きさまらにも味わわせてやる!ゲッターとヤマトの恐ろしさをな〜〜!! 作:桐山将幸
我々の地球がある銀河系と、その伴銀河である大マゼラン雲。
そのちょうど中間の地点に、母なる太陽を持たぬ自由浮遊惑星である巨大な木星型惑星、バラン星はひっそりと浮かんでいる。
ほとんどの人類がまだ意識していないその星は、その実、超古代文明アケーリアスによって作られた、銀河系と大マゼラン雲を繋ぐワームホール路の中央装置であり、更にそこは、地球人類の絶滅もしくは奴隷化を目論む謎の侵略者、ガミラス帝国の一大拠点でもあるのだ。
2199年1月18日
ガミラス帝国軍 バラン鎮守府
同、銀河方面作戦司令部内、司令官室
司令長官、グレムト・ゲール少将は、はっきり言ってご機嫌ななめといった様子で、自分のオフィスをウロウロと歩いていた。
その原因は、指揮系統で2つ下にあたる部下が、報告したいことがあると言って、その部下本人の上司を無視して頭越しに連絡を送ってきていることの他に、3つある。
一つは、その報告がガミラス標準時間における深夜……司令官が入眠しているはずの時刻に行われたこと。
一つは、起きてから聞くと言っているゲールに対して部下は延々通信を繰り返し、その度に叩き起こされたこと。
最後の一つは、うるさいから起きてやったというのに、いざ交信となると部下は尻込みし、情報をまとめ直すと言って、ひっこんでしまったことだ。
「クソッ、ラーレタの奴め、二等臣民の分際で俺を呼びつけた挙げ句だんまりとは、何を考えて……」
その部下の名は、サレルヤ・ラーレタ。
古参の植民惑星、ザルツ星を故郷に持つガミラス二等臣民のその男は、植民星人にありながら高い技術力を持ち、現在研究中の革新的なガミラスホーミング技術の惑星レベルでの実験にそなえ、現在侵攻中のゾル星系*1で基地運営を行いつつ、ガミラスホーミング*2用生物の培養と試験を行っている。
なぜその男が、方面司令に直通の連絡など行うのか?
技術向きの問題であれば問うべき系統が違うし、現地人に襲撃されているならば直属の上司にあたるゾル星系プラート*3基地のシュルツに救援要請をすればいい。
なにしろ、プラート基地には二等臣民ばかりとはいえ小型艦艇含め100隻を超えるそこそこの守兵と直掩兵器、弾道攻撃兵器があるのだから、本来なら、どうとでもなるだろうの一言なのだ。
一言なのだ……からこそ、ゲールはそこに不穏なものを感じ、ベッドに引き返すのを必死にこらえてここにいる。
『ゲール司令! 大変お待たせしました、資料をまとめましたので、ご覧ください!』
「全く何をやっておるか、ラーレタ少佐、貴様は私の時間をなんだと……」
苛立ちにまかせて『資料』を見るゲールから、その後に続くはずだった叱責はなかった。
「あ、あがが……」
かわりに、外れんばかりに開け放たれた顎に圧迫された気道から漏れる音だけがあった。
だが彼もさすがに、大帝国の少将である、これくらいは理解できた。
ラーレタは頭越しに報告してきたのではない。
越えるべき頭など、なかったのだ。
二週間も軍艦ぐらしが続けば慣れたもの、磁力靴を器用に操ってつかつかと部屋に帰るタケルの後ろを、上機嫌な様子のサーシャがついてゆく。
当然彼女は亡霊である、余人には透明に見える。
『わざと急に話しかけてみたが、私をしっかり感じ取れるとは、さすがあのマシーンの主か』
「地球の恩人とはいえ、幽霊に気に入られてもな」
『……私はいわゆるオバケではないと思うぞ、そうでなくて何なのかは、私自身にも検討つかんがな』
では、情報生命体とかそういうものか、とタケルが聞くと、サーシャはそれにも首をかしげる。
存在そのものが宙に浮いたサーシャだが、その存在感だけは大したものだ。
タケルがこれまで見てきたすべてのオバケより、遥かに実在感がある。
『そう見つめるものでもないだろう、なに、もう見ても減りも増えもせんがな』
などと、表情を変えないまま楽しげに言うサーシャ。
(タケルが勝手にそう呼び、否定されなかっただけだが、もうタケルはそう決めつけてしまうことにしたのだ)
そんなサーシャを、タケルは一時無視することにした、行く先の廊下から、無重力軍靴の足音が奏でられたからである。
現れたのは二人の若い男……およそ成人直後といったところだ。
彼等は互いに軽く会釈をしながらすれ違い、そして首をかしげる。
なぜ、艦内に子供がいるのか?
あの二人はどこか見覚えあるが、誰だ?
そのうち、片方の問いにはすぐ間接的な答えがもたらされた。
『私を拾って埋葬したのは、あの男たちだ、結構な面構えだとは思わんか』
「……アメノウズメがあいつらなら、あいつらが引っ張り出すあんたはアマテラスか」
そこまで言ったところで、タケルの脳裏に一つ、考えが浮かぶ。
では、『ウキハシ』……『アメノウキハシ』があのゲッターエンペラーもどき『アサマ』なら、ウキハシにも何か神話的対応が存在するはずだ。
人類が地上に出るためのコスモクリーナーDを貰いに行く作戦のキーパーソンがアマテラスとウズメならば、ウキハシの名が絡むのは――――。
《総員戦闘配置! 総員戦闘配置! 遊星爆弾を発見! 繰り返す、遊星爆弾を発見、総員戦闘配置!》
タケルが深く考えをめぐらす前に、聞き慣れた警報音と放送が艦内をさわがす。
「……
そう、これは、艦隊の帰路でしょっちゅう発生しているのだ。
かき鳴らされる警報、色の変わる照明、それにしては戦闘など何も発生しない退屈な時間。
だが、タケルはこれが嫌いではなかった。
その理由は、警報を受けて駆け回る乗組員たちにある。
「連中、みなぎってやがる」
タケルにとっては懐かしき、故郷を守るために戦う戦士たちの出撃風景。
もう地球を冒す遊星爆弾はやってこない、その事実を更に確たるものにするため、艦隊は残存エネルギーを使い果たす勢いで、遊星爆弾を撃墜していた。
航海に遅れが出るほどではないものの、流石に乗組員も疲弊する……が、その顔に浮かぶのは疲労ではなく充実である。
『いいよな、若い種族というのは』
「おれを宇宙人のように言うな、おれは人間だ」
赤い大地。
焼けただれた、赤い大地。
一面に広がる土塊の、低いところが海で、高いところが陸で、丸いところはクレーターだ。
「…………」
言葉もないとは、まさにこのことだった。
大気圏突入前に合体解除……オープンゲットを済まし、キリシマと並行して地球の空を飛ぶゲットマシン、そのコックピット内は、僅かな作動音を除き完全なる静寂に包まれている。
ここ数日、タケルにずっと
「……浅間山は、あれか」
早乙女研究所があった浅間山もまた、赤く汚れたはげ山だ。
早乙女研究所のあった場所には、壮大な記念施設が存在していたが、遊星爆弾からの退避が間に合わず、ほとんどの文物が失われたという。
同じく200年ぶりに見る富士山も、ただの土の山になっている。
タケルの知る世界は、もはやここにはない。
だが、一つだけ、残っているものがあった。
艦隊に続いて、富士宇宙港地下ドックへと入港したゲッターロボを迎えるもの。
それは、日の丸だ。
日の丸、五七の桐、菊花紋章、都道府県旗、横断幕……『おかえりなさい、大鳥武さん』。
2つの生、3つの時代をまたいで、タケルの祖国はそこにあった、あると叫んでいた。
そこにあるのだと、焼けただれた大地の下で、死んだ山と、河と、海の下に、まだわが国は在るのだと。
「日本は、まだあるんだな……」
――――そして、ここがお前の帰るべき、守るべき故郷なのだと。
その主張に、故郷に錦を飾った男への下心と呼ぶべきものがなかったのか、数百年ぶりに帰ってきた浦島太郎への恐れがなかったのかというと……それも、そうなのだろう。
だが、その俗心すら、タケルには…………。
「露骨すぎるぜ……この国は……!」
それすら、久々に触れる故国の心であった。
が、久しぶりに帰る地球の歓迎は、タケルにとって喜ばしいものばかりではなかった。
タケルがゲットマシンから降り、(あれ、そういえばオープンゲットできたな、ゲッターロボタケルは合体機能を除去して強化した機体なのに)と首をかしげていると、役人らしきスーツの男がやって来――――
「大鳥武さんですね、私は国れ…………」
――――るのを押しのけて、禿髪と丸刈りの人々がタケルとゲットマシンを囲んだ!
「タケル様!!!」
「おお、まさしく御写真のまま、200年前と同じお姿の……!!!」
「これがゲットマシンかあ~~~~!! 」
タケルにとっては初対面の人々、だが、これがあのゲッター顔宇宙船の主人たちであること、そして『グリーンアース教団』であることだけはわかった。
そして、恐怖した。
(な、なんなんだこいつら~~!!)
『お前のやったことはあの戦艦の中で知ったが、こうなって当然ではないか?』
(当然と言ったってなあ……!)
『これがお前のやったことだよ、そして、こいつらが崇めるお前も、このマシーンも全て事実ではないか』
会話できているのかできていないのかもわからない、サーシャとの無言のやり取りの中、『事実』という単語が、タケルの脳裏を占める。
事実……真実。
ゲッターという実在する神を崇める集団は、この世の真実を捉えていると言ってもいい……。
だが、タケルは……。
(こんな連中ほっといたら地球、いや、宇宙全体がめちゃくちゃになっちまう~~~~!!!!)
現代日本人として、信仰対象になったりするのは、あんまり嬉しくないなあ。
などという甘えが月ごとぶっとぶこの衝撃!
(見える……おれがこいつらを受け入れたらすぐにでもゲッター軍団が宇宙を練り歩きダークデス砲が星々を腐らせる姿が……!!)
1970年代に居た頃からおぼろげながら意識していた、ゲッターの止まらない暴走による宇宙侵略!
絶対にろくなことにならない、できれば避けたかった未来の種が、今目の前にいる!
しかも現状は、ゲッター史実で発生した人類滅亡直前のゲッター出撃というシチュエーションにぴたり符合!!
(嫌だぁ~~~~!!!)
一方、人類を救った英雄らしからぬ情けない心の叫びを上げるタケルの遥か頭上……からは少しズレた冥王星近海に、甲高い悲鳴を上げる男が一人。
「な、なんで私が、こんなぁ~~~!!」
サレルヤ・ラーレタである。
悪い意味で中性的なガミラス士官、サレルヤ・ラーレタが、デストリア級航宙重巡洋艦の艦橋で泣きわめいていた。
この重巡洋艦と、引き連れる三隻の駆逐艦からなる水雷戦隊に、ラーレタ以外の人間は乗っていない。
完全に捨て駒である。
だが、その背後、捨て駒の艦隊の尻を睨む、3隻の戦艦を中心とした大艦隊の艦橋に座る男もまた、恐怖に顔をひきつらせていた。
「ラーレタのプラート基地残存艦隊を先鋒に、わがゲルガメッシュ*4率いるバランの精鋭が地上へと踊りかかり、テロンの蛮族どもを蹴散らすのだ!!」
ラーレタの手持ち艦隊が残存艦隊となったのか、なぜ鎮守府つきの艦隊が辺境までゆかねばならないのか。
ゲールから部下への、それらに関する説明は全くなかった。
基地司令にあっても本来許されぬ専横が、それでも実行された理由、押し通せた理由、それは……。
「テロン全土の残存地下要塞を攻撃し、なんとしてもテロンの機動兵器をあぶり出せェ!!!!」
ゲッターが見せた圧倒的な力への、恐怖である。
グリーンアース教団に囲まれ、困惑するタケルの耳に警報が届くや否や、困惑の色は消え失せ、タケルの目は戦士のそれに戻った。
地球の危機とあらば、すぐさま駆け抜け、駆け出し、敵中に突入していくのがゲッターチームだ。
だが、己の信者たちをかき分けて機体に戻ろうとするタケルを呼び止める声が、一つだけあった。
「タケルさま!! お待ちを、これだけはお受け取りを!!!」
「なんだ、この忙しい時に!! ……早く見せてくれ!!」
ここで蹴り飛ばさないでおくのがタケルの善性なのか、それともサーシャの言葉が届いたのか。
振り返ったタケルに差し出されたのは、汚い額縁だった。
汚い額縁に入った、腐りかけの写真だった。
「……早乙女研究所の……みんな……か、これは……」
「はい、閉鎖前の集合写真です、この一枚だけ、遊星爆弾を逃れ……あっ!」
タケルは、それを強引にひったくったが。
「ありがとう、おれは先を急ぐ」
礼だけは、欠かさなかった。
タケルはすぐ機体に戻ると、書類や弁当を入れるためのホルダーに、写真を大切にしまう。
そして、同時並行でゲットマシンのシステムをオンにすると、信者たちに大声で警告しながらゆっくりと機体を進め、遅まきながら基地管制に連絡を入れる。
「こちらゲットマシン……名前を決めていなかったな……、本機は随伴する自動操縦の二機とともに出撃する! 発進口のロックを開けられたし!!」
それはほぼ一方的な通告であったが、無事、基地から出られることになった。
タケルは周りの安全を雑に確認すると、一気にアクセルをふかす、常人ならば息もできないこの超加速を終えると、そこには赤い大地と青い空が――――
《――――うわああああっ!!!》
飛び込んできたのは、他のゲットマシンとの通信回線からの声。
「は!?」
『そういえば誰か、白いマシンに触っていたな』
「なにい~~~~!!?」
ゲットマシンは急に止まらない、誰かを載せた白いマシン、すなわちゲッターロボタケルのジャガー号は、タケルの乗る赤いマシンに続けて、滅びた地上へと飛び出してゆく!!
飛び出した空には、ガミラスらしき戦闘機と、戦闘艦の、群れ、群れ、群れ!!
「……ゲッターにはつきものの、面白えシチュエーションじゃねえか」
タケルは通信機を双方向にして、白いマシンに乗った誰かに叫ぶ。
「おれのマシンをパクるとはいい度胸だな、よし、しばらく貸してやる、やつらを蹴散らすぞ!!! ハジかいたら返してもらうからな!!!」
お久しぶりです、桐山です。
もはや何も言えない投稿遅れ、申し訳ありません。
さて、ついに地球に帰還したタケルですが、遥か宇宙より危機は迫りつつあります。
地球を守る力が招き寄せた、強大なる敵。
そして、現実に存在する神であるゲッターを崇拝するかの教団は、人間には許しがたい未来を招き寄せます。
200年ぶりのゲッターチェンジが、すぐ先に迫っています。