完新世 エヴァンゲリオン   作:犬社長

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なんでセカンドインパクトを無くしたかっていうと、雪の中で戦うエヴァが見たかったから。…それだけです()







09〈トウジの怒り〉

 

 

 

 

ーーーー西暦2016年 9月 1日

 

 

 

 

夏休み明け最初の登校日。

 

 

 

 第三新東京市にある《第3新東京市立第壱中学校》3年A組のクラスは、期待を孕んだ密やかな囁きで埋め尽くされていた。

 

 

 しかし、生徒たちが若干浮き足立っているのも、仕方のない事かもしれない。

 

 何故なら、今日から新しい生徒が転校して来ることになっているのだから。

 

 

「はい皆の衆!静かに、静かに!!」

 

 教壇の上に立つ男の教師が、手を何度か叩いて教室を静まらせる。

 

「えー、皆さんにお知らせです。夏休み明けの今日から、新しい転入生が来ることになりました!」

「せんせぇ〜、転校生って女子ですかぁ〜?」

 

 クラスの誰かが間延びした声を出し、クラスが笑いに包まれた。それに苦笑しながら、首を振る男性教師。

 

「えー、男子です!ーーーー残念だったなお前ら!」

「「うわマジかぁ〜!」」

 

ドッとクラスに笑いの花が咲く。

 

 

 その一過性の騒ぎが収まったところで、男性教師は教室のドアの向こうに立っている少年に合図をした。

 

 

「おーい、入って来て良いぞ〜。」

 

 

クラスの誰もが、ドアに釘付けになる。

 

 

ーーーー31名の視線を釘付けにしたドアが、ガラッと開いて1人の華奢な少年の姿を露わにした。

 

 

「……………。」

 

 カツカツと少年は教壇の前に進み出る。そして、クラスの生徒達の前に向き直った。

 少年の後ろで、男性教師が黒板にチョークで文字を書く。

 書き終わったところで、注目を集めるかの様にチョークで黒板を何度か叩いた。

 

 

「今日から転校して来た、碇シンジ君だ。ーーーー皆んな、仲良くする様に!」

「…碇シンジです!よ、よろしくお願いします!」

 

 

教師の紹介に、少年ーーーー碇シンジは、頭を下げる。

 

 

 そして教室は、歓迎のパチパチとした拍手に包まれるのだったーーーーーーーー。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

ーーーーこうして碇シンジは、第3新東京市立第壱中学校の生徒となった。

 

 

 

 彼は、エヴァパイロットという国家公務員で有ると同時に、義務教育を受けなければならない16歳の少年でもある。

 

 無論、ミサトはちゃんとその事については根回しをしており、彼女の手によってシンジはこの《第3新東京市立第壱中学校》に、編入されたのだ。

 

 

ーーーーさて、滅多に無い転校生要素だけでも、シンジの存在は注目を浴びるに足るものであるが、もう一つ、シンジに注目が行く要因があった。

 

 それは、3日前に起きた()()()()()()()()使()()()()である。

 

 使徒戦に関しては、厳重な情報統制がされているとは言え、いかんせん使徒が引き起こす大規模な事態の全てを統制は出来ず、噂程度の物があちこちに飛び交っていた。

 

 その中で注目されているのが、使徒を倒した巨人ーーーーエヴァンゲリオンーーーーである。

 

 使徒の登場とエヴァの登場、そしてこのタイミングでやって来た転校生。

 生徒達はシンジに、普通の転校生とは違う事情を感じ取っていたのだ。

 

 

ーーーーと、言う事で朝礼が終わり、休み時間になった瞬間、シンジは質問攻めに遭う事になった。

 

 

 

「なぁなぁなぁ!シンジって、やっぱりエヴァンゲリオンのパイロットなのか?!」

「ーーーーえっ、あ、いや…」

「本当に使徒と戦ったの?!」

「ーーーーえっと…」

「じゃあ、ジオフロントの中にも自由に入れる、って事!?」

「ーーーーあ…」

「使徒との戦いですごい爆発が起きたらしいけど、それってエヴァがやったの??」

「使徒と戦うって、やっぱり怖かった??」

「エヴァってどんな見た目してんの??俺、気になる〜〜!」

「あと使徒も!使徒はどんな奴だったんだ??やっぱり、怪獣みたいな見た目してんのか???」

 

「ーーーーあっ、あっ、あっ…うわァ…(思考停止)」

 

 

 シンジは、ここまで大勢の人に話しかけられたことはなかった。

 

ーーーーそのせいで、シンジの脳は完全にオーバーヒートしてしまったのだ。彼は聖徳太子では無い。……残念ながら。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーシンジは、ミサトになるべくエヴァに関する情報を漏らさない様に、と言われてきていた。

 

 しかし、どうもクラスの誰しもがエヴァンゲリオンの事について知っているご様子。……だったら、もう秘密にする意味なんてないやーーーーの精神(或いは、投げやりになっただけ、とも言う)ーーーーで、シンジはクラスの人々の疑問に答える事にした。

 

……尤も、実際は自分1人では手も足も出ず、なんかエヴァが暴走して気付いたら終わっていたーーーーと言う事実は伏せていたが。

 

 

「ーーーーすっげぇーーーー!!やっぱり、シンジってエヴァのパイロットだったんだ!!」

「「「うおおーーーー!!カッケぇーーー!!!」」」

 

 

 シンジ本人の口から事実確認が取れたクラスは、大盛り上がりとなった。

 

………さて、人の口に戸は立てられぬ。それが子供であれば、尚更だ。

 

ーーーー『シンジはエヴァパイロット。』この話題は一日の内に校内を駆け巡り、あっという間にソレは全校生徒並びに教師達の知るところとなった。……因みに最重要機密事項である()

 

 

 この後、シンジはミサトに鬼の形相で怒られる事になるのだが、ソレはまた別の話。

 

 

 

 

 一方、盛り上がるクラスの中でただ1人ーーーーいや、2人ーーーー盛り上がっていない人が居た。

 

 1人は黒いウィンドブレーカー姿の少年で、もう1人は丸眼鏡をかけた少年である。

 丸眼鏡の少年の方は、シンジを取り囲む人々の輪に入りたそうにしていたが、何か思うところがあるのか黒いウィンドブレーカーの少年の方を、しきりに気にしていた。

 

 黒いウィンドブレーカーの少年は、不機嫌さを隠そうともせずにシンジを黙って睨み付けている。

 

 

 彼の名を、鈴原トウジ。丸眼鏡の少年の方を、相田ケンスケと言う。

 

 

「なにがエヴァパイロットじゃ……。」

 

 

 シンジを睨む鈴原トウジの苦々しい声が、誰に聞かれることも無く教室に消えた。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 一日目ーーーーシンジにとっては、非常に長く感じた一日目ーーーーが終わり、シンジは帰る準備をしていた。

 

 初日は半日で下校で授業は無く、明日から普通の6限授業が始まる。

 先生から貰った新品の教科書類を、ミサトに用意してもらった鞄に詰めている時、不意に横から声をかけられた。

 

「転校生。」

「…?」

 

 シンジが顔を上げると、黒いウィンドブレーカー姿の少年と、その後ろでやや不安げな顔をしている丸眼鏡の少年の姿が見えた。

ーーーー教室の中で、唯一シンジに何の質問も、話しかける事すらしてこなかった2人である。

 

「えっと…なにかな…?」

 

 シンジの問いかけに、黒いウィンドブレーカーの少年ーーーー鈴原トウジは、シンジに顎で教室の外を指し示した。

 

 

「ちょっとツラ貸せ。」

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

ーーーートウジに連れられて、シンジがやって来たのは第壱中学校の屋上だった。

 

 まだ真夏の熱気残る太陽が真上から燦々と照りつけ、強めの風が吹いている。

 

 

「…転校生。」

 

 其処で、シンジは険しい顔付きのトウジと向かい合っていた。

 尤も、シンジは何故自分がここに連れられて来たのか、いまいちピンと来ていないが。

 

 一体なんの用なんだろう…と、シンジが若干緊張しながらトウジを見つめていると、彼が険しい顔のまま口を開いた。

 

「ーーーーお前、本当にエヴァパイロットなんか?」

「え…。あ、うん。そうだよ。」

「…そうか。」

 

彼の疑問に頷くシンジ。

 トウジは一瞬俯いた後、だらりと下げてあった右手を握り締める。

 

 

 

 そして、シンジが反応する暇も無く、右手に作った握り拳でシンジの顔を殴ったのだった。

 

 

 

 ガツン、と殴られた衝撃が左頬に走り、シンジは勢いよく尻餅を付く。

 

 

 

……痛い

 

 

 

 何故殴られたのか考えを巡らせる事すら出来ずに、呆然となるシンジ。

 そんな彼を見下ろして、トウジは吐き捨てる様に口を開いた。

 

 

「すまんのお、転校生。わしはどうしてもお前を殴らなアカン。殴らな、気が済まへんのや。」

 

 この言葉はシンジを大いに混乱させた。ーーーー何か…何か自分は彼に悪い事でもしたのだろうか??無論、そんな覚えは無い。

 だから、シンジは頬を押さえたまま疑問の声を漏らした。

 

「…僕が…何か悪い事をしたの?」

「ッ!」

 

ソレを聞いたトウジは、シンジの胸ぐらを掴む。

 

「自覚無しとはええご身分やな。ーーーーんなら、教えたるわ。わしの妹が、お前があちこち壊した建物の下敷きになって、重体なんやぞ!…コレでもしも、妹が帰って来れへんかったら……わしはお前を殺すからな!!」

 

 叫ぶトウジの顔は真っ赤で、目尻に涙すら浮かんでいた。

 

「なんでや!!アンタがエヴァパイロットなら、全部護ってくれや!!うちの親戚のばぁちゃんは、アンタが壊した所為で家が無くなったんやぞ!?街を滅茶苦茶にして、ソレで良くパイロット名乗ってられるのぉ!!」

「ーーーー!!」

 

その怒りを受けて、シンジは力無く項垂れる。

 

 考えもしなかった。……結果論とは言え自分は使徒を倒して、皆んなを守る事が出来て、ソレで良かったと、そう思っていたのにーーーーーーーー

 

 

「………ごめんなさい。…僕……知らなかった。」

 

 

 彼に胸ぐらを掴まれたまま、シンジはボソリと呟いた。トウジは小さく鼻を鳴らすと、シンジを突き飛ばす様に離す。

 

 突き飛ばされたシンジの背中が屋上の柵に当たって、ガシャンーーーと金属音が鳴った。

 

 

「………謝った所で、許しはせえへんからな。次は足元、よく見とけよ。」

 

 

 トウジはクルッと踵を返すと、校舎内へ繋がる階段を降りて行く。最後に、階段の奥から丸眼鏡の少年の心配そうな顔が覗き、やがて消えた。

 

 

 

「……………。」

 

 

 

ーーーーシンジは柵にもたれ掛かったまま、澄み切った青空を見上げていた。

 散り散りになった白い雲を横切る様に、燕の群れが飛んで行く。

 

 自分がエヴァに乗る事。ーーーーエヴァに乗って、使徒と戦うという事。ーーーー人類を護るという事。

 

 

何故、エヴァに乗るのか。

 

 

 

 

 その意味を考えなければならない時が、来たのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーしかし、シンジにその時間は無かった。

 

 

 

 何故なら、その僅か3日後に第三新東京市に2()()()()使()()()()()()()()()()()()

 






シャムシエルって、なんかムシャムシャ食べてそうな名前してるよね。

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