きさまらにも味わわせてやる!ゲッターとヤマトの恐ろしさをな〜〜!!   作:桐山将幸

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PROLOGUE 2 ハ虫人類最後の日

 人類最後の砦、早乙女研究所の指揮室は、現在指揮すべきゲッターロボの行動不能状態にあって、しばしの眠りの中にあった。

 しかし、その眠りの中にあっても、数十年は時代の先をゆくマシンたちは活発に活動し……更に、二人の老人が並び立ち、何かを語ろうとしていた。

 一人の老人、恰幅のよい男が言わずとしれた研究所の主、早乙女。

 もう一人、両目の大きさの釣り合わぬ、狂科学者然とした男が、敷島であった。

 

 「戦況はどうじゃ、早乙女?」

 

 「……ゲッターロボGの出撃不能状態がやつらに知られたらしい、連中は艦隊もメカザウルスも陸戦隊も総動員して、ここを潰すつもりだ」

 

 「ヒヒヒ、やつらも臆病なもんじゃ、だが、好都合じゃの」

 

 敷島の嘲りに、早乙女ははっとする。

 この老人がどのような男であるか、早乙女はよく知っていた。

 戦中より名の知られたロボット工学者であり、兵器開発者である彼は、自らの作った兵器が殺生を行うことをこよなく愛し、自らもその犠牲になりたいと公言してやまぬ、異常者だった。

 彼がこうも喜悦を見せる場面は限られている、そして、今は思い当たるのは、早乙女博士の頭脳を持ってしても、一つだけ――――

 

 「まさかタケルのゲッターを!!?」

 

 「そうじゃ、二番弟子を取ってしまって悪いのう」

 

 その瞬間、けたたましいサイレン音、そしてそれを遥かに上回る轟音によって、早乙女博士は自らの描いた懸念が正しいことを理解した。

 一通りの騒音が収まると同時に、敷島博士はパイロット通信用モニターの一つに近づき、もうたまらないと言いわんばかりに操作し、続けて捲し立てた。

 

 『こちらゲッターロボタケル、大鳥タケル、通信状態は……』

 

 「良好じゃわい!! それよりよく聞け! 連中はGがぶっ壊れとるのを嗅ぎつけ、研究所に総攻撃の構えじゃ!!」

 

 『そりゃあ好都合です!』

 

 死兵と化したハ虫人類は、散らばれば散らばるほど面倒になる。

 早乙女研究所への集中は、人類を道連れにしようとするハ虫人類を更に道連れにしてやるのに、好都合だった。

 

 「陸戦隊は研究所と陸ぐ……陸上自衛隊が始末する!! タケル、おまえは大物を全部平らげちまえ!!」

 

 「どういうことだ敷島博士、タケルのゲッターにそんなパワーはない、ましてや、乗組員が足りない現状では……まさか!!」

 

 「ヒヒ、そのまさかも当たりじゃよ」

 

 早乙女の目が見開かれる。

 彼はもはや、良心の呵責に怯むやわな科学者でもなければ、そんな状況でもない。

 それでも……自ら、そう、自らの作り上げた研究所の戦いが、我が子とも言えるゲッターチーム、愛弟子ともいえる男の命を奪うという事実が心に起こした波紋を抑えるのに、僅かな時間を必要とした。

 モニター越しに、タケルと早乙女の視線が交差する。

 

 『……おれ発案の、おれが願い出た改造です、行かせてください、早乙女博士』

 

 「タケル君……」

 

 早乙女とタケルの関係は、それなりに長く、深い。

 数年前、タケルが早乙女研究所に()()()()を志願して以来、タケルは早乙女博士たちの助手であり、教え子であり、自分たちが作り上げたマシーンの優秀なパイロットであった。

 それだけでは、ない。

 

 『ゲッターチームと研究所のみんなと、ミチルさんと、元気によろしくお願いします、代わりに……達人さんにはおれから挨拶しときますから』

 

 家族同然のゲッターチーム、早乙女家の長女、長男のミチルと元気。

 幾人もの研究員たちを失いながら続いてきた早乙女研究所という一家の中でも、もっとも早乙女博士に近かった男の一人が、タケルだ。

 しかもタケルは、早乙女家の長男にして早乙女博士の助手、達人の戦死を目の前で見届けていた。

 達人を目の前で失ったタケルが、実の父である自分以上に嘆き悲しむ光景を、早乙女博士はしっかりと覚えている。

 だからこそ、タケルがこの戦いに挑む理由がわかった。

 だからこそ、タケルをこの戦いに送り出す意義がわかった。

 

 「……タケル君、頼んだぞ!」

 

 『ええ、達人さんには、当分みんなは来ないと言ってやります、嘘にしないでくださいよ?』

 

 早乙女博士が……そして、敷島博士までもが、神妙に頷いた。

 タケルは頷き返すと、マント状の非反動推進飛行装置ゲッターウィングを展開し、死出の旅へと出る。

 

 その旅立ちが終わりではなく、ゲッターへの融合でもなく、遥か未来、遥か彼方への旅立ちであると知るものは誰も……。

 ……この地上に生きる生命には、誰もいなかった。

 

 

 

 富士山ほどの大きさを持つ巨大な岩塊に、絵に描かれる『火山』を大量に貼り付けたような構造物が、太平洋、硫黄島方面の水面に頭を出し、高速で移動してゆく。

 その数は決して多くないが、文字通り山程に大きいそれらは、全て合わせれば巨大な島にも匹敵するだろう。

 これが恐竜帝国最後の艦隊にして最後の国土、本来マグマ層にたゆたうべき、マシーンランド艦隊である。 

 その旗艦は今、混乱の只中にあった。

 

 「早乙女研究所より超高速で出撃する機影あり、速度……信じられない、ゲッターライガーを更に上回っています!!」

 

 「なんだと!!? ゲッターロボを撃破し、ゲッターロボGを潰したばかりだというのに……やつらは更に新型を作ったのかあ~~!!!」

 

 マシーンランド艦隊旗艦とは、すなわち、恐竜帝国の最高司令部であり、最高行政府でもあった。

 恐竜帝国にはもはや軍隊しか残っていない、居住地であるマシーンランドを全て兵器に変えてしまったからだ。

 皇帝が死に、その幕閣が全滅した後、生き残りが最低限の上下関係のみを定めて作り上げられた寄せ集めの軍隊が、恐竜帝国に残された最後の組織である。

 しかも、休眠期が迫るハ虫人類は、たとえ勝利したとしても地上に生活基盤を築くことはできず、マグマ層に帰ることもままならない。

 

 そんな破滅間際の帝国が形を保っていられる理由は唯一つ。

 ゲッターロボ、早乙女研究所、人類への復讐である。

 一つはすでに達成され、それにより、残りの二つも可能になる……はずだった。

 

 「おのれ~~!! あのゲッターロボを破壊しろ!!!」

 

 臨時司令官の命令により、マシーンランドの直掩にあたっていたメカザウルス軍団が一斉にゲッターロボへと向かってゆく。

 

 それに反応して、遥か遠くのゲッターロボが両肩に手を回し、飛び出た棒を掴み取る。

 すると、棒はめくれるように刃を展開し、二つの巨大な手斧を顕現させた!

 

 「ゲッタートマホオォォォォッック!!!!!」

 

 環太平洋全てに届けと言わんばかりに響き渡るその雄叫びは、紛れもなく、ゲッターチームメンバー、大鳥タケルのものだった!!!

 

 ゲッタートマホーク、手斧と棍棒を組み合わせたようなその武器を持って遠距離の敵に相対したならば、文字通りそれはトマホークとして投擲されるのみ。

 だが、今日のゲッターロボ、今日のタケルはそうではない!

 

 「かったるい鉄砲ごっこは抜きだぜ、行くぞ~~~~!!!」

 

 タケルがレバーを押し込んだ瞬間、遥か遠方にいたはずのメカザウルス数体が、ゲッターの遥か後方で爆裂!

 当然それは、ゲッターロボが急加速し、メカザウルスを追い抜きながら切り裂き、切り裂くに飽き足らず爆散させたのであるが……。

 喉から香るほのかな鉄を堪能しながら、緑の燐光にまみれたタケルは歯茎をむき出しにした。

 

 「……十分だ」

 

 彼の天才的な頭脳が、瞬時に彼の望む答えをはじき出したからだ。

 

 「おれとゲッターの命は、きさまらを殺し尽くすのに十分残ってやがるぜ!!!!!」

 

 マシーンランド司令官が、恐慌状態で叫ぶ!!

 

 「マグマ砲発射準備!! 全メカザウルス出撃!!! 全軍総力でやつを消滅させろ~~~~!!!!」

 

 命令を聞いたメカザウルス軍団が飛び出し、マシーンランドは火口型の砲門、マグマ砲をゲッターロボに向けようと身動ぎする。

 だが……それより早く、それより速く、ゲッターは動いていた。

 動き、戦列の最も先頭に位置するマシーンランドに向けて左手を向けていた。

 ――――訂正しよう、左手は、そこにはない。

 

 「ドリルアタック!!!」

 

 そして、左手の代わりに向けていたドリルもまた、そこにはすでにない!

 強引な強化で食いつぶしたゲッター2、速度とドリルを武器にして戦うゲッターの遺児であるドリルは、マグマ砲の砲門を砕きながらマシーンランドを貫通し、その向こうの獲物を探し始めている。 

 タケルはそれを待たずに新たなスイッチを押す、数秒押し込むだけで、規定エネルギーを120%上回るパワーがゲッターの額のクリスタル型装置へと流し込まれてゆく。

 ボタンとクリスタルにエネルギーがスパークし始めた時――――

 

 「ゲッタービィィィッム!!!!」

 

 ――――雷の如く荒れ狂うビームが額から解き放たれ、いくつかのメカザウルスを巻き込みながらマシーンランドの穿孔へと潜り込んでゆく。

 次の瞬間、ゲッタービーム、マグマ砲、そしてマシーンランドとゲッター線の拒絶反応が作り出す、最も巨大な水爆をも上回るエネルギーの爆発と奔流により、マシーンランド数隻とタケルを襲っていたメカザウルス軍団のほとんどが消滅!!

 

 「雷型ゲッタービーム、こりゃあ人間相手には……いや、ゲッターそのものが人間には向けられねえか」

 

 成層圏まで渦巻く爆炎、破局的なまでに荒れる海を見る、ゲッターロボは、ゲッターエネルギーの暴走によって自らの装甲板を破壊しつつある。

 そのパイロットシートで笑みを崩さず独りごちるタケルの口端、襟元は、赤く染まっている。

 ゲッター炉心に近い足元の皮膚の感覚は、消えかけている。

 たった数度の攻撃だが、二つのタケルの命は、今にも燃え尽きようとしていた。

 

 「……ゲッターエネルギーなおも上昇、この指数は……」

 

 ビッグバンを引き起こすほど……、と、頭の中だけで冗談を言いながらも、タケルの計算は狂わない。

 自分の命が尽きるまでに、全てを持っていけるという計算は、狂っていない。

 

 

 だが、同じ計算を抱いているもの……いや、ものたちが、この戦場にはいた。

 

 「ゲッターロボの勢い、更に増しています!!」

 

 「あ、あれではオーバーヒートしているはずだ……!」

 

 「おそらく隼人かタケルがあやつっているのだ! それならば暴走する機体をギリギリまで使いこなすことも、われわれを殺し尽くすに十分な時間を計算することもできる……!!」

 

 恐竜帝国はタケルと接触してから数分で、全戦力、全人口の数割を失った。

 帝国の臨時司令部は、ゲッターロボのパイロットは自分たちを殺し尽くす算段を正確に立てているのだと、理解していた。

 だが……それでも、帝国の士気は一切衰えてはいなかった。

 臨時司令が、顔を歪める。

 彼は男であり、この時浮かべるのは、やはり、深い笑みだ。

 

 「全艦隊へ通達!! 予備プランへ移行!!! ……全人類……少なくともゲッターロボ、早乙女研究所だけは、なんとしてもこの地上から消滅してくれる!!!!」

 

 宣言と同時に、メカザウルスは二手に分かれる。

 一つは空中戦に適したメカザウルス、役割はゲッターロボを足止めして死ぬこと。

 一つは水中戦に適したメカザウルス、役割はゲッターロボを足止めして死ぬこと。

 更に、残る全てのマシーンランドが、その巨体と形状に見合わぬ速度で激しく潜航を始めた!

 

 マシーンランドの急速潜航によって出来た水柱が立ち並ぶ海の上で、タケルは足止めのメカザウルスを殺し尽くすことを強いられていた。

 ……そう、メカザウルスを皆殺しにするのがタケルの勝利条件だ。

 それ以外はない、一体でも逃がせばゲッターロボG復帰までにメカザウルスは破壊の限りを尽くすだろう。

 

 「ミサイルストォォム!!!! ……ちっ、連中、何を考えてやがる」

 

 ゲッター3の形見、腹部に移設した多連装ミサイルが空に残るメカザウルスを殺しつくすのを確認しながら、タケルはふと考える。

 

 「全世界に逃げて、おれが死んだあとで大暴れか? いや、そんなチンケな作戦なわけ…………」

 

 ほんの一瞬出来た移動時間は、タケルに考えを深める時間を与えた。

 下に逃げた恐竜帝国、下には何があるか?

 恐竜帝国という連中は、一体何ができる?

 ここは硫黄島近海、硫黄島と日本をつなぐ間にあるものは…………。

 

 「海底火山!!!!」

 

 

 深海に向かうマシーンランドは、天空のゲッターロボタケルと同じく、その内部に潜むエネルギーを爆発的に膨れ上がらせつつあった。

 その目的ももちろん、爆発である。

 

 「全艦隊の反マグマ原子炉、出力臨界を維持!!」

 

 「よろしい、フフフ……このままでも、この海の沿岸全てを津波で押し流すほどの大爆発を起こせるだろうが……」

 

 「まもなく、目標海底火山へ接触します」

 

 「フハハハハ~~~ア!!! マグマの汲み上げと起爆準備を行えい!!!!」

 

 死んだ魚がダイアモンドダストの中を踊り……やがて、海底の泥と海底火山の煙の中に消える。

 この海で自発的に動く存在は、もはやマシーンランドしかない……遥か水面から現れた追跡者以外は。

 

 「やはり来たかゲッターロボ!! だがもう遅い、人類にも地球は渡さん!!!」

 

 臨時司令が叫ぶと同時、呼応するかのように追跡者、タケルもまた、叫ぶ。

 

 「地上、いや、地球全てを道連れにするつもりかあ~~~~!!!!」

 

 もはや戦いどころではない。

 マグマエネルギーを汲み上げながら、増幅し、その力をもって、自らがかつて暮らしていたマグマ層までも破壊しようとする恐竜帝国、ハ虫人類!

 その妄執は、手ずからゲッターを、早乙女研究所を破壊するという野望を砕かれてもなお、とどまるところを知らないのだ。

 

 「……おれがどれだけ手を尽くしても、爆発させずに引き剥がせるのはただの一隻、それも自爆そのものを止められるわけじゃない――――」

 

 ――――ただ一つの、可能性を除けば。

 

 「ゲッターロボのエネルギーオーバーロードを自爆でなく、機体全体のパワーと変形能力へと振り分け、電子頭脳でおれと直結する……それしかない」

 

 そうすれば『できる』。

 『できる』のだと、タケルには確信があった。

 タケルには分かっている、高まり続ける自分のテンションは、ただ決死の特攻を行っているためだけではないと。

 彼の、すでに本能とも言えるレベルにまで高められたゲッター線との親和性と知識、知性は十分、理解しているのだ。

 

 ゲッターロボタケルと大鳥タケルは、同化できる……。

 ゲッターロボタケルと大鳥タケルの同化は、事態を何もかも解決するだけの力がある……と。

 

 「……それで、おれに、それをやれってのか? なあ、ゲッターよ、おれはおまえの寄生虫になっちまいやしないか?」

 

 タケルはもう、死に怖気づいたりしない。

 自我の消失や変動など、責任を果たすことに比べれば些細な問題だ。

 だが……だが、ゲッターに全てを委ねるという選択が、それを果たすことになるのかどうか、……それだけが、問題だった。

 

 答えどころか、意思があるかすら定かではない存在に、タケルは語りかけ――――

 

 『――――あなたがそれに意思があると思うならば、その意思を前に何を行うべきか、あなた自身が決めるのです、それが、あなたのなすべきこと……』

 

 答えが、あった。

 

 「だ、誰だ!!!!?」

 

 一瞬、我を忘れたようにタケルが叫ぶ。

 幻覚か真実か、それとも超自然的な現象がそれらを両立させたのか。

 タケルはそれが何者であるか考えようとして……やめた。

 代わりに、顔を歪めぬ、含み笑いを浮かべる。

 

 「フ、フフ……意思があると思うなら、か……いいこと言うじゃねえか、なあ、ゲッターロボ!」

 

 タケルは、溢れ出るにまかせていたゲッター線の漏出を止め、エネルギーをゲッターロボに押し留める作業を行った。

 そして、全身へのエネルギー供給と浸透を無制限モードに変更し、コンピューター入りのヘルメットを装着する。

 当然、ヘルメットとタケルの頭脳は電気的、ゲッター的に接続され、ヘルメットにもショート寸前のゲッター線が流れ込んでゆく。

 

 「そうとも、おまえはおれの作ったマシンだ、おれのものだ、そして、おまえはおれだ!!!!」

 

 タケルは、もう一度叫ぶ。

 

 「ゲッターロボタケル!!!!」

 

 更に、叫ぶ。

 

 「おれがおまえと一体化しようと、誰が笑えるかよ!! 行くぞお~~~~!!!!」

 

 最後にタケルはスイッチを押す。

 その瞬間、ゲッター線の奔流がコックピットブロック、電子頭脳、そしてゲッターの全身で猛り狂う!

 スイッチとはすなわち、これまで押し留められていた二つのゲッター増幅器による無限フィードバックを開放するスイッチだ。

 それは、ゲッターのポテンシャルを自滅覚悟で叩き起こすスイッチであり……。

 ……マシンに意思があるならば、それを呼び覚ますのに最適なスイッチである。

 

 「うおおおおお~~~~~~!!!!!」

 

 タケルはゲッターを知っている、そして、感じている。

 ゲッター線には意思があり、人間に影響を与えるのと同時に、人間に影響を与えられる存在だ。

 暴走しつつあるエネルギーを、留めるのではなく受け入れ、望み通りの形へと変えなくてはならない。

 そして、望みとは!

 

 「おれたちは最強だ!! 日本を!! 早乙女研究所を!! みんなを守るんだ、ゲッターロボタケル!!!!」

 

 タケルが今生を生きてきたその意味、ゲッターロボタケルが生まれたその意味こそ、彼らが抱く唯一の望み!!

 3つの心がなくとも、ここに一つの正義がある、一つの勇気がある、一つの理想がある。

 愛する人々を守るため、ただ全てを賭して戦うということだ!!

 

 そして今、その心は形を成した。

 ゲッターの装甲は今や、剥離してはいない。

 それどころか、最初から欠けていた部分すら増殖した超ゲッター合金が埋め、更に機体の外へと広がろうとしている。

 ゲッターロボタケルは完全となり、完全を越えようとして……進化しようとしているのだ。

 

 「せっかくの冥土の土産だろうが、取り戻させてもらうぞ、ハ虫類ども!!!」

 

 タケルがレバーを握り込み、腕を僅かに動かすと、ゲッターは反マグマ原子炉の眼の前にいた。

 壁を蕩かしながら現れたゲッターを前に、炉心を暴走させるために働いていたハ虫人類の顔が驚愕に歪み、作業用メカザウルスが異常事態に呻くその瞬きにも瞬間、ゲッターの腕が反マグマ原子炉へと突き刺さり――――原子炉そのものが、ゲッターの腕となった。

 

 「……これが、すべてが分かるというやつか」

 

 タケルの心持ちは、穏やかになりつつあった。

 原子炉から始まり、粘土をこねるようにして、マシーンランドの全てがゲッターに飲み込まれてゆく。

 だが、現れたゲッターの姿は、一体化とは程遠い溶けかけた飴細工の塊のような有様であった。

 

 (そして、おれとこいつはまだ、本当の進化の時を迎えるには早すぎたってこともわかった……)

 

 新たなものを生み出せはしない、新たな道へと歩むことはできない……。

 ……だが、それを生み出せる地球を、守ることはできる進化だ。

 タケルは……そして、ゲッターロボタケルはそれでいいと思った。

 

 マシーンランド艦隊旗艦では、もはや作戦指揮など行われていなかった。

 

 「一刻も速く機関を爆破させろ!! どれだけ小さい爆発でもかまわん!!!」

 

 「だ、だめです!! マグマエネルギー減少、ゲッターに吸い込まれています!!」

 

 「があ……!! な、なぜだ……!!? なぜだゲッターロ――――ぎゃん!!!!」

 

 進化も昇華もなく、ただ全てがゲッターに飲み込まれた。

 恐竜帝国という一つの文明は、ここに終わったのだ。

 マシーンランドを飲み込んだゲッターロボはやがて、海面へとその姿を現す。

 だが、その姿は、全てを飲み込んだ巨大な塊ではなく、小さな、ゲッターロボのそれでしかなかった。

 

 早乙女研究所では、二人の博士だけが固唾を飲んでその様を見守っていた。

 

 「見ろ早乙女!! マシーンランドの蓄えたエネルギーが全て! ゲッターロボタケルに吸収されておる!!!」

 

 「ああ……ゲッター線の持つ、物質やエネルギーを変形させる能力と知性に似た働きはすでに認識していた、だがこれではまるで生物、いや……」

 

 「神!!!! ヒヒヒ、やつはとっくに()()じゃ、本当の神様になってもいいじゃろう!!」

 

 「…………、……そうかもしれんな」

 

 

 

 地球全てを焼き尽くすだけのエネルギーを取り込んだゲッターの中、タケルの意識はすでに度重なる負荷と同化のショックで消え失せようとしていた。

 だが、消えかかったタケルの意識に、再びあの声が呼びかける。

 

 『あなたは愛するものたちのために全てをなげうち、今やその生命までもを閉じようとしている……しかし、あなたにはまだ、なすべきことが残っているのです』

 

 「なすべき……こと」

 

 『あなたは傷を癒やすため、そして、さらなる進化を迎えるため、眠りにつかなくてはならない、あなたが眠るべきその場所は……』

 

 意識が指さした場所は、遠く、空の向こうに光る赤い星。

 かつて人々が、血と炎を見出し、戦の神の名を与えてきた、赤い星。

 すなわち火星が、タケルに与えられた、200年の時を過ごす寝床だった。





※このPROLOGUE2は本編2話までの投稿後、加筆されたものです

お待たせしました、桐山です、変則的投稿になりますが、PROLOGUE2、お楽しみいただけましたでしょうか。
PROLOGUE2は2話の投稿後、説明不足等を感じ、プロットより清書した回となります。
本来の次回、3話をお待ち頂いていた方には申し訳ございません、今しばらく……1、2週間ほどお待ち下さい。
それでは、次回までご機嫌よう。
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