星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
異星人対策室所長であり国際外交団を率いる団長となってしまったジョン=ケラーだ。
前回の使節団は帰心の知れた身内だけだったが、今回は国際色豊かな編成となっているので責任も重大だ。何せ何かあればそのまま国際問題へと発展してしまうのだから。
だから私は、出来る限り参加するメンバーとの交流に時間を割いた。コミュニケーションは大切だからね。
幸いにしてメンバーは代表として抜擢されるだけあって、人柄も良く安心したのは内緒だ。
今回の旅路にカレンは参加しない。個人的には参加するものと思っていたから驚いた。
理由としては、地球でアードの理解を得るための活動に専念したいのだそうだ。
カレンは自分の知名度を活かして熱心に動画配信を続けている。
内容としては主にティナ達との交流で得られた何気無いエピソードを語るものだが、報道されない年相応の少女達による微笑ましい日常の様子は人気を博しているらしい。
ただ、知名度の高さはそのまま危険にも繋がる。父として不安はあるのだが。
「大丈夫よ、パパ。お姉ちゃん(メリル)も居るし、何より私は強いんだから!
それに、あんなに頑張ってるティナ達の事をもっと皆に知って欲しいの!私は、友達として出来ることをしたい!」
……小さかったあの子もいつの間にか立派になったものだ。
子供の成長は早いと言うが、瞳に秘められた意思の強さは、亡き妻を彷彿とさせる。いかんな、歳を取ると涙脆くなる。
決意を聞いたティナが喜びながらも、寂しそうにしていたのが印象的だった。彼女達にとってもカレンは大切な存在なのだと再認識できたよ。
「慣れぬ環境故道中なにかと不便を強いることになりましょう。我々も皆様が少しでも快適に過ごしていただけるように尽力します。何なりとお申し付けを」
我々を出迎えてくれたのはザッカル局長と、随行員である十名のアード人の皆さんだ。
「こちらこそ、無作法をお許しください。この旅が相互理解の促進となることを願っています」
私としては二度目ではあるが、それは野暮なことだ。事前にできる限りの情報共有を行っていたが、やはり宇宙となれば勝手が違う。
出発前日に乗船したのは、少しでも環境に慣れて貰おうというアード側の配慮だ。
「あちらの大型艦では無いのですね」
ヤン大使や中華からの随行員達が残念そうにしているな。私がフォローせねば。
「今回は外交目的でありますし、ザッカル局長と打ち合わせや調整をするにはこちらが最適でしょう。
何よりあちらの乗員はティナ大使を含めた年頃の少女ばかりです。男性であり大人である寝泊まりするのは些か不適格ではと考えて私が提案したのです」
実際にはアード側、より正確にはティリス殿からの要望なのだが、それでは角が立つ。私が発案者としておこう。
他のメンバーは納得してくれた様子だが、ヤン大使はまだ不満げだ。
「しかし、前回の使節団では彼方に乗船したではありませんか」
「前回は大型艦だけでしたからなぁ、やむを得ぬ緊急措置でありました。
まあ急な決定でしたからな、その辺りはご理解頂ければと」
ジャッキーが間に入ってくれたな、有難い。
「それは貴国らが秘密裏に行ったことでは?」
「ヤン大使、これ以降地球の政治問題を持ち込まない方が賢明ですぞ。
アード側に不信感を与えては、貴国にとっても不利となる。
アジアには、郷に入っては郷に従えという素晴らしい慣習があるのでしょう?」
「それに、航行中も会議等はあちらの大型艦で行う予定です。
寝泊まりをこちらでするだけですよ、ヤン大使」
母艦に長居させたくはない、それがティリス殿の要望だ。まあ、朝霧少年やミス椎崎が居るからな。無理もない。
……ミス椎崎については、流石に驚かされた。我々も変化した身だが、リーフ人に成ってしまうなんて前代未聞だ。公表するわけにはいかん。時が来るまで沈黙だ。
「それならば良かった。アードへ行く前に、ティナ大使達とも交流したかったので有難い限りです」
ヤン大使もようやく納得してくれた様子だ。何やら作為的なものを感じるのは、先入観故だろうか。
……いかんな、精神をフラットにしなければ。私は団長、公平であるべきだ。
「いよいよ明日には出発しますが、忘れ物はありませんか?ジョンさん」
そう腹を決めていたのだが、いきなりティナから私だけ母艦へ呼び出しを受けた。
文字通り覚悟が空回りしたわけだが、まあ仕方無い。彼女に罪はない。
「ああ、私物はもちろん交易品の積み込みも終わっているよ。
食料品に関しては余剰生産分を買い取っているからね、畜産農家からは感謝されているよ」
数十年前から問題視されているフードロスも、改善の兆しが見えてきた。要は余り物を交易品に混ぜているのだ。
礼儀に反すると考えたが、アード側からすれば食べられるものならば何でも構わないと言われて遠慮がなくなった。流石に残飯は含まれていないがね。
「それは良かった。私達はたくさん食べるから、地球の皆さんの食べ物が無くなるんじゃないかって心配してたんです」
相変わらず優しい娘だ。力関係を考えれば、アードは食料品の献上を求めることが出来るのに、あくまでも対等な関係として地球を見ている。
つくづく、最初に出会った宇宙人が彼らであった奇跡に感謝しないとな。
「今回も色々持ち込む予定だよ。アードの皆さんが喜んでくれれば良いんだが」
「こればっかりは私も分かりませんからね……手探りになっちゃいます」
前世の秘密を知った今なら分かる。本人の言う通り、ティナも完全に手探りだ。
何せ彼女は、地球人としての価値観とアード人としての価値観が融合している。だからどんな品物がアード人の感性に引っ掛かるか分からないんだ。
だが、問題はない。その為に私達が居る。
「大丈夫だ、一緒に色々試してみよう。
幸いアード人の好みと地球人の好みはそこまで解離して居る訳じゃないからね」
「はい!」
ティナとちょっとした打ち合わせとちょっとした雑談を交わして私は船へ戻った。
呼び出しの内容は当たり障りの無い範囲で共有し、我々は明日に備えた。
そして、翌日。
「ゲートオープン!さあ、アードへ帰るよ!」
「畏まりました。ゲートオープン、進路座標設定、惑星アード。これよりハイパーレーンへ突入します」
様々な思惑を乗せて、ティナ達はアードへの帰路に就いたのである。