星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~ 作:イワシロ&マリモ
ケレステス島のハロン神殿でお母様とお母さんから色々話を聞いた後、そのまま残るのも何だか変な感じだったから大使のお仕事を優先することにした。
引き続き親善大使として頑張りたい気持ちを汲んでくれたし、頑張らないといけない。
まあ、これからは覚えなきゃいけない事もたくさんあるだろうけどさ。
「お待たせ、フェル、アリア」
「お帰りなさい、ティナ。ちゃんとお話は出来ましたか?」
「うん。まだまだ話したいことはいっぱいあるけど、時間はたくさんあるから」
転送ポートでフェルとアリアが待っててくれた。フェルにも言ったけど、アード人は長命種だ。ゆっくりと話をする時間はたっぷりある。
少しずつ、焦らずにこれまでの空白を埋めていけば良い。
「私は無粋かと考えましたが、マスターフェルの許可を頂きましたのでこの場に居ます」
「そんな、許可だなんて」
「そうだよ、アリア。遠慮なんかしなくて良いんだからね。
私達は仲間であって、家族なんだから」
一番過保護なのは間違いなくアリアだ。
アンドロイドボディを手に入れてからは、より一層過保護になっちゃった。パリの一件で責任を感じているみたい。あれは私が悪いんだって何度も言ってるんだけどな。
「ティナをサポートすることが私の存在意義です。この点に関して、譲歩するつもりはありません」
「さらっと心を読むのは止めよっか。
……まあ良いや。帰ろう、私達の家にさ」
「はい、ティナ」
「転送ポート起動、目的地はドルワの里メインポート。これより転移します」
ケレステス島にある転送ポートで私達は我が家、ドルワの里へ転移した。
「「「ソイヤッ!ソイヤッ!ソイヤッ!ソイヤッ!」」」
「フハハハハハハッッッ!!!」
ドルワの里へたどり着いた瞬間、私の目の前に広がる光景を一瞬理解出来なかった。
より正確には、理解したくなかったんだけど。
ドルワの里に居るムキムキなおじさま達が、日本の法被のような服を羽織って御輿みたいなものを担いでいて、その上でジャッキー=ニシムラ(控え目な赤フン装備)さんが仁王立ちで高笑いをしていた。
いや、なにこれ?
「お帰り、ティナ、フェル。ビックリしただろう?
これは、日本と呼ばれる里に古くから伝わる歓迎の儀式だとティアンナから聞いたんだ。
今回も朝霧さんやマコくんが居るみたいだから、あちらの文化を取り入れてみたんだよ」
知的な雰囲気が魅力的なお父さんまで法被着て鉢巻してるし。
って!
「日本には不思議な文化があるんですね」
「違うから!ああもうっ!色々間違っててどこから突っ込めば良いの!?
と言うか、その法被も意味合いが違う!」
デカデカとばっちゃんのダブルピース写真がプリントされてる法被だよ!
秋葉原の由緒正しき勇者達の正装じゃん!間違っても神事に着るようなものじゃない!
……え?イベントも神事みたいなもの?喧しいわ!
鉢巻きにも日本語で『ティリスちゃん命!』とか書いてるし!
「なにっ!違うのかい!?
いや、私も違和感を感じていたんだ」
「お父さん!」
やっぱりお父さんは常識人枠だ!
「そうだ、他所の文化を模範するなら敬意を持たなければいけない。中途半端な模範はオリジナルへの侮辱に他ならない。
やはり下半身はこの赤褌で統一するべきだったんだ!」
「マイダディーーーー!!!!????」
颯爽と布を取り払い、赤褌姿となって清々しい笑みを浮かべる父親を見て、ティナは魂の絶叫と共に意識を遥か彼方へ飛ばすのだった。
「お父さん……」
「誠、言いたいことは山ほどあるだろう。
だが、受け入れるんだ。そうすれば色々楽になるからな」
マコは老成した人物のような達観した表情を浮かべ、そんな息子に朝霧はハイライトさんがサヨナラした瞳で助言を与えた。
アード側から地球代表大使へ任命されてしまった父と、未来の女王の義弟がほぼ確定してしまった息子。二人の未来に平穏はあるのだろうか。
ティナを見る限り、望み薄だろうが。
ドルワの里で色々間違ったお祭り騒ぎが起きている頃、椎崎 美咲はセシリアと一緒にドルワの里とは別の浮島にある総合医療センターへやって来ていた。
ここはアード最高峰の医療機関であり、科学と魔法を融合させた様々な医療設備が充実している。
本来は美咲だけが検査を受ける予定だったが、全く調整されずアードとリーフの特性を持ち合わせて生まれたセシリアも、念のため精密検査を受けることになった。
この提案をセシリアは快諾。むしろ緊張している美咲を落ち着かせるためエスコートしていた。
「目的地は三階か。
飛ぶぞ、美咲。落ち着いてついてくるんだ」
「はい!」
アードの建物らしく中央が吹き抜けであり、階段は存在せず各階まで飛んでいく必要がある。二人は羽と翼を広げ、案内にしたがって施設内を飛ぶ。
通路を含めて天井が高く、アード人やリーフ人が飛び交う光景はまさに異世界であり、美咲は内心の興奮を隠せなかった。
二人が案内された部屋は一面真っ白な空間が広がり、中央には二つの医療カプセルが横置きされていた。
『身に付けているものを全て外し、横になってください』
AIのアナウンスに美咲は緊張した。思春期の少女らしく羞恥心に染まったのだ。
そんな美咲を引っ張るようにセシリアが率先して衣類を脱いで裸体を晒した。
リーフの羽とアードの翼を持ち、銀を主体として金のメッシュが入った髪を持つ少女は、戦士らしく鍛え上げられた筋肉質な肉体でありながら女性らしい柔らかさも兼ね揃えている。
何がとは言わないが、ティナ以上フェル未満である。
「大丈夫だ、私達しかいない。恥ずかしくはないさ。
いくぞ、美咲」
「はっ、はい!えいっ!」
セシリアに促されて意を決した美咲はリーフの衣服を豪快に脱ぎ捨てた。
リーフ人化したものの長い病院生活で身体は衰えており、回復しつつあるとは言え発育は宜しくなく全体的に痩せている。
恥ずかしそうに手で身体を隠す美咲を見て、セシリアは安心させるように笑みを浮かべた。
「これから取り戻せば良い。心配は無用だ、私達が一緒に居るし時間はたっぷりある。
焦るな、美咲」
「セシリアさん……ありがとうございます!」
二人揃って台へ横にはなり、半円型の蓋が閉められて液体が満たされていく。
溺れちゃう!そう思った瞬間、まるで穏やかな海に居るような、不思議で心地好い感覚に包まれながら深い眠りについた。