完新世 エヴァンゲリオン   作:犬社長

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11〈未だ闇に隠れ底見えぬ、謀略〉

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ーーーー()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「……二つ目も、か。」

 

 

 灰色の月面で、1つの影が真上に浮かぶ地球を見上げていた。

 

 赤の混じった白い髪が、彼の動きに合わせて微かに揺れる。

 

ーーーー()は、巨大なクレーターの縁に立っていた。そして、そこから地球を見上げていたのだ。

 

周りには誰も、何も、無い。

 

 

 遥か遠くから照りつける太陽光が、男の()()()()()()を月面に落としていた。

 

 

「次の種は………少し考えねば。…我等の全ては有限。ーーーーだが、それは()()()も同じの筈。焦ることは無い………」

 

 

 そう呟いた男は、巨大なクレーターの奥へフェードアウトして行く。ーーーーやがて、月面はいつも通りの生の気配の無い、無機質な荒野へと戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇ ネルフ本部 中央発令所 ◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーー主モニターに、夕日をバックにして浮かび上がる使徒とエヴァの姿が映っている。

 

 

「……今度は使徒、爆発しなかったな。」

 

 

 戦闘の事後処理をしながら、シゲルがマコトとマヤの2人に話しかけた。

 

「爆発しなくて助かったよ。前回は使徒が爆発したせいで、あのエリア一帯の地図を、書き換えなくちゃならなかったからさ。」

 

そう言って、マコトはため息を吐く。

マヤも頷いた。

 

「家を失った人も大勢居ましたからね。……それに比べたら、今回は十分リカバリーが効きます。」

「だな。」

 

 それを聞いたシゲルは深く頷いて、話題を変えた。

 

「ーーーーそれにしたって、まさか民間人がシェルターを抜け出してるとはね…。しかも、シンジ君のクラスメイト。驚きだよ。」

「そうだな…。シンジ君があのまま戦ってたら、どうなっていたか。」

「……ですね。」

 

ーーーー起こりえたかもしれない最悪の可能性に、神妙な顔つきになる3人。

 

「しかしーーーー」

 

暫しの沈黙を、マヤが破る。

 

「ーーーーあの時、シンジ君はよく戦う選択をしましたね。あの状況で戦うのには、かなりの勇気が要るでしょうに……。」

 

シゲルは頷いた。

 

「あぁ。お陰で使徒は倒す事が出来た。…あれ以上の被害を防ぐ事が出来たのは、彼のお陰だ。……だがーーーー」

 

 彼は少し、憂う様な顔つきで両手を頭の後ろに組む。

 

「ーーーー勇敢な行動と、無謀な行いは違う。……今回は結果的に使徒を倒す事が出来たが、倒せずにシンジ君がやられていた可能性もあった訳だ。ーーーー俺が感じるに、彼は少し使徒との戦いに()()()()過ぎる気がするんだよ。」

 

そう言って、シゲルは目を軽く閉じた。

 

ーーーーなんとなく、彼をそこまで駆り立てる物がなんであるか、分かるような気がする。

 

(自分が使徒を倒さなきゃいけないって言う、プレッシャーなのかもな。………そもそも、たった16歳の少年に世界の運命を背負わせるなんて、理不尽が過ぎる。)

 

…そっとシゲルは目を開いた。

 

「ーーーーだから、俺たちに今出来る事は、彼のサポートにしっかり回るって事だ。彼が危険な目になるべく会わなくて済む様に。……コッチも、遥か年下の少年を、危険な戦いに送り出させてる身なんだ。ーーーーなら、せめてちゃんとサポートをするってのが、俺等の義務だろ。」

 

 

 

ーーーーそんな彼の言葉に、マコトとマヤは深く頷くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「…どうして命令に従わなかったの…?」

 

 

 

ーーーー()()()の声が、頭の上から降ってくる。

 

シンジは、小さく答えた。

 

「…僕が、使徒を倒さなきゃって、思ったからです。」

「貴方が死んでいたのかもしれないのよ?!」

 

ミサトの声が、部屋に木霊した。俯くシンジ。

 

 ココは、エヴァ格納ゲージの側にあるパイロット控え室の中。

 

 戦闘を終えたシンジは、撤退命令を無視した訳をミサトに問われていた。

 

「ーーーー私たちが下す命令は、人命を最優先しているの。貴方のあの時の行動は、余りにも危険な賭け過ぎるわ。…貴方だけじゃなくて、プラグ内のクラスメイトまで、死んでしまうかもしれなかったのに…!」

「…………。」

 

 ミサトの怒りも分かる。だから、シンジは静かに頷いた。でも、あの時は、ただ無我夢中でーーーーーーーー

 

 

「…ま、良いじゃ無いですか。葛城一尉。一度ぐらいは。」

 

 

ーーーーココで、部屋の中にいた()()1()()の男が、壁にもたれ掛かったまま口を開いた。

 

ミサトが険しい目をしたまま、男を睨む。

 

「ーーーーお言葉ですが()()()三佐。これは人命に関わる事です。彼は彼の独断で、自分自身と民間人の命を危険に晒しました。私は、これを看過する事はしかねます。」

 

 睨まれた男ーーーー加賀美ツカサは、軽く目を伏せて一息吐くと、背中を壁から離した。

 

「彼は少しパニックに陥っていた。…使徒殲滅への責任感が、今回の命令違反を引き起こしたのでしょう。ーーーーもちろん、2度3度と起こす訳にはいきませんが、彼はまだ子供………しかも、つい先週まではこんな世界と無縁の存在だったのです。使徒殲滅は成し遂げたのですし、大目に見ては?」

 

 それを聞いたミサトはため息を吐いて、腰に当てた右手の人差し指で何度も自分の脇腹を軽く叩く。

 

ーーーー使徒殲滅は確かに成し遂げた。…それは素直に褒めてあげたいし、出来ればこんなに怒りたくも無い。

しかし、何故かミサトの怒りは沸騰していた。

 

ーーーーもしかすると、シンジを失っていたかもしれないという恐れが、ミサトの怒りを増長させていたのかもしれないが、本人にその自覚は無い。

 

…それに、もし自覚したとしても、彼女は困惑するだけだろう。

 

ーーーーどうして、自分はこんなにもこの少年に肩入れするのだろうか?………と。

 

 

「…………命は何よりも優先されるべきモノよ。それを、良く覚えておいて。」

 

 

 そう暗い声でシンジに語りかけたミサトは、そのまま部屋から出ていった。

 

 そっとドアが閉められた後、ツカサがドアの方を見つめながら口を開く。

 

「…彼女は、やけに君の事を大事に思っているらしいね。」

 

 それを聞いたシンジは、不意をつかれたかのように顔を上げた。

 

「僕の事を?」

「ーーーーそうでなきゃ、あそこまで怒らないさ。…人命優先はもちろん私達のモットーであり、徹底すべき常識でもあるが、彼女は君自身が自分の命を危険に晒した事に、何よりも怒っていた様だ。ーーーーさて、突然だが1つ昔話をしよう。」

「……昔、話?」

 

 ツカサはシンジの方を見る。ーーーーそして、彼は壁にもたれたまま話し出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「…さてさて…昔話と言っても、どこから話そうかな……。」

 

 ツカサは顎に手を当てて、綺麗な茶色の瞳を少し宙に彷徨わせる。

 そして暫く考え込んでいた様だったが、やがて納得したかの様に頷いた。

 

「…うん、うん…そこからが良いかな。じゃ、始めようか。」

 

 

ーーーーーーこうして、加賀美ツカサによる『昔話』とやらが始まった。

 

 

「ーーーーーー葛城さんはね、〈南極事変(サウスポールショック)〉の生き残りなんだ。…知っているだろう?南極で発見された《第一使徒》が引き起こした未曾有の災害を。」

 

シンジは頷く。

ツカサは話を続けた。

 

「あの日、葛城さんは13歳だった。ーーーー彼女は()()と共に、南極へ行っていたんだ。……葛城さんの父は、偉大な科学者でね。南極で発見された《第一使徒》を研究する為に、調査隊を指揮していたのさ。…あの時は、誰しも第一使徒は死んでると思っていたからね。」

 

シンジは黙って聞いている。

 

「ーーーーしかし、予想に反して《第一使徒》は生きていて、調査団の活動によって目覚めてしまった。…葛城父率いる調査隊は一瞬の内に全滅したが、彼女だけは助かった。父親の命と引き換えに、助けられたんだ。」

 

…部屋の中には、彼の声だけが聞こえている。

 

「…その時、よほどショックを受けたんだろうね。葛城さんは失語症になってしまった。今こそ、メチャクチャ元気に話してるけど、当時の葛城さんは暗い人だったよ。ーーーー彼女が人命を最優先するようにしているのも、南極で()()()()に最も近く触れたからかもしれない。」

「そうだったんですか………。」

 

 シンジは相槌を打った。それと同時に、もしも自分が同じ状況に置かれた時、果たして自分の父親は自分を助けたのだろうか??と考えてしまう。

 

 すると、まるでシンジの心を読んだかのようにツカサが口を開いた。

 

「…葛城さんは、父親と折り合いが悪かった。ーーーー彼女の父親は、研究に没頭する余り、家族のことを蔑ろにしていた節があったからね。…幼い頃の葛城さんには、それが嫌だったんだろう。……キミも、余り碇司令と仲が優れている訳じゃ無い様だ。……昔の彼女と君には、少し重なる所がある。それが、葛城さんがキミに少し肩入れしている理由かもね。」

 

「……ツカサさんは、詳しいんですね。」

 

 シンジの思わず漏れた呟きに、ツカサは軽く笑った。

 

「ふふ……君が思う程じゃない。だが、確かに私は色々知ってるよ。」

 

 そう言って微笑んだ後、ツカサは自分以外誰にも聞こえない様な声で、小さく付け足した。

 

「ーーーー知りたくなかった事までね。」

 

 

「…さて!」

 

 一瞬彼に纏わりついた暗い気を払う様に、ツカサは明るめな声を上げると、部屋のドアをガチャリと開けた。

 

「ーーーー昔話はここまでだ。あんまり喋ってると碇司令に怒られる。キミも、もう帰りな。疲れているだろう?」

「あ……はい。結構…。」

 

 ツカサはシンジに手招きした。シンジは立ち上がると、ドアを押さえてくれている彼の横を、頭を軽く下げて通り過ぎていく。

 

 ドアの前ですれ違った瞬間、そっとツカサがシンジに呟いた。

 

「使徒を倒してくれてありがとう。シンジ君。…これからも、期待しているよ。」

「…!」

 

シンジは黙って頷くと、廊下を歩いていく。

 

 ツカサはその後ろ姿を暫く見送っていたが、彼が曲がり角を曲がって見えなくなった所でそっと踵を返した。

 

…そして、廊下には誰も居なくなった。

 

 

 

 

 

◇◆◇ ネルフ本部 司令室 ◇◆◇

 

 

 

 

 

 信じられない程広い部屋の中に、たった一つの椅子と机が置いてある。

 

 

 そして、その椅子に腰掛け、机に肘をついて両手を顔の前で組んでいる男が1人。

 

 

ーーーーネルフ司令『碇ゲンドウ』だ。

 

 

 彼の後ろ隣には、ネルフ副司令でもある冬月コウゾウが、何をする訳でもなく立っている。

 

 

「……2体目も撃破した。順調だな。碇。」

 

だだっ広い部屋に、冬月の声が木霊した。

 

「あぁ。」

 

 ゲンドウは、1ミリも動く事なく冬月の言葉に答える。

 

「ーーーーだが、まだ先は長い。この程度で浮かれていては、足元を救われるぞ。」

 

冬月は軽く微笑む。

 

「分かっているさ、碇。…しかし、周りに敵しかいないと言うのも、神経の擦り減る話だ。まさに茨の道…」

「しかし『道』だ。ーーーーなら、歩かねば。」

 

 ココで初めて、ゲンドウが少し顔を冬月の方へ動かした。

 

「敵は最も近くに居る。ーーーー冬月、()()()から目を離すなよ。」

「無論だ。」

 

 冬月は頷くと、ゲンドウが肘をついている机の上に目を落とした。

 そこには、一枚の顔写真付きの書類が置かれている。ーーーー顔写真は、加賀美ツカサの物だ。

 

「加賀美ツカサ。…国連IPEAからネルフへ派遣された〈E計画〉の特別顧問官。ーーーーだが、()()()()()と見ているのだろう?碇。」

 

冬月の問いに、ゲンドウは静かに頷いた。

 

「……あぁ。おそらく彼には、人類補完委員会の老人どもの息が掛かっている。ーーーー()()()()()()を察知されると厄介だ。今はまだ疑いを抱いていない様子。…このまま行けば良いがーーーー。」

「行かなければ?」

「ーーーー問う意味は無い。障害は排除されて然るべきだろう。」

 

 

 

ゲンドウは組んだ両手の下で、小さく嗤った。

 

 

 






まだ原作に沿ってる方だと思う。…まだね。

今のところ加賀美さんが、只のオリキャラ後方腕組み昔話お兄さんになってるから、彼の話も少し出していかないと。

果たして、上手く話に出来るか…ってのが、問題なんですがね。
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