星渡りの少女~TS転生したポンコツ美少女天使は故郷と地球の架け橋となる~   作:イワシロ&マリモ

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次回は来週の予定です!


事件が及ぼした影響

~アメリカ合衆国ワールドジャーナルより抜粋~

 

 

 

読者諸君は昨日ワシントン郊外のスーパーで発生した人質立て籠り事件について知っているだろうか。事件は郊外の閑散とした地域にあるスーパーマーケットへ7人組の強盗が押し入ったことから始まった。

彼らにとっての不運は、偶然スーパーマーケット周辺で巡回中の警官が居たことだろう。彼は直ぐに異変を察知して応援を要請した。結果スーパーマーケットは大勢の警官達によって完全に包囲されたのである。この時点で強盗達は完全に目論見が外れたと見て良いだろう。素直に投降する道もあった。

 

 

 

しかし、彼らは悪足掻きの道を選んだ。利用客を人質として立て籠ったのである。ちょうど昼時であり大勢の利用客が店内に残されていたことも事態を悪化させた。警官達は必死に説得を行いながら事態の打開を図っていたが、興奮状態の犯人達に対して効果があったとは言えなかった。

双方の膠着状態が続いたその時、幼い我が子を連れた若い女性が犯人達の隙をついてスーパーマーケットを脱出した。その勇気ある行動は称賛すべきだが、銃を持つ凶悪犯相手に無謀な行いでもあった。

強盗は無慈悲に銃を発砲し、撃たれた女性が倒れた。更に強盗は母親にすがり付く幼い少女にまで銃を向けたのだ。誰もが最悪の悲劇を予測した。

次の瞬間、HEROが舞い降りた。

 

 

 

ナッセル警部

 

 

 

「あの事件は最悪の結末を想定しなければいけないほど厄介なものだった。強盗達は銃で武装し、更に気が立っていた。しかも現場のスーパーマーケットは正面以外の出入り口がなかった。裏口は直ぐに塞がれていたし、搬入口は修理中で使用できなかった。窓ガラスはカーテン等で隠されて内部の状況も分からない。人質が何人居るか分からない状態だったんだ」

 

 

 

最悪の状況だったと。

 

 

 

「ああ、しかも例のティナ嬢だったか?彼女の来訪に合わせて警備体制が強化されててな、警官の大半はそっちに回されていた。直ぐに応援を要請したんだが、残念ながら色よい答えは得られなかった。上の連中は郊外の事件より、宇宙からのお客様の警備を優先したんだ。まあ、仕方無いけどな」

 

 

 

それで現場は膠着状態になっていたんですね。

 

 

 

「ああ、そこに颯爽と現れたのが我らがHEROさ。知ってるだろう?“海坊主”さ。彼が瞬く間に悪党達を制圧して、無事に事件が解決したんだ」

 

 

 

海坊主?

 

 

 

「ああ、うちの署長が名付けたんだよ。ジャパンの言葉で、優しくて力持ちって意味らしい。彼にぴったりじゃないか」

 

 

 

なるほど、確かに彼にぴったりなニックネームですね。本誌で取り上げても良いですか?

 

 

 

「おう、どんどん広めてくれ!合衆国のHERO、海坊主をな!」

 

 

 

そこまで読んでハリソン大統領は新聞紙をテーブルへと置いた。場所はホワイトハウスの会議室。ワシントン郊外のスーパーマーケットで発生した事件の翌朝のことである。会議室には真相を知る政府要人達が集まっていた。

 

 

 

「見事なまでの捏造だな。手回しが早くて驚いているよ」

 

 

 

苦笑いを浮かべるハリソンに答えるように、首席報道官が口を開く。

 

 

 

「一ヶ月前のファーストコンタクトからこのような事態を想定して、各メディアに根回しをしておりました。新聞社はもちろん、各テレビ局も同じような内容で報道しています」

 

 

 

「全てはヒーローの活躍によって解決したことになったか。手柄の横取りのような気がしないでもないが、ことの重大さを考えれば仕方あるまいな。ティナ嬢には私から説明しよう」

 

 

 

「ええ、彼女ならば理解を示してくれるでしょうな」

 

 

 

「映像などが一切残っていないのも幸いでした。一部ではティナ嬢やフェル嬢の介入を叫ぶものも見られますが……」

 

 

 

「ご安心を、補佐官。証拠が一切無いので、ただの与太話扱いです。もちろんネット上でも下手に拡散しないよう慎重に火消しを行っていますが」

 

 

 

「どの様に証拠を消したのだ?」

 

 

 

ハリソンの質問に参加していた技術者の一人が口を開く。

 

 

 

「端的に言えば、あの場に存在していた記録媒体のデータが全て改竄されていました。ティナ嬢がケラー室長に入れ替わり、フェル嬢の介入に関しては完全に削除されています。もちろん監視カメラの類いも全てです」

 

 

 

「それは凄いな」

 

 

 

「ただ……」

 

 

 

「ただ、何だね?」

 

 

 

「まだ調査中ではありますが、全ての映像に加工や編集が行われた痕跡を発見することが出来ませんでした」

 

 

 

「どう言うことですか?」

 

 

 

「そのままの意味ですよ、マイケル補佐官。加工などの細工が行われた動画などは痕跡が残ることが多いのですが、現時点では一切の痕跡を発見することが出来ません。あくまでも推測ですが、我々にとって完全に未知の技術が使われた可能性が高いかと。この場合我々に成す術はありません」

 

 

 

「すると、何だね?彼女達は幾らでも情報を改竄できて、しかも我々はそれに気付くことすら出来ないと!?」

 

 

 

声を上げたのはFBI長官である。彼の驚きも無理はない。ティナ達にその気があれば、あらゆる虚構を真実として地球全土にばら撒くことが出来るのだ。そして地球側にそれを阻止する手段は存在しない。

 

 

 

「今更驚くことでは無いでしょう」

 

 

 

静かに口を開いたのはジョン=ケラーである。

 

 

 

「我々は今一度正しく認識せねばなりません。ティナが好意的に接してくれているだけで、相手は銀河の反対側。つまり10万光年彼方からの来訪者で我々より遥かに格上の存在だと言うことを」

 

 

 

ケラーの言葉に誰もが口を閉じる。お人好しなティナを与し易しと見ていた者は、政府重鎮の中にも存在していた。

だが、フェルの存在はその思惑をいとも簡単に崩してしまった。相手が遥かに格上であり、しかも攻撃を辞さないと言う姿勢を露にしたのだ。

 

 

 

「短い時間ではありますが、フェルと交流した身として断言します。フェルはティナへの悪意や害意を放置しないでしょう。その為ならば、地球に甚大な被害が出るような決断を躊躇しないと思います」

 

 

 

ジョンは重鎮達をゆっくりと見回す。

 

 

 

「ティナだからこそ笑って許してくれた事も、今後は難しくなります。我々異星人対策室は今後も彼女達と交流を深めて参りますが、皆様にも今一度認識していただきたい。彼女達は友好的ですが、決して侮ったり怒らせてはいけない存在であることを」

 

 

 

この事件を経て、改めて合衆国政府は慎重な対応を行わねばならない相手だと再認識することとなる。

 

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