Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─ 作:タロ芋
──ブン、レイ……ン、起き……さ、い
「んん……」
体を揺さぶられ、621は呻き声をあげる。
何処かで聞きなれた声だ。いつもそばにいてくれて安心する、そんな声。
621は薄目をあけると、ぼやけた視界に白い何かが見えた。
何度か目を瞬かせると明瞭になり、くっきりと見えた存在に向けて621は思わずと言った様子で問いかける。
「……誰だ?」
「寝ぼけてるんですかレイヴン? 私ですよ、エアです」
サラリとした質感の白い髪、日焼けのないきめ細かい素肌、整った顏、深紅の大きな瞳と形の良い眉を僅かに潜めている美少女が自身の名を名乗った。
「……エア?」
「はい。エアです」
「……Ayre?」
「はい、Ayreです。ネイティブな発音ですねレイヴン」
「……夢か」
「現実ですよレイヴン。まだレムレムですか?これはもう私のキスで目覚めさせないといけませんね。ではばっちこい!」
「・・・・せめて歯を磨かせてくれ」
現実だなんて、そんなわけあるか。621は思う。
彼の知るエアは肉体をもっていない。コーラルで生まれた情報生命体だ。
それが今は白く長い髪に、綺麗な深紅の瞳、整ったバランスの顏の美少女となり、見たことの無い学校の制服らしきものを着て、自分に跨るようにベッドに座っているなどとおかしな夢を見ているのだ、と判断しても仕方ない。
「ここは……」
自分の知る部屋とは大分違う間取りの部屋に621の眉は下がり、ますます混乱してくる。少なくとも自分の部屋はこんな生活感溢れるようなものでは無い。
さっきまで自分は何をしていた? 思い出そうとするが、621の記憶に靄がかかったようになり、思い出すことが出来ない。
いや、そもそも……621とは誰だ……?
ああ、いや……そうだった。私は。
「うん、そうだな。おはようエア」
「はい、おはようございますレイヴン」
にこやかに目の前の少女は笑うのだった。
「今日は何をするんだったか教えてくれるかエア?」
「んもう、忘れたんですかレイヴン? 今日は小テストがあるんですからね」
「そうか……むぅ、面倒だな」
レイヴンは呻きながらエアが用意してくれた朝食を食べる。献立はトーストにスクランブルエッグ、ソーセージに小さめなサラダ。そしてヨーグルトと珈琲だ。
トーストを齧ったところでレイヴンは違和感に首を傾げる。朝食はいつも自分で食べていたか? と。
「あーん」
「……あーん」
と、思っているとエアがフォークに刺したソーセージを口元へ運んできた為にレイヴンは反射的にそれを食べると違和感が消えた。
消えてはくれたのだが、これはどうなんだ? とも思う。
「私は構いませんよ?」
「人の思考を読まないでくれエア……」
「レイヴンのことはなんでもお見通しですから!」
「……そうか」
エアが指を絡ませる繋ぎ方で通学路を歩いていると。
「やぁ、戦友おはよう」
「誰だお前は……?」
「ふっ、君の頼れる親友を忘れたのかな?」
キラーン! と言葉にすればそんな音がしそうな感じで真っ白な歯がみえるように笑みを浮かべてウィンクをする爽やかな男がそこにはいた。
レイヴンはその男を見て知らないはずなのに知っているという訳の分からない既視感を抱く。いや、こんな爽やかな男など自分の記憶にはいないぞ? なのにやけに声に既視感を感じる。
そう思っていると、レイヴンの腕に抱きついたエアが空いている方の手で指をさして男に向けて叫んだではないか。
「出ましたね
「ふっ、変なことを言うな君は? 親友が何時から君のものになったというんだ。親友は誰のものでもないさ。勿論、私もね」
爽やかナイスガイことラスティはそう言って慣れたようにレイヴンの横へと移動して歩き出す。右にエア、左にラスティというなんだかよく分からないお供ができたレイヴンは困惑を隠せない。
「……君がラスティなのか?」
「うん? 変なことを聞くな親友。私は君の頼れるいつものラスティさ。これまでも、そしてこれからもね」
「そうか。この爽やかさは確かに君だなラスティ」
レイヴンは頷いて呟く。
なんだかよく分からないが、いつも通りの日常が始まった。空を見上げレイヴンはふと気づく。何かを忘れているような…………
「レイヴン、早く行きましょう?」
「親友、早く行かないと遅刻してしまうぞ?」
「…………あぁそうだな。早く行くとしよう」
2人の声が聞こえ、レイヴンは視線を戻して先に進んでいた2人の元へと駆ける。
ザザッ夢と現実、■構と事■、錯覚と真実■の区別はどうやっ■付けるのだろうか?■■?それともか■触?
少■くとも■■感覚など簡単に■されてしまう。今私たち■みている■■■が本当のことなど誰も■明はできないの■から。
でも、でも・・・・だ。幻でも■■でも、■はもう一度でもいい。あの人に■■■■■■■■■■──記録はここから途切れている──
──破損の激しいとある音声記録──