Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─ 作:タロ芋
どうも、某ラスボスに初見3乙させられたハンターです。
「いたた……んもぅ、なんなのよいったい!!」
上に乗っかっていた瓦礫を押しのけて這い上がるとアルは体に着いたホコリや汚れをはらいながら叫ぶ。
その近くで便利屋の仲間たちも出てくるが、そのどれもが困惑の色を滲ませているのが見える。
彼女達の記憶は最後にレイヴンが物陰から顔を覗かせた後に閃光と衝撃が走ったところで終わっており、何がなにやらといった有様だ。
と、そこで考えたところでアルは慌てたように顔を上げて周囲を見渡す。
「レイヴンさん! あの人は!?」
少なくとも自分たちがこう乗ってるのだから、当然のように彼女も瓦礫の下にいると予想できた為に探そうとしたのだが、それに待ったをかける声が響く。
「探したいのは山々だけど、逃げるほうが先じゃない?」
冷静に告げるのは便利屋の頭脳とも言えるカヨコだ。彼女は頬に着いた汚れを拭い、諭すようにアルへと告げた。
「敵の狙いが分からないけど、街中で大砲をぶっぱなすすような奴だよ。幾らここが過疎化の進んでるところでもアビドスの自地区なことに変わりはないんだ。
なら、さっきの音を聞き付けて対策委員会の子達が飛んでくるかもよ。昨日の今日じゃ私たちが犯人だって決めつけられかねないし」
「で、でも……」
「社長の気持ちはわからないでもないけど、今は情より利を取るべきだよ」
「あー、アルちゃん? カヨコちゃんの意見には私も賛成だな〜」
「ムツキまで……」
「そんな顔しないでよー。だって仕方ないよ? この砲撃の犯人ってゲヘナだし」
「なんでそんなことが分かるのよ?」
ムツキに尋ねると、それに引き継いだのはハルカだ。
「あ、アル様! 風紀委員の部隊が見えます!」
「えぇ!? なんで!?」
まだ向こうは気づいてないが、遠くに見える戦車や兵士たちの服装の特徴から下手人は停学となっているが、自分たちの母校のゲヘナ学園の風紀委員のものである。
そして、気がついた。煙の中で立っている小柄なシルエットを。アルは顔を安堵で緩め、口を開く。
「レイ……ヴ、ん……さ……ん?」
アルは声をかけようとして段々と尻すぼみになっていく。目の前にいるのは確かにレイヴンだ。だが、何かが違う。あの人は感情は乏しいが、ないわけじゃない。なのに、目の前の存在はそれすら感じられない、無機質めいたものを感じるのだ。
例えるならガワだか取り繕って中身を何か別のシステムを入れ替えたかのような……
「特殊兵装管理端末"Te-1es"の躯体に深刻なダメージを確認。操作権限を強制移行を行い、再起動を確認しました。
総括システムに判断を請います……反応無し。再度申請……反応無し。当システムが独自に判断を開始します」
口から流れる言葉に感情はなく、ただ行動を述べているだけ。けれど、あまりに異様だ。
身体中に傷があり、血が流れ、なにかの破片が幾つも刺さっているというのにレイヴンのその伽藍の瞳には痛みに揺れることは無く、声もひたすらに平坦だった。
そのままレイヴンは独り言を続けていると思えば、やがて首を小さく動かしてやけに耳に残る声で呟く。
「────神秘の反応を多数検知。躯体保護のため、強制執行プロトコルを実施。
───躯体出力制限を解除、最終安全装置を解放」
──メインシステム 戦闘モード、起動──
「うてうてうて!! 近寄らせるな!!」
「クソッ! なんで止まらないんだ!?」
「明らかに当たってるだろ!」
風紀委員所属の少女たちは必死な形相で銃の引き金を引く。
硝煙が煙幕となり、マズルフラッシュが目潰しになりかねないほどの閃光となって数えるのすら億劫になるほどの弾幕が形成された。
原形する残さないであろう弾幕は真っ直ぐに突き進み、目標へと当た────
「────攻撃を検知、防壁を展開」
───ることは無く、空間が僅かに揺らぐと弾丸は不自然な軌道を描いてあらぬ方向へと滑るように通り抜けた。
「───脅威度を測定……測定完了。ランクC以下複数及びB+以上の脅威を確認しました。対応した兵装を選択し周辺物質を変換することで顕現に必要なリソースを確保します」
レイヴンの中心からナニカが放たれ、周囲にあった瓦礫が幾つも球体上に抉りくり抜かれる。
そして、レイヴンの周囲へと朧気なナニかが集まり、輪郭を形作れば次の瞬間に風紀委員たちは目を見開く。
「───対
短いつぶやきと共に現れるのは鈍い輝きを放つ六つの砲門。
「───これより」
レイヴンを包む鋼鉄の装甲。
「───迎撃を開始します」
それは明らかに人智を超えた兵器。
カラララ、という乾いた音がすぐに甲高い悲鳴じみた高温へと代わり呆けていたひとりが叫んだ。
「っ、退避ィィィイイイ!!!」
ガトリングの砲門がゆっくりと回転して直ぐに鼓膜を破るほどの爆音とともに無数の弾丸が発射された。
空気を引き裂き、硝煙が立ち上り風紀委員たちの弾幕を易々と超えるほどの物量を持って迎え撃つ。
時間にして数秒だけだったが、広がる景色は死屍累々といった有様だった。
砂塵が宙を舞い、無数の弾痕がアスファルトや建造物に刻まれ地に付した無数の少女たち。
己がつくりだした惨劇を前にしてレイヴンはなんの感慨も感じていない様子でゆっくりと歩き出した。
「───撃破を確認。残存兵力の捜索を行い……」
「らぁ!!」
瓦礫によって死角となっていた場所から飛び出す影。それは勢いよくライフルをレイヴンへと叩き付ける。だが、それはレイヴンは腰の翼を動かし、盾とすることで受け止める。
鈍い音を立ててレイヴンの翼が揺れるが、それだけで進むことはなく深紅の瞳が下手人へ透明な視線を向けた。
「───敵性存在を検知。損害確認……ダメージ軽微。加えて躯体に著しい負荷を確認しました。ナノマシンによる修復を開始します」
「何をブツブツと!!」
ライフルを軸に腕の力で跳ね上がり、踵をレイヴンの頭部へ振り下ろし何もしなければ当たる軌道を描く。
けれど、イオリの踵は頭蓋を叩く感触ではなく気色の悪い衝撃を受け止めるゴムボールのような感覚だった。
「───近接兵装起動」
「チッ!」
咄嗟にイオリはガトリング砲を足場に跳躍することでつい先程まで自分がいた場所を通過した物体を避ける。
距離を取ったことでイオリは驚き、目を見開いた。
「なんだ、それは……!?」
どんな魔法を使っているのか、体を繭のように見たことの無い質感の金属が包み込み、左右3つずつの計6問のガトリングが接続され、両肩付近は鋭い鉤爪の着いた腕らしきパーツが浮かんでいたのだ。
あまりに現実離れした光景に流石のイオリも言葉を失うが、ゲヘナ風紀委員での切り込み隊長としての自負からか動揺は最小限にして自分の役目を思い出す。
便利屋確保の任務は既に失敗と判断。先の攻撃で幸いにも死者はいなかったが、戦闘を行える人員はほとんど居らず壊滅した為に、その撤退を支援するための殿としてイオリが残ったのだ。
はっきり言ってただの規則違反者を捕まえるだけの任務がどうしてこうなったと愚痴りたいし、独断専行した上司であるアコの反応もない。恐らくは余りに予想外の展開に放心してるのだろう。
「…………ふぅ、やってやる!」
ゲヘナの風紀委員は委員長以外は有象無象では無いことを証明するために、イオリは愛銃を構え直して突撃した。
「……なんだか騒がしいわね」
アビドスの寂れた街中を進む小さな影は立ち止まり視線を僅かに上げて呟く。
遠くの空には微かな煙が立ち上り、鼻につく匂いを感じ取り己の目的地が既に戦場になっていることを察して僅かに眉を寄せた。
「……はぁ、面倒だわ」
小さな体躯には不釣合いな大きさの機関銃を肩から下げ、軍服のような意匠を思わせるコートと制服をまとい頭部には悪魔のような捻れた角が生えた白髪の少女……ゲヘナ風紀委員会のトップ、空崎ヒナその人である。
「面倒は嫌いなんだけど……」
「……でも、万魔殿の連中が更に面倒事を持ってくるのも面倒ね」
ゲヘナ最強の個は憂いを帯びた顔でアビドスを進む。
続きません。
アビドスの明日はどっちだ。