完新世 エヴァンゲリオン   作:犬社長

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15〈零号機〉

 

 

 

 

西暦2016年9月24日

 

 

 

 

 

……コポ……コポ……コポ……

 

 

 

 

 L.C.Lの中に混じった気泡が、ゆっくりと上に浮かんで見えなくなる。

 

 

 シンジは、一糸まとわぬ姿でL.C.Lに満たされた〈モニタリング用エントリープラグ〉の中に浮かんでいた。

 

 直ぐ隣のプラグ内には綾波レイが入っている筈だ。…もっとも、姿は見えないが。

 

(早く終わらないかな……)

 

ーーーなんて事を、浮かぶ気泡を見つめながら心の中で呟くシンジ。

 

『シンジくん?ーーー貴方、思考ノイズが生じているわよ。暇なのは分かるけれども、出来る限り何も考えないでね?』

 

 内蔵されているスピーカーから、リツコの声が聞こえてくる。

 

「…はい。スイマセン…。」

 

シンジは小さな謝罪の言葉を呟いた。

 

 

ーーーいまシンジとレイが行っているのは、定期的なシンクロ率の測定試験である。

 

 

…と言っても、シンジが特に何かをする訳ではなく、ただL.C.Lに満たされたモニタリング用のエントリープラグに入り、暫くプカプカしているだけだ。

 

 この時間はぶっちゃけ暇である。しかし、考え事をしていると先程の様に大人達から注意が飛んでくる為、シンジは心を出来る限り無にする様、必死な努力を続けるしか無いのだ。

 

 

(集中…集中………)

 

 

…コポ…コポ…コポ…

 

 

ーーーーーーこうして時間は過ぎていく。

 

 

 

今はまだ、全ては平和のうちに眠っていた。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

「はーーい!二人共お疲れ様〜!」

 

 

 シンクロ率測定が終わり、服を着てモニタリング用試験室から出てきたシンジとレイを待っていたのは、にこやかな笑みを浮かべた葛城ミサトであった。

 

「ありがとうございます、ミサトさん。」

 

 シンジは軽く頭を下げる。レイは相変わらず無反応だ。

 

「シンクロ率、また上がったわねシンジくん?やるじゃないの〜。」

 

ミサトが肘でシンジを軽く突く。

 

「そうですか。…特に実感ないな…。ーーー因みに、何%ですか?」

 

彼の問に、ミサトは手元の資料に目を落とした。

 

「44.5%ね。初回シンクロ時より4.5%アップよん!」

「へぇ……所でーーー(シンジはレイの方をチラッと見た。)ーーー綾波さんは??」

「50.6%よん。レイちゃんは前回と変化なしね。でも、シンクロ率を維持することも大事だから、変化無しってのは良いことよ。」

「へー、綾波さんも凄いね?ーーーシンクロ率50%越えてるんだ。」

 

シンジはそう綾波レイに話を振ってみた。

 

「………うん。」

 

 しかし、帰ってきた返事はたったこれだけ。話が続く気配すら無い。これでは、言葉のキャッチボールならぬデットボールである。……シンジが一方的に当てるだけの。

 

(わぁ……話、続かない…!)

 

 ココ最近は、ネルフでレイと顔を合わせることも多くなってきた。学校では殆ど話を交わさないが、せめて同年代が彼女しかいないネルフ本部では話をしてみよう…とシンジは思っている。結果は尽く撃沈だが。

 

「ーーーーーーさて。それじゃ、レイちゃんは〈零号機〉の再稼働に移りましょうか。」

 

 会話の続かなさに困惑するシンジの隣で、ミサトがレイにそう言った。

 

コクリ、と頷くレイ。

 

(零号機…か。綾波さんのエヴァだよね。)

 

ーーーそう言えば、自分と同じエヴァパイロットなのに、彼女のエヴァを一度も見たことないな……なんて思っていたのが顔に出たのか、横からミサトがシンジに声を掛けてきた。

 

「あら、シンジくんも一緒に見る?レイちゃんのシンクロテスト。コレから暇になるものね。…別に戦闘シュミしてても良いけど…どう?」

「え。」

 

シンジは数瞬考え、そっと頷く。

 

「……そう、ですね。見てみます。」

 

 こうして、シンジは綾波レイのシンクロテストを見守ることになった。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「全電源、オン。」

 

 

 そんな言葉と共に、真っ暗だった空間に電気が灯る。

 

そこに居たのは、山吹色の単眼巨人だった。

 

 

「……コレが綾波さんのエヴァ…。零号機?」

 

 

 零号機が居る場所と強化ガラスで隔てられたオペレーションルーム内にて、シンジは呆然と山吹色の巨人を見つめていた。

 

「そうよ。」

 

隣りにいる赤木リツコが、そっと頷く。

 

「ーーー使徒殲滅用決戦兵器:エヴァンゲリオンーprototype(試作機)β(ベータ)人造人間(ヒトガタ)・零号機〉。ーーーそれが正式名称。」

 

(……名前なっが。)

 

 真剣な口調でリツコが呟いた零号機の正式名称に、シンジは少々げんなりした。

 

 自分の『汎用ヒト型決戦兵器:人造人間エヴァンゲリオン・初号機』もそこそこ長いが、零号機の方がもっと長い。

 

「…あの……なんでそんなに名前を長くする必要が合ったんです??」

 

 

 思わず口に出たその疑問に、オペレータールームは静まり返った。

 

 

「…………。」

「…………。」

「…………。」

 

 

誰しも微妙な顔つきを浮かべている。

 

 オペレーターの伊吹マヤだけが微かに苦笑いを浮かべているのを見て、シンジは(ーーーきっと、みんなそう思ってたんだな…。)と、一人察するのであったーーーーーー。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 シンジがオペレータールームの空気を微妙にしている間にも、レイのシンクロテストは進む。

 

 

 

「電源、コンタクト。」

 

 響くリツコの声。オペレーター達が素早く動き始める。

 

「稼動電圧、臨界点を突破。」

「了解。フォーマットをフェーズ2へ移行。パイロット、零号機と接続開始。」

「回線開きます。」

「パルスおよびハーモニクス正常。」

「シンクロ、問題なし。…オールナーブリンク、終了。」

「中枢神経素子に、異常無し。」

「再計算、誤差修正無し。」

「チェック2590まで、リストクリア。」

 

 ここまでは順調に進む零号機のシンクロテスト。マヤが、真剣な顔付きでモニターを見つめる。

 

「絶対境界線まで、後2.5、1.7、1.2、1.0、0.8、0.5、0.3、0.2、0.1、突破。ボーダーライン、クリア。ーーー零号機、起動しました。」

 

ギラッ、と零号機の単眼に確かな光が宿った。

 

「全システム起動確認。ーーー続いて、連動試験に入ります。」

「了解。モニタリング、継続して。」

「了解。…連動試験フェーズ1開始。」

 

 その後も試験は続いたが、今回は特に異常も起きていないようだ。

 見守っていたミサトやリツコの顔にも、明らかな安堵の表情が浮かぶ。

 

「今度は上手く行ったようね。」

 

リツコの呟きに、ミサトは相槌を打って口を開く。

 

「そうね……でも、前はなんで失敗したのかしら…?」

「それなら分かってるわ。精神的不安定よ。それも、取り乱すほどのね。」

 

ミサトは肩をすくめた。

 

「あの子が取り乱す、か……。無感情無反応無表情の申し子だったのに、一体何故かしら?」

「さぁ……あの子、何も喋らないから…。」

 

ーーーそんな二人の会話を聞き流しつつ、シンジは強化ガラス越しに零号機を見つめていた。

 

(何だか……見つめられてる気がするな……。)

 

 強化ガラスに手で触れながら、シンジは零号機の特徴的な単眼を見る。

 その赤色のレンズが、コッチを見つめている気がやたらとするのだ。

 

ーーー有り得ない話だ。零号機自体に意思なんて無い。零号機が見つめてくるのであれば、ソレは零号機とシンクロしているレイがシンジを見ているわけで、決して零号機単体がこちらを見ている訳では無い。

 

 なのに、感じる視線は間違いなく『零号機』の物だった。…レイでは無い。確かに零号機の視線なのだ。

 それに、レイは目を閉じて連動試験を行っている。…シンジの方を見てすら無い。

 

(なんか…初号機でも同じ事を最近思う気がする…。)

 

 それは、最近になってから感じる違和感だった。エヴァの視線…。果たして、この物言わぬ半機半人が勝手に此方を見てくることなんて有るのだろうか…??

 

 

 

 

 

ーーーーーーと、その時オペレータールームの静寂を貫いて、けたたましい警報が鳴り響いた。

 

 

 

 

「?!」

 

弾かれたように顔を上げる面々。

 

同時に、中央発令所から通信が入る。

 

 

 

『ーーー塔ノ沢第二より入電!!ーーー使()()()()!!()()()使()()が出現しました!!!』

 

 

 

 

それは非日常の始まりを告げる第一報であった。

 

 

 

 

 








〈prototypeーβ〉があるって事は、〈prototypeーα〉もどっかに無いとおかしいよなぁ??



尚、詳しい説明は未来の私に託すことにします()
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