星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
サッカーW杯へ招待されたお礼として、盛大な花火で場を沸かせてフラワーハウスを提供したティナ達は、再びドイツ政府の案内を受けて記者会見を開いたホテルへ戻っていた。
フラワーハウスについてはドイツ政府が責任をもって管理することが決まり、研究と観光資源として活用されることも合わせて取り決められた。
まあ、ティナはその辺り無頓着なのでアリアが仲介して取り決めたのだが。
案内されたホテルはドイツ最高級ホテルであり、用意された部屋は最上階にある広い最高級スイートルームである。一応人数分の個室も合わせて個室も準備されていたが。
「私達は同じ部屋に居るから大丈夫ですよ。他のお部屋は使いませんから」
ティナが善意によって謝辞した。セキュリティ面からも一部屋に集まるのが最適であるが、そもそも仲良しな彼女達にとって大部屋で一緒に寝泊まりすることを選ぶのは自然な流れでもあった。
「拡大……もうちょっと広くしますか?」
「うん、余裕がある方がゆっくりと休めるからさ」
用意されていた人数分のベッドを部屋の隅へ移動させて、一番大きなサイズのベッドをフェルが魔法で更に拡大。
全員が横になれる巨大なベッドが爆誕した瞬間である。
「夜だと言うのに、賑やかな街だな。地球人は眠らないのか?」
「夜のお仕事もあるし、今は世界的なイベントの真っ最中だからね」
ベルリン市街を一望できる大きな窓から夜景を眺めるセシリアとティナが言葉を交わし。
「これじゃ足りないわよね。クレア、ちょっと土を増やしてちょうだい。折角広いんだから森みたいにしましょ」
「鉢植えごと拡大すれば、お部屋も汚れませんから大丈夫でしょう。任せてください!」
フィオレとクレアは室内に用意されていた観葉植物を植木鉢ごと一ヶ所に集めて拡大し、ちょっとした植物園を爆誕させていた。
相も変わらぬ異星人娘達のフリーダムっぷりに護衛であるメリルは困ったような笑みを浮かべたが、見慣れた光景でもあるので気持ちを切り替えた。
「じゃあ私は隣の部屋に居るから、何かあったら直ぐに知らせてちょうだい」
「メリルさんもゆっくり休んでくださいね?」
「ええ、そのつもりよ」
護衛として同行しているメリルであるが、気負った様子もなくティナ達と観光を楽しむ余裕まであった。
ホテルそのものはドイツ政府の手配によって厳重な警備体制が敷かれていたが、最上階に関しては完全にノータッチである。
何故ならば、アリアの存在があった。
「マスターメリルもしっかりと身体を休めてください。セキュリティについては、私が担当します」
最上階のフロアには警備ドローンが三機浮遊し、更にアンドロイドボディを得たため使用可能となった魔法による結界まで展開している。
最低限の初歩結界であるが、少なくとも地球上に存在する個人携行火器ではどうにもならないレベルの強度はある。
アリアは油断しない。むしろ過大評価と言えるレベルで地球人を警戒している証拠でもある。
これら万全の警備体制の中、少女達はベルリンの夜景や初めて観戦したサッカーについて語り合いつつ、同じベッドで仲良く眠りについた。
同じ頃、ドイツにある日本の大使館では朝霧外交官が現地大使やドイツ外交関係者との調整に奔走していた。
ティナ達の陥没事故介入やサッカーW杯への飛び入り参加は青天の霹靂であり、混乱し掛けたものの慣れている朝霧外交官が率先して対応に当たることで指揮系統の混乱を何とか回避できた。
「君の手腕には脱帽だよ。何らかの事故や事件が確定で起きると言われた時は、何を言っているのだと正気を疑ってしまったが」
「ティナさんは何らかのトラブルに必ず巻き込まれます。
今回のように、こちらが意図しない行動を取ることも多いのです」
陥没事故に関しては完全に想定外であり、ティナ達が自主的に介入し、結果的には好意的な影響を与えることになった。
とは言え、関係者達を震撼させたのもまた事実である。
ドイツはティナ達の来訪に合わせて治安の悪化を嫌い、隣国であるフランスほど徹底的な弾圧は実施していない。
一部の過激な組織の検挙に止まっており、それすら徹底している訳ではない。
つまり、国内の不穏分子は健在なのだ。
そんな彼等にとって、ティナ達による想定外の行動は肝を冷やすものであった。
合衆国政府や日本政府関係者にとっては慣れたものであるが。
「待ちたまえ、まだ何かあると!?」
「残念ながら、その覚悟は必須です。私も明日合流しますが、彼女達の行動を制御するのはほぼ不可能と考えてください。
少なくともこちらが組んだスケジュール通りに進むことは先ずありません。
これは合衆国や日本で実証されていますから」
朝霧外交官が断言するのを見て大使館に集まった者達、特にドイツ政府関係者は青ざめた。
これまでティナ達が訪問した各国の成功や失敗に関する情報を可能な限り集めて分析し、出来るだけ政治的な意図が濃くならないよう細心の注意を払いつつスケジュールを組んでいるのだ。
その予定通りに進行しないことが大前提となれば、各方面との調整を担当する者達が青ざめるのも無理はない。
朝霧外交官自身の体験から彼等に心の底から同情し、内心エールを送りつつ言葉を続けた。
「重要なのは、スケジュールに柔軟性を持たせることです。私も合流次第メリル女史と一緒に提案と言う形である程度の誘導を図ります。
理想としてはドイツ側が組んだ予定通りに進むことですが、無理そうな場合の候補を幾つか用意してください。
彼女達がどんなものに関心を抱くのかは、全くの未知数ですからね」
「承知した、直ちに検討しよう。ただし、国内にはまだ不穏分子が潜んでいる。
警備体制が万全な場所ならば行動を起こさないだろうが、全く予見しない場所へ移動されたら堪らないな」
「残念ながら、その予想外の結果がパリです。あの一件以降ティナさんも慎重さを持ちましたが、それでも彼女達は空を飛べるし長距離を瞬時に移動する術を持ち合わせています。
残念ながら、万全の警備は不可能です。ある程度の混乱は覚悟しておいてください」
皆が悲壮な決意を固めたその時、不意に朝霧の端末が着信を知らせた。
断りを入れてメッセージを確認すると差出人は日本に残っている妻であり、ネットニュースの概要が記されていた。
具体的には、富士山麓にある地球外技術研究センターの敷地内にまた新たな巨大ロボットが爆誕して大騒ぎになっている様子が記されており。
「そう言えば……フィーレさんが一人で居るんだったな……」
遠い目をしつつ愛飲している胃薬のキャップを外すのだった。