「………2ヶ月ぶりだな。」
「ああ。」
「犬社長だ。」
ーーーーそれを、辺り一面灰色の
「……………。」
その真紅の瞳は、地球の方を真っ直ぐ見つめていた。
ーーーーまるで、何かを見守っている様に。
そんな青年の近くに、黄色の触手のようなツインテールを揺らした少女らしき影が、スキップしながら近付いて来た。
「ーーーーどうだ、今回の〈種〉は!今回はお前に代わって、このアタシが蒔いてみたんだぞ?!」
月面に響く矢鱈と元気の良い声に、白髪の青年は苦笑する。
「………あぁ。素晴らしいよ
『カマエル』ーーーーそう呼ばれたツインテールの少女は、ニヤリと笑った。
「ーーーー《扉》の中を掻き回してたら、偶然出て来たのさ。産まれ損なったヤツだったみたいだがな!」
白髪の青年は笑みを絶やさない。
「それでも役に立ってくれそうだ。……今の《人類種》の技術では、あの種を打ち破るのは厳しいだろう。エヴァンゲリオンも、稼働しているのは僅か3、いや2機。……
そう述べる青年の隣で、カマエルが月面をぴょんぴょんと飛び跳ねる。跳ぶ度に、彼女の触手の様なツインテールがウネウネと揺れた。
「へっへへ〜。つまりアタシ等の勝ちって事だろ??やったな
『ザラキエル』ーーーーカマエルからそう呼ばれた白髪の青年は、また小さく苦笑した。
「……油断はするなよ。あのタイプは貴重な種だ。
カマエルは飛び跳ねながら、ニヤリと笑う。
「へへ、わーってるよ。安心しなザラキエル。アタシを誰だと思ってる?」
「…………なら良い。精々見守らせてもらうよ、カマエル。」
そう小さく呟いたザラキエルは、再び目線を遥か遠くの地球へと戻したのだったーーーーーーーー
◇◆◇
ラ──────────
ラ──────────
蒼穹に響く、澄み切った歌声。
ラ──────────
ソレは天使の唄声か、
ラ──────────
……或いは悪魔の遠吠えか。
◇◆◇
「目標は!?」
発令所に駆け込んだミサトが目にしたのは、主モニターにデカデカと映る、
「目標、塔ノ沢上空を通過中!真っ直ぐジオフロント直上を目指している模様!!」
オペレーターの日向マコトが、ミサトの方を振り返って答える。
「……ココ狙いね。サキエルやシャムシエルもそうだったけど、何で使徒は真っ直ぐココを目指して来るのかしら…。」
ミサトの疑問に答えられる者は居ない。…今は、まだ。
「総員、第一種戦闘配置。……初号機の出撃準備急げ。」
ミサトの後ろ上から、総司令『碇ゲンドウ』の静かな声が降って来た。彼の隣には、冬月と加賀美が控えている。
「了解。」
ミサトは後ろをチラリと振り返ってから、オペレーター達に指示を伝えた。
「初号機出撃準備!」
『了解!!』
ーーーーこうして、発令所は慌ただしく動き始める。
◇◆◇
「…今までの使徒とは、毛色が違うな。碇。」
動き出す発令所を一段高い司令席から見下ろしながら、冬月が隣で手を組むゲンドウに話し掛ける。
「あぁ。コードネーム〈ラミエル〉またの名を《タイプ-R》だ。」
「……委員会が恐れる相手だな。零号機は使えるのか? 再稼働は成功した筈だが。」
ゲンドウは、1ミリ足りとも動かずに答える。
「零号機はまだ戦闘に耐えん。初号機で様子を見る。」
「そうか。」
短く会話を交わす2人の横で、加賀美が小さく呟いた。
「………頑張って下さい、碇さん。」
◇◆◇
ーーーーL.C.Lに包まれた体に、強いGが掛かる。
ガコン……と重々しい音が響き渡り、シンジを乗せた初号機は第三新東京市の地上へと姿を現した。
空は驚くほどの青空。
靡く白雲を背景に、青い正八面体が浮かんでいる。
(アレが今度の敵ーーーーーーーー)
シンジは、コックピットからラミエルを睨み付けつつ、言いようの無い恐怖感に囚われていた。
ーーーーなんというか、
今まで戦ってきたサキエルやシャムシエルとは違い、およそ生命らしさを全く感じさせないフォルム。
空に浮かぶその姿からは、いかなる感情も感じ取れない。
次に何をしてくるのか、どんな事をしてくるのか、何も読み取れない。
『初号機地上到着…最終安定装置解ーーーーーーーーーーーー』
刹那、オペレーターのアナウンスを待たずしてラミエルが動いた。
「?!」
ラミエルの姿が、まるで流体で出来ているかのように変形する。
空に響き渡る変形音は、無機物めいた見た目からは想像出来ない、肉と骨が無理矢理変形していくような生々しい音ーーーーーー
『目標内部に高エネルギー反応ッ!!!円周部が加速していますッッ!!』
シゲルの焦ったような声が遠くに聞こえる。
そして、あっという間に十字架のような姿となったラミエルから、地上に到着したばかりの初号機目掛けて、1条の光線が放たれた。
ソレは、未だ安定装置に拘束されたままの初号機の胸元へ、激しい火花と共に直撃する。
この間、僅かコンマ5秒。
「ーーーーうわぁあぁぁあァァァァァァッ?!?!」
突如としてシンジの胸に穿たれた灼熱の波動。
A.Tフィールドなど何の意味もなさず、余りの高熱に初号機の装甲が融解を始める。
『マズい!!ーーーー初号機を再格納して!!』
ミサトの焦ったような声が、一瞬で泡立ったプラグ内に木霊する。
『っ!駄目です!!格納機能が熱でやられました!溶着してしまってますッ!!』
ーーーーと、マヤの声が叫んだ。
『区画ごと下へ落して!!強制緊急収納よ!!』
そうミサトが叫び返した瞬間、シンジの体に再びのGが掛かった。
ーーーー初号機が居る区画ごと、ジオフロントの中へ落とす様に格納されたのだ。
しかし、今のシンジには何も感じ取ることが出来ない。
胸を貫く凄まじい熱エネルギーの余波の前に、息をする事さえ出来ず、ただただ苦しむより他なかった。
(熱い…!痛い…!!苦しい…!!ーーーー嫌だ!ーーーー僕はーーーー)
そして、泡立つL.C.Lの中で、シンジはゆっくりと意識を手放したーーーーーーーー。
「次回の投稿の予定はあるか?」
「いや、まだ未定だ。」
「シナリオの大幅な後退は避けられないぞ?」
「構わん。やれ。」
「やれやれ。…また小説を書き直さねばならん。」