完新世 エヴァンゲリオン   作:犬社長

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投稿再開です。
(但し、次回がいつに成るかはやっぱり未定。)





13〈そして友になる〉

 

 

 

 

 ミサトとの朝食を終えた後、シンジは普通に学校へ行った。

 

 いつもより余裕を持って校舎につき、まだ殆ど埋まっていない下駄箱に靴を入れる。

 

「…あ。」

 

 下駄箱の前を通り過ぎた時、ふと『鈴原トウジ』の名札がついた靴箱に、彼の靴が突っ込んである事にシンジは気付いた。

 

「……鈴原くん、朝早いんだ。」

 

 彼に屋上で殴られた事と、言われた事、そして昨日彼を助けた事が、シンジの脳裏に横切った。

 

(…う…ちょっと気まずいかも……。)

 

 そう思いながらも、教室に入らない訳にもいかず、シンジは階段を登って(3年の教室は1番上の階だ。)A組の教室に入る。

 

…確かにそこには、鈴原トウジの姿があった。

 

 教室には、シンジとトウジ以外誰も居ない。…開け放しになっている窓からは、朝練をしている運動部員の掛け声が、規則的に聞こえて来ていた。

 

「……おはよう。鈴原くん。」

 

 二人の席は近い。それに、教室にお互いしか居ないのに、挨拶をしないのもおかしいと思ったシンジは、取り敢えず挨拶をする事にした。

 

「…おぉ。転校生か。ーーーーえらい早いな」

 

 ぼんやりと窓の外を見ていたトウジは、シンジに振り返る。

 

「…す、鈴原くんも、朝早いんだ。」

 

 椅子に座りながら、シンジは彼に話しかけた。…別に話を続けさせるのは義務じゃないが、何となく『ーーーうん。今日は早く来たんだ。』だけで終わらせるのは、なんか変な気がしたのだ。

 

「…まぁの。」

 

 トウジの方は、どうも煮え切らない返事である。シンジが想定よりも早く来た事に、戸惑っている様にも見えた。

 

「…………。」

 

 会話が途切れたので、シンジはバックから教科書類を出し始めた。

 

 静かな朝の教室の中に、ノート類が立てる音だけが響く。

 

「………転校生。」

「…え?」

 

ーーーーと、ココでトウジが口を開いた。顔を上げるシンジ。

 

 トウジは、少し気恥ずかしそうな顔でボソッと小さく口を開いた。

 

「…すまんかった。」

「?…なにがーーーー」

「あの時、わしは転校生の事、何も考えんと殴ってしもた。……エバに乗って、使徒と戦うっちゅうモンが、どんなモンなのか何も考えんと酷い事言ってしもた。」

 

トウジは、軽く目を伏せながら独白を続ける。

 

「…オマケにわし等は勝手な事して、転校生やネルフのヒトに迷惑かけて……。ほんま、すまんかった。」

 

 彼はそっと椅子から立ち上がると、シンジに向かい合う。そして、真剣な顔で口を開いた。

 

「転校生。わしを殴れ。」

「ーーーーへっ?!」

 

突然の事に驚くシンジ。

トウジは、そんなシンジを手で促す。

 

「思いっきり、わしを殴れ。わしはお前に殴られやなアカン。殴られやな、気が済まへんのや。」

「……え、えぇ…。」

 

軽く引いてしまったシンジ。

 

「頼むで。デカイの一発お見舞いしてくれ。」

「……ほ、ほんとに、殴っちゃって良いの…??僕、人を殴った事なんて無いんだけど………。」

 

そう言いながら、椅子から立ち上がるシンジ。

 

「構わん。こうでもしてもらわんと、わしはケジメをつけられへん。」

「じ、じゃあ…遠慮無く…?」

 

 シンジには彼を殴る気なんてこれっぽっちも無かったが、ここまで真剣な顔で頼まれると、断るのも彼に悪い…と思って一発殴る事に決めた。

 

「え、えいっ!」

 

 何とも気の篭っていない掛け声の後、ペシッーーーーと、コレまた何とも拍子抜けな音が教室に響いた。

 シンジの拳は、トウジの胸あたりに当たって、彼を少しだけよろめかせる。

 

「ん……えらい弱いな…。ーーーーでも、まぁええか。」

 

 トウジは殴られた胸辺りを軽く撫でて、そっと呟く。心なしか、彼の顔が明るくなった様な気がした。

 

「…こ、コレで良かったのかな…?」

「あぁ。コレでエエで。転校生らしいわ。」

 

そう彼は笑って椅子に座る。

 

「兎も角。コレでチャラや。でも、このやり取りを転校生が気に入らんだら、わし何でもするで。大変な目に遭わせてしもた負い目があるしな。」

 

シンジは首を振った。

 

「ううん。そんな負い目感じなくても良いよ。…でもーーーー」

「ーーーーでも、なんや??」

「ーーーーよ、良かったら『転校生』じゃなくて、ちゃんとした苗字とかで呼んでほしい……なんて……」

 

 少し小さくなりながらシンジが放った言葉に、トウジはキョトンとした顔付きになった。

 

「む…。確かに何時迄も転校生じゃ、おかしいな。ーーーー分かった。今日から転校生の事、『シンジ先生(センセ)』って呼ばせて貰うで!」

「いや、何で先生(センセ)?!」

「これから宜しくやで、センセ!!」

「えぇ………。」

 

 

 

 シンジは知らない。トウジは、ちょっと変わった呼び方で他の人を呼ぶ事を。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

同日 第三新東京市 使徒残骸解体区画 

 

 

 

 

『B3ブロック。解体及び回収終了しました。引き続きーーーー』

「ーーーー徹夜で解体しても、ようやく3分の1が終わったトコ……って感じね。」

 

 無線が飛び交い、トラックが往来する住宅街を、ミサトとリツコは並んで歩く。

 

 ここは、初号機が昨日使徒〈シャムシエル〉と戦い、トドメを刺した場所だ。

 初号機は回収されたが、後に残された使徒の死骸は腐敗の可能性等も考慮し、早急に解体する必要があった。

 

 故に、今は徹夜で使徒の死体の解体作業を行なっているところである。使徒の周りに鉄製の足場が組まれ、高層ビル建設用のクレーンが何機も使徒の死体を囲む様は、大掛かりな工事現場の様だ。

 

 

「ーーーーで?何か使徒について分かったの?」

 

 ネルフ職員として現場監督を任されていたミサトは、隣を歩くリツコに話しかける。

 リツコは何も言わずに1枚の紙を差し出した。……ほぼ白紙だ。

 

「…なにコレ?」

「解析不能を示すコードナンバー。」

「ーーーーつまり、わけわかんない、ってこと?」

 

リツコは溜息混じりに頷いた。

 

「そう。使徒は粒子と波、両方の性質を具える光のようなもので構成されているのよ。私達の頭脳じゃ、コレが限界。」

「…でも、動力源はあったんでしょ?」

 

 ミサトの問いに、リツコは使徒の死体を見上げた。…死体は、殆ど鉄骨の足場で覆われているが、二人が今いる場所からは使徒の胸部ーーーー弱点であるコアがあった場所ーーーーが丁度見えている。

 

「〈S2機関〉。貴女の父親が提唱し、第一の使徒発見をもって証明された、失われる事の無い永遠の動力。ーーーーシャムシエルも、S2機関を持っていたと推測出来るわ。」

「ソレが使徒の動力源、って訳ね?」

「恐らくはそうよ。解体したコアの解析は現在進行中。…何かわかるとすれば、これからね。」

 

ーーーーどうせ何も分からないでしょうケド。…とリツコ小さく呟いた。

 

 

 

そして、場面は変わる。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

同日 NERV本部 総司令室

 

 

 

 

 

一組の椅子と机が有るだけの、だだっ広い部屋。

 

その部屋の中に、佇む男達が()()

 

 ネルフ総司令碇ゲンドウと、副司令の冬月コウゾウ。そして、特別顧問官の加賀美ツカサだ。

 

 ゲンドウと冬月は、加賀美と向かい合っている。ーーー対する加賀美は、今回殲滅された使徒シャムシエルの研究資料を手に持っていた。

 

「ーーー研究チーム総出で汎ゆる手を試しましたが、使徒の正体解明には至りませんでした。お手上げ状態、という奴ですね。」

 

加賀美の言葉が、広いだけの部屋に響く。

 

「コアはどうだ?…解析はしているのだろう?」

 

ゲンドウが静かに問う。

加賀美は資料に目を落としてから頷いた。

 

「解析は途中です。しかし、コアに関しては初号機との戦いでの破損が大きく、十分なデータが取れないと思いますがーーーーーー」

「構わん。少しでもヤツ等を知る事が、人類反撃の一歩になりうる。検体サンプルと同時に、回収したコアの解析を急がせろ。」

 

 相変わらず、口元で両手を組んだ格好のまま、ゲンドウは厳格に加賀美に命令を下した。

 

「かしこまりました。…余剰分は全て廃棄で宜しいですか?」

「ああ。」

 

頷くゲンドウ。

加賀美は小さく一礼してから、退室していく。

 

 あとには、彫像のように手を組んだまま動かないゲンドウと、その側に静かに佇む冬月が残るのみとなった……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

同日 12時00分 第壱中学校校内

 

 

 

 

 

「ーーーーーーセンセ〜!!一緒に飯食おや〜〜!!!」

「やぁ、碇。お邪魔するよ。」

 

 

……場面は再び変わり、第壱中学校にて。

 

 昼食の時間となり、一人で持参した弁当を食べようとしていたシンジの前に、トウジとケンスケの姿が現れた。

 

「えっ。…でもーーーーーー」

 

 遠慮しようとしたシンジだったが、彼が何かを言う前にトウジ達がシンジの隣へやってくる。

 

「一人で食べるより、二人三人で食べるほうが美味いってヤツよ!…それにーーー(トウジは小声になった。)ーーーわし等、いい場所知っとるんや。」

「良い場所?」

 

首を傾げたシンジの肩を、トウジが持つ。

 

「ほな、行くでセンセ!」

「えっ、ちょ…。」

「ゴメンな碇。トウジは押しが強いんだ。」

「えぇ……。」

 

 

 こうしてシンジは、半ば連行される形で教室を後にしたーーーーーー

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ーーーーーー彼等がやって来たのは屋上…では無く、校舎3階の一番端に位置する【音楽準備室】だった。

 

 カーテンが降ろされて、若干薄暗い準備室の中に入ったトウジは、内側から鍵を閉める。

 

 ケンスケは、部屋の奥から椅子と机を引っ張り出してきていた。

 

「ちと蒸し暑いが、窓を開ければそんな気にならん。…冬になれば、寧ろ温かいしな。」

 

 そう言ったトウジは、机の上に『焼きそばパン』をドサッと置いた。…それが彼の昼食なのだろうか?

 

「屋上じゃないんだね。」

 

 てっきり、屋上へ向かうのかとぼんやり思っていたシンジは、意外な場所に案内されて驚いていた。

 

「そうだね。屋上へ行く事もあるけど、アソコは他のクラスの人と出会すことがあるんだよね。」

 

 椅子に座りながら、ケンスケが口を開く。彼のは普通の弁当の様だ。

 

「おう。ーーー他の人が居ると、出来ひんからな。」

「…?何が?」

 

 首を傾げたシンジ。トウジとケンスケは目配せを交わした。

 

「そりゃあセンセ。話しにくい事や。話にくい事!」

 

 そう言ってから、トウジはシンジにぐいっと顔を寄せて囁く。

 

「ーーー例えば、誰それと誰それが付き合っとるとか、誰それのホニャララが好みとか、いわゆる『下らん話』ってヤツや!」

「…俺達は真剣だけどね。」ーーー隣で、ケンスケがボソッと呟きを漏らす。

 

 そう言ってきたトウジの顔を見て、『なるほど。』とシンジは思った。

 確かに、誰が聴いているか分かったもんじゃない屋上で、センシティブな話をするのは憚れるだろう。

 

「つー事で、わし等はここを良く使っとるって訳よ。ーーーま、取り敢えずセンセも食べよや。邪魔はせんでさ。」

 

 そうトウジに促されて、椅子に座るシンジ。彼の隣でトウジが焼きそばパンを頬張る。

 ケンスケも弁当箱の蓋開けに取り掛かった様だ。

 

「あ…それじゃ……いただきます。」

 

 そして、シンジも両手を合わせ、彼等と共に弁当を食べ始める。

 

 

 同じ年の人達と、取り留めの無い会話をしながら一緒に何かを食べるのは、シンジにとって初めての経験で、特段悪い気はしなかった。

 

 

 

 









文書データ:〈回収済み使徒残骸処分 完了報告〉


2016/9/8
・A1ブロック〜D4ブロックまでの撤去完了。
(責任者 葛城ミサト一尉)

・サンプルαからεまでの全サンプル回収完了。
(なお、コアの解析については、別途『資料E13』を参照する事。)
(責任者 赤木リツコ研究主任)

・廃棄サンプルのジオフロント格納開始。
(格納後、焼却処分予定。)
(責任者 加賀美ツカサ三佐 葛城ミサト一尉)


2016/9/10
・研究班、サンプルα解析完了。
資料提出済み。
(責任者 赤木リツコ主任)

・廃棄サンプルの焼却処分開始。
(責任者 加賀美ツカサ三佐)

2016/9/11
・研究班サンプルβ解析完了。
資料未提出。
(責任者 赤木リツコ研究主任)

・破棄サンプルの【このデータは削除されています】
(責任者 ーーーーーー)

2016/9/12
・サンプルβ解析資料提出完了。
(責任者 赤木リツコ研究主任)
・サンプルγ解析開始。
(責任者 同上)

・【このデータは削除されています】
(責任者 ーーーーーー)


〜中略〜


2016/9/22
・全サンプル解析完了。
・全資料提出完了。
(責任者 赤木リツコ研究主任)

・廃棄サンプルの全焼却完了。
(責任者 加賀美ツカサ三佐)



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