星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
月へ戻ったティナ達はアードへ帰還するための準備を始めた。既に地球側が用意した交易品である大量の食料はもちろん、他にもティナが要望した各種美術品やコットン製品、工芸品なども“トランク”へ収納していく。
食料品以外の交易品は地球からの強い要望であり、以前持ち帰った絨毯などは大変好評であったこともあって、ティナとしても様々な可能性を考えた結果である。
つまるところ、何がアード人の感性に引っ掛かるか分からないのだ。
ちなみにリーフ人については、地球の産物に触れようとしないので考慮されていない。
若い世代のリーフ人の中には関心を持つ者も少なくないが、一族の方針となれば逆らうわけにもいかないのだ。
「遠くない未来、彼らにも外の産物を見せてあげられるようにしてあげたいね☆」
ティリスはミドリムシこそ蔑視しているが、一般のリーフ人には好意的であり、ミドリムシのために不便を強いられている若い世代を気の毒に思いなんとかしてあげたいと動くほど気に掛けている。
アード人にとって、ミドリムシ以外のリーフ人は共に歩む友なのだから。
「フィーレは何か必要?」
「ん、アーカイブに全部保存したからだいじょーぶ」
フィーレは地球外技術研究センターの面々やネットに生息する紳士淑女達が厳選したロボットアニメ、SF映画、魔法を題材とした作品等を研究資料としてアーカイブへ保存している。
このフィーレが持ち帰った作品群はテラアーカイブへ記録され、貴重な資料としてアードの技術者達に多大なインスピレーションを与えることとなる。
「済まないな、ティナ。個人的な興味を優先してしまった」
「良いよ、セシリアが色々興味を持ってくれたんだから」
セシリアは地球の武具、特に骨董品扱いである刀剣類に強い関心を抱いた。
セシリア以外にも月に滞在しているゼバ星系の生き残り達も強い関心を持ち、更に以前来訪していた近衛兵達も関心を示していたのでお試しとしてそれなりの数を輸入することとなる。
その他にもクレアが選んだ多種多様な酒類とフィオレが要望した地球のあらゆる植物のデータ、苗、種等もアードへ持ち帰る品物に追加された。
ちなみにフェルは特に何もない。ティナも勧めてみたのだが、フェルは変わらずに無欲である。
より具体的に言えば、ティナが側に居る今の生活が続くならば何も望まないと言うのが真相なのだが。
準備を進めつつ、約束の時間となったのを確認したティナは初めて単独で地球へ転移し、誤差が生じることもなく無事に日本の首相官邸の総理執務室へ辿り着くことが出来た。
そこで準備をして待っていた椎崎首相と合流し、再び月へ転移。
ティナは月と地球を短時間で往復したにも関わらず、全く疲れていない自分に内心驚いた。
「美月さん、ゆっくりしていってください。私も近くに居ますから」
「ティナちゃん、忙しそうなのにわざわざありがとう」
「あっ!お母さん!」
「美咲!」
月へ辿り着いた椎崎首相は、そのまま訓練所で学んでいた愛娘と再会を果たす。
美咲はリーフ人の伝統衣装である若草色のワンピースに身を包み、羽根を使った飛び方も随分と様になっていた。
彼女は文字通り母へ飛び付き、椎崎首相もまた愛娘を真正面から受け止めた。
親子の微笑ましい光景を周りのアード人やリーフ人達は、優しげな笑みを浮かべて見守っていた。
ティナとしてもこの光景をずっと見ていたかったが、やることもあるのでこの場をセシルに任せて大使館へ移動した。
「これはティナ大使、まさかお会いできるとは光栄です」
「いえいえ、いつも定期連絡ありがとうございます」
居留地の入口付近に用意された地球大使館。そこには近くに有る地球の月面基地から定期的に連絡員が派遣されている。
今回も大使館へ連絡員がやって来たと報告を受けたティナは、セシルの代わりに連絡員と面会したのだが。
「まさか連絡員さんがジャッキーさんの弟さんだなんて思いませんでした」
ティナは対面に座る物腰の柔らかな青年、タケシ=ニシムラを見て苦笑いを浮かべた。
この人選が自分に対する配慮であると分かるくらいには鈍くないし、事実として居留地への立ち入りが認められている数少ない地球人として、能力に問題がなく更にティナと面識があるジャッキーの弟が選ばれたのは当然とも言える。
「非才の身ではありますが、選ばれたからにはしっかりと役目を果たす覚悟でありますよ」
笑みを浮かべるタケシであるが、実際のところ連絡員の必要性はほぼ無い。
何故ならば、自由に地球と居留地を行き来できるジョン=ケラー、メリル=ケラー、カレン=ケラーが居るのだ。
連絡や物資のやり取りなどは、月面基地を介する必要はない。連絡員制度は、対外的にジョン達を守るための方便に過ぎない。
定期的に居留地に有る大使館へやって来ているが、やっていることは現地のアード人やリーフ人と雑談しているだけである。
対外的には交流促進のためと大袈裟に発表されているが。
「あんまり無理はしないでくださいね、タケシさんの身に何かあったらジャッキーさんも悲しむから」
技術の発展により月面を疾走する多目的車両が開発されて配備されているが、それでも絶対に安全が保証されているわけではない。
最終的には月面基地と居留地を巨大なトンネルで繋げる計画が立てられているが、地球側の意思統一が為されていないので工事も保留となっている。
「ご心配頂き、感謝します。兄から聞いた通り、貴女は優しい方だ。
さて、このままゆっくりと雑談を楽しみたいところですが先に用件を済ませてしまいましょう。今回是非ともお会いしたいと申し出た理由は、貴女への届け物を預かっているからです」
笑みを浮かべたまま差し出されたのは、綺麗なラッピングが施された箱である。
四十センチ四方のそれなりに大きな箱を受け取ったティナは、首を傾げながらも断りを入れて箱を空け、眼を輝かせた。
「兄から聞きましたが、以前から貴女が要望していた品の試作品がようやく完成したとか」
「本当に作ってくれたんだ!!」
そこに入っていたのは、以前からティナが熱望して合衆国の靴メーカーが総力を挙げて作り上げたスポーツサンダルであった。
目を輝かせるティナを微笑ましく想いながらその様子を激写するタケシ=ニシムラ(白鳥コス)であった。
何かと足を怪我してるし(  ̄- ̄)