星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
「なにやってんの?」
「見て分からない?お詫びとして家をプレゼントしただけよ。
あっ、心配しなくても地球の環境に影響は無いように改良してるから安心しなさい」
「違う、そうじゃない」
フェルの勧めで思い切り魔法を打ってみたら、花火大会が霞んじゃうくらいの規模になっちゃってビックリしてた。
ただ、派手な花火を打ち上げている最中にフィオレがスタジアムの傍にあった公園に種を植えたらしくて、それで現地は大騒ぎになってる。
ドイツの首相さんが頭を抱えたのを見た瞬間、嫌な予感がして飛び出してみたんだけど、遅かった。
咄嗟にフェルが魔法を展開して皆さんを落ち着かせてくれたから暴動は起きていないけど、ライトアップされた公園にはとんでもない数の人や警察官さん達が集まっていた。
そして公園のど真ん中には私からすれば見慣れた、そして地球人からすれば初めて見る巨大な花で作られたリーフ人のフラワーハウスが出来ていたんだ。
「ほう、随分と可愛らしいじゃないか。色合いにも拘りを感じるな」
「でしょう?やっぱり暖かみがある暖色にして見たのよ。
家なんだから暖かい場所じゃないとね」
黄色や赤の花弁が重なって作られたフラワーハウスは、可愛らしい見た目に反して中身は実用性の塊なんだよね。
少なくとも、アード人は建築の芸術分野じゃリーフ人に勝てないような気がする。
って、そうじゃなくて!
「大騒ぎになってるじゃん!問題が起きたらどうするの!?」
「勝手に騒いでるのは地球人でしょう?私は贈り物をしただけよ。しかも無害なものをね」
「だからそう言うことじゃ……まっ、いっか。
怪我人とか出てないし」
この時、ティナは真正面から受け止めるだけではなく、開き直ることを覚えた。
ある意味のふてぶてしさを身に付けたが、外交官とは本来面の皮が厚くなければやってられない職業である。
まして未来の女王ともなれば、多少の事には動じない精神力も必要となるのだから。
……常識の違いによる誤解や問題について、ある種の諦めを抱いたとも言えるが。閑話休題。
「で、中身は?流石にアードやリーフのテクノロジー満載だと困るよ」
「私を誰だと思ってるのよ?地球の木材を利用した家具だけにしているから安心しなさい」
相変わらず種から家具付きの家が出来るのは意味不明だ。
これはアードには無いリーフ特有の魔法技術なんだけど、アード側は今一理解できていないんだよね。情報は共有されているけどさ。
「ティナ大使、これは一体……随分と可愛らしい家のように見えるのだが」
フィオレと話していると、警備の人達に守られてドイツ政府の皆さんとメリルさんがやって来た。
メリルさん、笑ってるよ。
「先ずは落ち着いてください。皆さんからすれば衝撃的な出来事でしょうけど、合衆国や日本じゃ日常茶飯事です。
まあつまり、彼女達の突拍子もない行動には慣れるしかないんですよ」
私より先に説明してくれたのは、護衛として一緒に居たメリルさんだ。反論できないのが悔やまれる。
「なるほど……両国の苦労を垣間見た気分だよ」
「皆に伝えます。喜ぶでしょう。それで、ティナちゃん。これは?」
「リーフ人の家です。リーフ人は大きな花を使ったフラワーハウスを住まいにしていて、しかも種から家が生えるんですよ」
「種から家が生える……?
済まない、どうやら私も頭が固いらしい。何を言っているのか理解できそうにないな」
「先ず無理ですから諦めてください。あるがままを受け入れた方が楽になりますよ。私も理解を諦めましたし」
「メリルさんも色々振り回してしまいましたからね」
諦めの境地は大切だ。だって私が頑張っても、そもそも地球のルールや常識はアード人やリーフ人にとって完全に未知だ。やらかすのも仕方無い。私は諦めたぞ。
……頑張って止めるけどさ。
「マナが無い貴方達に言葉で説明するのは難しいわね……折角だから見てみる?
地球の一般的な家を参考にした内装だから、住むことだって出来るわよ」
「是非ともお願いしたい」
何か急にリーフのフラワーハウス見学会が開催されちゃったよ。まあ、これも交流の一環になるかな。
「これは……なんとも不思議な感覚だ。
家具類は見慣れているものばかりだが」
「これが本当に花びらなのでしょうか?」
「俄には信じられませんが……」
首相さんや同行した皆さんは、フラワーハウスの中を興味深そうに観察してる。
床や壁は全部鮮やかな花びらで出来ているからね。床も壁もフカフカで良い匂いがする。
それでいて強度も抜群で、季節に合わせて室内を快適な温度に保つ性質がある。つまり空調が要らないんだよね。
相変わらずリーフの家は可愛らしい見た目に反して実用的だ。アードのツリーハウスも好きだけどね。
でも地球の皆さんからすれば珍しいよね。興味津々で、質問にフィオレとセシリアが答えてる。
「これがリーフ人の……お花を使った家なんて発想はノームにありません。
私達は金属の部屋か穴を掘って生活していたみたいですから」
「大地と共に、だよね?」
クレアから聞いたりこれまで発見された遺跡から推測すると、ノーム人の町は地中にあったらしい。つまり地下都市だね。
薄暗い環境が好きみたいで、母艦にあるクレアの部屋もちょっと狭くて薄暗いんだよね。クレアが落ち着くならそれで良いけどさ。
「兄さん達もこれを目の当たりにしたわけね」
「はい。次はメリルさんも一緒に行きましょうよ」
折角だからメリルさんもお誘いしてみる。除け者にしたくないし。
「魅力的なお誘いではあるけれど、今は遠慮しておくわ。次の外交団にも兄さん達は参加するし、異星人対策室を空にするわけにはいかないから」
次は各国の選ばれた外交官さん達を一緒に連れて行く事になってて、案内のためにジョンさん、ジャッキーさん、朝霧さんが同行することになってる。
後は極秘扱いで、マコ君もだけど。
今回カレンは一緒に来ない予定だ。本人の希望なんだけど、残念だ。
「残念です。カレンも今回は来ないみたいですし」
「あの娘は配信者としてアードの良さを広めるために頑張ってるのよ。それに、あの娘が居るだけで色々工事も捗るし」
「まあ、それは確かに」
カレンはいつの間にかチャンネルを開設して、アードの良さを伝えてくれている。
知名度も高いし、何よりアードへ行ったんだから説得力も段違い。反アード配信者がクサーイモン=ニフーターなら、親アード配信者はカレンなんて言われてるらしい。
本人のフレンドリーな性格もあって、大人気みたいだけどあんまり危ないことはして欲しくないなぁ。
反アードの人達はカレンを目の敵にしてるみたいだし。
「だから私も残るのよ。あの娘はしっかりと守るから安心しなさい。
まあ、あの娘の場合肉体的には護らなくても良さそうだけど」
「そんなことはありませんよ!メリルさんが居るならカレンも安心できるから!」
メリルさんが側に居てくれるなら安心だ。
私が今心配しなきゃいけないのは、マコくんかな。自分の正体が分かった今、あの子が置かれてる状況も良く分かった。ドイツから帰ったらお話ししなきゃね。
決意を胸に、ティナはトランポリンのように弾力がある壁や床を跳ね回るドイツ首相からそっと目を反らしたのだった。