星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
ティナ達がやっぱりドイツで盛大にやらかしている頃、我等が銀河一美少女ティリスちゃんは親衛隊を呼び寄せて合衆国にある国連本部へやって来ていた。
まるで軍隊のように規律が保たれた、屈強な男達によって構成されるティリス親衛隊。
周囲に目を光らせる彼等の姿は実に安心感と頼もしさを与える。往々にしてこの様な者達は周囲を威圧するような効果も副産物として現れてしまうが、彼等の服装が全てを台無しにしていた。
下半身はミリタリーズボンとブーツで固められているが、上半身はド派手なティリスのイラストが前後にデカデカとプリントされたTシャツとバンダナ姿であり、その姿は秋葉原に生息する由緒正しき勇者達を彷彿とさせるものであったのだ。
別の意味で近寄り難い雰囲気を醸し出しているが、日本人及び志を同じくする勇士達は親近感を覚えていた。
親衛隊が厳重に警戒する中、国連本部にある小会議室の一室でハリソン大統領、チャブル首相、ティリスちゃん、ザッカルによる四者秘密会談が開かれていた。
議題は、当然ながら数日中にアードへの帰路へ同行する国際外交団についてである。
既に団長としてジョン=ケラー、サポート役としてジャッキー=ニシムラ(勇者)、アード側から地球代表大使に任命された朝霧外交官が内定済み。合衆国と日本はそれ以上の人員を派遣しない。これは他国への配慮であった。
「以前宣言した通り、我が国は外交官を派遣しない。
そもそも異星人対策室のメンバー、より具体的にはケラー氏と朝霧氏が参加している時点で目的は達せられる。
これは地球へ向けてのパフォーマンスに過ぎない」
最初に口を開いたのは、チャブル首相である。ブリテンは早々に外交団参加の辞退を表明していた。
理由としては、まさに先述の通りである。
「我が国としてもケラー室長とニシムラ補佐官のみを派遣する。日本も朝霧外交官だけだ」
ハリソンもまた人員の追加を否定した。
「馴染み深い方々が居るのは心強い。我々としても歓迎の準備を整えている。女王陛下との謁見も叶うだろう」
「女王陛下も地球人は興味を抱かれていらっしゃるからね☆
問題は他のメンバーかな。どうなったの?ハリソン君」
「議論が尽きませんでしたが、ようやく決まりましたよ。我が国と日本以外の参加者はアジア代表として中華が代表団を組織しました。
最初は数十名の派遣を提案されて減らすのに苦労しました」
「以前来訪したエジプトも中東連合の代表として外交官を派遣する。
ヨーロッパ代表としては、ドイツとフランス、イタリアが有力だったが最終的には派遣しないことに決したのだよ」
チャブルは笑みを深め、ティリスもまた笑顔になる。
「ありゃりゃ、怖くなっちゃった?☆」
「パリでの惨劇を目の当たりにしたからね。再び問題が起きれば今度こそ滅ぼされる。
その様に主張する一派がマスコミを巻き込んで派手に騒いだ結果だよ」
「その主張を過激派が利用して活動を活発化させているのは皮肉なものですが」
弾圧には反発が発生するのは世の理である。
事実として、フランスの断固とした弾圧は治安回復と意思統一に一役買った。
しかし同時に息を潜めた過激派達はより先鋭化して、不穏の火種が燻り続ける結果を生み出した。
何とも言えない空気が室内に流れたが、ハリソン大統領がため息混じりに口を開いた。
「とは言え、誰も派遣しないのはアード側へ無用な不信感を与えてしまいます。
そこでヨーロッパ各国は協議の末に、EUの代表として使者を派遣することに決まりました。
形式上はどの国にも属さない中立の立場としての参加です」
「それさぁ、逆に失礼だよね?☆」
「残念ながら押し付け合った結果だよ。我が国にも打診してきたくらいだからね。
無論、辞退したよ。我が国は当初から一貫して参加しないと表明していたからね」
このブリテンの行動は国際的な孤立を招く可能性があり、外交上手として知られるブリテンの真意を各国は図りかねていた。だが、それも無理はない。
既にチャブル首相は未来を見据えて動いており、ティリスを介してアードと強い関わりを持っているのだ。
これは公表されておらず、ティリスの要望もあってセキュリティはアード基準であり情報が徹底的に遮断されていた。
これによってブリテンとアードの密かな繋がりを知るのは極一部だけである。
「随行員も含まれますから、最終的には十人を越えることになりますが、問題はありませんか?」
「ありません、ハリソン首長。今回私が率いてきた艦隊、まあ大半は無人のフリゲートですが、それでも百名以上は問題なく乗せることが可能です。
滞在中の食事に関しましては、地球からの持ち込みとなってしまいますが」
アードの栄養スティックが与える影響については、メリルの例もある通り完全に未知数である。
何よりも無味無臭の栄養スティックのみの食事は、地球人からすれば拷問に等しい。
そこで今回は地球へ帰還するまでの食事に関しては、完全に地球からの持ち込みとなっている。荷物の運搬はアード側が好意によって準備した“トランク”が利用されることになったので、極めて楽なものとなった。
「じゃあ、その日に揚陸挺で皆を乗せて、宇宙でザッカルちゃんの船に移乗すれば問題ないね☆」
プラネット号やザッカル達が乗ってきたハンマーヘッド級駆逐艦は大気圏内航行能力を持たない。
揚陸挺とは、フィーレ監修の下建造されてザッカル達が地球へ降下した際に利用したUFOである。比喩ではなくそのまま円盤形UFOなのである。
話が佳境へ向かいつつある空気の中、扉がノックされた。
ハリソンが入室を命じると、ティリスちゃん親衛隊の一人がキビキビした動きで入室し、直立不動となる。
「失礼いたします!只今連邦大統領の代理人が到着しました。
会議中であることを伝え、用件を問いましたところ、連邦からも外交団へ参加者を出すとの事です」
「なんと、連邦が!?」
「ほう?」
ハリソン大統領は驚き、チャブル首相は興味深そうに目を細めた。
「連邦は誰を送り込むつもりなのかな?☆」
「はっ!我等が同志、イワン補佐官であるとの事!詳細は明日予定されている首脳会議にてお伝えしたいと!」
ティリスによって目覚めた(意味深)のイワン補佐官の参加。表向きは体調不良による休養中であるが、実際には連邦内部で親アードの急先鋒として暗躍している。
ハリソン大統領は連邦の真意が分からず困惑し、事情を知るチャブルは笑みを深め、ザッカルは新しい客人を素直に喜び、ティリスは入室してから終始自分を見つめ続けている親衛隊員の顔面にドロップキックをお見舞いした。
隊員の顔は幸福に包まれていたと言う。