ハイスペックウマ娘になったけどこれでもまだ足りないらしい   作:フタバ ハクシ

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運命の出会い!?そんなこと......いやないよね?

どうも、青鹿毛のかわいいウマ娘、シュヴァルツミーティアです!

2回目の選抜レースまで、あと5日を切りました!

今日は絶好の練習日和!時刻は2時、天気は大雨で、コースには私1人!ターフは水でぐちゃぐちゃですが、雨に濡れながらの練習もたまにはいいリフレッシュです!

 

嘘です!寒いし汚れるし最悪です!だから梅雨は嫌いです!!

さて、「痛みを我慢して走るぞ!」とは言ったものの....

 

いやこれめっちゃ痛い!!

 

「がうっっ....!!」

 

スパートの練習をしては唸りながら思いっきり転ぶ、これを既に10回以上繰り返している。大きな怪我はしていないが、擦り傷が真っ白で細く柔らかい足に増えていく。罪悪感湧くなぁ....

 

「あーあ、スラッとした足が台無しだよ.....」

 

髪の毛もびしゃびしゃで、自慢の白い部分も泥に濡れてくすんだし、今日はもう練習やめようかな....

 

......いや、追いつくんだろ!!キングヘイローに!

 

俺は自分の頬を思い切り叩き、頭をぶるぶると震わせた。俺は他の子よりも苦労しなきゃ追いつくことなんてできない。ならみんなが休んでる時でもやらなきゃいけない。やるしかないんだ!

 

「もう一回.....!」

 

400メートルも満足に走りきれないんじゃ、選抜レースどうこうの話じゃないだろう。とにかく今の目標はスパートをかけて走り切る事。タイムを縮めるだとかはその後だ。

 

「ふっ...!!」

 

雨の勢いが増す中、俺はトレーニングを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気づけば時刻は6時を回っていた。4時間もずっと1人でトレーニングしていたのか....

さて、肝心の結果はというと、走り切ることはできるようになったけど、スパートをかけれるかと言われると正直かなりきつい。

これは脚質を変えて前目でレースをしたほうがいいのかな....

 

「うーん...」

 

「あ!いたいた!おーいミーティアちゃん〜!」

 

聞き覚えのある声、この声は....

後ろを振り向くと、そこには制服姿で走ってくるスマイルちゃんの姿があった。

 

「スマイルちゃん?どうしたの?....って傘さしてないじゃん!!風邪ひいちゃうよ!?」

 

「遅くなっても帰ってこないから心配したんだよ〜!っていうか、そう言うミーティアちゃんの方が濡れてるじゃん!」

 

はい、図星。

痛いところつかれたので何も言い返せません。

 

「ま、まあそうだけど....」

 

「まあとにかく、今日はもう遅いから一緒に帰ろ?」

 

そう言ってにこやかに手を差し伸べてきた。

あーもうかわいい!!最高!!!

こんなかわいい子が俺を求めて雨に濡れながらも見つけてくれたんでしょ?そんなの手を取る以外に道ないじゃん!!

 

「....そうだね!帰ろっか!」

 

「じゃあ早速レッツゴー!」

 

「ちょちょちょっとスマイルちゃん!?」

 

スマイルちゃんは俺の手を取ると、そのまま引っ張って行ってしまった。

 

「たまには濡れながら走るのも気持ちいいね!ほら見て、紫陽花が咲いてるよ!」

 

スマイルちゃんが指を指した方向を見ると、寮と学園を繋ぐ通路に色取り取りの紫陽花が咲いているのが見えた。紫や青、ピンクの花びらが、雨に濡れて輝いている。それは、もう梅雨の季節を到来を感じさせる。でも、1番印象に残ったのは、

 

「どう?ミーティアちゃんは楽しい?」

 

と微笑みながら聞いてくるスマイルちゃんの顔だった。

俺が何か考え事をしているのを察知して、気分を変えさせようとしてくれたスマイルちゃんの気遣いが、俺にはすごい嬉しくて。

 

「なんだかスマイルちゃんって、水も滴るいい女って感じするよね。」

 

そう言うと、スマイルちゃんは、

 

「そうかな?」

 

ニシシッ、と屈託のない笑顔を俺....いや私に向けてくれた。

 

「....くしゅん!」

 

「わわっ!風邪ひいちゃう!早く帰ろ!」

 

「うん!!」

 

私は梅雨が、少しだけ好きになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、いよいよ本日の模擬レース、芝2000メートルの発走です!」

 

...結局、足の痛みを解決することはなかった。それでも、今日までやれる事をやってきたはずだ。ここを勝って、トレーナーをつける。そしてメイクデビューを勝って、あのキングヘイローを追い越す。

 

今回の私の枠は内枠、2枠3番。逃げる・・・には絶好の位置だろう。

 

「さあ、順調に枠入りが進んでいます!このレースの注目するウマ娘は、ドイツからの留学生、2枠3番シュヴァルツミーティア!」

 

「前回のレースではとても残念な結果にはなりましたが、実力は示しましたからね。期待できますよ。」

 

でかでかと注目ウマ娘!って言われると、少し緊張するな。でも、負ける理由にはならない。

 

「ふぅ〜....」

 

私は深く深呼吸して、前を見た。集中しろ。出遅れるな。

 

「全ウマ娘ゲートに収まり、体制整いました!.....スタートしました!」

 

私はゲートが開いた瞬間、勢いよく飛び出した。

 

「3番シュヴァルツミーティアが先頭に立ちました!前回とは違う位置からのレースです!」

 

「緊張して掛かってしまったのでしょうか。少し心配ですね。」

 

よし、予想通り先頭に立てたぞ....このまま逃げ切ってやる!!

 

 

 

 

 

でも、

 

 

 

私のささやかな希望は、曇り空に砕かれることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「7番メジャーブリッツ抜けた!1馬身のリード!メジャーブリッツゴールイン!!」

 

私は遥か後方、12着でレースを終えた。

 

「はあっ....はぁーっ.......ゲホゲホ.......」

 

敗因として目立つのは、明らかな脚質ミス。逃げるペースを考えずに先頭を走った結果、後半のスタミナがなくなってしまったのだ。

私は2000メートルを逃げ切るほどのスタミナは持ち合わせていなかったのだ。

 

「はぁ......くそ.....はぁっ.......」

 

最後の直線で、スパートをかけることはできた。しかし極度の酸欠状態と、足にかかる激痛が、私にブレーキをかけたんだ。

 

私は、自分に負けたのだ。自らの努力を自分で踏み潰したのだ。

あれだけ応援してくれたスマイルちゃんに合わせる顔がない。私は1人で、校舎裏へと向かった。

 

「.....」

 

静かにしゃがみ込んで、申し訳なさでいっぱいになってしまった。これ以上、もう無理なのかもしれない。やっぱり.... には....

 

「あー、ちょっといいか?」

 

ふと聞こえた低めの声、聞いたことはない声だった。ちょっとびっくりして顔を上げると、そこには、

私の身長に、あと30センチはあろうかと言う大きな背丈の青年だった。若い。20歳も行ってないのではないだろうか。顔も整っている。まるで美少年アイドルのようだ。俺が男だったら、こんな顔になりたかったな。

 

「....誰ですか。」

 

「ただのトレーナーだよ。ただのお節介な....ね。」

 

「....あの模擬レースの逃げ、何がしたかったんだ?」

 

.....は?

なんだコイツ?

 

「正直言って、君に逃げは向いていない。」

 

「君、前回の選抜レースで転んだ子だろ。確か.....ミーティア。」

 

「前回のように後方で待機して、最後の末脚でまくる....それで良かったんじゃないか?」

 

「走りを見た感じ、走ることが怖いとかでは無かった。」

 

「シーモアスマイルに並走で先着してただろ?もったいないんだよ。それだけの才能があるのに。」

 

コイツ、何でそれを知って....

 

「あなたに、何が分かるんですか。」

 

「いや、正直何もわからない。走る側の気持ちはトレーナーにはわからないさ。でも....見過ごせないんだよ。才能がある子がそれを発揮せずに退学していくのを。」

 

「....悪い、首を突っ込みすぎた。忘れてくれ。」

 

そう言うと、その人はそっぽを向いて学園の方へ帰っていった。

 

「...何だよ、アイツ。」

 

突然声かけてきて、「向いてない」って.....走ったこともないくせに。私が抱えてる痛みなんて、一つも知らないくせに。

 

「.....あークソ!!その通りだよ!」

 

そうだよ!アイツの言う通り私は逃げに向いてない!足の痛みが怖くて後ろからのレースをしたくなかったんだよ!!

 

「....クソ.......なんで....」

 

もしアイツの言う通り後方でレースを進めることができたなら、勝てたのかもしれない。

 

「何で.....私を普通に走らせてくれないんだよ....」

 

私の震えた声は、曇天の空にかき消された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ!ミーティアちゃんお疲れ!頑張ったね!」

 

寮のドアを開けると、私を労う言葉と共に、スマイルちゃんが出迎えてくれた。あんな惨めな負け方をした私にも、スマイルちゃんは優しく接してくれた。

 

「あ....スマイルちゃん....」

 

「どうしたの!?どこか調子悪い?」

 

「...ううん、大丈夫だよ。」

 

スマイルちゃんの必死な顔を見ていると、申し訳なさでつい暗い顔をしてしまう。

 

「....ごめんね、スマイルちゃん....」

 

「私は全然大丈夫だよ!気にしないで!」

 

「うん.....ありがとうね.......スマイルちゃん.....」

 

私はスマイルちゃんに抱きつき、ごめん、ごめんとひたすらに謝った。

そして心に誓った。もう、二度とあんな負け方はしないと。こんな気持ちになるくらいなら、足をぶっ壊しながら走った方がマシだ。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ.....」

 

敗走から5日、ようやくスパートの痛みを堪えられるようになってきた。400メートルのタイムは23.5。ようやく形になってきた。いやそれでも転ばないわけではないが。現に今日の練習中は3回転んだ。

 

「よし....休憩休憩っと....」

 

次の選抜レースは距離を短くして1600メートル、マイルにするつもりだ。あと2週間、もう残されている時間は少ない。もう二度とあんな失態をしないために、絶対に勝つために、私は今日もターフに立っている。

 

「もう少し姿勢低くやってみた方がいいんじゃないか?」

 

後ろからとても嫌な音が聞こえた。振り向かなくても分かる。絶対アイツじゃん。

 

「げっ。」

 

「おいげっって何だげって。」

 

やっべ、つい声に出しちゃった。

 

「何ですか?冷やかしならあっち行ってください。」

 

「いや、単なるアドバイス。次の選抜レースで勝てなかったら、もう後がないんだろ?」

 

そうか、確かにそうだ。私はもう次のチャンスを逃したら、もう俺にはトゥインクルシリーズへの挑戦権を獲得できない。つまり、次のレースで負けることはトレセン学園ここからの退学を意味する。

正確にはトレーナーがつかなかったら退学になる。トレーナーの注目を浴びるにはレースで勝つのが手っ取り早い。2着とは天地の差だ。

 

「うるさいです。」

 

「図星だろ。だから言い返せない。違うか?」

 

コイツぶん殴っていい?

 

「ミーティア、君は走ってる時の姿勢が高いんだ。筋肉もそこまで多いわけじゃない。だから姿勢の高い走法は君と相性が悪い。もう少し下げて走るともっと楽に加速できる。」

 

「まったく.....暇なんですか?こんな落ちぶれたウマ娘に声かけて。」

 

「俺は新人だから案外暇だよ。まだ担当すらついてないからな。」

 

「私をスカウトしようとしてるんですか?」

 

「分からない。ただ君みたいな才能のある子がここを出ていくのが耐えられない。」

 

「...変な人ですね。」

 

私は無視してトレーニングを再開した。でも、

 

「もう少しストライド取らないと。ただでさえ体小さいんだから。」

 

「若干左にヨレて走ってる。直さなきゃレースで痛い目に遭うぞ。」

 

あーもう!!うるさい!!!

 

「さっきからネチネチと、あなたは私のトレーナーですか!?」

 

「いや違う。でも君は才能が高い。見ろ。いいタイムだ。」

 

彼の首から下がっているストップウォッチを見る。その画面には、22.8と刻まれていた。

 

「なっ......!?」

 

「ははっ、驚いたか?これでも俺、トレーナーなんでな。」

 

悔しいけどコイツの言っている事を治すとタイムはかなり縮んだ。でも腹立つ。一回殴りたい。

 

「あ〜。腹減ったし飯食ってくる。ま、練習頑張れよ〜。」

 

そう言うとアイツはこちらを振り向く事なくどこかへ行ってしまった。

まったく....本当になんなんだ....

 

「まあいいや。練習しよっと。」

 

少しアイツの名前が気になったが、私は気にするだけ無駄だと思ったので練習を再開した。

 

 

 

 

 

 

「それって、まさか話題の一ノ瀬トレーナーじゃない!?」

 

練習を終えた私は寮に帰って、今朝の事をスマイルちゃんに話した。

 

「え?そうなの?」

 

「そうだよ!一ノ瀬トレーナーって言ったら、お父さんは神バと言われたウマ娘のトレーナーだよ!?」

 

なるほど、アイツは良家の出だったのか。

 

詳しく聞くと、アイツの名前は一ノ瀬 碧郁いちのせ あおいと言うらしい。年は19。"魔術師"と言われたトレーナーの息子で、トレーナー学校を飛び級、しかも首席で卒業したと言うんだから驚きだ。トレーナー学校時代についた異名は”天才"だったそうだ。

でもめっちゃ言い方腹立つけどな!!いっぺんぶん殴りてえ.....顔もいいのに性格があれじゃモテないだろうな。

 

「ほぇー....天才ねぇ....そんな感じじゃなかったけどなぁ...」

 

「ミーティアちゃんのこと気に入ってるんじゃない?」

 

「えぇ.....変に目をつけられてるだけだと思うけど。」

 

「そう言ってあの人の専属ウマ娘になったりしてね!」

 

「やめて!?」

 

食い気味で否定した私を見て、スマイルちゃんはかなり笑っていた。

まあ、私がレースに勝ってもあの人をトレーナーに選ぶのは嫌だなぁ....

私はそう考えながら、翌日に向けて眠りについた。

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