なんだかやべぇ事になりもうして。   作:灯火011

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見知らぬナントカ

 目覚めたときには、私は見知らぬ液体の中だった。いやいやいや、そんな馬鹿な事があるか?

 私は映画館でシンなエヴァを見ていたんだぞ?最高のエンディングを見て、万感の思いを込めて目を瞑った次の瞬間これって、何だ?

 

 戸惑いながら周りを眺めてみれば、どうやら、同じようなオレンジの液体が入ったガラス管のようなものが立ち並んでいる。中身はぼやけて見えにくい。しかし、不思議なもので、気持ちはどうも落ち着いている。

 

「…」

 

 どうやら言葉はまだ発せないらしい。音にならない。というか、呼吸すら怪しい。感覚的には息を吸って、吐いてるのだが、間違いなく私の肺はこの液体に満たされている。だがしかし、窒息する素振りはない。さてさて、これはどういうことなのやら。

 

 軽く身体を動かし、ガラス管に触れてみる。ふむ、冷たいな。そして今度は、拳を握ってガラスを叩いてみる。ゴン、と鈍い音がしたが、どうにもビクともしない。これは、本格的にどうにもならないらしい。

 

「…」

 

 叫ぼうとしたが、やはり、水中では言葉にならない。これは、万事休すか。

 

 ふと、自分の手のひらを見る。と、どうやら見知らぬ手のひらになっている。華奢だ。更に、自分の身体を見て見れば、どうやら女になっているらしい。可笑しい…と思おうとしたが、どうも、自分の記憶というものが曖昧で、なぜ可笑しいと思ったのか、それすらも判らなくなってくる。

 

「―――目――早すぎ――」

 

 と、その時だ。なにやら人らしき姿が見えた。水中から見る彼らの姿はぼやけているが、どうも、白衣を着ているらしい。それらがせわしなく動いている。と、その時だ。

 

 ゴボ、と音を立てて、ガラス管の中、私の足元から液体が抜け始めた。重力が身体にかかり、へたりと座り込む。どうやらこの身体、筋力も無いらしい。そして、ガラスが退かされる。

 

「…ここ、は」

 

 空気に触れて、ようやく声が出せた。やはり、違和感がある、しかし、どこか効き馴染みのあるよく通りそうな声だ。そして、ガラス管を退かされたおかげて、白衣の連中の姿と、ガラス管がよく見えるようになっていた。…どうやら、あまり状況は良くないらしい。なんせ、ガラス管に入っている連中の顔がみんな同じだ。

 

「これはこれは、自我があるのか!ははは、やはり、想定外とは起こるものだ。お早いお目覚めだな」

 

 なにやら一人で舞い上がっている科学者らしき男。人を見て想定外などと言うもんじゃないぞ、と文句を言おうにも、まだ身体が付いてこない。

 

「さて、座り込んでいる暇はないぞ。お前の名前はA1だ。行くぞ」

 

 数人の白衣の連中に肩を抱かれて、無理やり歩かされる。さてさて、碌でもなさそうだぞ。これはどうなることやらな。

 

 

「―記録。初期ロットにて自我がある特異体が発現。検査にて、異常は認められず。自我を持った理由は不明。更には一般的な成人並の知識があり、満場一致で特異個体であることを認められた。しかしながら、初期ロットの他の個体には自我は認められず、ネルフ本部におけるパイロット生成と同じ手段では、自我を持つパイロットの量産は不可能であると結論付けられる。

 故に、ユーロネルフにおいては新たな精製方法の確立が求められる…そしてA1、もう少し落ち着いて食事をしなさい」

 

「んん?もご、もぐもごもごご!」

 

「落ち着きなさい。誰も君の食事に手は出さん。…どうやら、我々が想定していた性格ではないものが発現している。貴重なサンプルとして、しばらくはこのまま経過を観察することとする。処分は保留」

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