エヴァの世界でなぜか目覚めたかぁ。と納得して、ちょいとレバーを押し込んだ所から、研究所らしきこの場所を混乱の渦に叩き込んだ、どうも私であります。
箱に閉じ込められること体感で数時間。そろそろお腹の具合とかがまずいんだけどねーと思いながら、言われるがままレバーを動かしたりしていたわけなんだけれども、ついにLCLが箱から抜かれて、扉がようやく開かれた。
「出ろ。A1」
「はい」
待たせ過ぎだこの野郎、とは言わない。なにせ、私の生殺与奪はこの男が多分握っていることだろう。それに、私の勘が合っていればだ。もし私がなにがしかのクローンであった場合なんかであれば、本当に文字通り、私の命はこの男が握っていることになる。LCLの液体に定期的に浸かってメンテナンス受けないと死ぬとかいう可能性が消えぬ限りはまぁ、大人しくしていよう。
「ご苦労だった。想定外にお前は使えるらしい」
「褒められてる?」
「ああ。褒めている。Aタイプの初期ロット。まさか、これほどのモノが出るとは思わなんだ」
頭に手が置かれた。よしよし、と言った具合だろう。悪い気はしない。これでしばらくは寿命が延びたと思って良いんだろうしね。
「さて、ではまずはスーツを脱ぎシャワーを浴びろ。そして、館内着に着替えた後に食堂で飯を食うぞ」
「はい」
言われるがままにスーツを脱いで、ちょっと熱めのシャワーを頭から被る。ほう、なるほど、ソープの類はジョーマかぁ。うん、良い香り。結構高いイメージなんだけど、やっぱ、組織が組織だけに予算があるのかねぇ。
「ごほっ」
勝手に身体が咳き込んだ。と、苦しさを感じると共に同時に口からはLCLの液体が吐き出された。どうやら、少し肺に残っていたようだ。吐き出さなくてもそのまま吸収される、と説明を受けたが、その限りではないらしい。あのコックピットのような場所に座る度に、この感覚を味わうわけだな。少し嫌だ。
「ふー」
天井を見てため息を吐く。うーん、もし、このまま目を瞑れば、劇場の椅子に座っていたりしないだろうか?少しづつ現実感が近寄ってきていて、恐怖感も浮かぶ。きっと、これから、様々な実験に参加させられるだろうしねぇ。それに、映画を思い出せば、レイやアスカのクローンを容赦なく処分していった連中の仲間である。私の命はやはり、風前の灯よりも小さい火であることだろう。
「まぁ、でもね。せっかくエヴァの世界に来れたのなら」
一度ぐらいは、エヴァに乗ってから死にたいね。できれば、シンジ君とか、レイ、アスカとかの主要人物にも会いたいし。
「あ。そうか」
確かここ、ユーロネルフって言ってたよな。てことは、アスカ、あとは加持さんあたりには会えそうだ。それに、加持さんであれば、きっと、私の知識、映画とか、あとはアニメのそれを2~3言葉呟けば、多分釣れる気がする。
なにせ、エヴァは漫画、アニメ、考察本、そしてシン。これは履修済みだ。彼の知りたいことは、まぁ、頭の中に詰まっている。
「それまで、生きていればねー」
自虐的に笑ってみる。ほんま、自分で言っててそう思う。初代レイだってシンでるし。アスカだって、2人のクローンのうちの生き残り。しかも端々に出ていた初期ロット。私の立場、本当にやばい気がする。まぁ、でも、悩んでも仕方ない。
「…加持さんに会えれば吉。そこまでは、生き残ることを第一に」
なるべく白衣の男に協力して、生き残ろう。うん。そうしよう。もし、目が覚めて、映画館の座席に座っていたら、それはそれで。
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「絶対的な同調率は高くないな。だが、このシステムが遠隔でも動かせると判った事は大きい」
「ええ。AAタイプの選別にも役立つことでしょう。暴走や取り込まれる可能性が低い遠隔だけで同調率を調べられるのならば、大きなコストダウンです。それと、コアシステムのエラーもいくつか見つかりました」
「…なるほど、これは実際にシンクロせねば判らなかったことだな。A1には感謝せねば。この調子であれば、零、初号機よりも低コストで、短期間で2号機は完成を見れる」
「私もそう思います。チーフ。あの、A1の処分は」
「処分などするはずがない。シンクロが出来るパイロットは今のところ彼女だけだ。少なくとも2号機が形になるまではな。それにだ、確かに、真希波もリストにはいるが、彼女はまだ、シナリオには早い」
「それなら少し、安心しました」
「なぜだ?」
「彼女の食いっぷり。あれに、微笑ましさを覚えてまして、もう少し、見ていたいなと」
「はは、それは同感だ。あれだけ美味そうに食われては情も湧く。だが、線は引けよ」
「判っていますよ、チーフ」