ハイスペックウマ娘になったけどこれでもまだ足りないらしい   作:フタバ ハクシ

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マイペースな彼と純情な私

選抜レースから1日が経過した。私はトレセン学園を追い出されることなく、無事にジュニア級を迎えることができた。しかし...

 

「ねえねえ、あれって一ノ瀬トレーナーとシュヴァルツミーティアちゃんじゃない?」

 

「本当だ、うわぁ、一ノ瀬トレーナー背高っ!」

 

「ミーティアちゃんも可愛い〜。お似合いって感じ。」

 

そう。相棒こと一ノ瀬トレーナーは天才と言われた程なので当然話題になる。そして私もどちらかと言うと話題になる方なので私達が通るとかなり周りの子たちがざわつくのだ。

 

「あ、相棒、これ恥ずかしい.....」

 

私は相棒の横に歩いているが、話題にされるせいでめちゃくちゃ恥ずかしい!耳が若干垂れちゃった.....

 

「ん、そうか?」

 

「相棒は恥ずかしくないの....?ちょっとムズムズするんだけど...」

 

「昔からこんな感じだったし慣れた。堂々としとけばいいんだよ。」

 

と相棒は言うが、そもそも人気になったことがない私にとって慣れるというのはかなり時間がかかりそうだな....と思った。

 

 

 

 

 

 

 

相棒のトレーニングは圧巻という他なく、自分でやるトレーニングとは比にならなかった。

 

「んー、もう少しピッチを速めた方がいい。体格が小さい分それを利用していこう。」

 

相棒は私のことをよく見ている。ダメなところを的確に指示してくれる。やっぱりやりやすいなぁ。

 

「分かった、もう一周行ってくる!」

 

「今日はそれで終わりな。怪我はするなよ〜。」

 

「分かってる〜!」

 

私はいつもより前向きにターフへ向かった。

 

 

 

 

 

「ふぁ〜ぁ、疲れた疲れた〜。」

 

今日は学園からの帰路を相棒と一緒に帰ることにした。

 

「いや相棒何にもしてないじゃん。」

 

「細かな事を見るって案外集中するもんだよ。」

 

「ふーん。相棒ってなんか常に眠そうだよね。」

 

「まあ、ボケーっとしてるように見えても色々考えてるんだよ。」

 

「そうなの?」

 

「そうそう。」

 

実際天才って言われるほどの実力者だしそんなもんか。

 

「じゃあ俺はここで、気をつけて帰れよ〜。」

 

「はーい。じゃあね〜。」

 

私は相棒に手を振りながら、寮へと帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えばミーティアちゃん、嫌だ嫌だって言ってたのに結局あのトレーナーさんを選んだよね。理由は何かあるの?」

 

お風呂に入って髪を解かしていた私に対して、スマイルちゃんから爆弾発言が飛んできた。

 

「ふぇ!?!?.....い、いや、実はね....」

 

私は相棒とどう出会ったか、私のために何をしてくれたか、その全てをスマイルちゃんに話した。

 

「めちゃくちゃいい人じゃん!!」

 

話を聞いたスマイルちゃんは、開口一番にそう言った。

 

「ま、まあ....」

 

「そりゃミーティアちゃんがトレーナーになってって言うのも納得ですなー。」

 

「ちがうよ!!それは成り行きで....アイツ口悪いし、いつも眠たそうだし...」

 

「嫌よ嫌よ好きの内とはよく言ったものですなぁ〜。」

 

スマイルちゃんがニヤッとしながらこっちを見てくる。

 

「そんなんじゃないと思うけど...ただのトレーナーだし......」

 

「ふふっ、でもミーティアちゃん顔真っ赤だよ?」

 

「え!?!?」

 

慌てて自分の顔を触る。手よりずっと熱い。あまり自分で気にしたことはなかったが、私は彼のことが好きなのだろうか。つい2ヶ月半ほど前まで男だったのに、私はもう男性の方が好きになっちゃったの......!?

 

「うんうん、乙女ですなぁ。」

 

「いやいや、スマイルちゃんも乙女じゃん...」

 

「ミーティアちゃんはキラキラしてるね!私は敵いませんな!」

 

「ちょっと!話聞いてよスマイルちゃん!!」

 

しばらくはこれでいじられそうだ。でも、スマイルちゃんとこうして笑えるの、私は好きだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いただきます!」

 

いつものように私は端のカウンター席でそばを注文していた。そばはあっさりした方が好きだからと言う理由で食べているが、筋肉をつけるためにはやっぱりお肉も食べた方がいいのだろうか。でも体重測って増えてたら嫌だし....

 

「隣いいか?」

 

「あ、どうぞ...って相棒!?」

 

そこに立っていたのは少なめのミートソースをトレーによそっている相棒の姿だった。私の隣に座ると、

 

「蕎麦食べてんの?一味いる?」

 

と言って、一味を手渡してきた。

 

「え、そばに一味?ちょっと違くない?」

 

「いや、案外いけるぞ。試してみな。」

 

「え〜?」

 

私は疑いながらも手渡された一味を受け取り、そのままつゆの上で振りかけた。ねぎの緑と一味の赤が、美しい景観を生んでいた。

 

「一度食べたらもう手放せないぜ?その覚悟はあるか?」

 

「はいはい。」

 

私は麺をつゆにつけ、一口でパクっといただいた。あっさりとした味に、ピリッと辛い一味がいいアクセントになっていた。これは.....おいしい!

 

「どうだ?うまいだろ?」

 

「ん〜!んーんん!!」

 

「ハハッ、食べ終わってからでいいよ。」

 

「相棒、すごいねこれ!おいしい!」

 

「だろ?お口に合ったようで何より。」

 

そう言って優しく微笑む彼の顔は、少し大人っぽくて........待って私今何想像した!?

 

「じゃ、俺も。いただきます。」

 

そう言って彼は、ミートソースに一味をかけていた.......え!?一味!?!?

 

「一味かけるの!?!?」

 

「え、ああ。かけないの?」

 

「普通かけないよ!?!?」

 

「あ、そうなんだ。初めて知った。」

 

「嘘でしょ!?」

 

驚いている私を横目に相棒はミートソースを一口いただいて、

 

「ん。おいしい。」

 

と言いながら食べていた。やっぱり天才って言われる人は少し変わっているんだな。でもこうやって横顔見ると、やっぱり相棒も私とそこまで歳の差はないんだな。まだまだ幼さが抜けてない。さっきはちょっと大人っぽかったけど。

 

「あ。砂糖砂糖。」

 

相棒は立ち上がり、シュガースティックを2本とって席に戻った。ふとトレーに目をやると、ミートソースの他にコーヒーが1つ置いてあった。

 

「相棒、ブラックは無理なんだ?」

 

「苦くて飲めないのもあるし、砂糖取らないと集中できない。」

 

「なるほどねぇ〜...」

 

なんとも相棒らしい答えだ。現実的で論理主義。でもそれは彼が導いた最適解なんだろうな。

 

「ごちそうさま。またね相棒。トレーニングで。」

 

「ん、じゃあね。また。」

 

私は立ち上がり、カフェテリアを後にした。

 

 

 

 

 

 

 

さて、と。お昼ご飯食べたのはいいけど、ここから夕方まで暇なんだよなぁ....

私は不意に、さっき相棒が飲んでいたコーヒーが気になっていた。そうだ。この世界にきてまだコーヒー飲んだことないかもな。折角だし飲んでみようかな。

 

 

 

と!言うことで来てみました!!ファミリーウマート!!ここはコンビニの中で最もコーヒーが美味しいらしいです!!

え?なんでウマーバックスとか、ウマダ珈琲店とかじゃないのかって?あんなところ、私はあんなウマスタ映えするところを一人で行く勇気はありません....いつかスマイルちゃんと一緒に行こうと思います....

 

さっそく買ってきました!ファミウマのアイスコーヒー!砂糖はなし!

ブラックです!ですが元の味覚なら大丈夫なはず!では、いただきます!

 

「えぁ〜......にがい.......」

 

めちゃくちゃまずい!!あれ、こんなにまずかったっけ!?の、飲めない.....砂糖取ってこよっと....

 

なんとかシュガースティックを3本追加することで飲めるようにはしたが、チビチビ飲むので精一杯だ。どうしたものか....

 

「あっ、そうだ!ウマスタに上げよっと!」

 

私はスマホを取り出して、ウマスタ用の写真を撮影した。自分の顔の横にコーヒーを置く、かなり昔の自撮りの構図だが....可愛いからいいでしょ!

 

「えーっと...#ファミウマ、#トレセン学園、#コーヒーっと。」

 

あんまりウマスタとか触ったことないけど...これでいいのかな?とりあえず投稿してみよう。まあぼちぼち飲みながら帰りますかね。

 

「ふふん〜♪ふふ〜ん♪」

 

鼻歌を歌いながら帰っていると、ピコピコとスマホの通知音が鳴り響いた。

 

「ん?どうしたんだろ......ってええ!?」

 

スマホを覗くと、恐ろしいレベルでさっきの投稿にウマいね!がついていた。3分も立ってないのに2000!?うそでしょ....

ウマ娘の力ってすごいんだなと、私はしみじみ実感した。

 

 

 

 

 

 

学園に戻ると、正門にとても人が集まっている様子だった。何かあったのだろうか。あれは.....報道陣?でも何で?

 

「あっ!いた!シュヴァルツミーティアさんです!!」

 

えっ、なになになに?待って何でみんなこっち来るの?ちょっとまっ....

 

「シュヴァルツミーティアさん!!あなたのトレーナーはあの一ノ瀬碧郁トレーナーと聞きましたが、それは本当なんですか?」

 

「ミーティアさん!!選抜レースでは敗北したと聞きました、しかしどのようにしてトレセン学園の認証を得たんですか?」

 

「いつ頃デビューされるんですか?」

 

まってまってまって!!!どう言うこと!?何でこんなに人がいっぱいいるの!?なんでここがバレたの!?フラッシュ眩しい!!目がクラクラする!!あぁぁコーヒー落としちゃった!!

 

「えっ.....あ......あの.....」

 

「どうなんですか!?」

 

「いつデビューするんですか!?」

 

身長差があるしみんながガンガン行ってくるからめっちゃ怖い!!大勢すぎて話聞いてくれないし、何よりうるさい!!

 

「はぁーっ........はっ.....はぁーっ.....」

 

やばい、目の前がぐるぐるしてきた。けっこうまずい......かも.......

た.....すけ.....て......あ........い.....ぼ.......

 

「何してるんですか。」

 

ぁえ.....?.....あいぼう......?

私は何かに抱き止められ、視界を封じられた。でもこれは....相棒の匂いだ....

 

「はあっ.....はあっ......」

 

「大の大人がこんな小さな子を寄ってたかっていじめるものじゃない。」

 

「一ノ瀬トレーナー!シュヴァルツミーティアさんのトレーナーについたと聞きますが、本当ですか?」

 

「はい。彼女から私に言ってくれました。」

 

「どうやって選抜レースをくぐり抜けたんですか?」

 

「この子は元々ドイツのレースで勝っていました。それをURAに報告しただけです。」

 

「いつ頃デビューされる予定なのでしょうか?」

 

「このまま順調に行けば8月上旬のデビューを予定しています。」

 

「....他に何かないのなら、帰ってください。迷惑だ。」

 

「.....」

 

周りの雑音が次第に無くなっていく。どうやらあの報道陣たちは帰ったようだ。

 

「ふぅ.....ミーティア。もう大丈夫。帰ってもらったよ。」

 

「あい....ぼう.......?」

 

「そう。大丈夫?」

 

「う...ん.....だい....じょうぶ.....」

 

「どこが大丈夫なんだ?軽いパニック症状起こして...」

 

「ごめ.....」

 

「怒ってないからいいよ、よっ....と。」

 

私の体は宙に浮き、次に目を開いた時には彼の腕の中だった。これって.....お姫様抱っこ.....?

 

「帰ろう?ミーティア。」

 

「....うん....」

 

まだ少し視界が安定しない....相棒は何でここに来たんだ....?

 

「どうしてここに....?」

 

「なんかシーモアスマイル?って子がウマスタ見てて、ミーティアが映ってたから、あっこれ嫌な予感するなって思ってきたら案の定酷い事にって感じ。」

 

「ミーティア。俺達は今有名なんだ。悪いメディアはこう言うところを見つけて追っかけてくる。外に出るのはいいけど気をつけるように。分かった?」

 

「分かった....」

 

「疲れたな、今日のトレーニングはお休みにするか?」

 

「ん......いや.....やる....」

 

「まあ俺がさせないけどね。トレーナー室のソファで休もう。」

 

「あいぼ......ごめん.....」

 

「構わないよ。ミーティアが悪いんじゃない。」

 

私は彼の腕の上で揺られながら、トレセン学園へと戻った。

 

「着いたよ。下ろすね。」

 

柔らかい感触に包まれて、私は眠気が限界点に達した。

 

「うぅ.....ありがと....」

 

「しばらくそこで寝ておきな。」

 

「うん....おや...すみ....」

 

そう言って私の視界は暗闇に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん....」

 

あれ、ここどこ?

何で私ソファで寝てるの?

あ、そうか。報道陣に囲まれて....相棒が来て....

まさか....お姫様抱っこでここまで帰ってきた!?

私は驚いてソファから飛び起きて、周りを確認した。

そうすると、トレーナー室の机に突っ伏して寝ている相棒が見えた。

 

「寝ちゃったか....まったく。」

 

私の為に毛布までかけてくれてるじゃん、嬉しいなぁ。

立ち上がって、相棒の元へ寄り、静かに私にかかっていた毛布をかける。

彼はすぅ、すぅと安らかな寝息を立てていた。

 

「ふふっ....こういうところはまだ子供なんだな....」

 

机に置いてあったメモに「毛布ありがとう。ちゃんと帰って寝てね。」と書き残した。見てくれるのかな....?

 

「おやすみ、相棒。」

 

そう言って私はトレーナー室のドアを開けた。

 

翌朝、恥ずかしすぎて起きるのが辛かったのは、別のお話。

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