きさまらにも味わわせてやる!ゲッターとヤマトの恐ろしさをな〜〜!! 作:桐山将幸
ゲッターによって旗艦を三枚におろされ、副司令を殴り殺されたガミラス艦隊。
そこへなだれ込むのは、ゲッターと同じく赤・白・黄をベースカラーとするキリシマ率いる国連第一艦隊であった!
この攻撃の要点は、キリシマ艦長山南修の放った言葉が全てである。
「
敵の統制が崩れ、組織だった攻撃が出来ない間に限界まで接近。
「いいか、敵の顔が見えるくらいギリギリだ、奴らお得意の魚雷もビームも撃てないくらいにな」
そして、艦橋や各種発射管等、開口部や比較的脆弱な部分に存分砲撃をぶつけ、ダメージが広がったらさらなる砲撃とミサイルで止めを刺す。
「撃て! 大丈夫だ、ここまで来ればもうこっちのもの、むしろ奴らの方が艦に振り回されて身動きが取れなくなっているさ!!」
言葉ですら易くはない大技の繰り返しだが、未だ多数の戦力を残す第一艦隊には十分可能な技でもあった。
端から食らいついた第一艦隊により、まるで工場のベルトコンベアを逆回しにしたように砕かれてゆくガミラス艦隊。
その様を見て、口笛を吹く(吹けていない、彼は口笛が苦手だった)のは、200年の眠りから覚めた男、大鳥タケルだった。
あの艦隊を指揮しているのはおそらく……いや、間違いなく、前世において日本人の誰もが知る偉大な艦長……沖田十三であると、タケルは確信していた。
沖田艦長は、戦いを丁寧に運びながらも、圧倒的な兵器の差で敗れ、『この船では奴らには勝てない』と漏らしたことでも有名だったが……。
「……なんだ沖田艦長、あの船でも結構勝てるじゃねえかよ」
見た所、重量比のエネルギー量で20倍ほどの差――――ゲッターロボと、後継機であるゲッターロボGの差を上回る――――があるにも関わらず、果敢に食らいつき、ガミラス艦隊を屠っていく地球艦隊。
エネルギー量の差が戦闘力の絶対的な違いを意味するものではないとはいえ、なんと素晴らしいガッツと練度、なんと練り上げられた兵器か!
タケルは口角を引き裂かんばかりの笑みを浮かべた。
人類最高のチームと共に戦い、
故に、タケルは慮る、素晴らしい戦士たちを。
「さて、そうなるとおれは獲物を取っちまっているわけだ、これ以上無作法は出来ねえ」
当然の理屈だ、いくら助けてやったとはいえ、横入りした身で手柄を食いまくってはよくない。
しかし、敵を抑えてやったから後は手持ち無沙汰というのも、タケル自身にとって面白くないことだ。
そこでタケルが選んだのは――――
「よ~~しっ! 逃げるやつからぶちのめしてやる!! やつらワープができるから、逃げる前におれが食えば地球艦隊にとっても具合がいいだろうぜ!!」
タケルが誰へともなく決意表明すると、さっそく、状況を理解したらしく戦線からするりと抜けたクリピテラ級航宙駆逐艦が、中央の背びれから縦に真っ二つに裂けた。
続けて、艦橋を撃ち抜かれてふらふらと戦線からこぼれたデストリア級航宙重巡洋艦のえぐれた艦橋に、袖下の刃ゲッターレザーをめり込ませ、今度は横に切り裂く。
「サジタル面切断、トランスアキシャル面切断!! 番人をやるのも気分がいいぜ、特に人類の敵が逃げるのを防ぐなんてのは最高だ!!」
逃亡しようとする艦を叩き潰すゲッターを見たガミラスのいくらかは半狂乱となり、いくらかは無気力となる。
双方のバランスを見ると、ゲッターの行為はガミラスの戦う力をどんどんと減らしていった。
「まだ数が多い内におれを袋にできれば勝ち目もあっただろうがよ!!!」
ガミラス人がそんなに強いならエネルギー20分の1の地球を滅ぼすのに10年もかけないで済む。
結局、ガミラスは人間とそう変わらない連中であり、装備の威力と兵士の威力は決して比例しない。
タケルの知性はそれを知っていたが、心は別だった。
「気分が悪いぜ、地球を……おれの地球かは知らんが、地球を追い詰めた連中が、こんなざまだとはな」
自分の地球かは知らないが。
地球を追い詰めた。
ガミラスという存在を知っている男が、無自覚に吐いたその言葉は、彼自身の心を守る小さな防壁だった。
だが、その小さな防壁……否、希望と呼ぼう。
彼の希望は、まさしく彼の心を踊らせたその男たちによって、切り裂かれることになる。
滅び去った緑の破片をかき分けながら宇宙を漂う、赤い人影と、赤い船影。
それらを繋ぐのは、はるか200年前の、それもマイナーな形式のビデオ通信回線だった。
その片方、船影の艦橋より、画面越し、スピーカー越しに、白髪、白ひげの司令官然とした男が問いかける。
「早乙女研究所の、大鳥タケルさんですね?」
問いを受けた時、画面の向こうで男の目が見開かれ、一瞬、光を失った。
その理由を、キリシマのブリッジクルーたちが知ることはないだろう。
男の目の濁りは一瞬であり、すぐに男……大鳥タケルは正気の顔に戻ったからだ。
「……その通りです、ええと……艦長?」
「その方は提督ですよ、艦長は私」
すぐ、隣の伊達男が答える。
これも、軍事に明るくない男の勘違いでしかないのだと、誰しもが思ったに違いない。
それも置き去りにして、タケルは質問した。
「おれはだいぶ眠っていたようです、今は、何年でしょうか」
「西暦2199年、昭和で言うと……274年、貴方の戦いから、224年が経過しているのです」
タケルの目、アフリカの視力で知られた部族よりも遠くを見る目が、コンソールの文字すら見えないほどに霞む。
戦いの興奮が失せてから直面した事実は、タケルにとって、果てしないことであり、とんでもないことだった。
だが、一度だけ強く瞬きをして、タケルは質問を続ける。
聞きたくない真実でも、聞かねばならなかった。
「……ゲッターロボをご存知で?」
「ハ虫人類と戦い、地球を救った人型機動兵器であると習いました」
「なるほど、習った……」
そこから、二三やり取りがあった。
冥王星が危険な基地であるとか、先行した駆逐艦がいるとか、やたらと古いビデオ通話のシステムの搭載を出撃直前になってねじ込まれたとか……、重要な内容だったが、タケルの脳の理性だけがそれを記憶した。
心は、別のことを考えていたからだ。
その心はしばらくは秘められていたが、通信が終わると、噴出した。
「…………おれの地球、あんなになっちゃったのかよぉ……」
タケルは泣いた。
男泣きと呼ぶにはあまりにも堪え切れていない嗚咽に、歪んだ顔、崩れきった泣き顔の大きなシワに汗が染み、涙が滴ってゆく。
おれの地球、などという子供でも国語が上手ければ使わないような言葉、それを言う権利を持っている唯一の男の、あまりに必然的な、あまりに無残な涙だった。
自分が全てをなげうって救った地球は、自分の仲間たちが生きた地球は、どうやら、放射能の渦巻く赤茶けて干からびた星になってしまったらしいのだ。
「ガミラス……」
ガミラスは地球人と同じく人間で、心もある。
タケルはそれを知っているが……だからこそ燃えたぎるものがあった。
「……冥王星だ、冥王星に行こう」
冥王星
沖田艦長(と、タケルはまだ心の中でそう呼んでいる)の話によれば、ここに飛んできた直後に見た大きく奇妙な小惑星は、冥王星に相違ないようだった。
地球艦隊……国連宇宙軍第一艦隊が向かう先も冥王星であり、そこの基地の破壊が目的なのだ。
とにかくそこを破壊せねば、誰の気も収まらないし、地球の安全も得られない。
「ガミラス冥王星基地をぶっ潰す、それだけが……」
……その後の言葉は続かなかった。
それ以上語ることはできないと、タケルの優れた頭脳、そして心が判断したのだ。
だが、その躊躇の正体をタケルはまだ知らず……しかし、すぐ知ることになる。
2199年、冥王星は核の炎に包まれている。
ガミラスがそこそこの資金をかけて作り出した海は沸騰し、整地を進めた大地は砕けた。
それを成したのは、第一艦隊がメ号作戦のために積み込んでいた大量の純粋核融合兵器である。
核融合文明としての地球文明はまさしく爛熟期、核融合技術は核融合炉、核融合爆弾ともに限界近くに達していた。
その破壊力、安定性はともに折り紙付き、融合弾を大砲で打ち出すことすらできる。
地球の150分の1ほどの面積しかない冥王星に建設された基地は、大地や海洋もろとも焼滅したのだ。
先遣艦ユキカゼが冥王星基地の最後の抵抗をくじき、その大まかな位置を確定させた情報を与えると、地球艦隊は次々と核融合弾頭のミサイルのミサイルを放ち、冥王星を爆撃しはじめた。
的確な攻撃による殲滅や制圧も考えられたが、6年もの間遊星爆弾に苦しめられた地球にとっては、冥王星を確実かつ即座に使用不可能にすることが先決だったのである。
「なるほど、支配するには遠い冥王星なら、落ち穂拾いよりはガミラスを確実に消し去る方が重要ってわけだな」
そう、この光景を冷静に分析してみせたタケルだが、その顔には汗が浮かんでいた。
理由は、ただ一つ。
「結局、何もやれずじまいか」
タケルは冥王星に来るまで、自分がガミラス冥王星基地を破壊するのだと息巻いていた。
だがその心中では、それが不可能であるとも理解していたのだ。
否、
タケルは思う、『こんな小さな星、地球艦隊より早く前に出て、
「……出来ねえよな、そんなこと」
『ユキカゼ』の奮戦ぶり、第一艦隊の意気揚々戦意溌剌といったありさま。
それを見て、タケルの頭脳は、心は……何もしないことを選択した。
選択、してしまった。
タケルは、メカザウルスが暴れた街に漂う、タンパク質と鉄、化学物質が燃える匂いを嗅いだことがある。
これから死ぬ戦士たちが、愛する故郷や尊敬する指導者、そして最後の希望……ゲッターロボに望みを託していく叫びを、何度も聞いたことがある。
日本国民や自衛官、研究員、臨時ゲッターチーム……そして、ともに戦う事になった異国の戦士たちが命を散らしていくたびに感じる、胸と息の詰まりを知っている。
いつか行こうと思っていた日本の名勝や史跡が、二度と手の届かぬものになったときに感じる、独特の足のぐらつきを、よく知っている。
タケルはある一つの戦禍を目の前で見てきた、敵による滅亡の恐怖に最前線で立ち向かってきた。
だからこそ、わかってしまったことがある。
「あいつらは眼の前でやられたんだもんな、おれの出る幕はねえや、ふ……ふふ……」
目を伏せ、こみ上げるどうしようもない笑いを、あふれるままにするタケル。
涙までは流さなかった。
お久しぶりです、桐山です。
少々ヘビーな話になり、しかもまだゲッターチームが一人しか揃っていないという有り様ですが、お楽しみいただけたのなら幸いです。
感想評価等々、とても励みになっております、今後とも宜しくお願いします。
それでは、次回までごきげんよう。