星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
銀河一美少女ティリスちゃん号の一室に作られている植物園。談話室や乙女の園とは趣の異なる憩いの場である。
アードの艦艇らしく高い天井と広々とした室内にはアードやリーフ由来の様々な植物が植えられ、床にはうっすらと水が張られていた。
中心にはリーフ人の信仰の対象でもある世界樹が聳え立ち、自然を愛するリーフ人達の安らげる場所としてフィーレとフェルが改修を施して完成した部屋である。
アード人であるティナ達も時折やって来るが、基本的にはリーフ人達は暇を見付けては談話室や乙女の園よりも植物園で過ごしている。
尚、大地の結晶たる土が無いのでクレアはあまり関心を寄せず、アード人とリーフ人の特徴を併せ持つセシリアもリーフ姉妹ほどではないが、入り浸っていることが多い。
言うまでもないが、フェルはよほど暇な時やティナが忙しい時以外は彼女の側に居るので、基本的にはリーフ姉妹が体を休める場として利用している。
その植物園の一角に、濡れないように高床式となった小さな茶室が建てられている。
畳張りではあるがあちこちにリーフやアード由来の品もあり、ティナは“なんちゃって茶室”と呼んで微妙な表情を浮かべていたが。
「これは……豊かな風味がしますな。地球由来のものはどれも美味ですが、茶に関しても我々の先をいくとは」
「実に興味深い種族だ。こと食文化に関しては、我々より遥かに発展しているのは疑う余地もない」
「同意します。それにこの畳なる床材もまた心地よいものですし、この家屋もこじんまりとしておりますが、趣がありますな」
「茶室と呼ばれる茶を飲むための部屋を再現したのだ。
食だけではなく、環境にさえ配慮する。侮れないな」
茶室で静かに日本茶を楽しんでいるのは、ティリスとフレストである。
日本茶は椎崎首相がティナへのお土産として用意したものであり、様々な種類がある。彼女達が飲んでいるのは最高峰の玉露だ。
急須を使い、説明書に記された通りに淹れてみた結果、二人はすっかり虜になっていた。
尚、アード人に茶を飲む文化は少なく、リーフ人にはあるが地球程美味ではない。
「ふむ……提督は地球人をどう見ますかな?」
「脆弱だ。マナを持たず身体能力も低く、そして短命だ。
だが、彼らには知恵と勇気がある。数多の困難を、知恵と群れの強さで克服してきた種族だ。
また、未知に対する好奇心も高い。我々は現象を有りのまま受け入れるが、彼等はその本質を追求して自らの糧とする」
ティリスの意外な高評価に、フレストも興味深そうに目を細めた。
「随分と買われている様子ですな」
「当初は野蛮な原生生物と考えた。殿下を説得して、交流そのものを中止するよう女王陛下へ奏上することを考えたのも、一度や二度ではない。
だが、彼等の本質を見た。確かに高すぎる攻撃性や闘争心には注意が必要だ。
他者を蹴落とすことを是とする競争社会は、野蛮に見えるだろう。
しかし同時に、彼等には他者を慈しむ慈愛の心もある。他者へ手を差しのべる献身性もある。
この相反する精神性は実に興味深いし、交流を重ねることで我が一族にとっても良い刺激となる」
「……確かに。無礼を承知で申し上げれば、アードの民は疑う心を知りませんからなぁ」
「無礼ではない、真実だ。私を含めたアード人は疑うことを知らぬ。他者を信じすぎる。故にミドリムシの暗躍を許しているのだ。
……地球人からすれば、獅子身中の虫を放置して排除できない我々を理解できないだろうな」
何処か自虐的な笑みを浮かべるティリスを見て、フレストも茶を飲む。
「提督の懸案も、此度の帰還で少しは晴らせましょう」
「全く無理をする。私としては、お前の帰還はもう少し先にする予定だったが」
フレスト本人の熱望によって、彼のアード帰還は前倒しとなった。
「地球との交流が本格化するに至り、兄達は必ず障害となります。甥であるフリーストは難しいでしょうが、兄達元老院の者達はこの身と引き換えにしても排除する所存。
真相も暴かねばなりませぬ」
確固たる決意を秘めたフレストの言葉に、ティリスも頭を下げた。
「済まない、私が不甲斐ないばかりに」
「提督の境遇を思えば、何のこともありませぬ。
むしろ同胞全てに怒りを向けても良いものを、あなた様は切り離して考えていらっしゃる」
「悪いのはミドリムシであってリーフ人、特に若者達には罪はない。死んでいった皆もそう主張するだろう」
今度はフレストが頭を下げた。真相はまだわからないが、リーフ会戦時にミドリムシ達がとんでもない裏切りを働いたのは状況証拠的にも確定している。
何よりも、唯一の王族であるフェルを受け入れるどころか排除を画策し、更にセレスティナ女王まで狙ったのだ。
族滅を言い渡されても反論できない立場であるが、それでもティリスやアード人上層部はミドリムシとリーフ人を分けて遇することにしている。
甘いと言えばそれまでだが、そのアード人の善性がリーフの若者達の未来を守ったのだ。
「ワシごときではありますが、心からの感謝を」
「私ではなく女王陛下へ感謝しろ。
セレスティナ女王陛下は、フェルシア陛下とのお約束を今も固く護っていらっしゃるのだから」
『一族をお願い』。
セレスティナ女王へ直接届けられた最後のメッセージに記されたこの言葉を、彼女はずっと護り続けていた。
フェルが帰還するまでミドリムシも息を潜めて、アード社会との融和を優先していたこともあるが。
「フェルシア陛下……最後まで我々を……っ!
申し訳ありませぬっ!申し訳ありませぬぅっ……!」
体を震わせ、涙を流すフレストをティリスはじっと見つめていた。
一方格納庫では。
「ォオオオオオッッッ!!!!
波ァァァアアアアーーーーッッッ!!!」
「フォオオオオーーーッッッ!!!
ムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラムラッッッ!!!!
ニシッッッムラァアッッッ!!!」
気合いと共に発射された朝霧のビーム(気?)を目にもとまらぬ拳の連打で掻き消したジャッキー=ニシムラ(推定地球人)を見て外交団の面々がドン引きし。
「え?これ私が悪いの?」
作品群(比喩表現)をのみ掛けの栄養ドリンク剤を持ったティナが遠い目をしながら呟き、その肩をジョン=ケラー(ア◯ーラナッ◯ーヘア)が優しく叩くのだった。