私がどうやらアスカっぽいクローンみたいなものになってから暫く。まだまだ私は生きています。
そして、今確実なことは、飯は旨い。これだけが今のところの真実だ。やはり、金回りは良い組織なのだろう。本当、味は一流である。衣服も肌触り抜群。ベッドも非常に良い感触で寝不足知らずだ。すっきりした身体と頭で、白衣の男の横を歩いていたわけなんだけれど。
「さて、今日はこれに乗ってもらう」
「なにこれ」
眼の前に現れたのは、巨大な人形の何か。いやぁに瑞々しいそれは、機械的な感じもするし、生物的な感じもする。
「エヴァンゲリオン。そのユーロ支部のテストベッドだ」
「テストベッド」
テンションが少し上がる。ほほう。これエヴァンゲリオンなのか!確かに言われて見れば、初号機の装甲が剥がれたアレによく似ている。ただ。
「…目が1つ?」
弐号機は確か4つ目じゃないの?と思って、男に聞いてみると。
「気になるか?」
「うん」
「人の形をしたもので目が1つ、というのは確かに受け付けないのかもしれんな。これは本部と形を合わせただけだ。今後作られる正式採用型は形が変わる」
ほー。そうなのか。なるほどなるほど。というか、そんな極秘事項を私に話していていいのだろうかね?
「じゃあ、それは目が2つ?」
「…いや、コストの面やセンサーの強度を考えるに、4つ目になる予定だ」
「4つ目」
つまり、私が知る弐号機のデザインということだろう。なるほどねぇ。今この時点から使徒が来るまで、どのぐらいの時間があるかは判らないけれどさ。結構前からデザインとかは検討されて、原案なんかもあったんだろうなぁ。と、関心していると、男の雰囲気が変わった。
「さて、余計な話はここまでだ。早速、操縦席に乗り込め。控室での着替えは一人で出来るな?」
「はい」
促されるままに、一人で控室に入って、例のプラグスーツの原型みたいなやつに袖を通す。手首のボタンを押すと、ぐっと身体に張り付いた。
「うん。やっぱり」
エヴァだよねぇ、エヴァ。まだどこか夢見心地なんだけど、しかしながら、肌に纏わりつくスーツの触感が現実だよと告げてくる。
「…あれ?」
ヘルメットを被りながら、冷や汗が垂れた。
というのも、今まではどっかの部屋に入って、その上でプラグっぽい操縦席に座って、試験を行っていた。だがしかし、今日は。
「…眼の前にエヴァがある」
つまりは、今までと違う。ええと…。男の言葉を思い出せ。
「テストベッドに、乗る」
これ、フラグじゃない?フラグ立ってない?
エヴァ初乗り。
テストベッド。
私はクローン。
ビンビンにフラグを感じるよ。
「…碇ユイ的な?」
コアに取り込まれるパターンじゃない?それか、暴走してとんでもねぇ事になるような。そんな気がするんだよね。
『どうした、A1』
スピーカーから声がした。どうやらあの男の声だ。
「大丈夫、です。少し、怖い」
『そうか。問題はないようだな。さっさと部屋を出て指示に従え』
「…はい」
にべもありませんね。まぁ、私はそういうもんだし。いや、しかし、改めてとんでもない所で目が覚めちまったもんだ。うーん、早く、目が覚めないかなぁ。
■
「A1はプラグに収まったか」
「ええ。どこか、恐る恐るといった具合でしたが」
「そうか。やはり、何か感じるものがある、と言ったところか」
『エントリープラグのロック完了。挿入準備』
「碇ユイ史女。彼女が消えた実験とは程遠いですが…。我がユーロネルフ、初の人体実験ですからね。我々の雰囲気が伝わったのでは?」
「ああ。とはいえ、ここでA1が消えることは大きな損失だ。各種安全装置は?」
「…正常に作動しています。とはいえ、シンクロが始まるとどうなることやら」
『エヴァンゲリオン試作弐号機、エントリープラグ挿入完了。固定…完了しました。インテリア、所定の位置に移動します』
「最善を尽くすのみだ。ああ、それと」
『主電源投入開始。実機シンクロ実験、第一フェーズ、開始します』
「承知しています。実験後は、彼女の好きなパスタを用意させるよう、段取りしています」