インフィニット・ストラトス RE:PONKOTSU   作:チャイナドレス先輩

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※『求咎九救』という、四字熟語はありません。

求:[音]キュウ。もとめること。
咎:[音]キュウ。あやまち、しくじり。とが。
九:[音]キュウ。数字の9。
穹:[音]キュウ。そら。


武器展示会 ―求咎九穹―

2020年7月 アメリカ サンフランシスコ

IS展示会場 格納庫

 

 

さつきさんが戦場に向かうのを見送った私はコンテナの隅っこで身体をできるだけ小さく丸めるように体育座りでいた。

このテロが早く終わることを願いながら断続的に聞こえてくる戦闘音や小さな衝撃を体全体で感じていた。

 

「うーん、この機体構成、初めて見た感じはしないのよねー」

「……?」

 

そんな中さつきさんが無傷で手に入れたEOSモドキいつの間にか回収し、そして解析をしていた谷全社長は小さく何かを呟いていた。

しかし、その呟きは未だに続く戦闘音で掻き消されて私には届かなかった。

 

「私は以前から、EOSを下手にISに寄せすぎるてはダメとは考えてはいたのよ」

「ISの性能を1つの指標にするのは良いけど、ISコアが使えない状態で無理に人型に拘ったらいけない」

「多少、腰回りや足回りが大型化してでも機動性や機能性を優先するべき……その点、このEOSモドキは優秀な設計ね、誰が考えたのかしら?」*1

(……さっきから社長はブツブツ何を言っているんだろう?)

「あ、いけないいけな。卯ノ花さんのため準備しておかないと」

 

今、この場には私と谷本社長の2人しかいない。

しかし、特に話すこともないし、他人と話す気分でもない。

ひとりで自分の身体を抱きしめて、物思いにふける。

 

(きっと、お父さんやお母さんは私の心配している……)

 

こんな前代未聞のテロが発生したんだ。

もうニュースにもなっているだろう。

なんで、こんなことに巻き込まれてしまったのか。

 

「卯ノ花さんのこと考えていたの?」

「……はい」

 

いつのまにか谷全社長が近くにきて私に話しかけてきた。

どうやら作業はひと段落終わったようだ。

全然別のことを考えてたが、訂正するのも億劫だったので話を合わせておく。

 

「彼女との付き合いは短いけど、結構優しいところもあるのよ?」

「……どういうことでしょうか?」

 

私がそう問いかけると、谷本社長が私の隣に座りながら答える。

 

「だって、貴女が近くにいたから跳弾の可能性があるマシンガンも、天井が壊れる可能性があるミサイルも使わなかった様だし」

「………」

「本来なら全ての武器を使って攻撃をした方が戦いやすくてより早く戦闘を終わらせられたのだけど、貴女のことを気遣って危険が少ないレーザーライフルのみを使っていたのよ」

「なら……なんで……さつきさんは、そのことを言わないんですか?」

「素直じゃないからじゃない?」

「………」

「卯ノ花さんが何を悩んでいるのかは知らないけど……色々複雑な事情を抱えているらしいのよ」

「………」

 

私を助けてくれた彼女。

私に戦場の理を教えた彼女。

同じ位の年齢のはずなのに平然と人を殺せる彼女は、私よりも精神的に大人なんだなと思っていた。

しかし、そんな彼女も、自分と同じ女の子の様に悩んでいるという。

 

(いきなり巻き込まれた非日常(戦場)から色々な事が起きて、何が何か分からない……だけど)

 

こんな所で、震えて隠れている自分は(いや)だ。

私は、国の代表と言えるIS操縦者になるんだ。

そう思い、私は立ち上がり戦闘が続いていると思われる展示会場に向かう。

 

「どこに行くのよ!?」

「戦いを見に行く」

「えっ、危ないわよ!?」

「いえ、戦闘音が少しの間しなかった……EOSモドキ達はさつきさんがすべて倒したか、残ったEOSモドキは撤退をしている可能性が高いです。……それに、それを近くまで運ぶ必要がありますよね?」

 

私は谷全社長が作業を行っていたものを指差しながら聞く。

 

「補給用シェルパでしたか?それを、そのEOSモドキを使って近くまで運びますよ」

「はぁ、言っても聞きそうにないわね……今更になるけど、貴女のお名前は?」

「ティナ・ハミルトン」

 

私は谷本社長に胸を張るように宣言する。

 

「将来、アメリカの国家代表に――いいえ、世界最強(ブリュンヒルデ)になる女よ」

 

こんな所で、震えていて最強になれるか。

私は力が欲しい。

理不尽を跳ね返すほどの力を。

 

 

 

 

 

アメリカ サンフランシスコ

IS展示会場 2階ISバトルフィールド

 

致命的となりうる攻撃はQB(クイックブースト)で回避し、パルスシールドで防御をし、マシンガンやレーザーライフルで攻撃をして中距離を保つように意識して戦闘を行う。

 

俺の現在の武装は軽量レーザーライフル、軽量マシンガン、6連装ミサイル、パルスシールド。

機体性能はこっちの方が上だが、相手の方がISの技量が上で4本の多脚を巧みに使い責め立ててくる。

 

(通常の人型ISとは違う異形型。あっち(ルビコン)で言えば惑星封鎖機構のカタフラクトのようなACと比べて手数で上回る敵……やり辛い)

 

まあ、今まで武器を1つしか持っていないEOSモドキに対しては俺の方が手数の差で戦えていたんだがなとぼんやりと思いながら戦いを続ける。

 

(さて、どうするか)

 

正直、攻めあぐねている状況。

手数は相手の方が上で、俺は武装の一つをパルスシールドにしているので、攻め手が一つ少なくて決定打に欠ける状況。

相手も俺のパルスシールドの防御でいまいち攻め切れていない様子だった。

 

しかし、俺の方がジリジリとISのシールドエネルギーを削られているので、このままだと負ける。

状況を冷静に分析しながら、飛行機の中で第二回モンドグロッソの試合の動画を見た内容を思い出す。

 

世界大会だけあって強い奴らが多かった。

特に特筆するべきは、日本国家代表の織斑千冬とイタリア国家代表のアリーシャ・ジョセスターフの二人だ。

この二人と比べて目の前の相手は流石に見劣りはするが、決して弱いわけではない。

 

(なんなら、現時点だと俺よりも強いだろう)

 

そう思いながら戦闘を続ける。

ほら、このレーザーライフルだってもう少しタイミングが早ければ戦闘を有利にできたはずだ。

 

(これが普通のIS戦だと、今の俺はお前には勝てない)

 

当然だ。

ISに乗った年季が違うんだ。

 

相手はたぶん3~4年ほどISに搭乗し、かつ実戦経験もある。

一方の俺は、ISには練習のため数時間程度しか搭乗していなく、今回が初めての実戦だ。

 

(なんとか戦闘が続いているのは、癪だがオールマインド製ISの性能と前世での経験のおかげだ)

 

 

 

 

 

(だけど、俺の知っているあいつは……)

 

 

 

 

 

――前世の記憶を思い返す……奴との、闘いの記憶を――

 

ダリア多重ダム襲撃での突然の裏切り。

 

グリッド086の襲撃依頼での戦闘。*2

 

ルビコン技研都市での奇襲。*3

 

そして……熱圏LOCステーション31での最終決戦。*4

 

俺は、そのすべての戦いであいつに勝てなかった。

 

「あいつは……あの野良犬は、普通じゃなかった……」

 

あの野良犬に、俺のすべてをぶつけても勝てなかった。

アレに比べれば、目の前の敵は普通に強いだけだ。

 

(まあ、あの野良犬は普通じゃないというか……グリッド086の件で一時的に共闘状態の俺も巻き込みながらアサルトアーマーをしやがった時には、いったい何を考えてるんだコイツはと本気で思ったが……)

 

とにかく、あの野良犬はACに乗ること以外できない身体だったが、それ故かACに操縦に関しては他の追従を許さなかった。

まだ、あいつの域には至れていない。

だけど、目の前の相手に負けてやる理由にはならない。

 

「普通に強い敵には、負けてられないなァ」

「なんかいったか、イカレ野郎ぉ!?」

「あ゛あ゛ん、誰がイカレてるだって!?」

「おめーだよ!!」

 

ふざけんな、アイツら(ポンコツと野良犬)に比べれば俺なんて常識人だろうが。

まあ、自分でも戦場に急に歌い出すのは、どうかとは思うが――

 

「さつきさーん!」

「「あ?」」

 

俺と相手は戦場に似つかわしくない声が下方向へ顔を向ける。

視線の先には俺が鹵獲したEOSモドキが手を振っていた。

 

「お届け物でーす!……それにしても、この機体すっごく動かしやすいけど、胸がキツイ!」

「あのアマッ!私の部下の機体を……って、訓練なしでいきなり乗りこなしてやがる!?」

「なんで戦場(ここ)にお前が!?」

 

お互いに予想外で出来事が起こり動きが止まる。

しかし、俺は届け物の内容にいち早く気が付き、相手に向かってパルスシールドを展開しながら突撃をする。

相手の意識が俺以外に向かっていたので楽に接近ができた。

相手の懐に入れた俺は右手のレーザーライフルを思いっきり相手の腹に突き刺した。

 

「がッ!」

「よし、谷本!今だ!!」

 

本来、刺突するように出来ていない為、当たり前だがレーザーライフルの銃口は曲がり使用不可になるが、俺は気にせずに追撃の蹴りを喰らわせて相手を床に叩きつける。

相手が地面に倒れたのと同時に助けた女が運び込んだ補給用シェルパが動き出す。

 

動き出した補給用シャルパは俺達の頭上に移動をし、そしてその中にある武器をばら撒いた。

 

「いてて……あ?」

 

相手が体制を立て直す前に、俺は右手の壊れたレーザーライフルを捨てて左手の軽量マシンガンと入れ替える。

そして、空いた左手を落ちてきた武装用に空けておく。

 

そう、中身はオールマインド製近距離用武装だ。

これが俺の策、決定打を与えられる武器を戦闘中に交換すること!!

 

俺は落ちてくる武装の中で、盾のような形状のものを選び装備する。

オールマインド製の武器やパーツは規格が合えばいつもで交換できる。

それが、例え戦闘中に拾った武器であろうとな。

 

「盾が増えたところでなぁ!!」

太陽守(コレ)、盾じゃねーんだよォ!!」

 

俺は左手を横に振るい爆弾をばら撒く。

相手は予想をしていた動きではなかったので回避が遅れたようだ。

 

(小型爆弾をばら撒く武装か!?)

「もう一度おまけにプレゼントだ!」

 

会場の床を壊しながら一階に移動した俺たちは戦闘を続ける。

 

「オラッ!!もう一発喰らっておけや!!」

「くっ」

 

何度も爆発を喰らった相手だが、こちらの次の動きを見定める事に集中するために動きを止める。

 

(くっそ、動けねぇ!!だが、爆弾をばら撒く中距離よりの武装だと知れれば、あとは何とか……)

 

相手の動きの意図を読み取った俺は、二回だけ使った太陽守を捨て再度左手をフリーにする。

 

「は?」

 

次に俺は落ちてきたレーザーブレードを装備する。

今のISが主要兵器の時代、量子変換を用いない武装交換は前時代的ではあるが、量子保存容量を消費しないというメリットがある。

また、突然相手の目の前に落ちてきた武装と交換するという意表を突くことで相手の隙を作り出せる。

 

こういう風になぁ!!

 

初見の武器、かつレーザーブレードの異様な横の伸びに対応できず敵ISは装甲とシールドエネルギーを削る。

また、急に武装が変わったことに意識が追いついておらず相手は何度も直撃を許してしまう。

 

「コイツ……舐めるな!!」

「使い勝手は良いが、うーん、コレはあまり趣味じゃないな」

 

ある程度使ったレーザーブレードを相手の前に放り投げる。

 

(なぜ、近接武装を私の前に投げ捨てた?陽動か……いや、もしかしたら爆発でもするのか!?)

「へぇ」

「あ?……チィ、くそが!」

 

深読みをした相手は投げ捨てたレーザーブレードから必要以上に距離を置いて俺が武装交換する隙を与えてしまう。

次に床に落ちたレーザーダガーを手に取り距離が開いた相手に接近するためにAB(アサルトブースト)を使用する。

 

「は、早い」

 

初めて見せたABの速度に相手は反応できず、レーザーダガーの連続攻撃を許す。

しかし、相手はなんとか俺の近接武器の射程距離から離れる事ができた。

 

(逃がすかよ!)

 

近接武装の攻撃をここまで当てたんだ。

相手のシールドエネルギーの量もあと僅かだ。

 

俺はあと少しで倒せる相手に追撃を加える為に再度接近を試みる。

相手は俺の接近をさせないために、弾幕を形成する。

 

弾幕を確認した俺は右肩のミサイルを放つ。

6つのミサイルはあっけなく迎撃をされて相手にダメージを与えることはできなかった。

 

しかし、俺の目的は一瞬でも相手の視界を遮ることにあった。

爆発の煙が俺と相手の間に作られたことを確認した俺は相手の頭上を飛び越えるように跳躍する。

俺は相手の頭上を体操選手のような動きで移動中に右手の軽量マシンガンを叩き込み、相手の動きを封じる。

 

そして、空いての真後ろに着地したと同時にレーザーダガーを展開して懐に飛び込んでレーザーで相手の腹部を切り裂く。

この攻撃が相手のシールドエネルギーを削り切り、光に包まれてISが消えた。

 

「ち、ちくしょう」

「敵IS無力化完了っと」

 

EOSモドキは全滅させて、敵の主力を倒したことに安堵する。

IS初心者の今、経験者と対峙したのは正直手こずったが、いい経験になった。

さて、後は見逃しがないか確認を――俺は上空に未確認のISがいる事を機体が知らせて来たので、慌てて上空を目視で確認する。

 

「……チッ」

 

俺は新手青いISの登場にげんなりとしながら、迎撃の準備を整える。

 

 

 

 

 

アメリカ サンフランシスコ

空き屋

 

「……大変なことになりましたが、何とか収束しそうです」

 

赤が混じった白髪の少女――エアはさっきまで避難しようかとリュックに荷物を詰め込んでいたところだが、ハッキングした映像を映すモニターを見て静かに呟いた。

どうやら、想定していたような最悪の事態が無くなり、私の出番が無くなったことを理解し身体の力を抜く。

私はエアがモニターに向かう後ろ姿を横目に空き家の窓の近くで座っていた。

 

「………」

 

忙しくキーボードを叩くエアの姿を見ながら前世と今世のことを思い返す。

私はウォルターを倒した後、エアと一緒にコーラルとの『共生』を模索した。

私に出来ることは戦うだけで『共生』の模索について協力できなかった。

 

しかし、まったくの役立たずと言う訳ではなく、ルビコンにやって来る企業は後を絶たなかったので、そいつらの撃退に力を振るった。

何度も何度も、私は力の限り戦い、そして死んだ。

 

前の人生はまさに戦い続ける人生だったけど、最後は綺麗なベッドの上で逝けたのだからよしと思っていた。

だけど、まさか……今世までエアと一緒というのには驚いた。

今世の私が造られた研究所を突き止めたエアが、その研究所をクラッキングして私を命からがら連れ出した時から、この逃亡生活は始まった。

 

(そういえば、何故エアは私がレイヴン()だと理解できたのだろうか?)

 

ふと、そんなことを考えつつ、テロが起きた方角を窓から見ていると目の前を青いISが横切って行った。

ISの出す衝撃波で、窓ガラスはビリビリと震えた。

かなり薄いガラスなら、割れたかもしれない。

 

「レイヴン、大丈夫ですか!?」

 

人の肉体を得たエアは慌てて私に駆け寄り、頭を抱きしめる。

 

「………」

 

私と同じ人の肉体を得た所為なのか、今世で彼女のスキンシップが目立つようになったように思わる。

正直、過保護だと感じている。

 

いや、しかし、あの青いISは――

 

「ほっ、怪我はないようですね。それにしてもまたISですか……まったくこの町では一体、何が――」

「……あういぃ」

「え?」

 

何故だろうか。

つい彼の名前を呟いてしまった。

 

 

 

 

 

アメリカ サンフランシスコ

IS展示会場 上空

 

「アラクネの機体反応消失を確認した……オータムは敗北した。これより、救援へ向かう」

 

オータムの部隊からの救援を確認した私はISを用いて急ぎ現場へと向かい、そして到着した。

そして、オータムを倒した敵の姿を視認し、少し驚いた。

 

(あのISは……オールマインド社製のISだと?)

 

前世で知った同じ名前の会社を偶々見かけたので調べたことがある。

まあ、あとしばらくすれば倒産することは分かっていたが……まさか、このイベントに参加していたのか。

 

(オータムは、作戦前にはこの程度なら私一人で事足りるなどと言っていたが……いや、それだけ相手が強かったという話か)

 

同僚がその時にどや顔を思い出しながら施設内に侵入する。

 

(フッ、世話の焼ける同僚だ)

 

そして、前世で見覚えのある機体を見つめつつ困った同僚に話しかける。

 

「待たせたな、オータム」

 

異なる人生、ルビコンとは異なる空だが、今はこの空を舞えることを楽しもう。

*1
泥酔して覚えていないアイデア提供者本人の発言

*2
機密情報漏洩阻止

*3
(ALT)集積コーラル到達

*4
コーラルリリース

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