インフィニット・ストラトス RE:PONKOTSU 作:チャイナドレス先輩
2020年7月 アメリカ サンフランシスコ
IS展示会場 格納庫
「「………」」
IS武器展示会でテロに巻き込まれてEOSモドキに殺されそうになった私は赤い髪の女の子に助けられた。
助けてくれた彼女の名前は卯ノ花さつき。
そして今は、さつきさんに連れられて市民アリーナの格納庫まで来た。
格納庫に連れて来られた理由としては私の安全のためらしい。
一度来た場所には暫くはテロリストたちは来ないだろうとのことで、彼女の会社の武器が入っているコンテナがある場所まで連れて来られた。
「はわわわわ」
そして、私達二人は黒いスーツに身を包んだ女性が身体を丸くして、手で頭を守りながら震えて隠れている姿を見ていた。
……震えている女性は、さっき私にパーツの説明をしてくれていたオールマインド社の社長であった。
「そ、想定以上の戦力……まさか輸入する前の装甲やパーツでアメリカ国内でも生産を――いいえ、コレは国外で作られて密輸もされていた……」
ガタガタと震えながら手元のタブレットに何かを入力している。
「こ、こ、この程度私の作ったISと卯ノ花さんならどうにでも……」
ドォーン
「ヒィッ!?」
「「………」」
さっきも思ったけど、自分以上に驚いていたりする人を見ると冷静になるって話を私は、今、心の底から理解できる。
「あー、おい
「ヒィッ……って、卯ノ花さん!?ず、ず、随分と遅かったじゃない――その娘は?」
「助けた」
「た、助けた?」
「……なんか、文句あるか?」
「べ、別にないわよ」
「そうか……『プラン』の変更があるか確認するぞ」
そう、さつきさんが言うや否や、2人は谷全さんが持っていたタブレットを一緒に覗き込んで話をし始めた。
……話をしている内容は詳しくは分からないけど、先ほど『プラン』と言ったことは覚えている。
「敵の新型パワードスーツの数は想定以上だが、俺のISなら問題ない」
「ええ、問題は相手の最大戦力であるISに対してですが現在の構成ですと、やはり決定打には――」
現時点で、何かしらの『プラン』を持っていたという事は、つまり――
「じゃあ、予定通り補給シェルパのロックは?」
「ああ、外しておいてくれ」
「この場での補給は?」
「弾数に余裕のあるレーザーライフルを1割も使ってないから必要ない」
「あら?弾薬消耗はレーザーライフルだけ?」
「……ああ、そうだ。あとはマシンガンの銃床で殴ったぐらいだ」
「ふーん――って、その武器は殴るように作っていないんですけど!?」
「銃剣着きバズーカがあるから、ある程度雑に扱ってもいいのかな……って」
「それでも殴ったら銃身や外装が歪む可能性があるのよ!?」
「まぁまぁ……予備の武器もたくさん持ってきたし――」
「……随分、準備がいいですね?」
「「………」」
私が、そう口にすると彼女たちは話しを止めて無言になった。
『プラン』、『想定以上』、『相手の最大戦力はIS』、『予備の武器』……どんな馬鹿でも、ここまでの単語が出てくれば、自然と理解できる。
「……あなた達は初めから、今日、この日、この場所で、襲撃があることを予測出来ていたんじゃないですか?」
「「………」」
「……黙っていないで答えて下さいよ!!」
私は今日経験した光景を思い出しながら叫んでいた。
あなた達が、何もしなかったからこの惨状が生まれたんじゃないのかと。
「じゃあ、話してやろうかァ?」
「ちょ、卯ノ花さん!?」
「倒す相手がいた方が、俺たち会社の評価がより上がる……そういうことだ」
「その所為で……!!あなた達の会社の評価の為に、一体何人が犠牲になったと――」
「そんなの、この国の国防組織とかに言えよ……」
「――ッ」
「俺たちはアメリカからしたら外国人だぞ?そんな奴らが声を上げたところでどうなったって言うんだ?」
「………」
「俺達は、この襲撃はほぼ確実に起きると予測できた。なら、
さつきさんは、そう冷たく吐き捨てた。
話は終わりだと言わんばかりに、彼女はISを展開する。
先ほど5人も殺したISで、再び戦場に出ようとする。
「……それじゃあ、なんで私の事を助けたんですか?」
「……ただの気まぐれだ」
「「………」」
「あ、いや、仕事の内容に含まれてたはずだ」
取り繕うように、さつきさんは言葉を続ける。
「襲撃事件で活躍して当社製品の宣伝……間近で俺の活躍を見てる奴がいた方が良いだろう」
まるで、私を助けた言い訳のような話をし始める。
「話が長くなったが……まあ、なんだ?……部外者が、俺の仕事に口を出すな」
「………」
さっきの戦いでは冷酷と言わんばかりに戦場での真理に従って敵を殺していた彼女。
そして、いま目の前には戦場では致命的となりうる青さを持つ彼女
私には、彼女が何を考えて動いているのかが分からない。
「貴方って、そういう感じの娘が好みなの?」
オールマインド社の社長さんが変なことを言ってきた。
……何でこの人は、いきなりそんな話をしたんだろう?
「………………は?」
「だって、貴方の彼女も背が高くて胸も大きいし」
「えぇ、彼女ぉ!?」
えっ、彼女ってどういうこと!?
さつきさんの性別は女で、彼女がいるのぉ!?
この場合の意味って、女の子の恋人って意味だよねぇ!?
ということは、もしかして、この人は
(ダメよ!!女の子同士の恋愛なんて!!でも、世の中には色々な人もいるし否定はしたくない……私は理解はある方だけど、私は普通なの!!)
私は身の危険を感じ、自分の体を守る様に抱きしめて彼女から少し距離を取る。
「さっきパーツ説明の際に聞いたけど、彼女も代表候補生を目指しているのよ?本当に似すぎ……」
「谷全社長?死にたいなら早く仰っていただければよろしかったですのに……」
突然、お嬢様言葉になった彼女は右腕に展開をしていたレーザーライフルをチャージして銃口を社長に向ける。
「コレなら苦痛を……痛みを味合わずに蒸発出来るって事は先ほど証明済み――」
「ジョーダンよ、ジョーダン!!場を和ませるためのちょっとしたジョークよ!!だから、私を撃とうとしないで!!」
「………」
「真剣に私のことを撃つのを止めるのか考える為に無言にならないでよ!?」
「じゃ、撃とうか」
「そういう意味じゃなくて、撃つこと自体を止めてぇ!?ほら、私がいないとさっき言ってた、
「……チッ」
さつきさんはかなり大きめな舌打ちをするとレーザーライフルを下して、私たちに背を向けた。
何とか社長さんの命は助かったようだ。
「はぁ……戦場に行く雰囲気じゃなくなったじゃねーか……」
「あ、その、ごめんなさい」
「………」
さつきさんは、私が頭を下げて謝罪をしたのを見ていたのか分からない。
彼女は少し肩を落としながら戦場に向かった。
2020年8月 アメリカ サンフランシスコ
IS展示会場 格納庫 出入り口付近
「チッ、まったく、あの女は……」
少しづつ、少しづつ重い銃声や爆発音のする戦場に近づく。
「分かってんだよ……俺が半端野郎だってことはよ……」
俺は今、イライラしている。
「……だけど、やっぱり、似てるんだよな」
イラつきの対象は、自分自身だ。
「顔の形や髪の色は違うんだが、どうも雰囲気がな……」
俺は、また同じ過ちをしてしまったからだ。
また、何も分からない奴に力の世界を教えてしまった。
「……ああ、俺は怖がっているのさ」
「もう、――で、――を失いたくない」
最悪の気分だ。
本当に最悪の気分だ。
……そういえば、今の俺にふさわしい曲があるな。
歌うのは嫌いだ。
前世の俺は、そんなことを楽しむ趣味は無かったから。
歌うのは嫌いだ。
前世の俺は、こんな可愛い声を出さなかったから。
だけど、なんでだろうな?
「~♪」
気が付くと、俺はその曲を口ずさんでしまっていた。
この曲を初めて聞いたときはいつだったか?
ラジオで流れていたか?
母親か父親が持っていたCDにあったか?
……まあ、いい、とにかく俺のような臆病者にふさわしい曲だ。
2020年8月 アメリカ サンフランシスコ
IS展示会場 2階
「……暇だな」
作戦が開始されてから20分が立ちそうなことを確認しながら、私は展示会場に合ったIS二つ分のアクセサリーを指で摘まみながら呟いた。
(必要だったのか?MTが先制攻撃をしある程度削った後に、
初動の5分で武装テスト用ISのシールドエネルギーを私一人で全損させ、続いて異変に気付いた防衛用のISの乱入時に潜伏していたMT部隊による一斉射撃により相手の出鼻を挫いた。
そして、最後に私が相手をし作戦開始から15分が経つ頃には、防衛用ISを倒してMTの部隊指揮――とは名ばかりの実戦テストの結果報告を待っているところだ。
因みに、一緒にISを攻撃したMT部隊のA班は私と一緒にいても色々あれだろうと思い哨戒を言い渡しており、この場には私しかいない。
(戦力を待機中にして無駄な時間を過ごさせるより何かしらで動かした方が良いだろう……)
そう、私はぼんやりと考えた。
(反IS思想を持った元軍人で構成された部下たちの不満を溜めないためにという理由もあるが……)
――と、私は自分でも慣れない気遣いをしている自覚はあった。
「……オータムより各班へ。現状を報告しろ」
作戦が開始してから20分が経ったことを確認した私は、作戦前に決められていた通りに現状報告を促す。
『A班、損傷機なし、武装残数6割、問題なし』
「よし、次、B班」
『B班、損傷機なし、武装残数7割、問題なし』
「よし、次、C班」
『C班、損傷機なし、武装残数7割、問題なし』
「よし、次、D班」
脅威となる敵ISは私が片付けたんだからMTを倒せる相手はいないため、いちいち損傷状況を報告させる必要はないと思う。
しかし、一応、今後のMT部隊運用に関わるので形式的に報告をさせている。
また、試作兵器であることが理由か、あるいは人間大の大きさで搭載できる容量に限りがあった為か、現状MTには機体状況を他の端末などに知らせる機能は付けられていない。
そのため、通信での口頭による現状報告が必須となっている。
(この報告が終われば、5分遅れて起動させたD班を主戦力にして、A班は補給に回して順次……ん?)
「……?おい、D班?」
D班に報告を促してから、10秒以上経過したタイミングで私は違和感を覚える。
(……いくらブランクがあるとはいえ、元軍人たちだぞ?報告が遅れるなんてことがあるのか?)
『こちら
「どうした?」
そんなことを考えていると通信が入る。
哨戒を言い渡していたA班の一人からだ。
『MTの残骸を発見!恐らく、これはD班のものと思われ、D班はすでに全滅しています!!』
「ッ!総員警戒ッ!!ISがもう一機以上紛れ込んでいるぞ!!」
『りょ、了k――』
報告をしていたA02の通信からノイズが入り、そして通信が途絶える。
「……遅かったか。各機、接敵次第応戦、
『『『了解!!』』』
「しかし、戦闘は極力回避せよ!最低限の作戦目標は達した、各機離脱を始め――」
『…amen……』
「……ん?」
通信に変なものが混じっている事に気が付いた。
『Ame……gospel……』
『な、なんだ?』
『これは、歌?』
(変な狂信者が通信に紛れ込んだか?)
私はそんなことを思いながらMT部隊の指揮に集中する。
(現状、MTではISに勝てない!無駄に戦力を消耗させる必要はない。さっさとこの場から撤収する!!)
『B班、敵ISを発見!!』
私の思惑とは裏腹にMT部隊が敵ISと接触してしまった。
「チッ、B班はそのまま攻撃をして、敵ISを足止めをしろ!!
『『『了解!!』』』
「……私が到着するまで待ってろよ」
私は通信に乗らない様な小さな声で呟いた。
……優秀な兵士たちだと思う。
死ねと言っているのと変わらない命令を出している自覚はある。
だけど、微塵も臆せずに命令に従う兵士たちだ。
この優秀な兵士たちと比べて、戦場に出ないでISをステータスの一つやファッションだと思っている今の世の中の女どもと比べてどちらの方が価値があるというんだ。
正直に言うと、こいつらの境遇には、このオータムでも同情しているところはある。
何年も国に仕えてきた奴らを、ISを理由に切り捨てられた状況を見て、男だから仕方ないって嗤うほど私はイカレてはいない。
(――ッ、こいつらは
私はそう思いながらB班が戦闘をしていると思われる場所に急行する。
だけど、そんな感傷は地獄その物の前では何の意味もなかった。
『Amen amen gospel amen♪』
「──ッ!?」
通信越しに聞こえるものを理解した瞬間、私はゾッとした。
(こいつ、戦場で歌ってんのか!?気でも狂ってんのか!?)
通信からの戦闘音に混じって、MTのパイロット達からの断末魔が聞こえてくる。
『熱い熱いあつ──』
『
『Oh,I'm scary♪』
『固まるな散開してて各個に応戦!!』
『So I'm scary♪』
『うわぁあ!?』
『当たれ!当たれ!!』
『クッ――A班、B班と共に戦う』
「お、おい、勝手に動くな!!」
『C班だけでも生き延びてくれれば……!!』
「チッ、勝手に死のうとしてんじゃねーぞッ!!」
『All that I see♪』
『A班、現着!!』
『散らばっても無駄だ!!敵ISのミサイルがそれぞれのMTに向かってくる!!』
『まさか、マルチロック──』
『Now,I'm scary♪』
『何で攻撃が通じないんだ!?』
『最低でもISの装甲を傷つけられるぶk──』
『敵ISは前面にシールドの様なものを展開して防御を──』
『All is fantasy♪』
『た、助けてくれ!!』
『化け物だ──』
『All is fantasy♪』
(MT部隊を倒すスピードが尋常じゃなく早い!!)
私がたどり着く前に合計9機のMTが倒された。
この結果は、敵のISの性能だけじゃない。
(そもそも、ここまで戦闘に慣れているIS搭乗者がいるという事自体がおかしいんだよ!!)
1機や2機――5機倒されるのならわかる。
しかし、それ以降は?
その場の勢いで、自分の命可愛さに相手を手に掛けることもあるだろう。
だけど、MTを5機も倒せば嫌でも理解するだろ。
MTの中に人間が乗っているという事実を。
普通の人間なら、いくら装甲越しとはいえ相手が同じ人間だと認識した時点で引き金が鈍るはずなんだ。
だけど、相手には現在相手は15体のMTを――15人の人間を殺している。
(世界初となるMTとISとの戦闘だぞ?それなのに、こんなに殺しに慣れているんだ!?)
多分、裏社会でそれなにの人数を殺している私よりも殺しに慣れている。
私がその事実に驚いている内に、戦闘現場に到着した。
そこに、奴はいた。
「~♪──見つけた」
「ッ!?」
ISには珍しい全身装甲。
この展示会という場面に合わせたのか黒色が目立つが所々にミリタリーグリーンのカラーリング。
そして、赤く輝くカメラアイ――それが、ギラリとこちらに向けられた。
「もう
私には、そのカメラアイが血眼で獲物を探す肉食獣の様に見えた。
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