闇派閥の一員は、正義を語る 作:闇派閥のだれか
※独自設定マシマシです。
――むかし、むかし。とあるエルフの姉妹がいた。
だが、その姉妹の性質はとてもエルフらしくなかった。
エルフとダークエルフを親に持つ故か、姉妹はそれぞれエルフ、ダークエルフの特徴を継いでいた。
それだけではなく、エルフらしからぬ開放的な性質を姉妹は持ち合わせていた。
それだけならば良かったが、同胞であるはずのエルフからは蔑まされる日々を送る羽目になる。
エルフのくせに。エルフらしくない。汚らわしいエルフだ。
幼い頃から、悪意の込んだ否定を何度も受けて育った姉妹の心は憔悴していた。
――信じられるのは、お互いだけ。それから、姉妹はますます互いに依存するようになった。お互いの心境を理解出来るのはお互いしかない、と。
やがて、その歪んだ心のままに闇派閥に与ずるようになり。オラリオに多大な被害をもたらすその姉妹は後々……“妖魔”という姉妹にとっては蔑称に等しい、呼ばれ方になるのだが――
『どうして……何も、言わないの?』
姉妹の内、姉の方が震えた声で目の前に立つ男に声をかける。
……姉妹を見る目は、決まって“蔑み・怪奇・好色”のどれかだった。
だが、目の前にいる男の目は――そのどれかでもなかった。
どこか強く感じさせられる目で、真っ直ぐと姉妹を見ている。
偽りに包まれた、外見を見るのではなく。それはまるで、本当の自分というものを見つめられているような感覚だった。
それは妹の方も同じ気持ちだったろう。その証拠に姉の手を握っている妹の手が強く握られている。
この男は、一体誰なんだろう。
どうして、この男は私達を変な目で見ないのだろうか。
そんな、得体の知れぬ感情が湧き上がり始めたと同時に。
『何か言う必要、あるのか?』
『『――え?』』
あっけらかんと、そう言う男に呆気を取られる姉妹。
『だって、お前ら“妖精”なんだろ?』
逆にそう質問をしてくる男に、恐る恐るといった様子で頷く。
“妖精”。それは、紛れもなく私達のことを言うのだろう。だが、そう言われるのはほとんど無い為一瞬自分達のことだと思わなかった。
『だったらそれでいいじゃん』
そう微笑んでそう口にする男。そんな彼に相変わらず茫然としたままの姉妹。
――それでいい?
『“妖精”じゃない? そんなもん、関係ない。そもそも、そんな事“多様性”です、って言って終わりだろ。誰かに言われた言葉なんて意味はないんだ。ひでぇことをお前らに言ったヤツは、今頃きっとのほほんと忘れて生きているだろう。お前ら姉妹の心を傷つけた事なんか忘れて』
男の話を聞いていく内に、段々とド黒い感情が湧き上がる。その証拠として繋いでいる姉妹の手がぎゅっ、と力が入る。
『な――そう思うとさ、ムカつくだろ?』
そう口にして微笑む男。そんな男に惹かれて瞬きもしない綺麗な眼が開く。
『何も怖がる必要はない。何も暗くなる必要はない。アイツらのために、お前らが落ち込む必要はない。落ちぶれる必要もない――――見返してやれ。私達は、“妖精”だ、って。誰が何と言おうと、私達は“妖精”なんだ! って』
そう言って、男は姉妹それぞれの頭に手をやって撫でる。
いくら茫然としていたとはいえ、姉妹はエルフであった。
周りから蔑まれているとはいえ、姉妹がエルフであることに変わりは無い。
エルフは、そう易々と見知らぬ他人に肌を触らせない種族。それはこの姉妹とて例外ではなく――ましてや“異性”となると尚更。
だが、姉妹はそれを受け入れていた。拒絶しなかった。
『どこかの世界で言われていた言葉だ――〖自分を"こうだ"と決めれば、そうなる〗。お前らにはぴったしの言葉だと思うよ』
――自分を"こうだ"と決めれば、そうなる……
『――それにさ、周りがお前らのことをどうしても、認めてくれなかったとしても』
男は、目を姉妹の目としっかり合わせて。
『俺が認めてやるよ。お前らは他のエルフと同じ、美しい“妖精”だ、とな』
男の声は、どこか聞いていて心地よかった。本能で求めていた“安らぎ”を感じさせる、声。
――ドクン、と何かが動いたような感覚がした。
◇
――男は、とある用事で【アレクト・ファミリア】の拠点前に立っている。
【アレクト・ファミリア】。オラリオにて猛威を振るう闇派閥に与ずるファミリアであり――闇派閥の中でも過激派に属するファミリアである。
そして男は、その拠点に一歩踏み出した――時に男の首目掛けて二本のスティレットが振りかぶられる。
「おっと……」
その速さは瞬く暇もないぐらいに速かった――が、男は物ともせずその二本のスティレットを両手で摘んだ。
それを想定していたのか……摘んだ姿勢の男を同時に追撃するかのように、別の方向から魔剣らしきモノが男の腹を切り刻んでいくように飛んでくる。
すぐさま、男は身を捩り踵で魔剣の腹に向かって振り上げ小さな音と同時に魔剣を上に飛ばす。
そんな拳動をする男を見た
上に飛ばし、重力に伴い落下していく魔剣を器用に受け止める妹。
男の摘んだスティレットを掠め取り、妹の隣に立つ姉。
そして、そんな事をしてがした犯人――姉妹の姿がハッキリと男の目に映る。
「――あはっ! やっぱりお兄ちゃんは殺せないわ!」
「――ええ、やっぱりお兄ちゃんは殺せないわ!」
何とも、声が共振して聞こえるとそう錯覚するぐらいにそっくりな声を上げるこの二人は【アレクト・ファミリア】の団長であるディナ・ディースに、副団長であるヴェナ・ディース。
二人とも、第一級冒険者に当たる実力を持っておりオラリオ側にとっては難敵にあたるだろう。
「あー殺したいなら別に殺しにかかっちゃあいいが。こうも毎回やられると流石にゲンナリするぞ」
「「だって私達は貴方を
最初に出会った頃からちっとも変わらない、仲良しっぷりな姉妹に男はひとつ笑った。これだけを見るとただのじゃれ合いのようにも感じる。
が――先ほど男に仕掛けた攻撃。あれは多少"遊び"が入っていたが……少なくとも、並程度の冒険者ならば瞬く間に葬り去られるものだった。
これがこの姉妹なのだ。それが分かっている男は、いとも何ともなかったようにできる。
もっとも、兄と呼ぶこの男と姉妹の間に血縁関係はない。だが、それでも姉妹は男の事を兄と呼ぶ。
「何故かしらね。こーんなに頑張ってるのに、ちっともお兄ちゃんを
「何故かしらね。こーんなに
そして微笑む男を目の前にして、姉妹揃って頬をふくらます。傍から見れば、兄にぷんぷんする可愛い妹達のようにも見えた。もちろん、物騒な言葉を除いたら――の話だが。
「はは、それは悪かった――うん、
男の言葉に、ビクッと肩が動く姉妹。男の言う"その時"とは、すなわち――
「……そうね。私達はお兄ちゃんを
「……そうね。私達は殺されたくないのに……お兄ちゃんには
そう落ち込む姉妹。姉妹自身にも、それぞれ悩みはあるのだ。その一番の原因が己の持つ殺戮欲求。対象に関心を持てば持つほど、
"殺す"という行為を通してしか、愛を感じることができない――そんな歪んだ本能を持つ。
それはもちろん、兄と呼ぶこの男とて例外ではない。だからこそ――"
「――そうか」
男は、これ以上何も言わずに……ただ、姉妹の頭を優しく撫でるのみであった。それは、まるで姉妹がどのような結論を出したとしても受け入れるとでも言いたげに。
そして、その結論を出した時こそが"その時"なのだ。
姉妹は、されるがままに撫でられるのみ。だが、その時の姉妹の顔には――少なくとも暗い感情は宿っていないことは事実であった。
「――む、来たか」
そんな三人の耳に入る、そんな短い声。
声がする方向に顔を向けると、そこには艶めかしく、腰下まで届く黒髪のした女性が立っていた。服装も女神らしい黒い色のしたドレスを着ており、どこを見ても黒色でしかなく――それでいてどこか"高貴さ"を感じさせられるものであった。
「お世話になってます、アレクト様」
そして、男は【アレクト・ファミリア】の主神である彼女――アレクトに向かって頭を下げたのだった。
蛇足 その2。
ディナ・ディース
Lv.6
力:G256 耐久:H184 器用:H193 敏捷:H196 魔力:H177
狩人:H 刺突:E 耐異常:H 治力:H 魔防:I
【呪詛】
[ディアルヴ・スティージュ]
触れた対象の【力】と【敏捷】のアビリティ値その半分を、自身に一時的譲渡させる。
その代償として、自らの【耐久】と【魔力】のアビリティ値その半分を、対象に一時的譲渡する。
【スキル】
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