星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
何だろう、日本でまた大変なことが起きてるような気がする。だけど気にしないことにした。
少なくとも不利益になるようなことにはなっていないと思うし、日本関係のニュースは見ないことにした。
いやまあ、現実逃避だけどさ。
クレアと一緒に早朝のベルリンを眺めたけど、やっぱり近未来的に見えるね。たくさんのドローンが飛び交っていたし、稀にだけど空を飛ぶ車も見かけた。
まだまだ普及していないし、極一部の富裕層や緊急車両しか取り扱っていないみたいだけど、それでもロマンがある。アードとの交流が進んだら、誰でも気楽に乗れるようになると良いな。
で、ちょっとテンションが上がってクレアと一緒に空中散歩をしようかなって考えたんだけど、直前でフェルの悲しそうな顔が頭に浮かんで止めた。
なんだか嫌な予感もしていたし、この判断は間違いじゃないはず。
衝動的な行動は迷惑を掛けてしまうからね。今まで何回もやってるから今更だけどさ。
余談だが、もしティナがクレアと一緒に遊覧飛行をしていたら反アード過激派の襲撃を受けていた。
無自覚な未来予知によって、危険を回避したのである。閑話休題。
「本日最初の目的地は、現地に現存する古い要塞であるノイシュバンシュタイン城であるとの連絡が届きました。
現地へは直接向かうと返答しておきました」
アリアがドイツ側からの連絡を知らせてくれた。メリルさんにお願いしたのは早朝だったけど、対応してくれたみたいだ。
無茶なお願いだったし、別にお礼を準備しないといけないなぁ。
「“トランク”や“医療シート”以外の贈り物でも喜んでくれると思いますよ?」
「それが難しいんだよねぇ」
“トランク”や“医療シート”は地球にとっても破格の価値があるのは間違いない。
でも“トランク”については完全に普及したら、価値が無くなる訳じゃないけど取引量は減るんじゃないかな。
交易に詳しい訳じゃないけど、ハリソンさんや美月さんからも他の交易品についてそれとなく言われてるみたいだし。
……あっ、私じゃなくてアリアにね。私に言わない優しさがちょっと悲しいけど、よく分からない部分は分かる人に丸投げだ。適材適所って言葉もあるし。うん。
「ドイツ側は車両を手配していたけれど、現地へ直接転移するでしょう?アリアが伝える前に伝達してるから、迎えは来ないわよ」
「ありがとうございます、メリルさん」
移動手段を色々手配してくれるのは嬉しいけど、現地へ直接行ける方法があるんだからその方が楽だ。地球側だって手配する手間も省けるし。
……前世でちょっとだけ関わった交通規制や整理は滅茶苦茶大変で面倒だった記憶がある。
それが少しでも無くなるんだから、地球にとっても悪いことじゃないはず。
「じゃあ、出発しようか。集合場所はここだね」
予めドイツ側が指定してくれた場所の映像を見て、イメージを固定する。一緒に行くメンバーはフェル、クレア、セシリア、そしてアリアだ。
フィオレはフィーレが心配だからと言って朝食を食べた後、スターファイターで日本へ行っちゃった。くれぐれも変なことをさせないように言ったけど、手遅れだろうな。
だから代わりに娯楽の提案をしてみた。折角実物があるんだから、それぞれのコクピットを忠実に再現したシミュレーターを作るようにお願いした。
で、上手い人には実物を体験して貰うって感じで。もちろん色々規制する必要はあるから、実物の操縦については要検討だけどさ。
でも、アニメのロボットを実際に動かせるのは間違いなくロマンだ。人気が出るはずだよ。
「みんな、準備は良いかな?」
「いつでも大丈夫ですよ」
「イメージ出来ました!」
「問題ありません」
「地球の砦か、今から楽しみだな」
「あら、私も一緒で良いの?」
「もちろんです!」
メリルさんも含めて皆で手を握り合って目を閉じる。
「「「転移!」」」
目映い光に包まれて、少女達はその場から消えて現地へ飛んだ。
転移した場所はノイシュバンシュタイン城の正門前である。
普段は観光客で賑わい混雑しているが、この日だけは終日城内の見学ツアーは中止。周辺も警官が立ち並ぶ物々しさに包まれていた。
とは言え全面的な立ち入り禁止までは行われておらず、規制線の向こう側に集まった報道陣や観衆の大歓声と共に迎えられたティナ達も驚いていた。
「此処にもたくさんの地球人が……」
「事前にリークされてたんだろうなぁ」
取り敢えずティナとフェルは笑顔で手を振り、アリアも見習って手を振りながら周囲を警戒。メリルも少し離れて警戒を始めた。
「皆さん、お久しぶりです」
「朝霧さん!お久しぶりです!」
彼女達を出迎えたのはようやく合流できた朝霧外交官である。
予定ではドイツ側のガイドも一緒に来るはずであったが、そちらは中止となった。
直前でガイドの制服や認識章が一組紛失していることが発覚。
単なる過失による紛失の可能性もあったが、同時にテロの可能性も否定できなかったので急遽中止となった。
「ノイシュバンシュタイン城、地球分類の中世に建設されたものではなく、地球歴十九世紀頃に当時の統治者によって建設された城塞となります」
幸いにして、アリアの存在によりガイドの必要性も無かったことも中止の要因となった。
「ふむ、石材を主に使っているわけだな。ただ、窓が多いな。この辺りは文化の違いが出るな」
「ゼバにも要塞があったの?」
「これ程の規模じゃないが、里を守るための砦は幾つかあったぞ。主に飛行生物が相手だったから、地球の要塞とは作りは異なるが」
アードやリーフの要塞は空からの攻撃に対処することが大前提であるため、地球の要塞とは設計思想が異なる。
とは言え、中の荘厳な作りはティナ達を感嘆させるのに充分なものであった。
「嗚呼、この狭くて密閉された空間……これこそが要塞です!地下に無いのはちょっと不安ですが」
クレアもまた城壁に触れて、様々な調度品を前にしてうっとりとした表情を浮かべた。
ただその表情が余りにもアレな感じであったため、一部の紳士淑女のナニかを大きく刺激してしまう副作用を発生させたが、ティナ達が預かり知らぬことである。
「こんなにも素敵なお城、模範しなければ礼に反します!最大限の敬意を示して!」
「ちょっと待ってクレア!!」
ティナが止めるも間に合わず、巨大な魔法陣がノイシュバンシュタイン城の近くにある平原に現れて。
「地の精霊達よ!さあ、お仕事の時間です!模擬創造!」
まるで3Dプリンターのように、ノイシュバンシュタイン城のような城を生み出してしまい関係者を卒倒させて観衆を驚かせる珍事が発生。
「……え?これ私が悪いの?」
「監督責任です」
「そっか~……ごめんなさい」
久しぶりにティナ渾身の土下座が披露されたのだった。