星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
予想はしていたけど、やっぱりフィーレを野放しにするとやらかすなぁ。
まあ、害にはならないから問題ないよね。
「艦のカテゴリーが強襲揚陸艦に分類されると知り、中華政府が日本の軍国主義再来の兆しであると非難声明を出しています」
「やっぱり影響があるじゃん!
ごめんなさい、美月さん」
アリアからの報告を聞いて、傍に居た美月さんに頭を下げた。
「問題ないわ、ティナちゃん。難癖を付けられるのは日常茶飯事だから」
美月さんは知っているでしょう?と言わんばかりの苦笑いを浮かべていた。その辺りは前世の頃から変わっていないらしい。
世界中が平和になるのはまだまだ難しい。
アードの存在が、世界平和の一助になるんじゃないかなって期待していたんだけど。
「心配しなくても大丈夫よ。最近は領空領海侵犯やEEZ内の嫌がらせも無くなっているわ」
「そうなんですか?それなら良いけど」
言うまでもないが、ティナ達の存在が強力な抑止力となっている。閑話休題。
「まあ、これについては任せておきなさい。外交団については朝霧外交官を派遣することになったわ。それとちょっとだけ良い?」
「大丈夫ですよ。フェル」
「サイレント!」
「ウォール!」
意図を汲んでくれたフェルが私達の周りに遮音結界を張ってくれて、クレアが土のドームで私達を囲ってくれた。これで安全に会話できる。
「ありがとう、ティナちゃん。朝霧さんの息子さんだけど、今回も連れていくのよね?」
「はい。ティルが待っていまして」
妹の我が儘を聞いてあげるのも姉の仕事だ。何より、自分の出生の秘密を知っちゃったからね。
下手に断れば日本の立場が悪くなるかもしれない。それだけは避けないと。
「朝霧外交官も一緒だから良いとして……美咲も連れていくの?」
「そのつもりです。やっぱり本星でしっかりと検査した方が良いと思いますから」
月の居留地の設備も悪くないけど、美咲ちゃんは地球人からリーフ人に変わっちゃったからね。
アードとしても前代未聞の事態だし、本星でしっかり検査した方が良い。
幸いお母さんがそちらの方にも顔が利くから、直ぐに手配してくれたらしい。
「そう……ありがとう、ティナちゃん」
「いえ、私達の失敗だから責任は取らないと。美月さんにも寂しい思いをさせてしまって、ごめんなさい」
リーフ人となってしまった美咲を公にするわけにはいかず、それ故に美月も美咲に会えていない。
「貴方は美咲の命を救ってくれたのよ。文句を言うつもりは全く無いわ。
それどころか、感謝の気持ちで一杯よ。親子で助けられるなんて、まさしく奇跡ね」
「あはは……私も美月さんと再会できて嬉しいですよ」
元気なら良いと考えてたら総理大臣だったからなぁ。その辺はビックリしたけど。
あっ、そうだ。
「まだ日にちはありますし、美咲ちゃんと会いませんか?
あの日からほとんど会えてませんよね?」
日程次第だけど、往復だけでも半月は掛かるからなぁ。しばらく会えなくなるし、美月さんだって寂しい筈だ。もちろん美咲ちゃんも。
今も月で魔法やリーフ人についての勉強を頑張っているけど、やっぱり十代半ばの女の子だ。寂しくない筈がない。
「もちろん美咲には会いたいけれど、簡単にはいかないでしょう?」
確かに月へ来るにはジョンさん達の協力が必要だし、直ぐ話題になる。美月さんが月へ来たなんて知られたら大問題になる。
でもそれは表向きの手段を使った場合だ。
私達にそんな制約はないし、何より私個人でも地球と月を転移で気軽に行き来できることが分かってる。
……フェルの事をチート呼ばわり出来なくなった事実にビックリしたよ。
神様、転生特典は有り難いけど、もう少し気楽なもので良かったんだよ?制約と責任大き過ぎない?
「美月さんが良かったら、何時でも連れていけますよ?」
もちろん今すぐ無理だ。
いや、連れて行けるけど美月さんが急に居なくなったら大騒ぎになる。私だってそれくらいは学習したんだ。
「ありがとう、ティナちゃん。気を使わせてしまったわね。明日は予定が無い日だから、今夜お願いできるかしら?」
「もちろんです!今夜お迎えに行きますね」
総理大臣だから完全な休日なんて存在しないんだろうなぁ。緊急の案件なんて何時来るか分からないし、何より日本は災害大国だ。
真夜中の大地震で飛び起きて、翌日職場の店舗で商品が全部床に散乱していた時は気が遠くなったものだよ。
まあ、あの時はそれ以外に被害が無かっただけ私はマシな立場だけどね。
総理大臣ともなれば、災害以外にも緊急対応が必要なことは山ほど有るだろうし、不安になる。
「……ちゃんと休めていますか?」
「ええ、心配してくれてありがとう。中々休めない立場だけど、この身体になってから疲れ知らずなのよ?若さって偉大ね」
「それなら良いけど……あんまり無理はしないでくださいね」
「ええ、無茶はしないわ。貴女を悲しませたくはないし」
美月さんは頑張り屋さんだからなぁ。多分無茶をするだろうけど、今の身体なら若さに任せて何とかなるのかな。
単なる若返り以上に色々強化されてるっぽいし。
……っと、いけない。
「ゆっくりとお話をしたかったんですけど、それはまた夜にしましょう」
「ええ、時間が空いたらまた連絡するわ。またね、ティナちゃん」
フェル達に合図を送って土のドームと魔法を解除して、私達は別れた。また夜に迎えに行かないとね。
「総理!ティナ大使との密談が行われましたが、何についてのお話ですか!」
ティナ達と別れて官邸へ戻った椎崎首相を、報道陣が取り囲む。
ティナとの密談を知られた故であるが、椎崎首相は笑みを浮かべたまま返答した。
「密談だなんてとんでもない。ただティナちゃんとお話をしただけです。
完全なプライベートなので、内容についてはご容赦くださいませ」
「それでは、国民に対する説明責任を果たしていない事になりませんか!」
「既に中華と半島政府より、密会に対する抗議声明が出されていますよ!」
「アード関連法案に関する事では無いのですか!」
「国民には知る権利があるのですよ!」
「新たに地球外技術研究センターに出現したロボットについての説明責任も果たしていませんよ!
周辺国より懸念が表明されています!」
詰め寄る報道陣を前に、椎崎首相は笑みを崩すことはなかった。それはある種の余裕であった。
ティナとの個人的な付き合いは、国民に広く理解を得ているのだ。
そして、下がることの無い圧倒的な支持率が彼女の親アード政策を後押ししている。
「ティナちゃんは今回建造したロボットや艦船について、これまで通り我が国へ譲歩すると言ってくれました。
詳細につきましては改めて公式ページに記載します。引き続きこれらも展示する予定ですので、是非とも現地へお越しになってください」
記者たちには答えず、カメラの向こう側、国民へ直接答えて彼女は官邸の奥へと歩みを進めるのだった。