が沈んだ時間帯であり、夜空へ向けてフェルの助言通り全力で魔法を放つ。

 

 

 

 

「これは……凄いな。大きなイベントのそれを越えてしまうじゃないか」

 

 

 

 ドイツ首相は感嘆の声を漏らす。この日、ベルリン上空に大輪の花が咲き誇る。地球ではあり得ない規模で打ち上げられた鮮やかな花火の数々は人々を魅了する。

 魔法の産物ゆえに色や規模も自由自在。更に火薬の匂いや煙も発生せず、煩くないように音も控えめにした魔法の花火は、大勢の人々の心を確かに掴んだ。

 

 

 

「これは備品を壊しちゃったお詫びよ!受け取って!」

 

 

 

 更にフィオレはスタジアムの直ぐ近くにあった空き地(実際には公園)に品種改良を済ませた種を植えた。

 すると瞬く間に芽吹いて成長し、公園にリーフ人の住居であるファンシーなフラワーハウスが出現。

 突如現れた可愛らしい家に人々が殺到して治安維持組織の長達が頭を抱えたが、まあ些事である。

 

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