インフィニット・ストラトス RE:PONKOTSU 作:チャイナドレス先輩
2020年7月 太平洋上空
飛行機内
「………」
俺は今、飛行機の窓際席という空の旅で格別な思い出を残してくれるであろうはずなのに、陰鬱な気持ちを味わっている。
何故かというと――
「あぁ~、良い物が見れましたねぇ~」
……今から数時間前、日本を発つ前の空港に見送りに両親だけでなく鈴鹿も来た。
そこで谷本と鈴鹿は自己紹介を済ませた後に、出発のギリギリまで話をしていた。
飛行機に乗り遅れるといけないからと念には念を入れて空港に2時間以上前に来たことが仇となり、
2時間谷本に俺たちの関係を根掘り葉掘り聞かれた。
話を聞き終えた谷本は心なしか肌がツヤツヤしているのが余計にムカつく。
(コイツに余計なことを教えたくないから態々フライトの時間を鈴鹿には教えなかったんだけどなァ……夜の便での出発だったしな)
俺は最近は収まってたため息を吐きながら谷全に話しかける。
「そのニヤケ面で俺を見るなポンコツ女」
「貴女にあんな幼馴染がいたんですねぇ~、青春ですねぇ~」
「人の話を聞け」
「貴女が友達って言ってるから、彼女も合わせてるんでしょうかぁ~?」
「………」
「幼馴染って言うのが恥ずかしいって気持ちが貴女にもあったんですねぇ~?」
「別に……」
「幼い頃の彼女を守ってあげたのが出会いの始まりだなんてぇ~いいですねぇ~」
「お前の考えているようなもんじゃないぞ」
「あんな健気な彼女がいるだなんて貴女もすみに置けませんねぇ、このこのぉ」
(……うぜぇ)
俺はコイツへの殺意を極力抑えながら対応する。
「……念のために言っておくが、俺も鈴鹿も女だ」
「女の子同士の恋愛も世の中にはあるんですよ」
「……知らん」
「私が学生の頃には、友人が女の子からラブレターを貰ってましてね」
「そんな情報いらん」
「それに見たところ、彼女は貴女に対して――」
「他人が俺達の関係に口を挟むな」
「………」
俺はきっぱりと拒絶の意思を表すと谷全はやっと黙る。
(お前に言われるまでもなく、鈴鹿の気持ちは察してるんだよ)
俺に恋とも恩とも、妬みとも言えない複雑な感情を抱いていることは知っている。
俺もあいつに今でも
だけど――
(俺があいつに対して何も考えずに、力の世界があることを教えてしまった)
そのことを俺は後悔している。
ほんの軽い気持ちだった。
俺の中の答えをあいつにそのまま伝えてしまった。
正直に言うと初めに見た時は、出来る訳がないだろうとか思ってた。
変わるアイツをずっと見ていた。
すげぇ奴だと思った。
弱虫から、かけがえのない存在になった。
――そして、俺はあいつの本当の望みについても気付いている。
(だけど、もう俺に――はいらない)
もうあんな気持ちを味わいたくない
(……まあ、幸い鈴鹿に今のところは専用機としてのISが手に入ることはないから心配しなくていいことではあるけどな)
俺は首元に付けたドックタグを見ながらそう思った。
……変な気分になった俺は気分転換の為にスマホを弄る。
「あ、機内で……」
「ダウンロードしたISバトルの動画見るんだから大丈夫だよ。……そういうお前は人の恋路の前に自分のことをどうにかしたらどうなんだ?」
「あ、私は別にそこら辺はどうでもいいので」
「やっぱお前、クッソ迷惑な存在だな。その様子じゃ友達いなかっただろ」
「フフフッ、実は私は、あの織斑千冬や篠ノ之束と――」
「ふーん」
ごめん、お前の交友関係に興味がわかない。
話も半分以上聞いてなかった。
「あ、嘘だと思ってますね?」
「正直言って、どうでもいい」
俺は残りのフライト時間を見る。
後8時間で目的地のサンフランシスコに到着する。
今の時間は日本でいう深夜10時だ。そろそろ寝ておかないと現地で辛いが、
俺は少しでも自分の戦闘技術を伸ばすために少しだけ夜更かしをする。
「お前はいい所で仮眠を取っておけ」
「久しぶりの正規での空の旅なのでもう少し起きて――」
「忠告はしたぞ」
俺はイヤホンを付けて
アメリカ サンフランシスコ
市のISアリーナ IS武装展示会特別会場前
現地時間の13時
「眠ぃい!!」
案の定、ポンコツ女は夜更かしをして眠いとかほざいてやがる。
「だから言ってろうが」
人の忠告を聞かなかったポンコツ女を馬鹿を見るような目を向ける。
(幸い、展示会は明日からで今日は会場の下見だけだ)
展示するパーツなどの搬入は明日からなので今日は寝不足でも問題はない。
問題は無かったのだが、出来れば時差を慣らすのは早ければ早いほどいいんだけどな……
「はぁ……そこのコンビニでなんか買ってくるから待ってろ」
俺は仕方なく近くにあるコンビニでコーヒーでも買ってきてやることにする。
それに、俺も小腹が空いたので何か軽く腹に入れたい。
(コーヒーと、サンドイッチ……あ、おにぎりも置いてあるのか)
日本の食べ物が平然と置いてあるのは、ISを開発した奴が日本人のおかげなのか、コンビニの企業努力の結果なのか?っと、少し考えた。
……せっかくだから、外国で日本の食べ物を食べるのも乙だろうと思いながらおにぎりに手を伸ばした。
「「あっ」」
おにぎりに手を伸ばすと別の誰かの指と触ってしまった。
どうやら隣にいた少女と同じタイミングで手を伸ばしてしまったらしい。
「あぁ、悪いな」
「す、すみません」
お互いに日本語で謝る。
俺は口に出しただけだが、その少女は頭を深く下げて謝って来た。
彼女は何度もぺこぺことしながらおにぎりやパンなどを複数かごに入れてレジに向いく。
その少女は帽子を目深にかぶり顔は分らなかったが、赤が混じった白髪が特徴的で印象に残った。
しばらくの間、その少女の髪を眺めていたがすぐに興味を無くして必要な商品をかごに入れた俺もレジに並んだ。
アメリカ サンフランシスコ
空き屋
「ただいま戻りました」
「………」
「気にしないで下さい、何かあった際にはあなたの力に期待してますから」
「………」
「はい……しかし、どこかに整備できる拠点も構えるべきでしょう」
「………」
「日本なんてどうですか?治安もいいですし、食べ物も美味しいらしいですよ?」
「………」
「よかった。それでは戸籍を偽装して出国しましょう」
「……?」
「お金についてはご心配なく。株が上手くいっているので、後もうしばらくすればISのパーツから武器までそろえることができるぐらいのお金になります」
「………」
「そしたらペーパーカンパニーを作って、企業所属と身分を偽ってIS学園に入学しましょう」
「……?」
「私を誰だと思っているのですか?その程度の偽装工作なんてちょちょいのちょいです」
「………」
「はい、一番の目的としてはIS学園に入学中にどこかの後ろ盾が欲しいところですが……」
「………」
「でも今の生活も世界中でかくれんぼしているようで私は楽しかったです」
「……?」
「え?もう少し続けてもいい?……そうですね」
「………」
「……あなたとこんな風に過ごせるなんて思ってもいませんでしたし、もう少し続けましょうか」
「………」
「はい、私も嬉しいです。それでは、次はどこにいきましょうか――」
「レイヴン」