星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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寒波が迫っているので本日投稿します。来月一杯までは不定期になってしまいますが、ご容赦を!


アード永久管理機構定例会

ティナが2回目の地球来訪を達成して交流を開始している頃、本星であるアードでは首脳陣による定例会が開かれていた。

毎月行われる意見交換の場でもあり、惑星アード最大の陸地であるケレステス島(面積はマダガスカル島と同程度)にあるハロン神殿。アードの指導者であり信仰の対象でもあるセレスティナ女王が住まう場所であり、すぐ近くにはアード永久管理機構(政府に相当)の中枢である政務局が置かれていた。

 

 

ハロン神殿。陸地の少ないアードでは極めて貴重な豊かな森林の中に佇む荘厳な建築物。大木をそのまま建物に改装するのが主流のアードでは珍しく全てが石材で作られている。その外観は地球のセビリア大聖堂に類似している。

荘厳な廊下を歩くアード人の集団が向かいから歩いてきたリーフ人の集団と相対する。

 

 

 

「これはフリースト様、ご機嫌麗しゅう」

 

 

 

最初に頭を下げたのは、アード人達。移民監理局のザイガス長官である。そのザイガスを見てリーフ人の集団の先頭に立つ男性も深く頷いて返す。

 

 

 

「丁重な挨拶痛み入る、ザイガス殿。常日頃より我が一族へ多大なる配慮を頂き、心から感謝申し上げる」

 

 

 

このリーフ人の男性こそ、アードへ避難してきたリーフ人を長年束ねる族長フリーストである。

避難当時からアード人への全面協力を強固に主張。リーフ人の意見を半ば強引に取り纏め、今となっては浮き島のひとつを専用の居留地として獲得。アード=リーフの関係維持と強化に日々邁進している。

ただ強引な手法を批判する声もあり、何よりアードとの関係に最も神経を尖らせている人物でもある。

 

 

 

「どうやら本日も定例会に参加なさるのですな。ありがとうございます」

 

 

 

「無論、アードは故郷を失った我らを温かく受け入れてくれた。たとえ数百年の月日が経とうとその感謝の念は消えぬ。しかしながら、其れ故の懸念もある」

 

 

 

鋭く、それでいて憂慮するような視線をザイガスへ向けるフリースト。ザイガスは小さなため息を吐く。

 

 

 

「例の娘の件ですな」

 

 

 

「左様、あの異端は必ずやこの楽園に災いを呼び込む。一刻も早く除かねばならん」

 

 

 

「ううむ」

 

 

 

「無論、これは我らの問題。アードの手を煩わせるつもりは微塵もない。任せていただければ、我らで適切に処理することをお約束する」

 

 

 

「では、本日の定例会の議題としましょう。フリースト様の発言の場を設けますので、その場にて」

 

 

 

「機会を与えてくださり、感謝する」

 

 

 

フリーストを含めリーフ人達が深々と頭を下げる。

 

 

 

「頭を上げてください。我らは共に手を携えて生きる者、フリースト様の憂慮は必ずや皆に響きましょう。しかし、私に出来るのは場を整えるだけにございます」

 

 

 

「ザイガス殿の厚意を無駄にはせぬ」

 

 

 

 

ハロン神殿、大会議室。

広く荘厳な空間の中心に長テーブルが置かれ、等間隔に配置された椅子のみがある質素な空間。その最奥には真っ白なベールで隠された一室がある。

 

 

 

その場にアード首脳陣のメンバーとフリースト並びにリーフの主要人達が集まる。皆は先ず着席する前に最奥へ向かって最敬礼をする。

アード人は膝と手をつき、頭を床に擦り付け翼を広げる土下座のようなスタイル。リーフ人は両手を交差して胸に添え深々と頭を下げた。

敬意を示したあと、皆は揃って席に座る。

 

 

 

「お歴々、本日も多忙の中お集まりいただき感謝する。これより定例会を開催する」

 

 

 

アード永久管理機構の長であるパトラウス政務局長。地球で言えば首相や大統領に相当する立場である。

定例会は各部署の報告から始まり、各種変更や連絡事項を通達する場である。

定例会そのものは特に変化もなく進行し、アードの内政面での問題は下がり続ける出生率のみであった。しかし、その事について議論が交わされることはなかった。

現在アードで前代未聞の行動を行っているティナについても、誰も言及することはない。ティナ個人の活動はセレスティナ女王の認可があるためである。

 

 

 

アードでは女王の言葉は絶対である。そこに理性、感情、論理は一切介在しない。ただ女王の意思を完遂する。反論など発生しないし、しようとも思わない。

この体制がアードの保守性を強め、自身の影響力が過剰になってしまったと自覚しているセレスティナは滅多に発言しない。

リーフ人の度を越えた排他的な性質も目立つが、アード人はある種の狂信者集団でもある。団結しているから今の平穏があるとの見方もあるが。

 

 

 

「パトラウス政務局長、ひとつ議題を提示したい。フリースト様よりの提議なのだが」

 

 

 

「許可する。フリースト殿、何事ですかな?」

 

 

 

パトラウスは笑みを浮かべてフリーストへと視線を向ける。フリーストは静かに立ち上がり、一礼する。

 

 

 

「機会を頂き、感謝する。政策については一切不満はない。全力で協力させていただく」

 

 

 

「ふむ、では?」

 

 

 

「私が懸念しているのは、先日保護されたフェラルーシアの処遇についてだ」

 

 

 

「ふむ、開発局のザッカルから話は聞いている。既に一族からの追放でこの件は終わっていると判断していたのだが」

 

 

 

「仰るように処分は済ませた。だが、あの娘は不吉の象徴。生かしておけば必ずやアードに災いをもたらす結果となる。これは単なる伝承ではなく、我が一族が長年何度も繰り返し経験してきた事実だ。我等としては、この楽園に災いが降り掛かるのを座視できぬ」

 

 

 

「危険な存在を野放しには出来ぬと」

 

 

 

「左様。無論、あなた方のお手を煩わせるつもりはない。許可を頂けるならば、我等が適切に処理しよう。どうか」

 

 

 

「パトラウス政務局長、異議があります!」

 

 

 

立ち上がり異議を申し立てたのは宇宙開発局のザッカル局長である。

 

 

 

「許可しよう」

 

 

 

「では。フェラルーシアは穏やかで他者を傷つけることを良しとしない優しい娘です。除くなどとんでもない」

 

 

 

「ザッカル局長、これは我等一族の不始末だ。ご迷惑をお掛けするが、この問題は根が深いのだ」

 

 

 

「我々としてもあなた方の要望を最大限受け入れている。それ故に、彼女を一族から追放とする処分にも納得した。私には彼女が災いを招くとはとても思えない」

 

 

 

「ザッカル局長、個人の感情ではないのだ。異端は存在するだけで災いを招く」

 

 

 

「双方そこまで。フリースト殿の懸念は理解した。同時にザッカル局長の意見にも理解を示そう。そこで、実際に件の少女を受け入れたドロワの里長の意見を聞こう」

 

 

 

パトラウス政務局長の言葉で皆が末席に視線を向ける。そこには足をプラプラしながら楽しげに会話を聞いていたティリスが笑顔を浮かべていた。




次回、ティリスちゃん吠える
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