話の最後に、この小説最大の『原作との差異ポイント』があるので、宜しく〜
一気にエヴァっぽく無くなるかも…
『ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッッッッッ!!!!!』
広い空の下、巨人は叫び続ける。
……その声は野に満ち、山に木霊し、天に轟いた。
「ーーーーヴヴッッッ!!」
ひとしきり吠えた初号機は、ばね仕掛けの人形の様に飛び起きると使徒と向かい合う。
その一連の動きに、さっき迄の様な不安定さは見られない。まるで、別の何かが乗り移ったかの様にキレのいい動きだった。
ーーーーそして初号機は勢いよく体を沈めると、アスファルトの道路を蹴って空へ飛び上がる。
蹴り砕かれる地面。
一気に100メートル近い跳躍を見せた初号機は、上空で宙返りを決めると、そのまま使徒目掛けて飛び掛かった。
ーーーードズンッッッ!!!
…上空から降ってきた初号機を体で受け止める使徒。…衝撃が大地を揺らす。
飛び掛かり攻撃を受け止められた初号機は、そのまま両足で使徒を蹴り飛ばして大地に着地した。
ーーーーズシィンッッ!!
再び揺れる大地。
「ガヴヴゥッ……!!」
ーーーー獣の様な唸り声を上げながら、初号機が再び使徒に迫る。
初号機の伸ばした右手が、使徒に触れようとしたその時。
コ────────ンッッッ!!!!!
伸ばした手が使徒の手前で不自然に止まった。
よく見ると、使徒と初号機の間に光を帯びた壁の様なモノが張られている。
……まるで、透明なバリアの様ーーーー。
「ーーーーA.Tフィールド!!」
ミサトが、光る壁を一瞥して口を開いた。
隣でリツコも畏れる様に呟く。
「やはり〈A.Tフィールド〉がある限り……使徒に干渉する事は出来ない……!!」
《A.Tフィールド》。
正式名称を《Aboslute Terror Field》と言い、日本語に訳すと『絶対恐怖領域』である。
その正体は、心理学的側面に於いて自身と他者の間を隔てる心の壁の様なモノ……らしい。
そして使徒は、この『絶対恐怖領域』を物理的に展開することができると言う、最高に意味不明な生命体なのだ。
かのN2爆弾が意味を成さなかったのも、全てはA.Tフィールドによる防御があったからである。
「……A.Tフィールドの前には、あらゆる干渉は無力化される……何故なら、A.Tフィールドは『拒絶の意思』そのもの。他者からの干渉を拒むと言う、『概念』。」
リツコの重々しい呟きが発令所に響く。
「………絶対的な拒絶の前には、力押しなど無意味だわ。」
……そう囁くリツコは、モニターの向こうをジッと見つめた。ーーーー相手の守りは盤石。さぁ、初号機は如何する???
「………………。」
モニターの向こうで初号機がバリアから右手を離す。そして、使徒に折られた左腕を徐に顔の前に持ってきた。
「なにを………?」
ーーーーバキ…ゴキ…メリ…グチャ…ッ!
折れている筈の左腕が震え、骨と肉の混ざり合うような嫌な音が響く。そして、左腕の傷口が盛り上がって塞がった。
……損傷が治ったのだ。
「初号機、左腕を復元!!」
「じ、自己修復ですって?!」
「有り得ない………。」
驚きに包まれる発令所。
初号機は、まるで感触を確かめるかの様に左腕を軽く動かすと、今度は両手を使って使徒のA.Tフィールドに掴みかかった。
同時に、初号機をモニタリングしていたオペレーターの1人が画面を見つめながら叫ぶ。
「…初号機、A.Tフィールドを展開!!」
メキメキ……と使徒のA.Tフィールドが歪み始める。
「ーーーー使徒のA.Tフィールドを『中和』していきますッ!!」
「………侵食しているんだわ。」
リツコがそっと呟く。
『ウオオオオオオオオオオオオンッッッッ!!!!!』
彼女達の見る先で、A.Tフィールドを展開した初号機が吠えた。
同時に、音を立てて使徒のA.Tフィールドが引き裂かれる。
そして、もはや阻むモノの無くなった使徒の顔面に、初号機の拳が突き刺さった。
『キュオオオン…ッ?!』
殴られた使徒が初めて苦悶の声を上げる。更に初号機の回し蹴りが腹部に炸裂し、使徒は吹き飛ばされた。
吹き飛ばした使徒目掛けて、爆速タックルをかます初号機。
そのまま、使徒と一緒に複数のビルをぶち抜いて大地に倒れ込んだ。
……立ち込める粉塵が晴れると、そこには使徒に馬乗りになっている初号機が居た。
初号機は、左手で使徒の両腕を纏めて握りしめている様だ。
「……………。」
そして爛々と輝く初号機の目がスッと細められると、使徒の両腕がべキリと握り潰された。
ゴシャッ、と肉が潰れる音が響いて使徒の両腕から青い体液が飛び散る。
初号機は手を使徒の腕から離すと、今度は使徒の胸元に掴みかかった。
……使徒の胸部には、赤くて丸い玉のような物が埋まっており、更にその周囲には肋骨のような突起物が突き出ている。
初号機が掴んだのは、その突起物だった。
ーーーーグシャッッッ!!!!
音を立てて突起物が左右に無理やり引き離され、周りの肉が抉れて赤い玉が剥き出しになる。
剥き出しになったソレに、初号機は両手で作った握り拳を叩き込んだ。
ーーーーガツンッッッ!!!
赤い玉にヒビが走る。
ガツン!ガツン!ガツン!ガツン!ガツン!
何度も、何度も繰り返す、赤い玉への殴打。
『キュオオオオオ………ッッッ!!!』
堪え切れなくなった使徒は、初号機に全身で覆いかぶさる様に起き上がると、初号機にがっぷりと組み付いた。
ーーーーキュイィィーーーーン……
組み付いた使徒の体から、光が溢れ出す。
「……自爆ッッッ?!」
ミサトが使徒の取った行動の真意に気付いたと同時に、初号機と使徒を中心にして大爆発が起きた。
天高く舞い上がる、十字架状の光。
ーーーーーーーー広範囲を巻き込んだ大爆発を、空から大きな月が見下ろしていた。
◇◆◇
画像が乱れている。
…大爆発によって、大気中の磁気が乱れているのだ。
「……初号機は…??」
砂嵐となった主モニターを食い入る様に見つめながら、ミサトが小さく呟く。
「…間も無く、映像回復します。」
そんなオペレーターの声が聞こえた後、パッと画面が元に戻った。
………其処にはーーーーーーーー初号機が立っていた。
「エヴァ初号機……。」
リツコの呟きが漏れる。
…耳をすませば、ズシン…ズシン…という初号機の足音が聞こえてきていた。
使徒の大爆発によって火災が起きている街を歩く、紫紺の巨人。
揺らめく炎が巨人を背後から照らし、巨人の姿は逆光で黒い影となって浮かび上がっている。
「…………。」
「…………。」
無言になる発令所。
……ソレは…使徒を倒した正義のロボットの様には見えなかった。
まるで悪魔か……或いはーーーーーーーーーーー
「…………コレが………エヴァンゲリオン 。」
ミサトの呟きが、発令所にやけに大きく響いた。
………
「…最初の種は砕かれたか……。」
灰色が広がる荒野に、誰かが立っていた。
真っ黒な空に揺れる少し長めの白い髪。…但し真っ白では無く、少し赤色が差し色として入っている。更に、頭の両端から『何か』が突き出ていた。
性別は、男だろうか?
「起動したのは、エヴァンゲリオン…。リリンの生き残りは足掻くつもりよ………。」
隣に立っている女性らしき人影が口を挟む。
赤紫色の髪の毛を腰まで伸ばしており、目は薄く閉じている。彼女も最初の男と同じく、頭の両端に何かがある。
………アレは………『角』だろうか??
「ーーーー
ーーーー2人の男女の隣から、
黄色のツインテールが、
その先端は、まるで生きているかの様に常に蠢いていた。……恰も触手の様だ。
他の2人よりも背丈の小さい彼女の頭にも、やはり角の様なモノがある。
「……しかし、《我々》の手段は限られている。」
ーーーー白髪の男が、黄色い少女を窘める様に口を開いた。
「《種》の数はあと僅かだ。芽吹かせたとしても、今回の様に消し去られてしまっては意味が無い。」
話し続ける男を、横から太陽が照らし始めた。
「……我等の悲願成就の為には、コレが最後のチャンスなのだ。」
……太陽に照らされても、まだ尚暗いままの空。…それもそうだ。
何故なら此処はーーーーーーーー
「全ては、リリスとその民を滅ぼす為に。」
白髪の男は手を広げる。
「嘗て諦観された神殺しを、再び始める時だ。」
………そう言って、男は『地球』へ手を伸ばした。
ーーーーーーーー此処は、地球より38万キロ彼方に浮かぶ衛星……即ち、『月』。
永遠の闇たる宇宙に浮かぶ、白き星。
「…そうね。始めましょう。」
「…おう。今度は必ずーーーー。」
ーーーー月面に太陽光に照らされた3人の影が落ちる。
その影は、人の形をしていなかった。