星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
日本、富士山麓に存在する地球外技術研究センター。アードやリーフ由来の技術や品物から社会形態、思想など様々な分野を研究する一大拠点であり、同時に今現在日本で最も有名な観光地である。
その最大の理由は、敷地内に併設された観光センターに存在する数多の巨大ロボット群と鎮座する宇宙戦艦ヤ◯トである。
フィーレの気紛れによって製作されたそれらは、主にリアルロボット系列であるが、最近は二十八番目の鉄人さんが追加されたりと愉快なレパートリーを誇る。
創作の世界に存在するロボットや乗り物が実在する。その事実は世界中の人々を魅了して、毎日大勢の観光客が押し寄せて膨大な経済効果を生み出していた。
この地球外技術研究センターであるが、豪徳寺センター長を筆頭に奇人変人の巣窟であると揶揄される場所でもある。
各界の異端児が集まった組織であることは疑いの余地もなく、豪徳寺自身が敢えて異端児を集めた側面もある。
それは人類史上初めての地球外文明との交流である以上、常識に囚われない柔軟な発想力と対応力を優先した結果、まさに奇人変人ばかりが集まってしまったのだ。
そんな魔境へ、まるで実家へ帰ってきたような気軽さでフィーレがやって来たのだ。しかも彼女を送り届けた姉であるフィオレは、妹を託してさっさとドイツへ向かってしまった。
溺愛している故に自由にさせる。フィオレが地球外技術研究センターのメンバーや日本の治安の良さを信頼している証であるが、当然ながら事態をまるで把握していない日本政府は慌てた。
これまでの経験からアポ無し訪問に慣れてはいるが、まさかフィーレだけを放置するとは思わなかった。
いや、厳密には何度か前例はあるのだが。
報告を受けて嫌な予感しかしない椎崎首相であったが、国会審議の真っ最中だったので途中で抜け出すことは出来なかった。
アード側が面会を求めていたならば口実になるのだが、フィーレが個人的に遊びに来ただけなのだ。
他国ならばそれでも大騒ぎになるが、残念ながら日本人は良くも悪くも異星人が国内に居る環境に慣れてしまっていた。
途中退席する理由としては余りにも弱かったのだ。
結果、見事に初動が遅れた。これは政府内部にティナ達と深い関わりを持つ者が少ないことを意味する。更に言えばフィーレは人見知りの傾向がある。
身内と判断すればとことん素を出すが、少なくとも姉やティナ達が居ない状態で初対面の閣僚と仲良くは出来ないだろう。下手に怖がらせたら後が怖い。
「ふむ?フィーレちゃん、珍しいものを見てるじゃないか。今日はロボットの気分じゃないかね?」
そんな大人達の思惑は一切気にしないゴーイングマイウェイのフィーレは、いつの間にか地球外技術研究センターに作られていた専用の部屋でソファーに座り、いつものように大画面のモニターに映し出された作品を見ていた。
来訪した豪徳寺センター長は、フィーレの見ている作品がロボットアニメではなく、魔法学校を舞台として運命に翻弄された少年を描いた世界的に有名な映画であることに驚いていた。
豪徳寺センター長の言葉にフィーレは振り向くことなく言葉を返した。
「ん……地球にも魔法があるの?」
「いや、これはファンタジー作品の代表作の一つだよ。魔法、つまりは人類の夢が詰まった空想作品だね。
まあ君たちのお陰で、魔法が実在することが分かったんだがね」
「じゃあこれ、全部想像の産物?」
「まあ、そうなるね。気になるかね?フィーレちゃん」
「凄く気になる。魔法が存在しない世界なのに、魔法を想像してしまうんだから」
空想と笑う事は出来ないほど作り込まれた世界観に、フィーレは惹き込まれていた。
魔法に関しても荒唐無稽なものもあったが、同時にアードやリーフの魔法に類似するものも多々あり、そして何より実現すれば便利な未知の魔法まで作中に登場するのだ。
機械に興味を示すフィーレはリーフ人として異質な存在であるが、魔法は日常の一部であることに変わりはない。それ故に強い関心を抱いたのだ。
「おじさん、これ以外にも魔法を扱った作品はある?」
「無論、山のようにあるとも。フィーレちゃんが好きなアニメにも魔法を題材にした作品は一大ジャンルを築く程度には溢れているよ」
「参考にしたいから、アーカイブをまるごと頂戴」
「お安いご用だとも、直ぐに用意しよう」
「代わりにこれあげる」
笑顔で請け負った豪徳寺センター長へ、フィーレは丁度単1電池程度の大きさがあるカプセルのようなものを差し出した。
「ふむ、これは?」
「携帯式核融合ジェネレーター。これは小型で出力は小さいから、地球にある原子力発電所?くらいの出力しか無いけど」
フィーレからの説明を聞いて豪徳寺は目を見開く。核融合炉は既に実用化しているが、様々な問題が立ち塞がって普及には程遠いのが現状である。
それに核融合炉は巨大な設備であり、間違っても乾電池サイズではない。しかも出力は原子炉並みときた。
改めてアードの隔絶した技術力を目の当たりにした心地である。
「こんな貴重なものを……良いのかね?」
「貴重?携帯型ビーム兵器のカートリッジに使われる程度のものだよ?」
フィーレは不思議そうに首を傾げた。核融合の技術は、アードにとって既に枯れた技術でもあるのだ。
つまり、ありふれた技術であり提供することに何の問題もない。
「ビーム兵器の?それはロマンがあるね」
「地球の理論に合わせて改良してるから、これを解析したら技術革新が起きると思うよ。安全装置付きだからだいじょーぶだよ」
「有り難く頂くよ。地球人類のために役立てると誓おう。何なら血判しよう」
「要らない。もっと魔法の作品を見せて」
「もちろんだとも!」
その後、フィーレは椎崎首相が慌てて駆け付けるまで豪徳寺センター長と一緒に映画や様々なアニメを視聴して、魔法への応用を考えた。
とは言え、本格的な魔法学は幼い彼女にとって完全に専門外なので作品群はアーカイブとしてアードへ持ち込まれ、魔法学に革新をもたらすこととなる。
これら地球の作品から着想を得た魔法や技術については、地球側に敬意を示して“テラ理論”と呼称されることとなる。
「ああ、遅かったわ……」
到着した椎崎首相が見たのは、テンションが爆上りしたセンター長を含めた職員達に煽てられたフィーレがクラフトした巨大なロボットであった。
具体的には、ゴッドなボイスで攻撃する勇者さんである。