ハイスペックウマ娘になったけどこれでもまだ足りないらしい   作:フタバ ハクシ

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夏合宿と迫る影

メイクデビューから3日程が経ったある日、私はようやくこっち・・・に合流することができた。

「相棒〜!!早く早くー!!」

 

「分かったから引っ張るって......まだまだ子供だな....」

 

「相棒だって19でしょ!変わんないよ!」

 

「変わるわ。全然違うわ。」

 

「でも、いつ来ても気分は上がるでしょ!」

 

「....まあな。」

 

きました!!青春の醍醐味!!夏合宿!!

燦々と輝く太陽!!青い海!!クッソ熱い砂!!

 

「いやー!楽しみー!!」

 

私の初めての夏合宿が、いよいよ幕を開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやだあぁぁぁぁぁぁ!!!行きたくないぃぃぃぃ!!!」

 

始まって1日、早くも弱音を吐きながら、私は相棒に背中を掴まれズルズルと引っ張られていた。腕や手をバタつかせたが、まるで効果がない。

 

「おいおい、冗談だろ....まだ始まったばかりだぞ?札幌ジュニアステークスだって夏合宿の直後に控えてるんだ。頑張ってくれ。」

 

「だってえぇ........めちゃくちゃきついじゃん...........」

 

砂浜は沈むから走りづらいし、坂路よりも体力持っていかれるし、あと暑くて日焼けしそうだし.......もうやりたくないよぉ!

 

「でも俺が引っ張ってもあんま抵抗しないじゃん。手加減してるんだな。」

 

ぎくっ。バレてましたか.....

 

「.....あんまり嫌がって相棒に怪我させるのも違うと思うし.....」

 

「ははっ、やっぱり優しいな。」

 

「優しいと言うか....相棒を怪我させたくないだけだよ....そ、そりゃ、文字通り相棒だし...」

 

「俺はミーティアのそう言うところ、好きだよ。」

 

「ふぇ!?.......あ、ありがとう......」

 

も〜!!なんだよこのイケメン!!

 

「じゃ、練習がんばろうな。」

 

「ふぁい......」

 

私はもう反抗する気などなく、トレーナーにされるがままになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一旦集合。ちょっと来て。」

 

「はいは〜い。」

 

トレーニング開始から2時間が経過した頃、相棒から招集がかかった。

 

「見てて思ったんだけど、ミーティアは自分の体を十分動かせてるんだ。だけど、安定性が足りてないんだ。」

 

「安定性?」

 

相棒から聞いた所、私は走ってる時の姿勢がまだ高いらしく、加速をする時の安定感がないのだ。もっともっと前傾姿勢にして、重心を下げることができれば、もっと楽に速く安定して加速することができるそうだ。ただ....

 

「恐らく、足にかかる負担はとてつもない。体重をそのまま一本の脚で支えるのと一緒だから、かなりの激痛が伴うと思うけど....やるか?」

 

「.....キングヘイローちゃんや、スペシャルウィークちゃんに追いつくためなら、私はなんでもするよ。」

 

「でも、あんまり無理しないようにな。オーバーワークほど遠回りな道はない。」

 

「了解。任せて相棒。絶対にできるようにしてみせる!」

 

私はこの走りで、頂点に立ってやる。やるんだ。

 

 

 

 

 

それから私は嫌がることなく毎日トレーニングを続けた。砂浜のトレーニングでは、体幹と同時に前に進むパワーも手に入る。夏の間に成長するには一石二鳥だ。まあでも....

 

「うわっ....!!」

 

前のめりで走るのと一緒だから、かなり安定しない....顔面から転びそうになる.....!慌てて手で受け身取ったけど、これでも怖い.....

 

「いてて....また擦りむいちゃった....」

 

綺麗な脚だから、あまり傷つけたくないんだけどなぁ...水着だから、あらゆるところ擦りむいちゃう.....

 

「大丈夫か?」

 

「あっ、相棒....うん、ちょっと擦りむいただけ....」

 

「そこまで一気に前傾姿勢をしようとしなくていいぞ。少しづつやっていこう。」

 

「分かった。じゃあもう少し上げてみる!」

 

「とりあえず転ばずに砂浜を駆けることを意識してみようか。」

 

「任せて!よーし!!」

 

 

 

1週間目。転びながらも懸命に走った。めちゃくちゃ擦りむいた。

 

2週間目。少しだけ転びにくくなった。かなり擦りむいた。

 

3週間目。かなり転びづらくなった。ちょっとだけ擦りむいた。

 

 

「よーし、いい感じだな。」

 

あれから4週間が経過した。前傾姿勢でもほぼ転ぶことは無くなったし、擦りむくことなんて全く無くなった。

 

「ジュニアでできることはほぼ出来てる。あとはひたすらレースで経験を積むぐらいかな。」

 

「ほんと!?」

 

「ああ。本当。夏合宿だったら格上の子だっているし、いろんな子とレースしてきな。」

 

「分かった!よーし!やるぞ〜!!」

 

私は合宿所に戻って色々な子を探すことにした。

 

 

こう見るとトレセンには色々な子がいるんだなぁ。

中等部の子はみんな同じような体型だけど....高等部になるとまるで別人のようになるんだな....スタイルがいい子ばっかりだ....あ、あれは!

 

「スマイルちゃん!!」

 

良かった、スマイルちゃんも来てたんだ!!

 

「ミーティアちゃん!!久しぶり!!1ヶ月ぶりくらい?」

 

「そうだね〜!夏合宿前だから本当に1ヶ月ぶりくらいだね!」

 

「メイクデビューおめでとー!!みんなで見てたよ〜!!」

 

ん?みんなで?

 

「みんなでって.....他に誰かいたの?」

 

「えっとね〜、スペシャルウィークちゃん、キングヘイローちゃん、セイウンスカイちゃん、グラスワンダーちゃんと、あとエルコンドルパサーちゃんと一緒に見たよ!」

 

マジか....まさかの黄金世代揃い踏みか。流石スマイルちゃん、ニコニコしてるから接しやすいもんな....

 

「やっぱりスマイルちゃんは友達を作るのが上手いなぁ....コツとかあるの?」

 

できればあの子たちとも仲良くしたいしなあ....

 

「何事もスマイルが大事!だよ!」

 

スマイルちゃんの笑顔、久しぶり見たな〜。

やっぱり無邪気で可愛い!!

 

「でね、スマイルちゃん。」

 

「ん?どうしたの?」

 

「私と久々にレースしない?1000メートルの直線勝負で。」

 

「いいね〜!私もあのあと鍛えたんだから!負けないよ〜?」

 

「望むところだよ!私だって負けないからね?」

 

「じゃあ、早速砂浜にゴー!!」

 

「ゴー!!」

 

たとえスマイルちゃんでも、勝負だけは譲れない!!

 

 

 

 

 

 

 

直線勝負の1000メートル。夏合宿の集大成を見せる時が来た!

 

「スマイルちゃん?準備はいい?」

 

「勿論!!いつでも行けるよ!あ、でも....今コイン持ってないや....」

 

そう。私たちは今水着のためコインを持ち合わせていないのである。いつもなら体操服のポケットに入れているが、もちろん水着にポケットなどない。そのため、公平なスタートが切れないのだ。人がいない限り。

 

「あ....忘れてた....どうする?」

 

『じゃあオレが合図やってもいい?』

 

「!?」

 

聞き覚えのない声に私は慌てて振り向き、後ろを見た。

 

「あなたは....?」

 

そこにはとても端正な見た目をした鹿毛のウマ娘が立っていた。髪は短く、中性的な顔立ちだ。ってか背高っ!170くらいあるんじゃ...いかにもイケメンなウマ娘って感じ...

 

「あぁ、オレ?んー....まあいずれ分かるよ。それよりも、勝負するんでしょ?ほら、準備しなきゃ。」

 

「あ、ありがとうございます....?」

 

「いいよいいよ!こういうことやってみたかったし。じゃあ、二人とも準備はいい?」

 

「「はい!!」」

 

私は深く息をして、前を向いた。

何はともあれ、絶対に負けない!!

 

「いくよ、位置について.....よーい....」

 

 

「どん!!」

 

 

ダッ!!

 

 

出遅れないようにスタートには気を遣ったが、やはりダッシュがつかない。先頭に出たのはスマイルちゃんだ。

最初はとりあえず離されないことだけを意識する。後ろすぎて届かない位置でもなく、前すぎて脚が使えない距離でもない、ベストなポジション。

 

よし、ここならいい感じ。2バ身半差くらいってところかな。ここなら届く。

 

「はあっ、はぁっ、.....よし.....」

 

残り500メートルを切った所で早くもスマイルちゃんが仕掛けた。

ぐんぐんと加速しながら突き離す体制に入っている。でも大丈夫。まだ焦らなくていい。もう少し待ってから仕掛ける。習得したとは言え、まだ長くは使えない。だから、あと少し。

 

300メートルを通過した途端、私は走るフォームを低くして、脚の回転をさらに早くさせた。当然、脚が千切れるほどの激痛が走った。が、

私は、痛みだけじゃ止まらない!!

 

「ふっ.....!」

 

一気に加速してスマイルちゃんの横に並ぶ。もっとだ!もっと加速するんだ!

 

「ああっ.....!」

 

今の実力じゃこれが限界なのか、これ以上加速することはなく2人並んでゴールを駆け抜けた。

 

結果は.......アタマ差で私の勝ちだった。

 

「はあっ、はあっ......やっぱりまだ難しいな....」

 

「いや〜!惜しい〜!.....でも、楽しかった〜!!」

 

「私も楽しかったよ!またやろうね、スマイルちゃん!」

 

スマイルちゃんは負けても楽しそうだ。そんなスマイルちゃんを見てると私も元気が湧いてくる。....でも、まだまだ未熟だな....安定感はあるけど、磨かなきゃいけないところが多いや。

 

「いやー面白いもの見させてもらった!オレも走りたくなってきたよ!」

 

えっ!?この人さっきまでスタート地点にいたよね...まさかゴールからここまで走って来たの!?だとしたら....この人、相当速い...!しかも、息一つ乱れてない!!

 

「オレとレースしない?どっちもレベル高くてびっくりしたよ。」

 

なんなんだ.....この人.......

 

「あ!やっと見つけた!!ショウ、そこで油売っとらんではよトレーニング行くで!今日は私とレースしてくれるんやろ?」

 

向こうからもう一人、栗毛のウマ娘がやってきた。すごく美しい見た目で、髪の中心にはには綺麗な流星の模様がついていた。この人はすごいかわいらしい見た目だな....

ショウは、この人の名前?

 

「あっ!そうだった!ごめんテンさん!完全に忘れてた!」

 

「まったくアンタは.....って、その子たちどうしたん?」

 

「ああ、この子たちね、すごい強いんだよ!」

 

「へぇ〜.....そうなんや、君達、名前なんて言うんや?」

 

「シーモアスマイルです!!」

 

「シュヴァルツミーティアと言います!」

 

「二人とも可愛らしいなあ。」

 

優しく笑いかけるその顔は、とても美しく、どこか儚さもあった。

 

「でしょ!しかもこの青鹿毛の子、特徴的な走り方をするんだよ!」

 

「どんな走り方なん?」

 

「ただでさえ背が小さいのに、走る時の姿勢も低いからもう本当に....まるで"流星"みたいなんだよ!」

 

背が低いという言葉が私を襲う!!めちゃくちゃ気にしてるからやめて!!!

 

「このアホ!」

 

その瞬間、鹿毛のウマ娘の頭が勢いよく叩かれる。

 

「あだぁっ!」

 

「本人の前で言うことか!」

 

あ、この人デリカシーないっていつも怒られてるんだろうな...

 

「褒めたつもりだったんだけどなあ...」

 

「ほんまこのドアホは....でも.....流星か.....ミーティアちゃん、やったっけ?」

 

栗毛のウマ娘がこちらを見る。

 

「は、はい!」

 

「いつか、レースで勝負する時が来ると思う。そんときは手加減なしで戦おな!ショウが他の人褒めるなんて珍しいんやから。」

 

「邪魔してごめんな〜!じゃあほなな〜!ほら行くでショウ。」

 

「あ〜!またねー!」

 

背中を掴まれながら手を振る鹿毛のウマ娘は、ニコニコしながらそう言った。

 

「いっちゃった....誰だったんだろ.....」

 

「でもミーティアちゃんの走り方が流星みたいだって!」

 

「まだまだ使いこなすには練習がいるけどね....」

 

「私たちはまだジュニア級だし、もっともっと強くなれるよ!頑張ろう!!」

 

スマイルちゃんの励ましには人をやる気にさせる効果でもあるのだろうか。

 

「うん!!がんばろー!!」

 

私はレースをした後も練習をすることにした。

 

 

 

 

 

「今だ、加速を始めてくれ。」

 

相棒のゴーサインが出た。さっきよりも低い姿勢で加速していく。足場の悪い砂浜でも力強く動くことが出来るようになってきた。

 

「はぁっ......!」

 

さっきよりも加速が早い。速度も安定している。これなら次の札幌ジュニアステークスでも....

 

「ぐっ.....」

 

突然視界が曲がり、私は平衡感覚を保てず思いっきり転んだ。受け身を取ったのでそこまで痛くはないが....しかし、問題はそこではなかった。

 

「ひゅー......けほっ.....けほっ.....」

 

なんだこれ.....息が......できない.....

 

「ミーティア!大丈夫かー!?」

 

相棒が近づいてくる。大丈夫と言いたいけど、息ができなくて声が出せない。

 

「ひゅっ....っはぁ....!はあっ....はあっ....」

 

なんとか呼吸ができるようになり、酸素を肺いっぱいに取り込む。さっきのはなんだったのだろうか。脚の痛みと何か関係があるのか....それとも....

 

「大丈夫か、怪我は?」

 

相棒が私を覗き込みながら心配そうに見つめている。

 

「大丈夫....だと思う。」

 

「....今日のトレーニングはもうやめておこう。」

 

「えぇ!?なんで!?私は大丈夫だって!」

 

「こんな日まで怪我させたくない。大人しくしてくれ。」

 

「こんな日?」

 

「今日は夏祭りだよ。行かないのか?」

 

そうか。もうそんな時期か。

 

「リフレッシュしに行こう。早く着替えてこい。」

 

ここ最近ずっとトレーニングをしていたし、恐らく相棒も私の精神状態を鑑みての行動なのだろう。たしかにこれ以上やっても得るものはなさそうだ。

 

「....わかった....」

 

少し私は不服そうに返事をして、合宿所に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お?案外早かったな。じゃ、早速行くか。」

 

私は制服に着替えて、相棒と共に夜のお祭りへ向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

「お〜!美味しそうなものがいっぱい...」

 

「何か食べるか?」

 

「え!?いいの!?」

 

「ああ、りんごあめにベビーカステラ、焼きそば、たこ焼き...」

 

たこ焼き...美味しそう.....夏祭りのたこ焼き......

 

「...尻尾と耳の動き、隠しきれてないぞ。」

 

「ふぇっ!?」

 

私は咄嗟に自分の耳を触って動きを確認した。耳は大きくぴょこぴょこと動いており、尻尾は左右に揺れていて楽しさを隠せないようだ。

 

「はははっ!たこ焼きでいいか?」

 

「もー!なに笑ってるの!!!」

 

顔を真っ赤にして、口をぷぅと膨らませながら言う。

相棒がこんなに笑うの初めて見たかも....でもそんなに笑わなくていいじゃん!!

 

「おっちゃん、たこ焼き二つ。」

 

「はいよ!熱いから気をつけな。」

 

「ありがとう。ほら、ミーティア。」

 

私は相棒から8個入りのたこ焼きを貰う。ソースとマヨネーズが掛かっているそれは、湯気を出しており、鰹節が踊っている。

じゅるり.....いただきます....

 

「ん〜!!あふい!!」

 

熱い!!めちゃめちゃ熱い!!猫舌だったの忘れてた!!

 

「ゲホッゲホ!!」

 

急いで飲み込んだけど器官に入っちゃった!!

 

「そんながっつくから....」

 

相棒は呆れながらも背中をとんとんと叩いてくれた。

 

「あり....がと....」

 

「ふーふー、よし、ほら、口開けろ。」

 

相棒は爪楊枝で自分のところからたこ焼きを一つ

....え?

ええええぇぇぇええぇえぇぇえ!?!?!?

嘘でしょ!?なんでそんなに鈍感なの!?

 

「早く。ほら。」

 

「は、はい....」

 

私は何も分からずただ言われるがままに口を開けた。そこに少し冷めたたこ焼きが入れ込まれる。

 

「ん.....」

 

「どう?美味しい?」

 

熱すぎてさっきは味わえなかった味が、じんわりと広がる。ふわっとした生地に、たこの味が合わさってとてもおいしかった。

 

「う....うん.....」

 

なんで気づかないの!?なんで!?いま担当ウマ娘に「あーん」したんだよ!?

 

「良かった。美味しくなかったらどうしようかと思った。」

 

彼はそう言いながらにこやかに答えた。

駄目だ、相棒には勝てない....鈍感すぎる....

 

「は.....はひゅ....」

 

私は頭がオーバーヒートを起こし、その場に倒れた。

 

「....っと、大丈夫か?...おーい、大丈夫か〜?」

 

眠る直前、視界に残ったのは私を受け止めて心配そうに見つめる相棒の姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

「ん....あれ、ここは....」

 

揺れる感覚がきつくて私は目覚めてしまった。

 

「あ、起きた?」

 

「あ、あいぼっ.....!?」

 

目を開けた瞬間私は異常な光景を目の当たりにした。

私は、今相棒におぶられているのだ。

 

「突然倒れたからびっくりしたよ。大丈夫?」

 

「そ、それより相棒....この状況って....」

 

「今は地元の人から教えてもらった花火が見えるところに向かってる。」

 

「そうじゃなくて....わ、私、今おんぶされてる....?」

 

「え、うん。」

 

うそでしょ.....うそだ....

 

「お、重いでしょ....自分で歩くよ.....」

 

「....どんなに重くても、俺は君なら構わないよ。」

 

「えっ....」

 

無意識で相手を好きにさせる言葉吐きすぎだよ!!そんなの.....そんなの...好きに、なっちゃうじゃん....

 

「それに、今日トレーニングで転んでたでしょ。そのダメージもあるかもしれないからなるべくミーティアに歩かせたくない。」

 

「....相棒はさ、なんで私のことをそんなに気にかけてくれたの?」

 

限界まで赤面しながらも、私はずっと気になっていることを相棒に聞いた。なぜこんなウマ娘にここまでしてくれるのか。それが私はずっと気になっていたからだ。

 

「んー....多分、俺は君の走りに夢を見たんだと思う。」

 

「夢?」

 

「うん。誰よりも強く、圧巻の走りをしてくれる....俺はミーティアの走りを見て、そう実感したんだと思う。」

 

「決して走りがうまいわけじゃない。体格に優れたわけでもない。でも、それでも感じたんだ。」

 

「君とならどんな壁でも乗り越えていける気がする。そう感じたんだ。」

 

「だから私を?」

 

「うん。初めての担当だし、まだまだ未熟なところもあると思うけど、だけど君は俺と一緒を選んでくれたからね。それには応えなきゃ。」

 

相棒の内に秘めた想いを、私は初めて知った。

自分のために走っているんじゃない。相棒の想いと共に走っているのだと。私に夢を託してくれた相棒に、私も全力で応えなければ。

 

「ありがとう。次の札幌ジュニアステークス、見ててね。絶対勝つから。」

 

「ああ。俺はミーティアを信じてる。楽しみにしてるよ。」

 

「うん!!任せといて!!」

 

そのタイミングで、ちょうど花火が打ち上がった。大きな音を立てながら、大小さまざまな花は、暗闇を華々しく照らす。

 

「お、ナイスタイミング。綺麗だな。」

 

空を見る彼の瞳には花火の反射と共に、自身の夢も映っているような気がした。

彼のためにも、次のレースは絶対に勝たなくちゃ。

負けられない理由が一つ、また増えた。

 

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