星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
ティナ達が地球へ降りる少し前。太平洋にある常夏のリゾート地、ハワイ諸島にある小さな島。一見何もない無人島に見えるが、険しい断崖絶壁には巧妙に隠されたバルコニーが存在し、そこに一人の漢が仁王立ちしていた。
人種としては黒人であり、歳も老齢と言えるが鍛え上げられた肉体は色々と盛り上がっておりまるでボディービルダーのように引き締まっている。
豊かな黒の頭髪を見事なアフロヘアーへ纏めあげ、その美しい肉体に恥じる場所は無いとばかりに惜しげもなくその裸体を晒していた。
もちろん淑女も訪れる場であるので、紳士としての礼節として神々しい黄金のアヒルパンツを着用して、見苦しくないように局部を隠す気高さを持つ。
彼こそはキング=ニシムラ(紳士100%)。世界に影響力を持つニシムラ一族の長であると同時に、誇り高き理念を持つ老紳士である。
彼はバルコニーで腕を組み、仁王立ちしたまま沈みゆく夕陽を見つめていた。
その眼差しに憂いが秘められているのを感じたのは、側で控えていた我らがジャッキー=ニシムラ(スパルタコス)である。
幾分か迷った末に、彼は勇気を奮い立たせて長へと言の葉を紡いだ。
「キング、胸中お察し致します」
「うむ……数多の血が流れた。出来うるならば、血を流さずに変革を進めたかったが、時がそれを許さなかった」
「弾圧は避けられませんでした。それは早いか遅いかの違いでしょう」
「うむ……だが、想いは違えど同じ地球人なのだ。
我々は、後どれだけの血を流せば次の段階へ進めるのか」
変革には痛みが伴う。それがこれまで人類が経験したことがない、異星人との交流を通した世界規模であれば尚更である。
だがそれでも、気高き信念を持ちながら聖母のような慈悲深さを持つキングは現状を是と出来なかったのだ。
「人間が歴史から学んだことは、歴史からなにも学んでいないと言う事だけだ。
ある偉人の言葉でしたな」
「うむ……しかし、そろそろ我々は学ばねばならぬ。外部からの来訪者、新たな隣人が誕生した今こそがその時であると理解している。
だが、流された血は消えぬ。そしてその反発も根強く残ることになるだろう」
憂いを帯びた瞳を夕陽へ向けたまま、キングはこの内心を吐露する。
それは、人類の安寧のために生涯を賭けて尽くしてきた漢の吐露であった。
「最早反発は避けられません。フランスを筆頭に、凄惨な弾圧が繰り広げられています。
短期的には意見の一致となるでしょうが、長期的には禍根を残すことになるでしょう」
「うむ……だがこれは我々地球人の問題だ。間違っても反発の矛先がアードやリーフの方々へ向かないように注意する必要がある」
「一族の皆が細心の注意を払っていますが、完全には……」
弾圧を行っているのは政府であるが、弾圧された者達の怒りの矛先がアードへ向かうのは避けられない事態である。
「だからこそ、メディアの友等へ働き掛けていた。
今こそ我が一族が盾となり、人類の未来のためこの身を捧げる時が来たのだ」
確固たる信念の下紡がれたその言の葉には、相応の重みが伴っていた。
「遂に、その時が来たのですね」
世界を影から支配する秘密結社。まるで物語のような存在であるが、キングがこれまで世界中のメディアを通じて長い年月を掛けて少しずつ浸透させて来た結果、今では世界で最も有名な都市伝説となっている。
「我が一族は、人類の存続と繁栄を成すために存在している。
その過程で富を得て裕福な暮らしを送ることが出来たが、それらは数え切れぬ人々の支えによって得られたもの。
だからこそ、我々はこの地球に、そして人類の同胞たちへ恩返しをせねばならぬ」
夕陽を見据えたまま語るキングの言葉に迷いは無かった。それを聞くジャッキーもまた、決意を秘めた瞳を向ける。
これまで浸透させてきた都市伝説を用いて、諸悪の根源はニシムラ一族にありと国際世論を誘導し、地球人とアード人が手を携えて巨悪を討ち滅ぼすことによる融和の促進。それこそがキングの狙いである。
世界のために尽くした漢は、巨悪の汚名を自ら被り人類の未来を護ろうとしているのだ。
「はい、キング」
「手筈はどうか?」
「同志ティリス殿と密約を結べました。いざとなれば、アードが受け入れてくださると」
同時にキングはジャッキーを通じてアード側と交渉していた。自らと一族の有力者達は悲願に殉じる覚悟はあるが、そこに若い命を巻き込むつもりもなかった。
「うむ、我等が一族の宿命に若き命を巻き込む必要はない。
その時は、頼む」
「手筈を整えた後は、私もお供致します」
「ならぬ」
一族に殉じようと決意を固めていたジャッキーへキングが掛けた言葉は、拒否であった。
「キング!?」
「そなたはまだ若い。一族の未来を託すに値する。我等が生き延びることは出来ぬが、未来の守護者達は残る。
次代を託すぞ、ジャッキーよ」
振り向かぬまま紡がれた言葉にジャッキーは震え、
その後キングは一言も話さず、ジャッキーもまた夕陽を眺めた後にその場を辞した。
「終わった?」
厳重に隠蔽された正面玄関にある立派な大理石の柱に背を預けてジャッキーを出迎えたのは、メリル=ケラーである。
朝霧親子を月へ送り届けた彼女は、そのままハワイへ寄り道するジャッキーに付き合って一緒について来たのである。
「一族の本懐と未来を託されてしまいましたよ。非才の身には厳しいものです」
いつもの陽気さは鳴りを潜め、深刻に呟くジャッキーを見て、メリルは肩を竦めた。
「託すに足る人だって評価されてるんじゃない。喜びなさいよ」
敢えて気楽な調子で声をかけた彼女に内心感謝しつつ、ジャッキーもまた笑みを浮かべる。
「そうですな。諸々が始まるには暫く時を要するでしょう。その時に改めて悩むとしましょう」
「そうしなさい。何に悩んでいるか分からないけれど、話くらいは聞いてあげるから」
この日を境に、決して露骨にならないよう慎重に世界の主要メディアやネットワーク上で都市伝説となっている一族の暗躍が取り上げられることとなる。
単なる噂や妄想の類いとして受け止められつつも、徐々にその名を民衆へ浸透させていくように細心の注意が払われた。
それと同時に、一族の若者や子供達は密かに異星人対策室本部へ集められていく。
そして世論に対しては、世界規模で起きている反アードへの弾圧には影の一族が関与しているとの刷り込みを開始。
直ぐに効果は出ない。だが、確実に人々の心へその名が刻まれていく。
全ては人類の未来のために。
「折角ハワイに着たんだから泳ぎたかったわね。水着を持ってくればよかった」
「おや、水着をお探しですか!?ならばご安心を!私は衣類を自在に造り出せるのです!さあ!遠慮なく!」
ジャッキー=ニシムラ(際どいビキニ)は自ら着用していたビキニを脱いで差し出した。
彼の力のデメリットは、自らが着用した状態でしか衣類を創造出来ないこと。
当然ながら差し出されたビキニはジャッキーが着用していたものであり。
「なんてもの見せてんのよッッ!!」
メリルは当たり前のように全裸となってしまったジャッキーの股間を蹴りあげ、ジャッキーもまた恍惚とした表情を浮かべたまま昇った。