完新世 エヴァンゲリオン   作:犬社長

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18〈葦の船を編む〉

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

ーーーー白い雲が後方に流れていく。

 

 

…此処はNERVが保有する輸送用VTOL機の機内。

 

その中には、葛城ミサトと日向マコト、そしてNERV諜報部所属の男の姿があった。

 

 3人は今、ミサトが立案した使徒狙撃作戦実行の為、作戦の鍵を握る戦自の極秘開発兵器ーーーー【大出力陽電子自走砲】の徴収へと、向かっている所だ。

 

「しかし、戦自研の極秘開発兵器ですよね?」

 

ミサトの隣で、マコトがウンザリするような声を漏らす。

 

「多分ーーーーいや、確実に向こうはゴネて来ますよ??そもそも、NERVと戦自は犬猿の仲ですし。……権利の関係で一悶着有りそうですね。」

 

ミサトは鼻をフンと鳴らした。

 

「分かってるわよ。ーーーーでも、コッチは人類の運命を賭けてんのよ?この期に及んでまで、地位とか権利とか気にする老害は、部屋から締め出しなさい。分かった?」

 

 その強気なセリフに、マコトと諜報部の男は互いの顔を見合わせる。

 

ーーーー流石は葛城さんだ。…口に出さずとも、互いに思う事は1つであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーその後、ミサト達は無事に戦自研から目当ての物を強だt…貰い受ける事に成功し、意気揚々と帰路に着いた。

 

 

 そして、強力な助っ人兵器を手に入れた事で、使徒狙撃作戦は遂に本格始動する事になる。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「ーーーーーーーー射撃ポイントは、使徒との距離や見晴らし等も考慮し、二子山山頂とします。」

 

 

NERV第四作戦会議室の中に、ミサトの力強い声が響く。

 

「私達が戦自から徴収した陽電子砲は、整備班が現在エヴァ用に改造中。狙撃システムと合わせて、現在急ピッチでやって貰ってるわ。」

「……なるほど。」

 

 会議室の片隅で話を聞いていた赤木リツコが、机の上に広げられた第三新東京市の地図を見下ろす。

 其処には既に様々な人の手で、あらゆる書き込みがなされていた。ーーーー1番目立つ真っ赤なマーカーで丸されている場所が、今作戦を実行する舞台。…二子山の頂上である。

 

「しかし、随分と無茶な計画を立てたものね。葛城作戦部長さん?」

 

リツコの顔がミサトへ向いた。

 

()()()()()。ーーーー使徒ラミエルのA.Tフィールドを貫通する為に必要な、()()()()()k()W()もの電力エネルギーを日本全国から掻き集めて確保するなんて。……相変わらずの、トンデモ発想ね。」

「相手はコッチの常識が通じないトンデモ生命体だもの。多少無茶しないと張り合えないわ。そうでしょ??」

 

ミサトは軽い口調でリツコに言葉を返した。

リツコは反論せずに息を吐く。

 

「ま、現状取れる策なんてコレしか無いわね。……アフタープランは?」

「勿論無いわ。ぶっつけ本番一発勝負。…最初っからそうだったじゃない。」

「そうね…。」

 

 リツコは苦笑した。……たしかにそうだ。最初から、人類(じぶん)達の作戦なんて、薄氷の上を渡るが如きモノの連続だった。

 だがそれでも、今はやれる事をやるだけだ。奇跡とは、自らの手で起こす物なのだから。

 

 

ーーーーパンッ、とミサトが手を打つ。

 

 

「では、これよりヤシマ作戦を開始します。ーーーー人類の行く末を決める一大作戦よ。失敗は許されないし、失敗すれば待つのは滅びだわ。…だけど、私達ならやれる。」

 

 部屋に集う面々を見渡しながら、ミサトは硬い意志の籠もった顔で言葉を続けた。

 

 

「手筈通りに行くわよ。ーーーー総員!行動開始!!」

 

『『『了解ッッ!!!』』』

 

 

オペレーター達の力強い声が重なったーーーー。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

『ーーーー特務機関NERVより、通達です。今夜午前0時より、全国で大規模な停電があります。該当時間は、全ての電気供給が一時断絶いたしますので、皆様のご協力お願い致します。繰り返しお伝えいたします。今夜午前0時よりーーーー』

 

 

…街中ーーーーいや、日本中に鳴り響くアナウンス。

 

 ソレはテレビ、スマホ、新聞の号外と、媒体を問わず、日本全国を駆け巡る。

 

 

全ては来たる決戦の瞬間の為に。

 

 

 

 

 

〜PM16:40〈二子山仮設基地〉〜

 

 

 

 

 最終作戦会議より数時間後。

 

 狙撃ポイントである、二子山の山腹に造られた仮設基地の中には、ミサト達の姿があった。

 

「ポジトロンライフルはどう?順調??」

 

ミサトの問いに、作業員の1人が振り返ってサムズアップした。

 

「大丈夫です!技術開発部第三課の意地にかけても、後3時間で形にして見せますよ!!」

 

隣ではリツコがオペレーター達に進捗を訪ねている。

 

「エネルギーシステムの見通しは?」

 

『電力系統は、新御殿場変電所と予備2箇所から、直接配電させます。』

『現在、引き込み用超伝導ケーブルを、下二子山に向けて敷設中。変圧システム込みで、本日22時50分には、全線通電の予定です。』

 

 問いに答えたオペレーターたちの通信が、次々と流れ込んできた。

 

「了解。狙撃システムの進捗状況は?」

「組立作業に問題なし。作戦開始時刻までには、なんとかします。」

 

ーーーー此処でミサトが隣から口を挟む。

 

「エヴァ初号機の状況は?」

「現在、狙撃専用のG型装備に換装中。あと1時間で形に出来ます。」

 

それを聞いたミサトは、一先ず安堵するように頷いた。

 

 

「了解。あとは、パイロットの問題ね……。」

 

 

 そう呟いたミサトは、今は見えないジオフロントの有る方角へと、少し憂う様に顔を向けたのだった…………

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

「う………うぅ…ん…。」

 

 

ーーーー()()()()()()

 

 

「ーーーーあ…。」

 

開いた目に映るのは、真っ白な医務室の天井。

 

「…………知ってる天井だ。」

 

天井を見上げたまま、シンジはポツリと呟いた。

………体がとても重い。そのくせ、頭は何故かスッキリと冴えていた。

 

(ーーーー僕は…負けたんだ。あの一瞬で…………)

 

 少し混乱する思考を整理し、シンジは小さな息を吐く。

ーーーー少なくとも、自分は死んでない。其れは喜ぶべき事なのだろう。

 

(………でも……もう…()()()()()なんてしたくないよ………。)

 

 まだ自分が生きている事への安堵の思いが増すたびに、比例するようにして、死への恐怖も湧き上がって来る。

 

 こうして生きているという事は、またアレに乗る時が来るという事でーーーーーーーー

 

 

「ーーーーーーーー()()()()()。」

 

「!!」

 

 

ーーーー突如、自分の真上に人形の様な顔が現れた。

 

 真っ黒な、星の無い夜空を思わせる髪。一切の感情を感じ取れない、人形の様な顔。ーーーー零号機パイロットこと1stチルドレン、綾波レイだ。

 

「わ………びっくりしたぁ……綾波さんか…。」

 

 シンジは目を瞬かせながら、自分を見下ろす綾波レイの無表示な顔を見る。

 一方で彼女はそっと顔を引くと、滑らかな動きで自分のスマホを取り出した。

 

 そして、恐らく画面に映し出されているであろう文書を、抑揚の無い声で話し出す。

 

「明日、午前0時より発動される、ヤシマ作戦のスケジュールを伝えます。ーーーー碇・綾波の両パイロットは、本日17:30ケイジに集合。ーーーー18:00初号機および零号機起動。ーーーー18:05発進。ーーーー同30、二子山仮設基地到着。以降は別命あるまで待機。ーーーー明朝、日付変更と同時に作戦行動開始。」

 

 ほぼ一息で言い切ったレイは、小さく息継ぎをすると、シンジが寝ているベットの側に置いてあった服を手に取った。

ーーーーシンジの服と、プラグスーツだ。

 

「はい。コレ、貴方の。」

「…あ、ああ。ありがとう…。」

 

2つの服を受け取るシンジ。

 

「あと、コッチ、食事だから。」

「…!」

 

 続いて自分の前に差し出されたトレーを見て、シンジは目を伏せた。

 

 

………今は、どうにも食欲が湧かない。

 

 

「………今はいいよ…。食べる気がしないんだ。」

「あと少しで出撃よ。」

 

淡々と返すレイ。

 

『出撃』ーーーーその言葉が、シンジの胸に深々と沈み込んだ。

逃げたくても逃げられない、呪いの言葉の様に。

 

「またアレに乗るのか………。」

 

プラグスーツを持つ手が震える。

 

「そうね。」

 

 

「………怖いよ。」

 

 

ポツリとシンジは呟いた。

 

 ありありと感じた死の実感が、彼からここ最近手に入れたばかりの僅かな勇気を、奪い去らっていった。完膚無きまでに。

 

「なら、そのまま寝てなさい。」

「!?」

 

突き放すようなレイの言葉に、シンジは思わず顔を上げる。

レイはなんて事も無い様に話を続けた。

 

「もし貴方がそうするのなら、初号機には私が乗る。パーソナルデータの書き換えなら、いつでも出来るもの。」

「ソレは…っ!」

 

困惑するシンジ。

レイは踵を返し、出口へと歩き始めた。

 

「綾波…!」

 

思わず、シンジは彼女を呼び止める。

 

「……なに?」

 

 振り返った彼女に、シンジは問い掛けた。…問い掛けない訳には、いかなかった。

 

「綾波さんは……怖くないの…??」

 

……レイはシンジを見つめる。

 

やがて、彼女はポツリと呟いた。

 

 

「私には、コレしか無いもの。」

 

 

 その言葉の真意を解するより先に、彼女は扉の向こうへ姿を消す。

 

孤独に残されたシンジは、1人ベットの上で俯くのだった………

 

 

 

 

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