Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─   作:タロ芋

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続きました。
ドレスサオリ来ましたねー。欲しいけど、石がないのでスルーします(半ギレ)



53

 何処までも広く、深く、高く、地平の先までずっと白い世界を落ちる。

 

 ───ここ、は……? 

 

 落下しているのに上へと浮遊しているような感覚の中でレイヴンは呟いた。けれど、口からは声は流れず呼吸音すら出てこない。

 動かそうとした手足は自分の思ったように命令を聞かず、死にかけの虫のように痙攣するのみ。

 

 現実離れした出来事にレイヴンの思考は靄がかかったようにハッキリせず、ぼんやりと答えにたどり着かない。

 

 四肢が解ける、融ける、溶けていく。

 

 思考が停る、留まる、止まってしまう。

 

 記憶が、名前が、感覚が、感情が。

 

 手足をどうやって動かすか、喋る時はどうすればいいか、1+1の答えは? 

 

 少しずつ、少しずつ、欠落していく。

 

 失われていく、喪われていく。

 

 己を構成するパーツがひとつ、またひとつと消えていくのに恐怖はない。いや、恐怖がどんなものだったかも分からない。

 

 それどころかもじも─────

 

 

 

 ────わたし、は…………

 

 

 

 

 もはや、そこにだれがいたか分からないほどにうすまったなにかがかんぜんにきえようとしたしゅんかん……

 

『まだ、お前はここに来るには早いぞ■■■』

 

 ひくいこえとともにやさしくおしとどめられ、引き上げられる感覚がした。

 

 グングンと持ち上がっていき、ハッキリと意識が澄み渡る。

 

 自分は何者か、自分はどんな存在か、自分は何をしていたか。

 

 文字の読み方、体の動かし方、喋り方。

 

 白い世界だったはずの場所で気がつけば水面のようなものが見えたところでC4-621は気がつき、体を反転させ目を細めて見つけた。

 既に米粒ほどの大きさにしか見えないほど離れていても、忘れるはずのないその姿を。

 

「貴方はッ!!」

 

 胸の中で抱いた懐古の思いを乗せて。

 

「駄目ッ!」

 

 手を伸ばし、叫ぶ。

 

「待って!!」

 

 はぐれた子供が親を探すように。雛鳥が親鳥へせがむように。

 

「■◾︎■■■アァァァアァァアッ!!!」

 

 そして、水面から引き上げられ意識は白く染まり。

 

 

 

 

 

「行かないで!!!」

 

 レイヴンは悲痛な叫びと共に手は伸ばして掴もうとするが、その手は空気を切るのみで何も掴めずただ空虚な感覚だけを伝えてくる。

 何度も繰り返したところでようやくレイヴンは己の状態を認識できた。

 

 ここはどうやら個室の病室らしく、中心に置かれたベッドに寝かされていたらしい。

 上半身を起こすとレイヴンは両手を持ち上げ、顔へと押し当てた。

 

「うっ、あっ……ぁぁぁっっ…………!!!」

 

 分からない。この胸の内を突き刺す痛みが。何故こんなにも涙が出てくるのか。私は一体誰の手を掴もうとしたんだ? 

 

 顔を抑えて蹲り、零れる嗚咽が木霊する。指の隙間から漏れ出た雫がシーツにシミを作り、拭っても決壊したダムのように涙は流れ続ける。

 

 だからか、泣き続けていたレイヴンは扉が空いたことに気が付かない。

 

「っ! ワタリ! どうしたの!?」

 

 病室に入ってきたホシノはレイヴンの様子に気がつくと駆け寄り、声をかけるが当の本人は泣き続けるのみでまともに受け答えができるようには見えない。

 それどころか、

 

「行かないで、1人にしないで…………!」

 

 今の姿がどうしようもないくらいに自分とタブってしまってるように見えた。

 誰のせいで、という怒りと自分と同じ、という昏い悦びが混ざり合いホシノは僅かに顔を歪める。けれど、ホシノは徐にベッドへ上がると、その小さな体を抱きしめる。

 

「……大丈夫、どこにも行かないから」

 

 割れ物を扱うような繊細さで背を撫でる。そうしないと、今にも壊れてしまいそうなほど、抱いてる存在が脆く儚く見えてしまったから。

 

 ただ、病室の中ですすり泣く声が響いていった。

 

 

 

 

「……ごめんね、迷惑かけちゃって」

 

「別にいいよ。それより、具合はどう?」

 

 目元を赤くしたレイヴンは頭部の耳を倒し、力無く謝るとホシノは逆にレイヴンの状態を聞いてきた。

 聞かれた本人は質問の意図がよく分からなかったが、何度か体の調子を確かめるために動かし、触ったりした後に僅かに頷く。

 

「ん、どこも異常ない、よ。えと、何があった、の?」

 

「……本当に何も覚えてない?」

 

「え、と……」

 

 ホシノに真っ直ぐに見据えられ、レイヴンは記憶の棚の引き出しを開け始めた。

 良く分からないが、恐らくはナニカが起こったことは確実だ。

 レイヴンは覚えていることを次々と頭の中で振り返る。ひとつ、またひとつと。そして、ラーメン屋で便利屋と出会い会話を行い、それを終えて店から出ようとしたところでレイヴンは顔を上げる。

 

「ぬいぐるみっ……!」

 

 ホシノのお土産として買ったぬいぐるみ。それがない。それを探そうとして、そこで改めてホシノを見ると彼女の制服は至る所が汚れ、破れてるのに加えて素肌には包帯が巻かれ赤い染みが滲んでるのを見た。

 

「っ、ホシノ……怪我をっ」

 

 咄嗟にレイヴンは彼女へ近寄ろうとするが、ホシノはそれを制して落ち着かせる。

 

「別にこれくらいどうって事ないよ。それで、なにか思い出せた?」

 

「…………え、とラーメン屋から出ようとして、すごい光と爆発があって……気がついたら、瓦礫に埋まってて……それで、私は…………」

 

「私は……私は……」

 

 そこからの事が何一つ思い出せない。思い出せないが、少なくとも分かることはある。

 自分は瓦礫の下敷きになり、まともに動けないほどの大怪我を負っていたはずだ。けれど、今は体のどこにもそんなものが見えない。

 

 けれど、何故かホシノの体には怪我や手当ての跡が見える。それはつまり、怪我をおう事態があったことだ。

 そして、彼女の様子からみて自分がそれに関わっていること。

 

 この病室に入ってくるのが彼女だけだったこと。おかしいのだ。先生はお人好しだ。それこそ、意識のない生徒が目を覚ませばいの一番にくるほどに。

 

 それがないということはつまり、

 

「……ホシノ、私は……何をしたの?」

 

「…………」

 

 レイヴンの問いかけにホシノは少しだけ顔を伏せるが、やがて面を上げる。

 

「…………ワタリ、悪いのは君じゃないから」




続きません。
暴走レイヴンの戦闘は次回で・・・・



謎の存在、いったい誰なんだ!!
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