ハイスペックウマ娘になったけどこれでもまだ足りないらしい   作:フタバ ハクシ

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どうやらウマ娘の世界に転生したらしい...

 

 

「はぁー.....」

 

ため息をつきながら家のドアを開ける。俺はどこにでもいる様な社会人。ブラック企業で勤めてて、人よりもミスが多いことを除けばみんなと一緒の社会人さ。今はちょうど12連勤が終わったところで、今から寝ようと考えていたところなんだ。

 

ふと携帯を見る、時刻は3時半。

うわ、明日6時起きだから2時間半しか寝れないじゃん。まったく、これだからブラック企業は。

俺は倒れるようにベットに飛び込み、ふと思った。そういえば、最近ウマ娘してないなぁ。

 

ウマ娘プリティーダービーって言うゲームで、一時期とても流行ったゲームなんだ。実際の競走馬が擬人化して可愛らしい女の子になってるって言うゲームなんだけど、これがまあーすごい面白くてさ。

 

とにかく登場するウマ娘がみんな可愛い!1番誰が可愛いとかは決められないけど、セイウンスカイちゃんとか、メジロマックイーンちゃんとかはほっぺぷにぷにしたいし、スペシャルウィークちゃんは健気で可愛いし...

 

「あの世界なら辛いことあっても頑張れそうだなぁ...」

 

周りには可愛い子ばかりだし、レースなんてトレーニングでなんとでもなるし、はぁー。起きたらウマ娘の世界にでもなってないかな....

 

「まあ、そんなことあるわけないか。」

 

俺は瞼を閉じ、そのまま意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん...」

 

起きなければいけないと言う使命感で、俺は目が覚めた。

かなり寝たかもしれない。今何時だ?

いつもベット近くの机に置いてあるはずのスマホを探す。

 

「...あれ?」

 

ない。スマホがない。というか机すらない。なぜだ?

というか、いつもより目線が低い。かなり低い。それに、さっきの声、俺の声よりもずっと高かったぞ...

 

「まさか...」

 

慌てて机に置いてあった手鏡で、自分の姿を写した。

 

「なっ........!?」

 

そこに立っていたのは、いつもの自分ではなく、青鹿毛のウルフカットで、左に白いラインが入っているウマ娘の姿だった。背丈は150センチほどだろうか。

瞳の色は上はネイビー、下は水色のグラデーションになっていた。髪の毛の上部には、下は黒、上は白のアホ毛が生えていた。

 

「かっ....かわいー....」

 

俺はそう思った。普段の俺ならば間違いなく推しにするほどの可愛さ。背が小さいのも特徴的で、特に目を引くのが左の髪の白いライン。先天的な何かによる物だろうか。だがそのチャームポイントも相まって爆発的なかわいさを産んでいた。胸は.....まあ普通くらいかな.....?

 

「ウマ耳、嬉しいとぴょこぴょこなるんだ....尻尾も揺れてる...」

 

恐る恐る自分のウマ耳に触れてみる。

 

「は...はわわ....」

 

つい情けない声が出てしまう。

なるほど、こんな感触なのか....

結構くすぐったいな....

それにしても、この白いメンコ、なんで片方だけについてるんだ?どこかで落としてきたのか...それともファッションなのか...

 

「あ、ミーティアちゃん起きてたんだ。おはよ〜」

 

「!?!?!?」

 

えっ!?ま、まさか....

慌てて声のする方を振り向く。そこには少し癖のついたセミロングのウマ娘が立っていた。どうやらこちらを不思議そうに見ている。

 

「?...ミーティアちゃん、どうかした?」

 

「い、いや!?」

 

「なら良いけど....今日から頑張ろうね!」

 

「う、うん!」

 

やばい、何一つとして分からない。俺の名前はミーティアっていうのか?そしてこの子はなんて言うんだ?

聞くしかないか.....聞かずに分からないままになるよりかはマシだろう。

 

「あの....さ。」

 

「うん?どうしたの、ミーティアちゃん?」

 

「実は....ね....」

 

 

 

 

 

俺は同室の鹿毛の子に全てを話した。昨日までの記憶がないこと、まったく何も知らないこと。

 

「なるほど.....ってそれやばいじゃん!」

 

「まあね....」

 

「じゃあここがどこかから説明するね。ここは...」

 

ここは日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園。

どうやら俺はシュヴァルツミーティアというらしい。どう言う意味なのか、それは分からなかった。この子はシーモアスマイルと言って、俺と彼女は昨日入学式で出会い、同室になった....そうだ。

 

そして俺、シュヴァルツミーティアは留学生であり、この端正な容姿と珍しい髪色から、入学式では一目置かれた存在だったらしく、トレセン学園に入学した理由は、"さらに強くなる"だったそうで、どう言うことか、シーモアスマイルに聞いてみると、元々はドイツに居たらしいが、地元の選抜レースで大差勝ちをして、ここに編入してきたらしい。

 

俺の脚質は、後ろからのレース。つまり差し、追い込み型。距離適正はかなりマイラー寄りで、中距離の2200が今の限界らしく、それ以上は試したことがないそうだ。

 

「とりあえず今日は休みだし、ゆっくりする?」

 

「いや、今のうちに走ることに慣れておかないと....ごめんスマイルちゃん、並走お願いできる?」

 

「うん!いいよー!」

 

シーモアスマイルはニッと無邪気な笑顔を見せた。それを見た俺も、釣られて笑顔になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

体操服姿に着替えた俺は今、シーモアスマイルとターフに立っている。

 

「よーし、並走だからって、手加減はしないよ〜?」

 

「いいよ!正々堂々、勝負しよう!」

 

芝コース、1800メートル、バ場状態良。

才能を証明するならばうってつけの場だろう。

 

「準備はいい?」

 

「うん!」

 

シーモアスマイルがコインを構える。

 

「位置について....よーい....」

 

パチン、とコインを弾く音がした。

そして、コインが地面に落ちた瞬間、

 

ダッ!!

 

思いっきり地面を蹴った。

シーモアスマイルの2バ身ほど後ろを走る。しかし、

 

(こっ、怖い!)

 

そう、速度が乗りすぎてかなり怖いのだ。風圧が強すぎて何も聞こえないし、周りの風景が一瞬にして後ろへ過ぎ去っていく。シーモアスマイルが地面を蹴るたびに、芝が抉れて飛んでくるのめちゃくちゃ怖いし、つい無意識に少しスピードを落としてしまう。当然、シーモアスマイルとの距離は離れる。でも、俺は恐怖の中にある感情を抱いていた。

 

走るって、楽しいんだ!

 

通り抜ける風、この速度だから感じる限界感。サイレンススズカが虜になるのも頷ける。俺は気づかないうちにペースを元に戻した。

気づけばもう800メートル地点を通過しており、残すは1000メートル。まだだ。まだ体力を温存しろ。残り400まではまだ。

 

 

800。

 

 

600。

 

 

500。

 

 

450。

 

 

今だ!!

 

足の回転を早めて、一気に加速する。シーモアスマイルとの距離が、どんどんと縮まっていく。

 

残り200を切った。

差は半バ身。でも、ついていけてるだけで全く追い抜けない。

まずい、勝てないかもしれない。

このまま負けるのか?

嫌だ。せっかくウマ娘になったんだ。勝負の世界に脚を踏み入れたんだ。

負けたくない!!

 

「はああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

結果は、半バ身差で俺の勝ちだった。

 

「はぁっ....はぁっ.....ミーティアちゃん流石.....はやいなぁ....」

 

シーモアスマイルが息を乱しながら話しかけてくる。

恐怖心が、途中から無くなった。それは多分、速度が速すぎるという恐怖よりも、走るのが楽しいという心の方が勝ったのだろう。

これが、ウマ娘か。

 

「シュヴァルツミーティアちゃんさすが....」

 

「いや、でもまだ体が硬いな.....」

 

「まるで飛んでるみたい.....」

 

スタンドから聞こえる声に、俺は高揚感を覚えた。

勝つって、気持ちいいんだ。

この世界、楽しい!!

 

「並走ありがとう!どうやって走ればいいのか分かった気がする!」

 

しかし、

 

「.....ん?」

 

俺は足に残った違和感を、忘れることはなかった。

 

「そ.....っか.......はぁ...はぁ.....よかっ......」

 

ドサッと音を立ててシーモアスマイルがターフに倒れた。

 

「スマイルちゃん!?」

 

この後の1日は、全てシーモアスマイルの看病をした。

 

『面白いな....だけどあの走りじゃ今後厳しそうだ....』

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、早速選抜レースが行われた。

俺?俺はエントリーに間に合わなくて弾かれました。ちくしょう。

まあ、何はともあれ目の前のレースに集中しよう。今回出走するのは、俺、シーモアスマイルと同世代の、キングヘイロー、セイウンスカイだ。

 

「さあ、各ウマ娘ゲートに収まり、体制完了しました!」

 

ガタンという音がして、ゲートが開く。

 

「スタートしました!先手を取ったのはやはりセイウンスカイ!」

 

セイウンスカイのリードは2バ身ほど、先頭でペースを作っていこうという事か。

 

「スカイちゃん速いねー。このまま逃げ切れそう。」

 

横にいるシーモアスマイルが呟く。

 

「中段よりやや後方に注目ウマ娘、キングヘイローがいます!」

 

キングヘイローはまだ脚をためているのか、中段でじっと待っていた。

 

「少なくとも、キングヘイローちゃんはそうさせる気はないみたいだね。」

 

絶対に追い越せる自信があるからあの位置なのだろう。俺はここからどう捲るのか、それを学ぶ為、キングヘイローに焦点を当てながらレースを見ていた。

 

「さあ各バ第四コーナーを抜けて直線に向いた!先頭は変わらずセイウンスカイ!」

 

あと400メートルを切ったところで、ようやくキングヘイローが上がってきた。しかし、

 

「キングヘイローすごい脚!ぐんぐんと上がってくる!セイウンスカイまでの距離は3バ身!」

 

俺の末脚よりも、遥かにキレがいい。持久力が高い。あっという間にセイウンスカイを捉えた。

 

「キングヘイロー変わったか!?キングヘイローだゴールイン!!」

 

「1着はキングヘイロー!2着はセイウンスカイ!3着は...」

 

「す、すごい....スカイちゃんだって、完璧なペースで逃げたのに...」

 

シーモアスマイルは、かなり驚いている様子だった。

 

「は、はは......」

 

思わず笑ってしまった。

なるほどな。

レベルが違うやつなんてゴロゴロいるんだ。

やってやろうじゃねえか。

超えてやるよ、すぐに。

待ってろよ。キングヘイロー。

俺の中に熱く、硬い意志が生まれた瞬間だった。

 

「ミ、ミーティアちゃん?顔怖いよ....?」

 

よっぽど怖い顔をしていたのか、少し怯えながらシーモアスマイルが肩をとんとん、と叩く。

 

「あっ!ごめんごめん!考え事してた!」

 

「良かったー.....ミーティアちゃん、楽しかった?」

 

「うーん。楽しかったというより、明確な目標ができたかな?」

 

「そうなの?どんな目標?」

 

「それはね.....内緒!」

 

「えー!?気になる〜!」

 

「達成できたら教えるよ。ちょっと難しいかもだけど...」

 

俺はワクワクして、つい尻尾が揺れ動いてしまう。

 

「今のミーティアちゃん楽しそう!私にできることがあるならなんでも言って!」

 

ニコニコしながらシーモアスマイルは言った。くそ、めっちゃ可愛い。

俺が男だったら惚れてた....いや男だけど。

 

「うん!ありがとう!」

 

俺はそのまま、自室に戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

俺は今朝のことばかり考えて、なかなか寝付けずにいた。ベッドで思うのはさっきのレースのことばかり。

時刻は11時、横にいるシーモアスマイルはすうすうと眠っている。

 

「と言ってもな....」

 

正直、キングヘイローを超えるというのがどれだけ難しいか、俺は考えていた。

 

キングヘイローといえばあの黄金世代の中でも、才能は1番高いと言われていたほどの逸材だ。それを超えるとなると、黄金世代の中でも上位、いやトップクラスの実力が有る。

 

ここはゲームじゃない。やり直しなんて効かない。いつも言っていた、上振れがどうとかファン数がどうとか。そんな甘ったるいことなんて言ってられない。

 

努力は出し惜しみしない。一度しかないんだ。当然だろう。負けるのは嫌いだ。だから、誰にも負けないくらい、強くなる。その為にはまず世代の頂点に立つ。

 

いつか、歴史に名を刻むほどの名バになってやる。

俺は拳を上に上げ、強く握りしめた。

 




シュヴァルツミーティア
学年 中等部
身長 148センチ
体重 増(やばいかも...)
得意なこと 我慢!
苦手なこと じっとしてること
耳のこと たまに片メンコが気になってモジモジする。
尻尾のこと あまりにも無頓着なので、ルームメイトのシーモアスマイルに整えてもらっている。
靴のサイズ 右23.5 左23.0
家族のこと 彼女の抱えるものには薄々気がづいている。
B75
W57
H79

バ場適正 芝A ダートC
距離適正 短B マA 中A 長D
脚質適正 逃G 先B 差A 追S
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