星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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技術に関する問題

「では、こちら側が最大限の注意と規制を用意しなければならない。

 貴方はそう言いたいのだね?ドクター」

 

 

 

「はい、大統領閣下。まさしく仰有る通りです」

 

 

 

 合衆国首都ワシントンに鎮座するホワイトハウスの大会議室には、ハリソン大統領を始めとした政府首脳陣が集まり、壇上には異星人対策室の技術部門を統括するエドワード博士が立っていた。

 あらゆる分野の博士号を持つこの変わり者の老博士は、フィオレ、フィーレ姉妹からおじいちゃんと呼ばれ親しまれている人物である。

 時折色んな意味でやり過ぎておかしなことをやらかす事もあるが、概ね常識人と言えるだろう(ジャッキー基準)。

 そんな彼がホワイトハウスで開かれているアード問題定例会議に参加しているのは、ある種の注意喚起を行うためである。

 名だたる官僚や閣僚達が集まる中、エドワード博士はハリソン大統領が頷きつつ続きを促すのを確認して言葉を続けた。

 

 

 

「友好条約の締結と今回の外交団派遣によって、地球とアードの交流は加速していくでしょう。

 現時点でも、外交団帰還に合わせて複数のアード人やリーフ人が月へ移住してくることが確定していますからな」

 

 

 

 これはティリスの呼び掛けによるものであり、新天地を夢見る若いアード人達を募集していたのだ。

 既に十数人の若い男女が志願しており、ティリスはそこにリーフ人も加えるように要請していた。

 ミドリムシへの有効打を揃えつつある現状ではあるが、それ故に若いリーフ人達をミドリムシの呪縛から解き放ってあげたいと言う彼女の想いが反映された提案である。

 これによって、主にドルワの里と交流する機会があった若いリーフ人は男女数名が参加することとなる。

 彼らは日頃から閉鎖的な里での暮らしに辟易としており、近々ドルワの里へ居を移そうと密かに画策していたのだが、どうせならば新天地を目指そうと勇躍志願したのである。

 その結果、次回来訪時には二十名前後のアード人やリーフ人が月の居留地へ加わることが確定しており、地球側にも事前に通達されていたのだ。

 

 

 

「うむ、歓迎すべき事だな。ルール制定の労はあるが、そちらについても有識者会議を召集して検討を続けているよ。

 リーフ人については資料が少ないので難儀しているが」

 

 

 

 何せ交流に積極的なリーフ人はフェルとフィオレ、フィーレ姉妹くらいなものだ。

 月にはゼバ星系の生き残りであるリーフ人の男女七組十四名が居るものの、彼らは出産を控えている或いは産後の育児に専念しているため地球側との交流は全く無い。ジョンですら交流が少ないのだ。

 もちろんゼバ星系の生き残り達を率いるフレストも居るが、彼はアードへ逃れた同胞達の現状を正確に把握していないため、地球側へ混乱を与えてはいかんと沈黙を保っている。

 対するアード人はこれまでのティナの活躍やザッカル達の来訪、更にティナが惑星アードでの暮らしぶりや文化などを積極的に配信しているので情報は多い。

 

 

 

「はい、大統領閣下。しかしながら私が懸念しているのは、技術面にございます」

 

 

 

「技術面?」

 

 

 

「はい。これまでの交流によって、アード人が高い善性を持つ種族であることが判明しています。

 そして彼らは、無秩序に我々へ先端技術を提供しようとするでしょう。完全な善意と共にです」

 

 

 

 大半のメンバーは疑問符を浮かべたが、多少なりとも技術に理解がある者達の顔が青ざめた。

 そして幸いなことに、ハリソン大統領は理解がある人物であったことだ。

 

 

 

「ドクター、貴方の懸念は……」

 

 

 

「ご賢察の通りです、大統領閣下。

 フィーレ君……いえ、フィーレ嬢から提供された技術の一つ、パルスドライブシステムでさえ我々が今後数十年、下手をすれば百年後であろうと実用化出来たか怪しい水準の技術なのです」

 

 

 

「それを彼女達は無償で提供した……」

 

 

 

「はい。我々が輸出している食料品だけでは、到底足りないレベルの技術供与です。

 それと、こちらをご覧ください」

 

 

 

 エドワード博士が掲げた右手首には、青色のブレスレットが装着されていた。

 

 

 

「これはフィーレ嬢やフィオレ嬢がお世話になっているからと、ティナ嬢から無償で提供された端末です。

 我々地球人が扱えるように改良し、尚且つ大幅なダウングレードが施された品です。

 ですが、我が異星人対策室にある地球でも最高峰のセキュリティシステムをものの数秒で突破してしまったのです」

 

 

 

 エドワード博士の言葉に、皆が戦慄を覚えた。

 

 

 

「しかもこれほどの品を、ティナ嬢は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()で私にプレゼントしてくれたのです。

 この意味を、この場にいらっしゃる皆様ならば良く理解していただけると確信しております」

 

 

 

「そんなにも危険なものを気軽に譲渡してくる存在が山ほど来るのか……」

 

 

 

「ええ、彼らは完全な善意で惜しみ無くオーバーテクノロジーの産物を提供してくるでしょう。

 徹底的な規制を敷かなければ、容易く社会が崩壊する事になります」

 

 

 

 オーバーテクノロジーの無秩序な提供は、間違いなく地球社会に甚大な影響を及ぼす。しかもそれらが善意によってなされるのだ。

 それだけではない。安易な技術提供は、地球の健全な技術革新を妨げる要因ともなる。

 地獄への道は善意によって舗装されていると言う言葉はあるが、アード人との交流には常に付きまとう問題であり、エドワード博士は早急な対処の必要性を説いたのだ。

 ちなみにアードは技術提供を行うが、後は丸投げのスタンスである。

 無責任だと糾弾することも出来るが、アードとしては技術をどう扱うかは相手次第であるとの認識の下に提供しているのだ。

 悪用すると言う発想が無いアード人の倫理観を大前提としているので、アード人からすれば問題点を理解出来ない。

 

 

 

 改めて交流によって起きる大問題についての危機感を共有した合衆国政府は、同じ警告を各国と共有しつつ関連した法整備を急ぐこととなる。

 取り敢えず、アード人が地球へ持ち込む技術を規制する方向で調整することとなり。

 

 

 

「出発直前で申し訳ないが、地球社会の安寧と健全な発展のために何としてもアード側に我々の危機感や懸念を理解して貰いたい。

 その為にも、今回の旅路で何とかアード側の説得を成し遂げてほしい。どうか、お願いします」

 

 

 

 いきなりホワイトハウスへ呼び出されてハリソン大統領に頭を下げられたジョン=ケラーは。

 

 

 

「お任せください。ティナと連携して、必ずやアード側の理解を得て参ります」

 

 

 

 携行している水筒に入った胃薬をイッキ飲みして快諾したのである。

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