インフィニット・ストラトス RE:PONKOTSU   作:チャイナドレス先輩

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遠足の準備

2020年7月 アメリカ

某所

 

 

「………」

 

私の名前はオータム。

亡国機業という非合法組織のエージェントで、IS実働部隊の一人だ。

明日、私たちはIS武器展示会を襲撃を予定しており、今は襲撃前の最終確認中だ。

武装の試射をISを実際に用いて行うという情報があり、私たちはそのISと展示される武器などを強奪する予定だ。

ISの強奪だけなら、私と私のISであるアラクネだけで事足りるのだが、新しい戦力のテストもこの作戦行動中に行うというのが上からのお達しだ。

んで、私はその新しい戦力とやらを作戦行動中の隊長兼最大戦力として見に来たのだが――

 

「どうでしょうオータム様、我々開発部が手掛けた機体は?」

「………」

 

いかにも研究者という感じの男が、私に目の前の機体の感想を求めてきた。

私は目の前に並べられている人よりも少し大きい金属の塊の様な黒い機体についての言葉が何も出てこずに男に対して返答が出来なかった。

 

「これは……EOS(イオス)、なのか?」

 

ようやく、言葉を絞り出せた。

EOSとは、国連が開発しているパワードスーツの試作品のことで、正式名称はExtended(エクステンデッド) Operation(オペレーション) Seeker(シーカー)という名前だ。

長いから各単語の頭文字を取った略称であるEOSと呼んでいる。

ISと同じパワードスーツだが様々な問題があり実用は当分先だという話は聞いていた。

具体的にはEOSは大型バッテリー背負っていて、またシールドバリアが無いのに肌の露出があって防御力に不安があって、パワーアシストも稚拙で、そしてとても重く最大稼働時間が10分などという様々な点で改良の余地を残すパワードスーツであるという話を聞いていた。

 

(今回、合同の任務にあたる戦力はEOSだと私は聞いていた――しかし、なんだこりゃ?これは本当に話に聞いていたEOSか?)

 

まず目の前の黒い機体で人間の四肢などが出てくるようには見えない。

昔のロボットアニメとかに出てきそうなデザインだ。

 

(なんか脚部が異様に太いロボットがいたな?それに似てる)

 

また背中にあるという大型のバッテリーが取り付けられているとは見えない上半身。

あと脚部には本来高速移動用のローラーが付いているという話だったが、それも見えない。

 

「おい、技術者」

「はい」

「これは本当にEOSか?それとも何か?改造のやりすぎで原型を留めていないとかそういう話か?」

「端的に言えばそういう話ですね」

「……そうか」

 

そうか、話に聞いていた造形と完全に異なるほどの改造をしなくてはいけないほどの代物だったんだなEOSって……

どんだけ欠陥品だったんだよ元のEOSって……

 

「……私が聞いていたのは国連が開発したEOSだけだから、明日の作戦行動の円滑な遂行のためにどんな改造をしたのか、どう違うのか教えろ」

 

1か月前から、この作戦の概要については知らされていた。

EOSも複数体一緒に行動するって話も聞いていた。

だけど、ここまで改造したEOSが出てくるなんて知らされていなかった。

 

(どうせ主戦力はISだろって決めつけて確認を怠った私が悪いな、これ……)

 

今度からはこのようなことがない様に努めたい。

……正直、技術者たちの熱意とか舐めてた。

 

「はい、説明します。まず背面に大型バッテリーから、脚部や腰部にバッテリーを移しました」

「あ?それだと雀の涙程度のパワーアシストじゃ足が重すぎて歩くことができないだろ?」

「はい、ですので歩行機能を付けることを諦めました」

「あ、諦めた……」

 

私は疑問点は多いが、話の続きが気になりそのまま話をするように手で促す。

 

「バッテリーを脚部や腰部に移したことで大きく変わったことで言えば、脚部ローラーによる高速移動ではなくホバー移動方式を採用。地面から多少浮くことが出来るように脚部や背面にスラスターを取り付けました」

 

そう言いながら、技術者の男は手元に用意した資料が入っているタブレットを渡して来た。

EOSと目の前の機体がどのように違うのかの詳細を図などを入れて記載しているから大変分かりやすい。

EOSの背面バッテリーてここまで大きかったのか……

 

「ホバー移動方式を採用した結果、操作感覚が大幅に変わりました」

「具体的に言うと?」

「はい、基本的にサーフィンやスケートボードをするような感覚での移動法となり、格闘戦も考慮しなければ操縦者の肉体的な負担も大幅に軽減」

「ほー、分かりやすくて良いな」

「あと機体自体が多少浮きますので悪路走破性は格段に上がり、スラスターの出力を上げ稼働時間を犠牲にすれば高所へ飛び移ることが可能となりました」

 

実際に2mほどの高さの障害物に地表からスラスターを使って上がる実験動画を見せられる。

 

「従来のEOSと具体的にどう違うのかというとローラー式だと行く手を阻む障害物に対して、重い機体を恩恵の少ないパワーアシストで登攀するか迂回をしなくてはいけませんでした」

 

従来のEOSが登攀を頑張っている動画も見せられた。

その実験動画の下に赤文字で『大変危険ですので絶対にマネをしないで下さい』『専門家の許可のもと実検を行ってます』などという注意書きが表示されているのが気になった。

 

「御覧の通り、パイロット負担の軽減や迂回するしかなかった選択肢に障害物を乗り越えることも選択肢に入れることが出来るようになりました」

「ところで、この従来型のEOSのパイロットはテスト完了した後に動いていないようだが大丈夫だったのか?」

「ISのような防御機構がない機体で技術職の人間にクッソ重いEOSを装備させられの登攀をクソ上司に強要され、高所から落ちたら良くて即死、悪くて全身骨折の内臓破裂という恐怖心に体力と精神力を多大に消費して心身ともに死ぬ思いをしましたからね。様々な疲労と生きているという安堵感で一時的に動けなくなっているだけです」

「ああ、あの動画のパイロットお前だったのね。お疲れ」

「ゴホン……次に防御面ですが、全身を装甲で覆えるようにしました。また砲弾の直撃ではないと壊せない程度の装甲を持ち、至近弾の爆風程度ではこの機体は倒せません」

 

どんな装甲を使っているのか、どんな攻撃に耐えれるのかということを説明した資料を出す。

 

「ISの持つ火器なら確実に撃破されますが、それでもこの機体は戦車などに比べて小回りが利くので避けて耐えることもできます」

 

ここら辺も、ISの攻撃に耐えるのがそもそも無理だから諦めて割り切ったのか。

 

「そしてこれまでの改造で一番効果が出たのが、稼働時間の大幅な増加です」

「……と、言うと?」

「はい、先ほども説明しましたが歩くことが無くなり、攻撃時以外にパワーアシスト機能をほとんど使わなくなったため電力消費が大幅に減りました」

「ホバーでも電力消費するだろう?」

「そのホバーの消費量よりもパワーアシストの方が圧倒的に電力を消費するんですよ……一定の速度で移動をするだけなら3時間以上、戦闘を行うのなら30分以上の稼働時間を増やす事が出来ました」

「元の10分より3倍に増えたけど、実際の数字で聞くとあんま大したことないな」

「使う装備の弾数的に10分も撃ち続ければ空になるので、そこは……」

「まあ、火力を最大限使い切ることが出来る程度には稼働時間が伸びたとも言えるな?」

「はい、そう言っていただけると幸いです……装備は専用のマシンガンとバスーカとミサイル……IS以外でISにダメージを与えることが出来るであろう装備となっております」

「ほーう?」

「あくまでダメージです。撃破はできません……しかし、この改造機で敵ISに少しでもダメージを与えて、その後に本命の戦力である味方ISとの戦闘を優位に進めるという戦術をすることが可能になりました」

「ほーん、期待はしないでおくよ」

「まあ、今回の作戦ではこの機体でISと直接戦闘をすることは作戦内容にはいっていませんから。この機体の目的は実戦での稼働データ――派手に暴れることです。……正直、市民会場の扉や対人用装備では火力は過剰ではあります」

 

まあ、手元の資料を見る限り人に撃ったら間違いなく即死する火力だよな、コレ。

 

「……にしても、これ本当にEOSとは別物なんだな。元の奴と区別とかするための名称とか付けていないのか?」

「はい、我々開発部もこれはもはやEOSではないと考えており、別の名前で呼んでます」

 

 

 

 

 

「我々は、これをマッスルトレーサーと呼んでおります」

 

 

 

 

 

「マッスルトレーサー……略称はMTでいいか。んで?このMTのパイロットたちの用意は?」

「元軍人を確保しております」

「人数は?」

「20人」

 

思ったよりも数が多いので驚いた。

てか、それ機体足りんのかよ?

 

「ご安心ください、人数分の機体の用意はすでに出来ております」

「あ、そう……なら20人を5人ずつで分けて班として運用するか」

「それぞれの班の名前や区別などはどうしましょう?」

「アルファベットを上から順番に班名に使って、A01(エーゼロイチ)とかD04(ディーゼロヨン)とか簡単な奴にしろ。分かりやすくて良い」

「はい、仰せのままに」

 

私は聞いた話を再度整理するために渡された資料の読み直す。

 

(思っていたよりも使えそうな戦力が手に入ったな……作戦内容に大きな修正は必要がないが――ああ、そうだ)

 

「あとでいいから、そのパイロットたちとも顔を合わさせろ、これから一緒の仕事をするんだから最低限、顔を出さないとな」

「分かりました」

 

私は資料を軽く読み直し暫定の戦力を確認する。

陽動や会場の混乱が目的のMTが20機と、会場に乗り込んで目的の品を強奪するのが私とアラクネ……

 

(そして、念のための脱出用の為の殿などの脱出時のサポートが目的のISが1機……)

 

明日、会場にあると予想されるISは武装のテスト用のものが1機と軍から派遣された防衛用のIS1機の合計2機のみ。

実戦を経験したことがないIS乗り2人が相手……そんなものこのオータム様の敵じゃない。

一方的な展開で私が圧倒するだろう。

 

(ああ、一方的な蹂躙は楽しいよなぁあ?)

 

私の頬が自然と吊り上がるのを自覚する。

 

「さあて、明日は愉快な遠足だ」

 

 

 

 

 

「それにしても鉄くずみたいなEOSをよくこれだけの改造をすることができたな?」

「ああ、それは開発主任が以前に立ち寄った日本の居酒屋にいた色々残念そうな女性がこの改造のアイディアを話していたらしいですよ」

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