ハイスペックウマ娘になったけどこれでもまだ足りないらしい   作:フタバ ハクシ

2 / 11
絶対突っ込まれる日が来ると思うので補足
シュヴァルツミーティアちゃんは11文字でJRAの規定である馬名9文字に違反してね?ということですが、マル外扱いで海外で馬名をつけられたということでどうにか勘弁してください(海外で名前が決まっている馬は日本でもその名前が使われる。例としてテイクオーバーターゲットなど)


早速壁にぶち当たるってマジ?

「ふぅ〜.......」

 

俺は大きく息を吐き、緊張をほぐしていた。

今日は俺、シュヴァルツミーティアの選抜レースだ。キングヘイローのレースから2週間が経った。あの後俺なりにどうすれば末脚のキレが良くなるのか、持久力が伸びるのかを模索し、その結果、2000メートルのタイムはかなり縮んだ。まあ、言っても図書室でトレーニング教本を読んだり、ゲームと同じトレーニングをしただけなんですが。

 

しかし、それでも勝てるかわからない。なぜならば、今日の選抜レースには、スペシャルウィークが出走するからだ。ポテンシャルも、実力も、今の俺と同等、いやそれ以上だろう。どうすれば勝てるか、俺はずっと考えていた。

 

「ミーティアちゃん!」

 

「うわぁ!?!?」

 

当然後ろから肩を叩かれ、叫び声を出してしまった。

後ろを振り向くと、シーモアスマイルがニコニコしながら立っていた。

 

「スマイルちゃんか.......もう、脅かさないでよ....」

 

シーモアスマイルは無事先週の選抜レースで勝ち上がり、メイクデビューへの出走権を手に入れた。そもそも選抜レースここで勝たなければレースの土俵にすら立てないのだ。

 

「ごめんごめん!でも、緊張した時こそスマイルだよ!」

 

シーモアスマイルはまるで太陽の様な明るさで笑いかける。

だからめっちゃかわいいんだって。

 

「ふふっ、ありがとう!!」

 

負けないくらい輝いた笑顔で返して、俺はゲートへと向かった。

 

 

 

 

 

 

「っし....これなら勝てるかも...」

 

しっかりとシュミレーションして、何度も何度も繰り返した。これで勝てなければ、もっと鍛えるしかない。努力するしか....

 

「さあ、いよいよ今日の選抜レース、芝2000メートルの発走です!」

 

ついに始まる。俺のレース人生が。

 

「各ウマ娘順調にゲートに収まっていきます!」

 

俺の枠は少し外目。スタートしてすぐ後ろに回ろう。脚をためて、4コーナー回ったらすぐに解放する。よし、これなら勝てるぞ!

 

「体制が完了しました!......スタートしました!」

 

「くっ....」

 

まずいまずいまずい!!スタートの時に少し躓いて、かなり出遅れてしまった....

 

「シュヴァルツミーティアが少し出遅れたか!?最後方からのレースです!」

 

後ろにつくことは最初から考えていたが、おまけで3バ身も差がついてしまった。かなりまずい状況だが、勝ちは譲らない!

 

「第二コーナーを回りました!注目のウマ娘、スペシャルウィークは中段で前を見ると言った感じ!そしてもう1人の注目ウマ娘、シュヴァルツミーティアは依然として最後方!」

 

「あの位置から捉え切れるでしょうか。少し心配ですね。」

 

ああもう!じれったい!!今すぐでも全員抜き去ってやりたい!.....しかし、そんなことをすると自分が負けるのは目に見えている。だから、落ち着け俺。まだ抑えるんだ。大丈夫。末脚は負けない。

 

「第四コーナーを回って直線コースに向いた!」

 

今だ!

俺は溜めた脚を解き放ち、追い出した。キレなら負けない!その一心で、どんどん加速していった。

 

「ここで先頭はスペシャルウィーク!先頭スペシャルウィークだが、しかし後ろから驚異的な末脚でシュヴァルツミーティアがやってきた!シュヴァルツミーティア早い!まとめて撫できるか!?」

 

よし....このままならいける!!

俺はスペシャルウィークの横に並びかけた。だが、

 

「がっ.......」

 

足に走った鈍痛で、俺は体勢を崩し、体を強くターフに打ち付けた。ゴロゴロと、まるでおもちゃの様に転がっていく。

 

「おっと!?シュヴァルツミーティアに故障発生!!シュヴァルツミーティアに故障発生です!!先頭はスペシャルウィーク!!スペシャルウィークゴールイン!!」

 

「ミーティアちゃん!!」

 

遠ざかっていく意識の中で、俺の初めてのレースは、敗北よりも酷い結果になったことを理解した。

 

なんて....酷い結果だ。どう....せ...なら......かちた.....かった....な.....

 

 

 

『やっぱりあの走り方じゃダメだな、筋肉がまだ足りてない。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん.........」

 

少しずつ意識が覚醒していく。あれ....何で寝てるんだっけ.....あ、そっか...転んだんだ。って事はここ、保健室のベッド....?

瞼を開くと、今にも泣きそうな顔のシーモアスマイルが、こちらを見つめている。

待って、めっちゃ嫌な予感。

 

「ミーティアちゃん!!!良かった〜!!!」

 

シーモアスマイルが勢いよく抱きついてくる。わぁ、かわいい〜。

って、痛っ!!首締まってる!!ウマ娘の力やばい!!

 

「ぐぇぇ.....!!」

 

「本当によかった......!!ぐすっ、ほんとうに.....!!」

 

「わかったから......くび....取れちゃう.......」

 

「わわっ!?ごめんー!!」

 

そう言うとシーモアスマイルはすぐに離れてくれた。抱きつかれたのは嬉しいけど.....力だけはわきまえて......

 

 

 

起きてすぐに保健室の先生から説明があった。転んですぐに受け身を取ってたから、大事には至らなかったらしいが....

 

「2ヶ月は走れないのか.....」

 

「あれだけ転んでそれならマシだよ.......ほんとに死んじゃうかと思ったんだから....」

 

シーモアスマイルはまた泣きそうになりながら言う。泣かした訳じゃないけど、いつもニコニコしてる子が泣いてると罪悪感が生まれるからやめて。死んじゃう。

 

「....私はいつもみたいにニコニコしてるスマイルちゃんの方が好きだな。」

 

「っっ......!!うん!!」

 

スマイルは顔をグシグシと袖で拭き、いつものように笑顔を見せてくれた。あーもうかわいい。優勝。この笑顔には今後ともお世話になりそうだ。

 

「うん、元気もらった!ありがと!」

 

「ふふっ、どういたしまして!」

 

でも、脚の痛みが心残りだな。治ると良いけど....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

怪我をしてから2週間が経った。

学園にいてもやることがないので、時折こうしてカフェテリアで暇を潰している。思わぬ情報が聞けることもあるしね。

 

どうやらシュヴァルツミーティアというウマ娘の印象は、「クールでかっこいい留学生」から「選抜レースで派手に転んだ可哀想な子」になっているようだった。その通り過ぎて何も言い返せないのが悔しい。

 

俺はいつもカフェテリアの端でそばかうどんを食べている。ん〜!そば美味しい!どうやら元々好きだったものはウマ娘になっても好きらしい。

 

「キングヘイローさん!僕の担当ウマ娘になってください!」

 

「セイウンスカイさん!私と一緒に三冠を目指さない?」

 

「俺と一緒にダービーを目指そう!スペシャルウィーク!」

 

....ここ1週間くらいはずっとこの調子だ。黄金世代を中心としたスカウトラッシュ。しかし入ってくるのはG1の話ばかり。まあそりゃ、実力がある子ばっかりなのは知ってるけど。選抜レースで勝てなきゃそもそも声すらかかってこないとはね。結構見せ場あったし1人くらいは声かけてくるかなと思ったけど、現実は厳しいや。

 

というか、「スペシャルウィークと競り合った」より、「レースで派手に転んだ」の方が印象に残り過ぎたのだろう。まともにレースを走りきれない子よりも他の子を優先する、順当っちゃ順当か。

 

「あなたは一流になる覚悟があるのでしょうね?」

 

「そうですねぇ〜....取り敢えずお昼寝してから決めます♪」

 

「ありがとうございます!でも....」

 

いやーみんな人気者ですね!キラキラしてて私じゃとても似合わないや!

....本音を言うと、かなり嫉妬している。俺だってかなり頑張ったのに、1人も来ないなんて。スマイルちゃんだって、スカウトの話は来てたのに。やはり、過程ではなく、結果が全ての世界なんだ。どう努力したかじゃない。どう結果を出したかだ。

 

この世界、思ったよりも厳しいな。

 

まあ焦っても仕方がない。今は時間があるし、ゆっくりと考えよう。

俺は食べ終わったトレーを返却口に返し、寮に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、シュヴァルツミーティアです!

私は今どこにいるでしょう!

え?ヒント?ヒントは淀が近くにあるところです!

みんなは分かったかな〜?

そう!京都レース場です!!

 

いやいや、俺は出走しませんよ?だってまだ怪我治ってないし。

今日ここにきたのは、俺の同室の子、シーモアスマイルちゃんのメイクデビューがあるからです!!

 

「さあ!いよいよメイクデビューの発走です!!」

 

今日は良いレース日和!バ場状態はいいし、天気も良好!風も少なくて俺も走りたくなっちゃう!まあ、走れませんけど。

 

ゲートの中にみんなが収まっていく。メイクデビューだけど、みんな落ち着いてるなぁ。ゲートを嫌がる子が少ない。元々人間の俺ですらちょっと嫌なのに。

 

「各バゲートに収まりました!」

 

ガタンと言う音がして、勢いよくゲートが開いた。

 

「スタートしました!シーモアスマイルはやや後方から、まずは先行争いです!先手を取ったのは...」

 

スマイルちゃんは少し後方からのレース。前の子にちょっと引っかかって、後ろに行くしかなかった感じか。

 

向こう正面の中間あたり、中段まで上がったスマイルちゃんは、内ラチ沿いにつけている。仕掛けるタイミングを待ってるのかな?

 

「第四コーナーを過ぎ、ここから直線!」

 

スマイルちゃんは直接に向ききってから仕掛け始めた。かなり速いが、このままじゃ先頭の子を抜かしきれない。

 

「がんばれー!スマイルちゃんー!」

 

「シーモアスマイルは頑張っているが2着で堅そうだ!12番今先頭でゴールイン!!2着はシーモアスマイル!3着は...」

 

あらら....

結果は2着。でもスマイルちゃん、楽しそうに走ってたなぁ。元気もらったし、俺も頑張りますかね....

 

 

 

 

 

さてと、では、突撃インタビューをしてみましょう!

コンコン、と2回ノックをして、ドアを開ける。

 

「スマイルちゃん〜!レースお疲れ様〜!」

 

「ミーティアちゃん!来てたんだ〜!」

 

開けた瞬間、ニパァっと笑顔を見せてくれた。

飼い主が家に帰ってきた時の大型犬かよ。うん、かわいい!

 

「惜しかったねー!私も走りたくなっちゃった!」

 

「悔しい......けど、楽しかった〜!」

 

もう無邪気すぎて....

 

「....また元気になったら一緒に走ろうね!」

 

「ほんと!?やるやる!」

 

さてと、本格的にリハビリしなきゃな。選抜レースに出て、勝ち上がらないと。メイクデビューにすら出れずに退学するのはごめんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミーティアちゃん、準備はいい?」

 

「もちろん!ずっと楽しみにしてたんだもん!」

 

あの怪我から約1ヶ月、ようやく走ることが許可された俺はシーモアスマイルと共にターフに立っていた。本当はあと2ヶ月は走ることはできないはずだったが、かなり回復速度が早かったらしく、1ヶ月ほどで怪我は完治したそうだ。かと言っていきなり並走するのもアレなので、まずは軽く走ってみようかな。と、言うことで800メートル走っちゃお。

 

「じゃあ行くよ!よーい.....」

 

「どん!」

 

「ふっ!!!」

 

久しぶりに蹴った地面の感触は良好で、ブランクは感じなかった。

足の痛みも無くなってるし、好調好調!

 

(ははっ、やっぱ楽しい!)

 

半分は流しで走ってあとの400はスパートの練習でもするか。

ふぅと息をつき、脚に目一杯の力を押し込んだ。

 

「がっっ!?!?」

 

脚に走った激痛で、俺は体勢を大きく崩し、かなりのスピードで芝に激突した。幸い直前に体を捻って背中から入ったので怪我はしてないようだが....

 

「ミーティアちゃん!?!?大丈夫!?!?」

 

スマイルちゃんがすぐに駆け寄ってくる。

ってえ.....けど、目立った外傷は無しか。

 

「一応大丈夫.....」

 

「どうしたの?まだ痛む....?」

 

「スパートかけた時にちょっとね...」

 

「保健室で診てもらう?」

 

「一応そうしようかな....」

 

「ちょっと!自分で立たなくていいよ!私がおぶっていくから!」

 

「え...ちょ、ちょっとスマイルちゃん!?」

 

俺は抵抗することも許されず、スマイルちゃんの背中に乗せられた。

 

「こら!怪我人は無茶しちゃいけません!!」

 

待ってめちゃくちゃいい匂いする!!

なんか南国の花の匂いする!!ちょっとマジで惚れちゃう!!

 

(は、はずかしー....)

 

顔熱っつ....絶対変な顔してるな....俺.....

熱くなった顔を手で隠しながら、俺は保健室に連れて行かれた。

 

 

 

 

 

 

 

「わからない!?!?」

 

保健室で言われたことは、俺の耳を疑う結果だった。

 

「はい。痛む箇所を見ましたが、これと言った症状は見られないんです。」

 

「スパートをかけた時だけ痛むのも謎です。屈腱炎や繋靭帯炎なら走るだけで痛むものですから。」

 

屈腱炎と繋靭帯炎、両方とも聞いたことがある。現実の馬ならば、発症したらほぼ引退に追い込まれるほどの恐ろしい病気だ。

 

「とにかく、すぐに病院で診てもらうことを進めます。診断書を渡しておくので、今日中に行くように。」

 

「わ、わかりました....」

 

不安で、つい耳が垂れてしまう。

これで走れなくなるとかだったらどうしよう...

 

「ミーティアちゃん!大丈夫!きっと大したことないって!」

 

スマイルちゃんが笑顔で励ましてくれた。

うーわ。天使。もうこの笑顔あれば何があっても大丈夫だわ。

 

「....うん!ありがとう、スマイルちゃん!」

 

本当にいつも助けられてばかりだな。いつか返せるように、早く治さないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

「シュヴァルツミーティアさん、あなたの脚は、少々厄介な性質を抱えてるようです。」

 

話し方的に絶対やばいやつじゃんこれ。俺何したの?ただ走っただけですけど?

 

「....と、言いますと?」

 

「恐らく普通に走った時に痛みがないのは脚の回転数が少ないからです。足が地面に触れる時間がそう長くないから、普通に走る分には支障はありません。」

 

「しかし、スパートをかけたりして脚の回転数を上げたら話は別です。1秒間に動かせる脚の限界を超えてしまうと、今朝走ったように激痛が走ります。」

 

「どうにか治せないんですか?」

 

俺は唯一の希望を込めて、医者に聞いてみた。

頼む!あってくれ!!

 

「今日まで色々な治療法が試されてきましたが、効果があったものは存在していません。」

 

ウッソだろお前。

 

「この症状で走り続けたらどうなるんですか?」

 

「ここから症状は悪化しません。ですか先ほどもお伝えした通り、回転数を上げると激痛が走ります。それを覚悟で走るなら話は別ですが.....」

 

「....つまり、我慢して走ることはできると?」

 

「不可能ではないですが、修羅の道かと....ちょっと!?シュヴァルツミーティアさん!?」

 

俺は話を最後まで聞くことはなく、診察室を後にした。

走る楽しさと走った時にくる激痛で天秤にかけた結果の答えは....まあ言うまでもないだろう。

 

まさかここで社畜だった時の経験が役に立つとは....

周りから、「無能」だとか「役立たず」だとか言われても、

うるせぇぇぇしらねぇぇぇぇえぇえ!!!!

で乗り越えた俺に我慢できないものはない!!!

待ってろよ黄金世代!!

待ってろよトゥインクルシリーズ!!

 

 

 

俺はこれからの期待を胸に、寮へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

シーモアスマイル

学年 中等部

所属寮 栗東寮

身長 163センチ

体重 微増(幸せならオッケー!)

得意なこと 人を笑わせること

苦手なこと 嘘をつくこと

耳のこと 左につけている花の耳飾りは、母から譲り受けたもの

尻尾のこと 普通の子よりも気を遣っている

靴のサイズ 左右ともに24.0

家族のこと 父母共に良家ではあるが、彼女のペースによく飲まれる

B85

W57

H79

 

バ場適正 芝AダG

距離適正 短GマE中A長A

脚質適正 逃G先D差A追C

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。