きさまらにも味わわせてやる!ゲッターとヤマトの恐ろしさをな〜〜!!   作:桐山将幸

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PART 1 過去よりの救援

 岩塊を照らすまばゆいライト、こもる熱と湿気、送風機。

 足掛け100年近くにも及ぶ大発掘作業現場の大詰めは、わりかし現実的な環境で行われていた。

 

 「我らの悲願が、ようやく叶う!!」

 

 ガン。

 鈍い音を立ててつるはしを叩き落とすのは、年配の男……僧侶風に頭を丸め、襟に渦の描かれた作業着を着込んだ男。

 彼らは、僧侶や在家信者の集団だった。

 

 「復活を!!」

 

 ガン。

 女も、尼僧も叫んだ。

 彼らは、何百年か前に誕生した、古馴染みの新興宗教だった。

 

 「緑の地球を、再び人類の手に!!!」

 

 ガン。

 男も女も、皆同様に、赤い目をしていた。

 狂気に染まったというには、あまりにも澄んだ色。

 火星入植者特有の赤い目で、彼らは緑の地球を歌う。

 今や彼らの聖地、火星と同じ色になった地球を、緑にせよと歌うのだ。

 

 「我ら()()()()()()()()の悲願が叶う、これで地球の信徒たちの支援も報われるだろう」

 

 古馴染みの新興宗教、火星を聖地とするグリーンアース教団が、100年近くの月日と莫大な寄進、政府援助をもって行ってきた大発掘作業が、今終わりを告げようとしていた。

 彼らは次の一振りでこの岩盤が砕けることを直感し、この大事業の最後を、誰が迎えるべきか、僅かに悩む。

 もっとも信徒としての位が高い者か、献身した者か、寄進があった者か。

 そんな中、目元まで髪のかかった優男風の男が、思い切りツルハシを振りかざして、一歩前へ出た。

 

 「最後は、俺にやらせてください」

 

 偉そうな男も女も、その言葉を前に一歩引っ込む。

 その男自身に権威はないが、皆がその男のことを知っていて……やらせてやりたいと思ったのだ。

 男はツルハシを振るいながら……岩壁にはぶつけず、速度を高めながら数度も、ツルハシを持ったまま、回る。

 その男が何十倍も大きければ、きっと竜巻が起きただろう、周囲の人々がそう確信する、ぶん回しだった。

 

 「ウオ~~~!!!」

 

 ガン!!

 その一撃で、見事に岩盤は砕け、土煙が立ち込める。

 だが、土煙が晴れないうちから、一枚岩だったはずの岩盤の向こうから、目が覗いて、彼らを睨んでいた。

 真っ赤な顔に黄色く光る目が、彼らを見ていた。

 

 「…………おお」

 

 砂埃も構わず、目を見開く。

 

 「ゲッターロボ!!!!」

 

 砂埃も構わず、大声を上げる!

 そう、紛れもない、彼らが200年望み続けたものがそこにあるのだ。

 彼らは沸き立った!!

 

 「もう目覚めているぞ!!!」

 

 「これで我らの悲願が叶う、地球を救える!!!」

 

 「ゲッター万歳!! ゲッター万歳!!」

 

 だが一人、あの優男だけは、じっとその目を見つめ、強くまばたきをして、それから叫んだ。

 

 「地球守護の戦士たちが、今この太陽系の端にいる!! 命を散らせようとしている、命を散らすために戦っている!!!」

 

 周りのお祭り騒ぎも構わず、一人だけ、ひとかたまりの願いを叫ぶ。

 

 「もはや遅いかもしれない、戦いは始まっているのかも、終わっているのかもしれない、しかし――――」

 

 ゲッターの黒目が、わずかに動く。

 

 「彼らに死んで欲しくない!! ゲッターロボ、大鳥タケル!!! あなたが戦士ならば、どうか……」

 

 続く言葉を待たず、ゲッターの黒目が、瞬きするように失せる。

 そして次の瞬間には、ゲッター自身もまた、緑色の輝きとともに、こつ然と消え失せていた。

 

 

 

 

 2199年1月17日

 冥王星軌道周辺

 

 国連宇宙海軍連合宇宙艦隊第一艦隊が、冥王星へと進軍する。

 これはまったく名ばかりである、これは寄せ集めで作られた最後の艦隊だ、一つしかないから、第一艦隊なのだ。

 しかも、艦名は全て日本語だ。

 日本語の名前しか持たない二十余隻の艦隊が、地球の艦隊の全てなのだ。

 だが、その名ばかりの艦隊は、その名に恥じぬほどの烈士によって形作られた、地球最強の艦隊だった。

 第一艦隊は唯一でなくとも、地球最強なのだ。

 

 「現在冥王星沖20万キロ、敵影なし」

 

 「凪いだ海だな……」

 

 「ええ、怖いくらいですよ」

 

 「……、攻撃準備、キリシマに発光信号!」

 

 駆逐艦ユキカゼより、艦隊旗艦である戦艦キリシマへと発光信号が送信される。

 艦隊の狙いはただ一つ、ガミラス冥王星基地の破壊。

 その願いは、地球人類全てが共通して抱く望みだった。

 

 時は8年を遡り、西暦2191年。

 外宇宙から現れ、地球人類の奴隷化、もしくは絶滅を求めて侵略戦争を開始した強大な異星人文明、ガミラス。

 地球人類ではなし得ないワープ航法、頑強な装甲、地球人より一段勝る砲熕兵器。

 かろうじて対抗しうるのは高いリスクを伴う超兵器による一撃か、小型兵器同士の小競り合い程度。

 その絶大な科学力の差を前に、人類を守護する戦士たちは瞬く間に壊滅。

 更に、ガミラスは冥王星に基地をかまえ、周囲の小惑星を隕石兵器『遊星爆弾』に作り替えて次々と投射。

 今や地球は、赤茶けた土くれの星となっていた。

 

 冥王星は今や、地球の戦士を痛めつけ、守るべき地球から青さと緑を奪った怨敵……ガミラス人の巣食う星だ。

 破壊せねば、地球人類の命運は一年以内に尽きるであろう。

 作戦目標である冥王星の名より、メ号作戦と名付けられた作戦が、今、始まろうとしていた。

 

 「先遣艦ゆきかぜより発光信号、敵基地攻撃を……」

 

 「偵察班より敵艦見ゆとの報告、後方からです!」

 

 「電波管制を解除し、艦種識別!!」

 

 「待ち伏せか……!」

 

 現れたガミラス艦隊は、中型以上の艦艇だけで地球の全艦隊を上回る規模を持ち、駆逐艦を含めれば更に数倍。

 

 「敵さん同航戦の構えです、こりゃあ陽電子衝撃砲(ショックカノン)は……」

 

 「…………」

 

 艦長山南のつぶやきに、艦隊司令沖田は泰然自若の沈黙をもって返した。

 ガミラスが持つ超技術の艦隊に立ち向かう手段は、限られている。

 ほとんど唯一と言っていい有効な手段が、巡洋艦以上の艦艇が全エネルギーをかけて放つ必殺の一撃、陽電子衝撃砲(ショックカノン)だ。

 それも、正面からしか放つことができない。

 回頭のために足を止めれば敵艦の餌食。

 

 (戦力差極大、一巻の終わり、国連宇宙軍最後の花火、優秀の美を飾る締め括りの〆号作戦!)

 

 砲雷長が、心中のみでそう叫ぶ。

 だが、その心の声に自重の色はあれど、諦めの色はない。

 

 (()()()()()()()()、これで俺たちの艦隊はおしまいだ!)

 

 第一艦隊は、地球最強の艦隊なのだ。

 

 「ガミラス艦隊より入電、『地球艦隊に告ぐ、直ちに降伏せよ』」

 

 「バカメと言ってやれ」

 

 艦隊司令沖田の答えを聞いた通信班長は一瞬戸惑い、しかし明朗に『はい』と答えた。

 侮辱とともに降伏勧告を受け流した地球艦隊に向け、ガミラスは威圧を込めてゆっくりと砲塔が回転し、不気味に発光する。

 

 「敵艦隊発砲!」

 

 (回避行動は……)

 

 舵輪を握る航海長が、僅かに首をかしげて背後を伺う。

 信頼する艦長にも司令官にも動きはなし。

 これで、彼の肝も座る。

 あとは砲雷長の仕事だった。

 

 「ユウギリ轟沈!」

 

 敵艦隊の陽電子ビームの貫通を受けた巡洋艦が爆沈する。

 キリシマは、艦隊はただ接近を待つ。

 

 「クラマ、戦列を離れる!」

 

 さらに別の巡洋艦がかすめただけのビームで制御不能に陥り、ふらふらと艦隊から抜けて何処かへと飛んでいく。

 焦りを見せるクルーをよそに、沖田艦長は沈着冷静に、じっと敵を睨む。

 

 「…………」

 

 じっと睨む、ただ睨む。

 敵機動力は圧倒的、こちらまでがむやみに動けば、攻撃のチャンスはないと、沖田は分かっているのだ。

 

 「敵艦、有効射程距離に入った!」

 

 「全門斉射!!」

 

 続く射撃を耐えた艦隊は、主砲『高圧増幅光線砲』の狙いを確実とすることに成功した。

 だが、光速で命中した主砲弾は、ガミラス艦表面のコーティング部分で止まり、明後日の方角へと飛び去っていった。

 

 「ラッキーヒットはなしか、ついてねえな」

 

 「せめて前みたいにうまく突撃できりゃ違うんだが……」

 

 強運で非装甲部を貫くか、常識外れの接射か。

 どちらにしろ今の地球艦隊では望めそうにないことだった。

 豆鉄砲を当てることすらままならぬ機動力、長射程、圧倒的な数……。

 

 「…………」

 

 だが、沖田には希望があった。

 絶望はしていない、それは、沖田が別の作戦を腹に抱えているからではない。

 あらゆる戦いで、沖田は決して絶望はしない!

 

 「アマテラスより信号受信、現在海王星軌道より火星へ飛行中……、……!!? 火星方面より超光速で飛来する高エネルギー体あり!!」

 

 その報告に、山南艦長が声を荒げる。

 

 「火星()()、だと!?」

 

 「は、はい!」

 

 普段冷静な艦長の荒らげた声におののくレーダー手、だが彼もまた困惑していた。

 火星に向け飛ぶものはあっても、火星から来るものなど、あるはずがない。

 そんなもの、誰も知らない。

 だが、沖田だけは呟いた。

 

 「……アメノヌボコが、目覚めたか」

 

 




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