Blue Archive ─To raven.Welcome to the kivotos.─   作:タロ芋

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続きました。
特に書くとこがないですね!!強いて言うなら皆もドールズネスト、やろう!!


58

 翌日、医師から退院してもいいと言われ、レイヴンは昼頃に退院しアビドスの校舎へと向かっていたのだが。

 

「……やぁぁぁ」

 

『んもう、レイヴン! たしかに気まずい気持ちはあるでしょうが行かないとダメですよ!!』

 

「だってぇ……」

 

 電柱にしがみつき、まるで予防接種に行くのを抵抗するかのごとく断固拒否の姿勢を取っており、そんなレイヴンの髪の毛の端っこを引っ張ってるマスコットめいたロボットという珍妙な景色が広がっている。

 

 退院した時、レイヴンは自分のやらかしたことの確認のために柴関ラーメン跡地へと向かったのだがその被害に唖然し、彼女たちと顔を合わせるのが怖くなってしまう。

 伴って情緒が未だ割と幼いレイヴンにとって刺激が強すぎたのか、言動も相応に退行してしまったのだ。

 

 けれど、このままでは話も進まないのでエアが必死にロボットを操作してひっぺがそうとするが、身体能力の高いレイヴンの躯体(身体)はピッタリと電柱にしがみついて離れない。

 

 エアはどうしたもんかと考えた。交信を用いて無理やり躯体を動かせるか試すべきか、いやそれだと危なさそうだしなぁ……と考えていると。

 

「ワタリ?」

 

「あの、どうしたんですか……?」

 

「うぅぅぅっ……」

 

『セリカとアヤネですか? 丁度いいですね、レイヴンを離すのを手伝ってください』

 

 顔に絆創膏を貼り、あちこちに包帯を巻いたセリカとアヤネが不思議そうな顔で立っており、レイヴンがひときわ強く電柱へとしがみつく。

 

「別に構わないけど……えぇ、どうしたのよいったい? 

 柴大将のお見舞いと一緒に行ったらいないと思ってたけど……」

 

 エアに請われ、セリカは了承しつつ困惑を隠せない様子で首を傾げ、それにアヤネも同意する。

 取り敢えず言いつつも2人は髪を引っ張るのは痛そうだと思い、レイヴンの細い腰へと手を当てて引っ張り始める。

 

「ふんぐいぃぃぃいいっ!!!!」

 

「ふぬぅぅぅっ!!!」

 

「やぁぁぁ……!!」

 

 びっくりするくらいビクともしない。顔を真っ赤にしてセリカはスカートだと言うのに片足を持ち上げて壁に押し当てて引っ張るがダメだった。

 アヤネのほうは一応恥じらいはあるのかセリカほどなりふり構わずの形では無いが、それでも全力で引っ張ったがあえなく無理と悟る。

 

「ぜぇ、ぜぇ……力、強すぎでしょ、こいつ!!」

 

 荒い息を吐き出してセリカは強情なレイヴンの様子に堪らず叫ぶ。

 電柱には未だしがみつくレイヴン蝉はわざわざと翼が動いており、威嚇をしてるようにも見えた。

 

『……そういえばお2人は今日は何時もよりも登校する時間が遅いですね』

 

 埒が明かないので別の手段を模索している中で、不意にエアは気になったことを2人へと尋ねる。いつもの2人なら既に学校にいるはずの時間なのだが、何故か今日は遅い。

 

「んー、どうするアヤネちゃん?」

 

「……どうせ学校に行けばみんなにも話すはずだったから、エアさんとワタリさんには先に告げちゃおっか」

 

『?』

 

「実は────」

 

 アヤネはそうして切り出すのだった。

 

『…………ふぅむ、やはりですか』

 

「やはりって、知ってたんですか?」

 

『いえ、レイヴンと共にあくまでも予測をしていただけです。ゲヘナの行政官が言ってた内容にレイヴンが引っ掛かりを覚えたようなので、私と共に集めた情報を元に大まかに当たりをつけていたんです』

 

 アビドスの土地の大半の所有権はやはりカイザーが所有しており、加えてなにかの企みをしていることをレイヴンとエアは予想していた。アヤネの話からそれが確信に変わった、というわけだ。

 

「……んで、結局アイツはなんであぁなったの?」

 

 2人が遅れた理由はわかったが、結局はレイヴンがああなった原因は分からなかったので聞くと、エアは何処と無く呆れたように説明する。その内容を聞いて、2人は合点がいったような顔をしてため息を吐いた。

 

「はぁ、別に私たちは気にしてないわよ」

 

「そうです。先輩たちも寧ろ逆にワタリさんのこと心配してましたから。もちろん、私たちもですけどね」

 

「……ほんとう?」

 

「ええ、あれくらいでアンタのこと嫌いになったりしないわよ。ね、アヤネちゃん」

 

「はい、そのとおりです」

 

 2人の言葉を聞いて漸く剥がれる気になったのか、電柱から降りるとビクビクとしながら2人に顔を向ける。

 

「えと、その…………ごめry」

 

「はい、それはなし」

 

「わ、わ……」

 

 レイヴンの言葉を遮るようにぐしゃぐしゃとセリカが撫でまわし、されるがままとなるレイヴン。それが終わるとボサボサとなった髪のレイヴンは顔を上げると自分に向けて笑いかけるセリカとアヤネの顔が見えた。

 

「アンタは無事で私たちも平気だった。それでゲヘナの連中をボコした……それでいいじゃない?」

 

「後日、正式にゲヘナの人達が謝罪に来るそうですからその時に色々とやればいいんです」

 

「……うん、わかった」

 

 少しだけ胸の突っかかりが消えたレイヴンはその表情を僅かに明るくする。

 

『ふふっ、レイヴンもいつもの調子に戻ってきましたね。では、学校に向かいましょうか?』

 

「ん、そうだね」

 

 

 

 そしてレイヴンは連れられて学校へたどり着き、扉を開けると何やら難しい顔の4人がそこにはいた。

 

「先輩! コレ見て!!」

 

「アビドス自地区の関係書類を持ってきました。これを……」

 

「えと、どうか、した……?」

 

 人の機敏に疎いレイヴンですら、室内の空気は何処と無くおかしく明らかに自分たちが来る前に何かあったことは確実だ。そんな中で先生が声を上げる。

 

「とりあえず、今は大丈夫だよ。……ワタリ、具合はどう?」

 

「ん、平気。先生は……大変そうだね」

 

「アハハ、全身筋肉痛で動くだけで辛い……でも、皆に比べたらへっちゃらだよ」

 

 先生の至る所に湿布が貼られ、スーツの下の部分も恐らく同じ感じだろう。

 

「……ごめんね、迷惑かけて」

 

「いいえ、ワタリちゃんが悪いわけじゃありませんよ〜。

 いきなり戦車で撃ち込んでくるような人達が悪いんですから!」

 

「ん、その通り。今度あんなことしてきたら私がとっちめる。あの委員長もボコボコにしてみせる」

 

「シロコひとりじゃ、ヒナの相手は厳しいよ?」

 

「ん、頑張る」

 

「さて、と。じゃあみんな揃ったところで今日の会議と行こうか〜」

 

 ホシノが言うと変な空気は霧散し、各々は所定の位置に座ると、早速とばかりにアヤネが封筒を持ち出して数枚の書類を机の上に並べた。

 

「では、早速ですが私たちが調べたアビドスの現在の土地の所有権のデータです。初めて見た時は私とセリカちゃんも目を疑いました」

 

「そうよ! 本当に衝撃だったんだから!」

 

「ン〜、これって……地図?」

 

 並べられた書類には周辺の地形の描かれたものが描かれていたが、普通の地図とは少し違っていた。

 

「直近までの取引が記録されている、アビドス自地区の土地の台帳……『地籍図』と呼ばれてるものです」

 

「土地の所有者を確認できる書類、ということですか……? 

 でも、書類なんて見なくても、アビドスの土地は当然この学校の────」

 

「私もそう思ってたのよ! でも、そうじゃなかったの!!」

 

「午前中、柴大将のお見舞いに行った時に聞いたんです。柴関ラーメンが入っている建物はもちろんのこと、この自治区のほとんどが……」

 

「アビドス高等学校が所有していることにはなっていなかった……でしょ?」

 

「えっ……!?」

 

 アヤネから引き継ぐようなレイヴンの言った内容にホシノは初めて聞いたような反応を示す。実際、初めて聞いた内容なのだろう。

 それだけ、キヴォトスにおいて自治区内の土地の所有権を誰が、どこが持っているか……という意識が無意識下に刷り込まれているレベルで学園の権力は高い。

 

「……どういうことなの? アビドス自治区がアビドスの所有じゃないって、そんなわけ……」

 

 ホシノは書類をめくり、ノノミが土地の現在の所有者の文字を見て顔を顰めアヤネが名を告げる。

 

「カイザーコンストラクション……そう書かれています」

 

「そんな……」

 

『カイザーコンストラクション』

 

 それはカイザーグループの系列企業のひとつで土地や不動産や建設業の部門を担当し、カイザーの悪名の通り悪い噂は絶えず非合法であくどい手法をもって金を稼ぐ企業だ。

 

「アビドスの自治区をカイザーコーポレーションが所有している……!?」

 

「柴関ラーメンも?」

 

「そうだね。私も大将が話してたのを聞いた」

 

「……はい、加えて随分前から退去命令も出ていたみたいで。大将は元々、お店を畳むことを決めていたそうです。……いつかは起きることだった、と」

 

 アヤネから聞かされたその内容に、セリカは沈痛な面持ちで顔を伏せてホシノたちは声を荒らげる。

 

「……すでに砂漠に埋もれてしまった本来のアビドス高校本館と、その周辺数千坪の荒地。そしてまだ砂漠化が進んでいない、市内の建物や土地まで……

 所有権がまだ渡っていないのは、今は本館として使っているこの校舎と周辺の一部の地域だけでした……」

 

 広大な土地に対して、アビドスが所有している土地はほんの僅かだった。数年程度の時間で手に入れるには無理のある程の土地が、カイザーの手に渡っていたのだ。

 

「で、ですが……どうしてこんなことに? 学校の自治区の土地を取り引きなんて普通できるはずが……」

 

「その普通じゃないことを使ったんだ。学園の資産の権限はその学園の上層部、生徒会にある。でしょ?」

 

「……うん、やったのは前のアビドスの生徒会だ」

 

「ッ!?」

 

「はい、ワタリさんと先輩の仰る通りです。取引の主体は……アビドスの前生徒会です」

 

「そんな……アビドスの生徒会は2年前に無くなったはずでは…………?」

 

「はい。ですので、生徒会がなくなってからは取引が行われていません」

 

「2年前……」

 

 2年前、レイヴンがアビドスに訪れユメとホシノと短い時間を過ごし、そして別れた日。そして、ホシノに何か決定的な出来事が起こった日。

 

 レイヴンの意識が過去に向けられた時、不意に机を叩く音が響く。それをしたのは堪えきれず思わず感情を出したセリカの拳だった。

 

「何やってんのよ、その生徒会の奴らは!! 学校の土地を売る!? それもカイザーコーポレーション(あんな奴ら)なんかに!? 

 学校の主体は生徒でしょ!? どうして、どうしてそんなことをッ……!!」

 

「…………当時の生徒会も本当だったらやりたくなかったんじゃないかな。でも、そうも言ってられなかったんだと思う」

 

「でも、でもっ……!」

 

 レイヴンの言葉にセリカは納得できない様子だったが、それを宥めるようにホシノが話す。

 

「……皆が気にすることじゃないよ。これは皆が入学するよりも前の……いや、対策委員会ができるよりずっと前の事なんだから」

 

「……2人とも、何か知ってるの?」

 

「あ、そうです! ホシノ先輩はアビドスの生徒会でしたよね? ワタリちゃんは……どうして、ですか?」

 

「え、そうだったの!? ……あ、確かワタリって昔に先輩と何かあったんだっけ?」

 

「うへー、まぁ、そんなこともあったねぇ〜。でも、2年前のことだし、そもそも私もそこら辺の生徒会の先輩たちとは関わりあいはなくってねー。

 私が生徒会に入った時なんて、もう生徒会に残ってる人なんて1人を残してほとんど辞めちゃってたんだ。

 オマケにその時は在校生なんて2桁で教職員もいないし、授業なんてものはとっくの昔に途絶えていた……」

 

「……そういえば、あの時はホシノたち以外誰も見なかった」

 

「うへ、オマケに生徒会室なんてそう言われなきゃただの倉庫にしか見えないところだったし、部外者が勝手に入ってきて書類を見れるくらいには警備もザルで……

 砂漠化を避けるために校舎も転々としてた時期だから引き継ぎ書類なんてものはひとつも無い」

 

「そもそも、最後の生徒会って言ってもワタリのいう通りで新任の生徒会長と私のふたりだけだったよ」

 

 ホシノは懐かしむように悲しむように郷愁を感じさせる声色で語る。

 

「……その生徒会長は無鉄砲で会長のくせして校内でも随一のおバカでねー。

 私の方だって、嫌な性格の新入生でさ〜。いやー、何もかもめちゃくちゃだった……」

 

「……ユメに釣られてホシノのIQが急に下がってたし、結構やかましかったけど……私は悪くないと思ったよ」

 

『……ええ、3人とも私から見ても楽しそうでした』

 

 ホシノ、レイヴン、エアはそれぞれの記憶を思い出す。過去の輝いて見える黄金の記憶を。

 それぞれが色んな感情を乗せて呟き、その様子にほかの面々は置いてけぼりにされたような感覚がした。

 

「……校内随一のバカが生徒会長? 先輩のIQが下がる……? 

 ええ、一体どんな状態だったのよ……」

 

「成績と役回りは別だよ、セリカ」

 

「そもそも、セリカちゃんも成績はそんなに……」

 

「わ、分かってるってば! どうして急に私の成績の話になるわけ!? 一応突っ込んでみただけじゃん!?」

 

「セリカ……成績が心配なら、私が勉強教えようか?」

 

「先生まで続かないでよ!!」

 

「うへ〜、いやいや、まさにその通りだよ。生徒会なんて肩書きだけのおバカさんが集まっただけだったから」

 

「……その言い方だと私もおバカにカウントされない?」

 

「私たちにお世話されてた癖によく言うよ。……まぁ、なんの間違いだか生徒会なんかに入っちゃって……いやー、あの時はあっちへ行ったりこっちへ行ったりと大変だったよ〜。ほんっとバカみたいに、なんにも知らないまま……」

 

「なんにもしらないまま……信じて、騙されて……ね」

 

「…………ッ」

 

『レイヴン……』

 

 ホシノの言葉に、レイヴンは僅かに目線を逸らす。そんなつもりはなかったのだろうが、ホシノの言葉はレイヴンの内に刺さり、痛みを発した。

 

「……先輩」

 

「……ホシノ先輩が責任を感じることじゃない。昔の、2人の事情は知らないけど、実際に生徒会が解散した後にこの学校に対策委員会が出来たのは、間違いなく先輩のお陰」

 

「ワタリとも何かあったんだろうし、先輩が私の知ってる今の怠け者で、はぐらかしてばっかりの……でも、大事な瞬間には絶対に誰よりも前に立ってる姿になった」

 

「はい、セリカちゃんが行方不明になって誰よりも先に先生に助けを求めて、ワタリさんがボロボロになって……ワタリさんを止めようと真っ先に誰よりも前に立ってくれたのはホシノ先輩でした」

 

「……うへー、そうだっけ? よく覚えてな───」

 

「ホシノは私が泣いた時、ずっとそばにいて抱きしめてくれたよ?」

 

「うへっ!?」

 

『はい、業腹ですがレイヴンをあやしてくれたのはホシノでした』

 

「私の時ってそうだったの!? ていうか、抱きしめるって?」

 

「ん、ホシノ先輩は色々とダメなところはあるけど、尊敬はしてる」

 

「それって、褒め言葉なの? 悪口なの?」

 

「わ、わー……ええー、ちょ、色々とおじさん恥ずかしくなってきたんだけど……!」

 

 ホシノは顔を赤く染めて言うが、シロコとレイヴンは首を傾げる。

 

「いや、なんとなくいっておこうかなって」

 

「えと、ホシノは優しくて、好きだから……」

 

『親愛という意味でのことですから、勘違いしないでくださいね?』

 

「え、えぇ……?」

 

 

 

 

「それで……どうして前の生徒会はカイザーコーポレーションなんかにアビドスの土地を売ったんでしょうか?」

 

「実は裏で手を組んでたとか?」

 

「いえ、それは違うと思います……」

 

「そうだね〜。私もしっかりと関わってたわけじゃないから推測だけど、昔の生徒会はきちんと学校のことを思って頑張ってたんだと思うよ」

 

「ん、その通りだよ。……2年前に私が見つけた過去の資料での走り書きに色々とアビドスのことを思ってのことが書いてあったし」

 

「…………借金のために土地を、ですか?」

 

「はい、私もそう思います。当時、既に学校の借金はかなり膨れ上がっていました。

 ……ですが、それでこの土地に高値がつくはずもなく安く買い叩かれ、借金を減らす事態には至らなかった……」

 

「貧すれば鈍する……ともいうからね」

 

「他の手段を探そうにも、見つからずに少しづつ、少しづつ切り分け、繰り返し土地を売ってしまう負の循環に……というわけですか?」

 

「なにそれ、なんかおかしくない? 最初からどうしようもないって言うか……」

 

「そういう手口もあるよね……」

 

「ん、よくある手口だよ」

 

「え? どういうことなの?」

 

「……マッチポンプっていうことだよ」

 

 先生の言ったことに幾人かは察しが着いたらしい。

 

「ここにお金を貸したのもカイザーコーポレーション」

 

「ッ!」

 

「ということは……」

 

「カイザーローンが学校の手に負えないくらいのお金を貸して、利子だけでも払わせるよう土地を売るようにと仕向ける……」

 

「はい、きっと最初はいらない砂地や荒廃した土地でも売ったらと甘言を弄したのでしょう。どうせ、使い道の無い土地なのだから、と。そして、その提案を断る積極的な理由は当時の生徒会にはなかった……

 ですが、同時にそんな安値で売ったところで借金が減ると言うわけでもなく、土地を取られていく一方です」

 

「……少しずつ、アビドスはカイザーのものになっていく。というわけですか」

 

「ん、元々そういう計算だったのかもしれない」

 

「アビドスにお金を貸した時から……」

 

「それこそ、だいぶ前から何十年前からね……」

 

「……でも、おかしな話なんだ」

 

「? どういうこと?」

 

「先にも言った通り、砂漠に飲まれた要らない土地をわざわざカイザーが手に入れる必要はあるのかな? 

 確かに安く買い叩けるとはいえ、膨大な土地を手に入れるのは安い買い物じゃないよ」

 

 レイヴンは地籍図の表面をなぞる。

 

「アビドスにはこれと言った金になるようなものは無い。金や銀、プラチナや銅といったレアメタルにレアアースの採れる鉱脈があるって話は聞いたことがない。

 金にがめついカイザー(カス共)がそんな面倒なことをする?」

 

「言われてみれば……確かに」

 

 レイヴンとエアには2年前、埋もれたアビドスの本校舎での情報がある。加えて、あのろくでなしが関わっていることも。

 

「……つまり、こう言いたいってこと?」

 

「アビドスの土地には何かあるっ……て?」

 

 先生が言うと、驚いたようにレイヴンが僅かに目を開いて視線を向ける。

 

「……実はね」

 

 先生は切り出す。ゲヘナ風紀委員長のヒナから聞かされた話を。

 

「何故、そんなことをゲヘナの風紀委員長が……?」

 

「それに、どうして先生に……?」

 

 色々と情報が錯綜するが、それをかき分けて単純なことを叫ぶ少女がいる。そう、セリカだ。

 

「あた、もう! 難しいことなんて考えてらんないわよ!! 

 気になるのなら見に行けばいいじゃない! アビドスの砂漠はうちの自治区なんだから! 

 こうして話し合うより実物みた方が遥かに早いわ!!」

 

 単純明快にして直接簡明…………セリカの言う通り、頭を悩ませるくらいたらそうした方がいい時もある。

 そうと決まれば、対策委員会たちは席を立つのだった。

 

「じゃあ、準備が出来次第行こっか。アビドス砂漠へ!」

 

うん(はい)!』

 

 

 

 

 

「……ホシノ、少しいい?」

 

「……なにかな?」

 

「ユメのことなんだけど」

 

「ッ!」

 

 校舎の外、レイヴンは見据える。向き合うために。受け止めるために。

 

 ……逃げずに、直視する。




続きません。


────渡り鴉も時には止まる時もあるだろう。休んで、そしてまた羽ばたくために
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