なんだかやべぇ事になりもうして。   作:灯火011

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早速判った自分の正体

 見知らぬ部屋に連れられた私は、休む暇もなく検査を受けた。身長体重から始まって、MRIやらレントゲンやら、そして血液も採られて、その上に立てつづけに質問攻めに加えての質問攻め。誰なのか、お前は何なのか、自身の認識が有るのか。そんな質問を幾多も受けて、いよいよと言ったところで私の眼の前には、いくつもの料理が並べられた。

 

「腹が減っているだろう?」

 

 頷いて早速、手を合わせてから並べられたそれを食らう。自覚はしていなかったが、目の前にこのように料理を並べられてしまえば、空腹を自覚するというもの。和食…は無いが、ピザやらトマト煮込みやら、どこか欧風な物が並ぶ。うん、それならば、持ちやすいピザから…。とろりとチーズが融けた。それを零さないように、口に近づけていくと。

 

「!」

 

 おうふ。こりゃあ旨いぞ!?なるほど、これが旨さが脳に直接届くって奴だな!2口、3口と口が勝手にピザを吸い込んでいく。終わってしまった。ならば次はこのごろっと具材のビーフシチュー。ほほぉ。ほっかほかやでぇ?ああ、米、米がほしい。無い!いや、しかし、パンはある。フランスパンかこれは、…本場のフランスパンかこれは!なんだこれ、私の力じゃ千切れんぞ!ならば、そのまま齧り付くのみっ!

 

「むむごご!」

「落ち着けと言っているだろう、A1」

 

 腹が減っているのだ。落ち着いて食えというのは無理な話。と、白衣の男がフランスパンを引きちぎって、一口大にしてくれた。それを喰らいながら、更にビーフシチューをかっこむ。いやぁ、飯がうまい。実に旨い。それだけでも良い場所だぞ此処は、と頭の中でリフレインしている。

 

「あれが、例の」

「ええ。無事に目覚めらしいわよ。ただ、想定とは違う、とか」

「処分は?」

「保留ですって、Aタイプの成功例は彼女だけですもの。他のAタイプに自我は目覚めず。貴重なサンプルよ?」

 

 ただ、まぁ、同時にろくでもない施設では有るのだろうと思う。なにせ、私に向けられている視線や、聞こえてくる会話が平和ではない。何だ、処分とか、Aタイプとか、サンプルとか。

 

「チーフ」

「ああ、君か。首尾は?」

「A1の食事が済み次第、遠隔での起動試験に」

「ああ、判っているとも。どうだ?動くと思うか?」

「理論上は。汎用である量産機を想定して開発されたシステムですからね、動かない場合は、また選別が必要に」

「…その場合はAAタイプに期待するしかあるまい。あちらの進行度合いは?」

「選別は進んでおります。半数までには、絞り込めました」

 

 …さてさて、本当にろくでもない会話が目の前で成されている。というか、流れに身を任せているが、私は誰で、ここは何処なのかね?そして、この飯を食らったあとは、何を命じられることやら。ひとまずは、死ぬことだけは御免被りたいところだが。

 

 

 ああ、理解した、理解した。ここが何処なのか。否が応でも理解が出来た。

 

 飯のあと、どこぞの部屋に連れられた私は、着替えを要求された。白い病院服のようなものから、なにやら赤いラテックス素材のつやつやの何かに、だ。随分ピッチリな服を着させられたものだな、と思いきや、今度は仰々しいフルフェイスのヘルメットまで。うーむ、フェチな人であれば好きそうな格好だぁね。

 

「何するの?」

「試験だ。乗れ、A1」

 

 有無も言わさぬとはこのことである。肩を掴まされ、何やら内部が真っ暗な箱のようなものに突っ込まれた。そして、扉が閉まると同時に、箱の中にぼんやりと灯りが灯る。

 

『聞こえるか、A1』

 

 スピーカーから届くのは、先程までわたしの隣りにいた男の声だ。

 

「聞こえる」

『そうか、では、まずは真ん中の椅子に座れ』

 

 椅子。視線を地面に落とすと、なるほど確かに椅子がある。…椅子と言うには、随分とリクライニングされているものだこと。

 

「座った」

『そうか。では、両腕の近くにあるレバーを握れ。…よし、では試験を開始する。A1、お前はそのまま座っていろ』

 

 ふむ。言われた通り、レバーを握って座ったまま、ぼんやりと時間がすぎるのを待とうとした瞬間だ。

 

「ん!?」

 

 ごぼ、と、箱が一気に液体に満たされた。ヘルメットの中まで、その液体が一気に入ってくる。む、なんだ、溺死させるつもりか!?

 

『焦るな。肺にLCLが満たされれば問題はない』

 

 苦しくて、ごは、と息を吐いた。そして、その液体を一気に肺に含んでしまう。終わった、と思ったのだが。

 

「…苦しくない」

『そうだろう?では、試験を続ける』

 

 ふう、とひと息を吐いた。どうやら、殺されるわけではないらしい。しかし、便利な液体も有るものだな。溺死させられるかと思いきや、まさか、こんなふうに呼吸が出来る液体があるとは…。

 

「…ん?」

 

 不意に脳裏に浮かんだのは、この施設で目覚める前に見えていた映画。シン、なエヴァンゲリオン。たしかあれも、こんな液体が使われていたような気がするんだが。

 

「…そういえば」

 

 そう思ってくると、なにやらこの椅子も、コックピットに見えてくる。他のロボットではありえないような、流線型のコックピット、レバーも類を見ない形であるし。と、次の瞬間だ。

 

 ドン、とどこかで思い何かが動く音が聞こえてきた。それと同時に、薄暗く、ぼんやりとしていた箱の中が一気に明るくなる。どうやら、箱の四方八方にはモニターが備え付けられていたらしい。そして、そのモニターには無数の英字が描かれ始める。

 

『…よし、電源は入ったな。では、ここから第一次接続を始めろ』

『はい、では、第一次接続開始。電圧上昇、LCL圧力上昇を確認。主電源、接続されました』

『よろしい。では、第二次接続を開始しろ。リスト1番より、ひとつひとつ確実に』

『リスト1番より、接続を開始します。A10神経…接続…成功。初期コンタクト…一部、エラーが出ていますが』

『ふむ…いや。遠隔でこのエラーならばかまわん、続けろ』

 

 ああー、どこかで聞いたような台詞。ほぼ確定じゃないか?これは。もしかしてここ、エヴァンゲリオンの施設?いや、エヴァンゲリオンの世界か!?あ、いやまぁ、ちょっと嬉しいのだけれど、いやしかし、あまり良い状況じゃないなぁこれは!

 

『…100番までのリストをクリア。同時に試験機よりパルスを確認』

『ふむ。パルスの数値は?』

『まだ規定値内です』

『…そうだな、500番まで作業を進めろ。各数値の変化を見逃すなよ』

『はい』

 

 あー。これはつまり、エヴァンゲリオン的な奴に私が接続しているって奴だね!パルスとか聞いたこと有るもの!あ、ただ、試験機って言った?ってこたぁ…零号機?

 

『…A1、体調に変化はないか?』

「別にない」

 

 何やら作業は進んでいるんだけれども、私の身体には特に変わりはない。確か…綾波レイとかはこういう時にめっちゃ暴走してたけれども。

 

『そうか。何かあれば伝えるように。リストは?』

『は、400番までクリア。パルス、電圧、LCL圧、濃度は既定値に収まっています』

『ならばそのままリストを進めろ。1000番まで』

『はい』

 

 モニターの表示が徐々に変わっていく。文字情報だったものが、少しづつ暗転を繰り返しながら、何やら風景を映し出していく。黄色というか、オレンジだった液体の色も、気づけば透明になっていた。

 

『…リスト、1405番までクリア。試験機からのシナプスを観測。同調率は…29,8%、暴走、ありません』

『そうか。どうやらA1は本部の初期型よりはエヴァに適しているらしい。ひとまずはおめでとう。これで、2号機の製造が一気に進むぞ』

『ええ、そうですね。チーフ』

 

 2号機。本部の初期型。大体察せたぞ。ここ、やっぱりエヴァの世界じゃないか!しかも、どうやら私は、この扱い的に主要人物っぽくはねぇってことだけは判るぞ。ちょいちょい挟まる言葉から察するに、私も誰かのクローンなのか?2号機ってなれば…あれか?アスカ的なクローン?

 

『A1、異常は無いか?』

「無いですが」

『ならば良い。では、しばらくそのままにしていろ。データを取る』

「はい」

 

 さてさて、疑問は絶えないが…しばらくそのままにしていろ、とのことなので、このコックピットを楽しんでいこう。いや、夢だとしてもこれは貴重な体験だからなぁ。ふむ、見事にフィットするなぁ、このレバー。ちょいと握って…押してみようか。

 

『チーフ!?試験機の腕が!』

『何っ!?遠隔接続だぞ。動くわけが…!』

 

 やべ、なんかやらかしたっぽい。慌ててレバーを元に戻したけれど、なにやらスピーカーの向こうからは慌ただしい声が聞こえてくるばかりだ。

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