星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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次回は来週の水曜日以降になります。多分!


当事者達

「ジョン……さん……?」

 

 

 

受け止められたフェルは目をぱちくりとさせながら、目の前の中年男性へと視線を向ける。対してジョンは穏やかに、そして諭すように言葉を続ける。

 

 

 

「私も今来たばかりだから、詳しい状況は分からない。だが、短い付き合いとは言え君が意味もなく暴力を振るうようには見えない。どうか状況を説明してくれないか?」

 

 

 

『では、私から簡潔に説明します』

 

 

 

「頼む」

 

 

 

誰もが固唾を飲んで見守る中、アリアから簡潔に状況を教えられたジョンは、ゆっくりとフェルの握り拳を離しながら口を開く。

 

 

 

「ありがとう、状況は理解したよ。けれど、だからこそ落ち着くんだ。今ここで彼を殺めたとして、誰が一番悲しむことになるのかを考えてみて欲しい。君は聡明な女の子だ。きっと分かる筈だよ」

 

 

 

ジョンさんの言葉と経過した時間は、フェルに理性を取り戻させるのには十分だった。だが、彼女はどこか不満そうだ。

 

 

 

「ですが、あの人はティナに銃を向けて発砲しました」

 

 

 

「友達に危害を加えられた気持ちは分かるよ。だけど、ここは私達に任せてくれないか?君が手を下したら、地球人の少なくない数が恐怖を覚えてしまう。そんなことになったら、ティナの頑張りが全て無駄になってしまうよ」

 

 

 

「ズルいです、そこでティナの名前を出されたらなにも出来ないじゃないですか」

 

 

 

「はははっ、大人はズルい生き物なんだ。どうしても不満なら、私が受け止めるよ。今回の件だって、ティナは純粋な好意で助けてくれたんだ。巻き込んでしまったのは我々の責任だからね」

 

 

 

笑みを浮かべながら返したジョンを見て、フェルは深々と溜め息を吐いた。

 

 

 

「……貴方にそこまで言われたら、引き下がるしかないですね。よっと」

 

 

 

フェルは優しくティナを抱き上げた。小柄な彼女を抱えるのは苦にもならない様子である。

 

 

 

「ティナは大丈夫なのかい?」

 

 

 

「マナ欠乏症、貧血のような症状です。休めば治りますよ。ただ、明日まではゆっくり休ませてあげたいので、一旦プラネット号へ連れて帰りますね」

 

 

 

遠回しに地球ではゆっくり休めないとフェルから言われたジョンは、周りの状況を見て苦笑いを浮かべる。

 

 

 

「その様だ。野次馬達が騒がしいけど、何かやったのかい?」

 

 

 

「ティナを見世物と勘違いしていたようなので、一帯の記録媒体のデータを削除させて貰いました。ティナや私が写った映像や写真は残っていませんよ」

 

 

「理解したよ、ありがとう」

 

 

 

「いえ……明日からもティナは頑張って地球の皆さんと交流を図るでしょう。その気持ちを無下にしないでくださいね。では、また」

 

 

 

フェルの足元に光輝く魔方陣が現れた瞬間、彼女とティナの姿は忽然と消えた。

誰もが唖然としている中、ジョンは深い溜め息を吐いた。彼の視線の先には、異星人対策室から派遣されたチームを乗せた黒いバンが向かってきているのが見えた。

 

 

 

「取り敢えず、現場の確保と事後処理を最優先にお願いする。警察の皆さんには苦労をお掛けしてしまうが、異星人が関わった以上普通の事件とは対処が異なる」

 

 

 

「署長から万が一に備えてのマニュアルは預かっていますよ。先ずは野次馬連中が散る前に確保しないと。それと、ケラー室長に署長から伝言です。貸し一つだとか」

 

 

 

警官の言葉を聞いてジョンは困ったような笑みを浮かべる。

 

 

 

「了解した……やれやれ、お互い昼は食べ損ねることになりそうだね」

 

 

 

「仕方ありません。まあ、死者は出ませんでしたし犯人は全員逮捕できました。上出来としましょう」 

 

 

 

 

「ああ、そうだね。それだけが救いだよ」

 

 

 

バンから颯爽と降りて職員達に指示を飛ばす猫耳クラシックメイド服の漢を見ながら、ジョン=ケラーはもう一度深々と溜め息を吐くのだった。

また不審者扱いされないと良いのだが。

 

 

 

 

一方転移魔法でプラネット号へ戻ったフェルは、そのままメディカルルームへ向かう。手早くティナの衣服を脱がせて備え付けられている医療カプセルへ寝かせた。端末を弄り半円型の蓋が閉じて中が水色の液体で満たされたのを見て、近くにあった椅子に座る。

 

 

 

「アリア、どうですか?」

 

 

 

『典型的なマナ欠乏症の症状です。医療カプセルの効果もあれば、明日の朝には回復するでしょう』

 

 

 

「そうですか……良かった」

 

 

 

安堵の息を吐きながら、液体に満たされたカプセル内のティナを見つめる。

 

 

 

「何でこんなに無茶をするのかな……」

 

 

 

『正義感と言えましょうか、他者の危機を見過ごせない性格なのでしょう。どんな状況でも、命に勝るものはない。そう断言していますからね』

 

 

 

「同じアード人相手なら分かるんです。でもティナは……他種族に対しても危険を省みずに……私だってそうです」

 

 

 

『それがティナです。何処までも真っ直ぐで、世間知らずとも言えるような行動をしていますが、命を何よりも優先する姿勢には感服します。自身をもう少し省みてくれれば最良なのですが』

 

 

 

「ふふっ、それは無理です。あの時だって、普通なら私達を見捨てて逃げるのが当たり前の選択なんですから」

 

 

 

『良くも悪く周りを巻き込む少女です。今回の件、地球側に対するメッセージとなりましょう』

 

 

 

「ついカッとなって……ジョンさんに助けられてしまいました」

 

 

 

『まさか受け止めるとは予測できませんでした。貴重なデータを収集できました』

 

 

 

「あはは……悪い印象を与えてしまったでしょうか?」

 

 

 

『ティナの優しさを見て勘違いしていた地球人も少なからず存在しています。彼らに対してマスターフェルの行動は警告となったでしょう。文明レベルはもちろん、生物としても地球人はアード人やリーフ人に劣りますから』

 

 

 

「そんなつもりはありませんでしたけど……」

 

 

 

『問題ありません、マスターフェル。映像の類いは全て消去しました。証言だけでは信憑性も薄い。貴女の行動が露見する確率は極めて低いでしょう』

 

 

 

「だと良いのですが……」

 

 

 

『それよりも、マスターフェルも疲労が蓄積しています。速やかな休養を推奨します』

 

 

 

「いえ、私はこのままで。ここで、ティナと一緒に居ます」

 

 

 

 

この事件はティナにとってはいつもの人助けだが、フェルは地球人に若干の警戒心を持ち、アリアは貴重なデータを収集して、地球側には改めて交渉相手が遥かに格上だと知らしめる結果となった。




朝ギリーさん
「俺は!?」
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