星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
実は女王陛下が実の母親!なんて物語でよくある展開かと思ってたら、まさかのデザインベイビーだった!
えっ?私コーディ◯ーターだったの?アレかな、種割りすることになるのかな?
……よし、現実逃避は止めておこう。今大事なのは、不安そうに私を見ている女王陛下だ。
遺伝子的には私の母親になるわけだし、叔母様呼びを避けられて良かった。女王陛下とお呼びするのもなんだか他人行儀だよね。
……実感は無いけど、あの抱きしめられた時の温かさ、私を呼ぶ声に込められた愛情が分からないほど鈍くはない……たぶん。
何もかも手探りだけど、これから一緒に空白を埋めていけば良い。伊達に人生二回目じゃない。
「女王陛下」
「ティナ……」
不安げな女王陛下を見て、私も覚悟を決めた。
「これからは……まあ公私は弁えますが、身内だけの時はお母様とお呼びしても宜しいでしょうか?
……わわっ!」
答えは言葉じゃなくて優しい包容だった。
「ああ、愛しいティナ。私を母と呼んでくれた可愛い娘。貴女の望むようにしてください。私は全てを受け入れます。
ティアンナ、ティナは私を受け入れてくれましたよ」
私を抱きしめるお母様は、まさに歓喜に震えてる状態だ。
「だから言ったじゃない、姉様。ティナは色々と繊細な娘だけど、飛びっきり優しい娘でもあるんだから」
私ってお母さん基準だと繊細になるんだ?個人的にはかなり図太い性格をしてるつもりなんだけどなぁ。
「まあ取り合えず、今日知っちゃった連中はパトラウスから口止めされてるでしょう。姉様からもお願いしたら完璧よ」
「今パトラウス政務局長へティナの事をお願いしました」
女王のお願い=アードに於ける最優先事項であり、いきなりお願いされたパトラウスは口止めに奔走する羽目となる。
彼は泣いて良い。割と真面目に。閑話休題。
それから女王陛下……お母様とお母さんの二人と一緒に、いつの間にか用意されていた木製っぽい見た目のテーブルを囲むように座った。
「ティナ、先ず最初に貴女の意思を聞いておくわ。このまま放っておいても、封印は自然に解除される。もともと時限式だったからね。
貴女が望むなら今すぐに解除することも出来る。ただ……」
「ただ?」
「その場合、貴女の冒険はそこでおしまい。今は翼も隠せているけれど、封印を解いたらそれも難しくなる。
私は基本的に政治へ関与しないことにしてるから見逃されているけれど、貴女は違う。
姉様の完全な後継者として、民達は貴女を危険に晒すようなことを絶対に容認しないわ」
「私がお願いしても?」
「その場合は、それこそアード全軍による過剰なエスコートを受けることになるし、間違いなく地球側へも強い圧力をかけることになるわ。
そんな交流は貴女が望むものじゃないでしょう?」
「それは……そうだけど」
予想はしていたけど、やっぱりそうなるか。度を越えた善意を持ってるアード人だけど、唯一の例外がセレスティナ女王陛下が絡んだ時だ。
私の事が公表されたら、アード人は私の行動に過剰な反応を起こすことになるってばっちゃんも言ってたな。
下手をすれば、パリの件を蒸し返してとんでもないことをしそうな予感がする。
「なら、このまま封印が完全に解けるまで秘密にしておきなさい。親としては危ないことをして欲しくないけど、貴女が自分で決めたことだから精一杯応援するわ」
「貴女が望むように、愛しいティナ。ただ、もう怪我をするようなことは避けてください。
貴女が怪我をしたと聞いた時は、生きた心地がしませんでした」
「飛び出そうとした姉様を止めるのは大変だったんだからね?」
「それは、ごめんなさい」
うん、今なら分かるよ。自分の娘が怪我させられて平気な親は居ない。私だってティルの誘拐未遂事件の時に怒って報復しちゃったんだ。
……もしお母様が来ていたら、地球が滅んでいたかも……今後も気を付けよう。ちょっと洒落にならない結果になっちゃう。
「じゃあ、引き続き親善大使として頑張るのね?」
「うん。でも、自分の役目から逃げるつもりもないよ。必要なことはちゃんと勉強するから」
正直小市民な私にとって、次期女王なんて肩書きは考えるだけでも嫌になる。
でも、自分の定められた役目から逃げるつもりもない。色んな想いが込められているのも分かるし、何より私の我が儘を許してくれて自由に過ごせるように手を回してくれているお母さんやお母様を裏切りたくはない。
「ティナ、宜しいのですか?無理をしなくても……」
「無理は……まあ色々としてますけど、この気持ちに嘘はありませんよ、お母様。
区切りがついたらちゃんと帰ってきます」
具体的には、私を挟まなくても大丈夫なくらい交流に関わるアード人の皆さんが地球人を理解できればそこで私のお仕事はおしまい。
……それが果てなく難しいのは理解しているけどさ。
それとクレアの願いも叶えてあげたい。無差別に暴れまわるセンチネルを本当に滅ぼすことが出来るなら、宇宙に生きる全ての命にとっても良いことだ。
「分かったわ。区切りについては貴女の判断に任せる。私と姉様は裏から支援する。姉様が表立って動いたらちょっと面倒なことになるし」
「そんなことはないよ。お母様がリーフ人達に釘を刺してくれたからフェルの周りも少しは安全になったし」
残念だけど、少しだけだ。少なくともフェルやリーフ姉妹、それにセシリアをリーフの里へ連れていくつもりは全く無い。
表面上は大人しくしてるけど、ばっちゃんが警戒してるし私だってリーフ人……ミドリムシを信用できない。
「私の言葉で彼女を少しでも守ることが出来たなら、これに勝る喜びはありません」
「まあ、ミドリムシの問題もあるわね。先に言っておくけれど、この問題に姉様は関与しないわよ。釘を刺すのが精一杯だから、期待しないように」
「分かってる。これは私達の問題でもあるんだから、お母様に辛いことはさせない」
お母様は先代リーフ女王のフェルシア陛下とご友人で、その縁でリーフ人を惑星アードへ受け入れたって学んだ。
だから、リーフ人問題には中々手を出せない。だから私達が動く。
「無力な母を許してください、ティナ」
「大丈夫です、お母様。この問題は私達が解決して見せますから」
ばっちゃんが色々と仕込んでいるみたいだし、私だってフェルやティルを狙われてお父さんを傷つけられた事に怒ってるんだ。
これからのアードにミドリムシは要らない。
たくさん勉強して、ばっちゃんの手伝いが出来るように頑張らないと。
ティナが決意を固めている頃、ドルワの里では。
「ここが……神の国か……ハレルヤ!!!」
「同志イワン!昇ってはいけません!まだその高みには!」
アード人達の歓迎を受けて歓喜のあまり召天しかけるイワン代表を、ジャッキー=ニシムラ(アブノーマル)が必死の人工呼吸(意味深)で蘇生を試みていた。