Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─   作:タロ芋

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バレスト

「やぁ、ワタリ。体調はどう?」

 

 ある日の昼下がり、先生はDU郊外にあるレイヴン所有のセーフハウスへとやってきた。

 人気が少なく、ひっそりとした住宅街は静養するにはピッタリで、事実レイヴンは微笑みながら先生へと答える。

 

「ん、特に変わりないよ。リハビリも順調でこの通り」

 

 杖を着いて椅子から立ち上がり、片腕で力こぶを作って言うレイヴンに先生は微笑んだ。

 

「立ち話もなんだし、座ったら?」

 

「それもそうだね。お邪魔するよ」

 

「ん」

 

 レイヴンに促されて先生はリビングの中央に置かれた椅子へ座り、キッチンから出てきたロボットが先生へ珈琲の注がれたマグカップを手渡す。

 

「この珈琲もなんだか美味しく感じられてきたよ。ウォルターさんがよく飲んでた銘柄だよね?」

 

「ん、この豆を見つけた時はとっても嬉しかったんだ。……まぁ、初めて飲んだ時は余りの苦さに飲み込めなかったけどね」

 

「ハハ、確かにこの珈琲は砂糖を入れないと厳しいからね」

 

 2人して珈琲の味の感想に笑い合う。どことなくまったりとした空気が二人の間に流れ、時計の秒針の刻む音が心地の良い音が響いた。

 

「別に先生も忙しいんだから定期的に来なくてもいいんだよ?」

 

「そういう訳には行かないさ。ウォルターさんに頼まれたからね」

 

「もう……ウォルターも心配症だなぁ」

 

「ハハハ、いい人じゃないか」

 

「そういえば先生、色んな子達からチョコもらってるみたいだね」

 

「うん、みんなのチョコのおかげでこの珈琲の苦味がちょどよく感じるよ」

 

「ふーん、大変そうだね先生も」

 

「"も"? ってことはワタリもチョコを貰ってるのかい?」

 

「ん、エアが張り切って作った大量のチョコがあってね……先生が来る前にも食べてたよ」

 

 そう言ってレイヴンは奥の部屋を指さすと沢山のチョコの入った箱が見え、心做しかレイヴンの顔が疲れたようにも見えた。

 

「大変そうだねワタリも」

 

「ん。でも、こうしてエアと一緒に触れ合えるから悪くもないかな」

 

「お熱いねぇ。見てるだけで珈琲が甘くなるよ」

 

「? この珈琲には砂糖入れてないよ?」

 

「ふふっ、そういうことにしておくよ」

 

「「…………ふふっ」」

 

 同時に吹き出し、2つの笑い声が重なる。

 

「ハハハッ、はぁ……ワタリも随分と感情豊かになったね。初めて会った時は大違いだ」

 

「まぁね。良くも悪くもあの決戦で自分の想いを自覚できたから」

 

「いやぁ、その時の会話聞いてみたかったなー」

 

「…………それはダメ。聞かれたら恥ずかしくて死んじゃう。……先生が」

 

「私!?」

 

 先生は突然の死刑宣告に目を見開いて叫ぶ。それだけレイヴンにとっては秘密にしたいことなのだ。今でも時々エアから再現をねだられるが、あの叫びは本当に大切で、愛しくて、切なくて、それでもレイヴンが望んだ答えなのだ。だから、あれはレイヴンとエアの2人だけの秘密だ。

 

「そういえば先生」

 

「うん、なんだい?」

 

「先生は地面を転がるか凄く速いか壁越えをするか破綻してる設計。どれがいい?」

 

「? どういうこと?」

 

「ん、直感で選んで」

 

「え〜……じゃあ───」

 

 先生の選択にレイヴンは微笑んで頷く。

 

「ん、その選択は悪くないね。楽しみに待ってて」

 

「うん? よく分からないけど待ってるね」

 

 そうして、先生とレイヴンはその後も他愛のない話をして時間になると先生はシャーレへ帰っていく。

 

 そして、数日後に届いたチョコを見て先生はレイヴンへ電話をかける。

 

『ん、頑張った。痛む前に食べちゃってね先生』

 

 とても誇らしげなレイヴンであった。

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